Market Flash 投機筋は満足? 2016年5月6日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 <5月2日> ・4月ISM製造業景況指数は50.8と市場予想(51.4)を下回り、3月から1.0pt軟化。地区連銀サーベイが 示唆していたとおりの結果で意外感のない仕上がり。Markit版PMIの50.8とも整合的だ。内訳は、生産 (55.3→54.2)、新規受注(58.3→55.8)と重要項目が低下した反面、雇用(48.1→49.2)が僅かに反発。 その他では入荷遅延(50.2→49.1)、在庫(47.0→45.5)が下押しに寄与。 ・4月ユーロ圏製造業PMI(確定値)は51.7と速報値から0.2pt改善、3月(51.6)からほぼ変わらず。3 月との対比では生産(53.1→52.6)、新規受注(52.2→52.1)がともに軟化した一方、新規輸出受注 (51.1→51.5)が改善。国別ではドイツ(50.7→51.8)、イタリア(53.5→53.9)、スペイン(53.4→ 53.5)が改善した一方、フランス(49.6→48.0)がまとまった幅で軟化。 65 ISM製造業景況指数 65 60 ユーロ圏製造業PMI 60 生産 55 55 50 45 50 40 45 35 30 新規受注 PMI 40 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 10 11 12 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 14 15 16 <5月3日> ・4月米自動車販売台数(季節調整済み年換算)は1732万台と、不可解な弱さを示した3月(1646万台)か ら反発。3ヶ月平均はなお低下基調にあるものの、それでも足もとの1700万台ペースは好調との評価が妥 当だろう。消費者は十分な所得と楽観的な将来見通しがなければ、自動車という高額耐久消費財の購入を 決断できない。 (百万台) 20 米 自動車販売台数 18 16 14 12 10 8 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成。太線:3ヶ月平均 16 <5月4日> ・4月ISM非製造業景況指数は55.7と市場予想(54.8)を上回り、3月から1.2pt改善。雇用(50.3→53.0) 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 が強く伸び、新規受注(56.7→59.9)も改善。事業活動(59.8→58.8)は高水準から僅かに低下したもの の、足もとで広がりつつあった非製造業の減速懸念を幾分和らげる結果であった。 ・4月ADP雇用統計によると民間部門雇用者数は+15.6万人と市場予想(+19.5万人)を下回った。BL S雇用統計の下振れリスクを喚起する結果だが、最近になってこの指標は予測精度が幾分低下している。 ・4月米貿易赤字は▲404億㌦と3月(▲470億㌦)から大幅に縮小。輸入金額の減少(▲3.6%)が、輸出金 額(▲0.9%)の減少を凌駕。実質ベースでは輸出が▲1.4%、輸入が▲4.1%。純輸出はGDPを押し上げ る方向に作用したが、輸入の減少は消費の減速を一部反映している可能性があるだろう。 ISM非製造業・NFP 60 (10億㌦) (千人) -10 300 -20 ISM(非製) 55 米 貿易赤字 150 50 -30 -40 0 NFPサービス(右) 45 -150 40 -300 35 -450 -50 -60 07 08 09 10 11 12 13 14 15 -70 -80 16 00 02 04 06 08 (備考)Thomson Reutersにより作成 (備考)Thomson Reutersにより作成。NFPサービス:3MA 10 12 14 16 <5月5日> ・新規失業保険申請件数は27.4万件と、前週(25.7万件)から増加。もっとも4週移動平均は25.8万件と歴 史的低水準で推移しており、引き続き労働市場の量的改善が順調に進んでいることを示している。 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・5日の米国株は横ばい。雇用統計の発表を翌日に控えて売り買い交錯。WTI原油は44.32㌦(+0.54㌦) で引け。カナダ西部の山火事で複数のオイルサンド施設が操業停止。減産・需給逼迫との見方が広がった。 ・5日のG10 通貨は資源国通貨(CAD、AUD、NZD)が堅調に推移した反面、マイナス金利通貨(CHF、DKK、 EUR、SEK)が軟調。USD/JPYは107前半で一進一退、EUR/USDは1.14近傍での推移。USD/JPYは3日に付けた 105.55がやや行き過ぎとの見方が広がった模様。要人発言ではウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁、 ロックハート・アトランタ連銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁が何れも、Brexitの行方が米金融政策に 影響を与えるとの認識を示した。6月FOMCは14・15日に開催、英国の国民投票は6月23日に行われる。 ・5日の米10年金利は1.745%(▲3.0bp)で引け。特段の材料はなかったが、原油価格が上昇幅を縮小する のに沿って金利低下。欧州債も総じて堅調。ドイツ10年金利が0.161%(▲4.3bp)で引けたほか、イタリ ア(1.495%、▲0.7bp)、スペイン(1.585%、▲1.9bp)が金利低下。他方、ポルトガル(3.271%、+ 11.5bp)は金利上昇。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはワイドニング。 【国内株式市場・アジア経済指標等・注目点】 ・日本株は、連休中のUSD/JPY下落が重石となった反面、2日の大幅下落に対する反動が意識され、売り買い 交錯。日経平均、TOPIXともに落ち着いた値動きとなっている(10:30)。 ・5月3日発表の4月中国財新製造業PMIは49.4と3月から0.3pt軟化。市場予想を下回ったとはいえ、3 月の著しい改善が一過性でなかったことが証明された格好。生産(49.7→49.4)、新規受注(50.9→ 50.0)、輸出受注(48.7→48.6)が小幅に軟化。4月のハードデータは1Q対比で加速が期待される。 ・5月3日にRBA理事会は政策金利の引き下げ(2.00%→1.75%)を決定。1QのCPIが予想外に前期 比マイナスとなったことをきっかけに利下げ観測が急浮上。27人中12名のエコノミストが利下げを予想し 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 ていたものの、ややサプライズである(予想はBloomberg集計)。声明文は、最近のインフレ動向が “unexpectedly low”とされた一方、住宅市場については“took careful note of developments in the housing market”として低金利の潜在的リスクを注視する構えをみせた。先行きの金融政策について 明確なシグナルは発せられず、ハト・タカ派のトーンはバランスしている印象。追加利下げは為替次第か。 ・連休中にUSD/JPYは一時105半ばまで下落。本邦輸入企業のUSD買いが限られるなか、為替介入の難しさを見 越して投機筋が大胆にJPY買いポジションを膨らませた模様。USD/JPY急落前の26日時点でさえ、JPYのネッ ト・ロングポジション(IMMポジションによる)が空前の水準に積み上がっていたことを踏まえると、 投機筋はかつて無い規模のJPYロング・ポジションを構築したとみられる。 ・そうしたなかで、今晩発表の雇用統計がUSD買いを支持する結果となれば、ロングポジションが一掃される 可能性があるだろう。連休中のUSD/JPY下落局面では、事前にJPYロング・ポジションを構築していた投機 筋は既に満足の行く収益を稼いだとみられ、更なるJPY買いに積極的ではないだろう。強い雇用統計を目の 当たりにすれば、目先的にJPYロングを手仕舞う動きが広がりそうだ。円高の主背景となっている米経済の 減速懸念が払拭されない限りにおいて、USD/JPYの中期トレンドが反転する可能性は低いものの、それでも 急激な円高に歯止めがかかるタイミングは近づいているだろう。 ・今晩発表の雇用統計について、雇用者数の市場予想は+20.0万人。これは3月の+21.5万人、直近3ヶ月 平均の+20.9万人からやや減速するとの予想だが、先行指標のISM非製造業の雇用、CB消費者信頼感 指数の雇用判断(雇用機会が「十分」との回答から「不十分」との回答を差し引いたもの)、新規失業保 険申請件数(雇用統計調査週に合致する4週移動平均)は何れも3月から改善度合いが強まっている。こ れらから判断すると、市場予想は幾分保守的な印象を受ける。 (10億㌦) -200 IMM JPYネットポジション -150 -100 -50 0 50 100 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
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