Ⅰ 研 究 の 概 要 1 研究主題 研究主題 思考力・判断力・表現力等をはぐくむ学習指導の研究 副主題 授業における「見通す・振り返る」学習活動の実践を通して 2 研究主題設定の理由 社会の構造的変化が進み,児童生徒の生活環境や学習環境が大きく変わる中で,これからの 教育においては,社会の変化に主体的に対応する能力としての「生きる力」を育成することが 求められている。 そのため,学校教育においては,生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,「基礎的・基 本的な知識及び技能」を習得させるとともに,「知識・技能を活用して課題を解決するために 必要な思考力・判断力・表現力等」の能力をはぐくみ,「主体的に学習に取り組む態度」を養 っていくことが重要である。特に,改正教育基本法等で示された教育の基本理念や,新学習指 導要領において示されたこれらの「学力の要素」を踏まえ,教育活動の改善・充実を一層図っ ていくことが必要である。 このような状況を踏まえ,本市では平成26年度から教育行政執行方針に基づく小樽市学校 教育推進計画「23の指針」を定め,本年度も指針の5つの重点目標の達成に向けて取り組ん できている。 全国学力・学習状況調査の結果においては,小樽市の平均正答率を公表し,学校・家庭が課 題を共有し,解決に努めている。また,各学校では「改善プラン」を作成し,学ぶ意欲を高め, 基礎的・基本的な知識・技能を身に付け,筋道を立てて考えたり豊かに表現したりする力をは ぐくむ指導を通し,教育活動の改善・充実を図ってきている。 このような取組の中で,本教育研究所では,平成23年度から3か年にわたって「思考力・ 判断力・表現力等をはぐくむ学習指導の研究」を主題に,確かな学力を支える「思考力・判断 力・表現力等」を高める指導の在り方を追究してきた。 平成26年度からの第10次研究においては,第9次研究の成果と課題を踏まえつつ,「思 考力・判断力・表現力等」をはぐくむために,授業過程における「見通す・振り返る」学習活 動を重視する指導の在り方を追究していくことにする。「生きる力の育成」という理念のもと, 「確かな学力」を育むためには,基礎的・基本的な知識・技能とこれらを活用する思考力・判 断力・表現力等を車の両輪として相互に関連させながら伸ばしていくことが必要である。各教 科の指導に当たっては,児童生徒の思考力・判断力・表現力等をはぐくむという観点から,基 礎的・基本的な知識・技能の活用を図る学習活動を重視するとともに,児童生徒が学習の見通 しを立てたり,学習したことを振り返る活動を計画的に取り入れる工夫をすることが重要であ る。 このようなことから,本次研究は,授業における「見通す・振り返る」学習活動を基盤とし -1- た思考力・判断力・表現力等の育成を研究の目的とした。 3 求める児童生徒像 基礎的・基本的な学習内容を確実に身に付け,主体的に学ぶ児童生徒 4 研究の仮説 学習過程に「見通しを立てたり,振り返ったりする学習活動」を計画的に取り入 れることによって,基礎的・基本的な知識・技能を身に付け,主体的に学ぶ力をは ぐくむことができるであろう。 研究仮説の具体的構想 学習過程に Plan *単元で指導すべき学習事項を学習指導要領の内容に照らして明確にする。 *単元の学習にかかわる児童生徒の実態の診断的評価の結果を踏まえて単元の指導 内容を構成し,観点別学習状況調査の評価基準を明確にする。 *習得した知識・技能を活用し課題解決を図るために,どのような場面や活動内容 を準備すべきかを,単元や1単位時間の中に位置付ける。 *単元を通して「身に付けさせたい力」を明確にする。 * 「見通す・振り返る」学習活動を取り入れることによって Do *「見通す」の場面では,既習事項との関連や使用道具の例示,様々な資料の活用 等々,何をどのように学んでいくとよいのかを子ども自身が考えることができる 手がかりを提示する。 *「振り返り」は,子ども自身が自己の学びに正対することであり,自己評価と相 互評価を活用する。 Check 基礎的・基本的な知識・技能を身に付け,主体的に学ぶ力をはぐく むことができるであろう。 *上記の研究仮説の妥当性を,総括的評価を行うことで検証する。 Action AActio *上記の研究仮説の妥当性を,総括的評価を行うことで検証する。 5 研究の視点 (1) 視点 1 ○思考力・判断力・表現力等の育成に資する「見通す・振り返る」学習活動の在り 方を究明する。 3か年にわたって取り組んできた第9次研究では,副題を「授業における言語活動を通 して」と具体化して,「身に付けさせたい力」を明確にした授業展開や評価の在り方,書 く活動を基盤とした言語活動の位置付けやその評価等について検証してきた。 -2- 学習指導要領解説の総則編,教育課程実施上の配慮事項に,見通しを立てたり,振り返 ったりする学習活動の重視が示されている。従前から,算数科や理科の学習では,児童が 学習を行う上で見通しを立てたり,学習したことを振り返ったりする活動が取り入れられ てきた。しかし,実際の学習において子ども自身が「見通す・振り返る」学習活動のなか で,見通す目的や内容,振り返る内容等を整理し,自身の理解に繋がっていたかは課題が 残る。つまり,児童生徒自身が授業において「何を学ぶのか」を理解し,結果として授業 で「何を学んだのか」を実感できる学習活動が求められている。 本次研究においては,当たり前のこととして捉えられている「見通す・振り返る」学習 活動に焦点をあて,意欲の向上,確実な定着,思考力,判断力,表現力等の育成を目指し たいと考える。そのためには,「見通す・振り返る」学習活動の意義等を明確にし,計画 的に取り入れるよさや,見通す目的や内容,振り返る位置等を整理し,追究していくこと が視点1での課題である。 (2) 視点2 ○「見通す・振り返る」学習活動と言語活動を適切に組み合わせた授業展開を工夫 する。 第9次研究では,「言語活動を位置付けた授業づくり」について究明してきた。その中 において,言語活動の目的や意義を踏まえ,各教科等のねらいや特性に応じて意識的に授 業に取り入れていくことが必要であり,授業者が思考力・判断力・表現力等が育つ活動と して言語活動を意識的に設定し,授業設計することが大切である,と結論付けている。 そこで本次研究では,第9次研究で作成された「授業の基本型」を活用しながら,「見 通す・振り返る」場面を掘り下げ,単元構成や授業展開にどのような工夫を加えることに よって,課題解明につながるかを究明していく。 また,「見通す・振り返る」学習活動については,「1単位時間ごとの活動」と「単元 全体を見通す・振り返る活動」を併せて検討していくことや,「見通す・振り返る」学習 活動が児童生徒個々のそれだけに留まることなく「学びあいの授業」の観点からの活動と しても追究していくことを視点2の課題とする。 6 研究の方法 (1) 小樽市教育委員会の委嘱により研究員を選任し,6名の研究員による共同研究を推進す る。 (2) 月 1 回の研究員会議を開催し,文献や実践資料に基づく理論研究及び授業による検証の 方法について研究協議を進める。 (3) 研究員の検証授業を全市に公開し広く意見を求め,課題を共有する中で研究を深め研究 紀要にまとめる。 7 研究の計画 平成 26 年度を初年度に,平成 27 年度までの計画とする。 -3- (1) 第 1 年次(平成 26 年度)研究 ・研究主題の趣旨の具体化 ・思考力・判断力・表現力等をはぐくむ「見通す・振り返る」学習活動について (2) 第 2 年次(平成 27 年度)研究 ・学習意欲を高める「見通す・振り返る」学習活動を計画的に取り入れる工夫について ・「見通す・振り返る」学習活動と言語活動を組み合わせた学習展開について (3) 今年度の研究計画 ① 研究員 学 校 名 研究教科 研究員氏名 小樽市立長橋小学校 国 語 科 教 諭 宇 野 嘉 純 小樽市立 桜 小学校 算 数 科 教 諭 金 井 建 憲 小樽市立入船小学校 国 語 科 教 諭 井 上 流 太 小樽市立菁園中学校 数 学 科 教 諭 齊 藤 敏 弘 小樽市立桜町中学校 理 科 教 諭 本 庄 有希子 小樽市立銭函中学校 国 語 科 教 諭 川 田 賢 一 ② 研究計画 月 研 究 の 推 進 内 容 4 ○研究員の公募 5 ○研究推進にかかわる具体案の検討とその立案,研究に関する資料収集 6 ○研究員の委嘱発令 ○第 1~2 回研究員会議 ・研究員による研究体制づくり,研究日程等について ・第 10 次研究 2 年次の研究の重点と研究内容,検証授業案検討 ○第1回検証授業全市公開(授業者:金井研究員) 7 ○第 3~5 回研究員会議 ・検証授業の検討 ○第2回検証授業全市公開(授業者:齊藤研究員) ○北海道教育研究所連盟夏季研修会(7/30,31):齊藤研究員参加 8 ○第3回検証授業全市公開(授業者:宇野研究員) 9 ○第 70 回教育研究所連盟研究発表大会への参加(函館市 9/3・4)齊藤研究員参加 ○第 6~11 回研究員会議 10 ・検証授業(全市・所内)の検討他 ○第4回検証授業全市公開(授業者:本庄研究員) ○所内検証授業実施(井上研究員) 12 1 ○所内検証授業実施(川田研究員) ○第 12~13 回研究員会議 ・授業研究に基づく第 10 次研究の成果と課題の検討 2 ・検証のまとめの原稿作成,検討・校正作業の実施 ・研究紀要第 41 号の編集,第 11 次の研究内容の検討 3 ○研究紀要第 41 号の印刷・製本・発送 -4- 8 研究の全体構造 研 究 主 題 思考力・判断力・表現力等をはぐくむ学習指導の研究 ~授業における「見通す・振り返る」学習活動の実践を通して~ 求める児童生徒像 基礎的・基本的な学習内容を確実に身に付け,主体的に学ぶ児童生徒 研 究 の 仮 説 学習過程に「見通しを立てたり,振り返ったりする学習活動」を計画的に 取り入れることによって,基礎的・基本的な知識・技能を身に付け,主体的 に学ぶ力をはぐくむことができるであろう。 研 究 の 視 点 ○思考力・判断力・表現力等の育成に資する「見通す・振り返る」学習活動の在 り方を究明する。 ○「見通す・振り返る」学習活動と言語活動を適切に組み合わせた授業展開を工 夫する。 研 究 の 内 容 「見通す・振り返る」学習活動を通して,主体的に学ぶ力を育む授業実践 「見通す・振り返る」学習活動の重視 学習内容の確実な定着 主体性の育成 ◇「見通す・振り返 ◇「見通す・振り返 る」学習活動の意義 る」学習活動と授業 と主体性との関連 過程の工夫・改善 *在り方の追求 *指導過程の追及 ☆思考力・判断力・表現力等をはぐくむために -5- Ⅱ 研 究 の 内 容 1 思考力・判断力・表現力等の育成と「見通す・振り返る」学習活動 (1) 学習指導要領等の抜粋から 平成 20 年に改定した小学校学習指導要領では,各教科等の指導に当たって,見通しを立 てたり,振り返ったりする学習活動(見通す・振り返る学習活動)を重視している。 はじめに学習指導要領等から根拠となる部分を抜粋する。 ☆「教育基本法 第 2 章 第 6 条第 2 項」において …教育を受ける者が,学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに,自ら進んで学習に取 り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。 ☆「学校教育法の 30 条 2 項」において 「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,こ れらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ, 主体的に学習する態度を養うことに,特に意を用いなければならない。 ☆「第 1 章総則 第 4 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項 2 の(4)」において (4) 各教科等の指導に当たっては,児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返った りする活動を計画的に取り入れるよう工夫すること。 ☆学習指導要領の算数科の目標において 小学校学習指導要領「第2章 第3節 算数」 第1 目標 算数的活動を通して,数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,日常 の事象について見通しをもち筋道を立てて考え,表現する能力を育てるとともに,算数的活動の 楽しさや数理的な処理のよさに気付き,進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる。 ☆学習指導要領の理科の目標において 小学校学習指導要領「第2章 第4節 理科」 第1 目標 自然に親しみ,見通しをもって観察,実験などを行い,問題解決の能力と自然を愛する心情 を育てるとともに,自然の事物・現象についての実感を伴った理解を図り,科学的な見方や考 え方を養う。 (下線部分は研究内容との関連) これらのことを受け「見通す・振り返る」学習活動は,義務教育9年間を通して,各教科等 の指導に当たって計画的に取り入れる工夫を積極的に行い,一貫して指導する重要事項とされ ている。 また,OECD や PISA 調査において,与えられた課題が科学的に調査可能な問題であるのかと いう問いに対する正答率が低く,わが国の児童・生徒は学習の見通しを立てることなどが,必 ずしも十分にできているとは言えないことが,明らかにされている。 -6- (2) 学習意欲の向上と「見通す・振り返る」学習活動 学習意欲はどの子どもにもあり,教師はそれを踏まえて「どんな学習意欲が望ましいの か」「どんな学習意欲を育てたらよいか」等の内容や質の向上を求めていくことが大切で ある。また,教科学習においては子どもが「分かる喜び」を味わい,「学習の意義」を認 識し,自らの将来へのあこがれや夢を描くことができるように,意欲付けの質を高めてい く必要がある。今,なによりも子どもの「学習意欲の向上」が重視されており,このため に各教科の指導における「見通す・振り返る」学習活動の意図的設定の工夫は,受身的な 学習から,子どもが自分ごととして学習をとらえ,「分かる喜び」を実感する活動として 大切なことである。 大阪大学教授 佐藤 真氏は,『自己調整学習としての「見通す・振り返る」学習活動』 として以下のように述べている。 「見通す・振り返る」学習活動は,小・中学校ともに,各教科等の指導におい て計画的に取り入れられ実施されるべきものである。 指導計画に取り入れられることによって,実際の学習において,何を対象とし て,いかに見通しをもてばよいのか,また,いつ,何を,どのように振り返り, 何を明らかにすればよいのか,さらに,それをどう新たな見通しや展望へとつな げるのかということを,児童・生徒自身が整理し分析することが必要である。 児童・生徒が,「見通す・振り返る」学習活動において,見通す目的・内容や 振り返る位置・内容等を整理し,分析し,統合しながら,常に自らの学習を調整 することが,学習意欲を向上させるとともに思考力・判断力・表現力等を育むた めには重要である。 小・中学校の9年間,各教科等で継続的に実践することによって,「見通す・ 振り返る」学習活動が自己調整学習として児童・生徒に身体化し,常に自らの学 びにも展望をもち,そして省察によって深く思考する児童・生徒の育成に結び付 くのである。 (『各教科等での「見通し・振り返り」学習活動の充実』より抜粋) ① 「見通す」学習活動 子どもが「見通し」をもつことは,活動の意味を理解し,活動内容を考えたり,工夫を 重ねて,自らの力で解決に向かう姿が期待できる。 また,学習の始まりの「導入」には,以下のような役割が考えられる。 「導入の役割」 ①学習への意欲化 ②学習の前提となる知識等の確認 ③学習の見通しの確認 ④学習への身構えの形成 学習目標,内容を見通す 学習手順を見通す -7- 見通すことのよ さ ○何をするとよいのかがわかると,取り組む姿勢が変わり主体的な学び を育成することができる。 ○学習の苦手な子どもにとって,ゴール地点を見通すことができること で,学習に意欲をもたせることができる。 ○「今日はここまで頑張ればいいんだ」が子ども自身で判断できること は,能動的な学習につながる。 必要なこと ○子ども自身が何を学習するのかが理解できる「課題」の設定 ○既習事項と関連したキーワードの確認と明示 ○単元の初めに示した「単元を通した課題や活動」や前時までの学習内 容を示す掲示物等 具体的な活動例 ○単元の初めには,単元の学習を見通すことができるモデルや課題を提 示し,単元のゴールを知らせる。 ○単位時間において,ゴールが見える明確な「課題」を提示する。 ○「課題」提示後,前時のまとめを読み返すなどの振り返りを行う。 ○ノートに課題を書かせる。 ○結果の見通し(予想)をノートに書かせる。 ○解決の見通しを話し合わせたり(指名発表。ペア交流等),ノートに書 かせる。 ○キーワードを含む見通し(児童・生徒の)を板書する。 ② 「振り返る」学習活動 子どもが学習を「振り返る」ことは,身に付いた知識を確認し今後の学習の見通しを立て ることになる。また,全体や個人で学習を振り返ることによって,充実感や達成感を味わう ことになり,学習への意欲といった態度的な側面からも重要な活動となる。 個人・教室単位の「振り返り」 振り返ること のよさ 充実感・達成感 学習意欲の醸成 ○個々の子どもの学習の連続性を保たせる手段となり,次へのつながりを 意識させることができる。 ○子どもの考えや定着状況を把握でき,次時の準備や支援を含めた授業を 構想することができる。 ○自らの学習を振り返る習慣を身に付けることによって,学習内容を整理 する力を培うことができる。 必要なこと ○学習を振り返ることができる板書やノート,掲示物等 ○「振り返りの視点」の提示 具体的な活動例 ・学習を通してわかったこと ・できるようになったこと ・まだ,わからないこと ・次に学習したいこと ○「課題」に立ち返り,課題を読ませるなどして全体で確認する。 ○板書をもとに,本時を振り返る。 -8- 等 ○自分の見通しと比較させる。 ○ペア交流や全体で自分の振り返りを発表させる。 ○振り返りをノートやワークシートに短く書かせる(習慣化させる)。 ○「確認問題」や「評価問題」等を実施する。 【横浜国立大学教育人間科学部附属浜中中学校のイメージ図より】 ③ 研究員の研究教科から考えられる「見通す・振り返る」学習活動 国 見 通 す 振 り 返 る 語 ○ 単 元 を 貫く 言 語活 動 を 位 置 付け る こと で , 単 元 全体 の 見通 し を も た せる こ とが で き , 毎 時間 の 課題 が 明 確 に なり 子 ども に と っ て 必然 性 をも った見通しとなる。 ○ 見 通 し に照 ら し合 わ せ て 学 びを 振 り返 らせる。 ○ 学 ん だ もの を 再度 読 み 返 し たり , 別の 物 語 を 読 んで 学 びを 実感させる。 社 会 算数・数学 ○単元の目標とともに 単元における社会的な 見方や考え方の目標を 定め,単元計画を立て る。 ○子どもは教師の単元 目標の見通しを受けて 時間毎の見通しをも つ。 ○調べたことを地図や 年表,図表などにまと め,社会的事象の特色 や意味を理解させるこ とで,自らの学習の成 長を自覚させる。それ を次の学習の動機付け に繋げる。 ○既習事項と関連させ 「何をどう学習するの か」を子どもが考えられ る手立てを提示する。 ○生徒が課題に対して疑 問 を い だ き ,「 自 己 の 問 い」をもつ。 *およその見当の場合は, 「予想」とする。 ○「振り返る」時間の位 置付けと時間の確保が重 要である。 ○子ども自身が,自己の 学びにいかなる意味を見 いだしているのかを把握 する。 -9- 理 科 ○子どもが自然に親 しむことによって見 出した問題に対し て,予想・仮説をも ち,それをもとにし て観察・実験などの 計画や方法を工夫し て考えさせる。 ○「振り返り」は 「考察の場面」と考 える。予想・仮説の 妥当性を検討する過 程を通し て,子ども は自らの考えを絶え ず見直し,検討する 態度を身に付ける。 (3) 「見通す・振り返る」学習活動と評価 「見通す」活動は,主体的な学びにおける根拠ある確かな「振り返る」活動の過程から生 まれ,根拠ある確かな振り返りによって得た自信が,次時への学習の意欲に繋がる。 「振り返る」活動は,子どもが自分の学習を自己評価することである。自己の見通しとまと めとの比較や学習内容の確認等,子ども自身が学びを実感する場面となる。 「見通し」と 相互評価や 他者評価 「見通し」をもつ段階での評価は,その「見通し」で本当に解決に繋がる のか,子ども同士や教師からのアドバイスをもらうことが効果的である。 子どもはそのアドバイスを生かして,自分の活動を修正したり,自信をも って実行することができるのである。 「計画カード」の 作成 社会科や総合的な学習の時間では,単元の「見通し」をもたせるため に「計画カード」を作成し,アドバイスを書き込み,活動の「見通し」 をもたせることが考えられる。このことが単位時間ごとの「見通し」に も生かされることになる。 【計画カード】例 計画カード 1 年 組 番 名前【 】 調べたいこと・調べたいわけ 調べたいこと 調べたいわけ 調べる方法 ① ② 「振り返り」と 相互評価や 他者評価 (例)小学校各学年 の振り返りの 指導の重点 2 友だちからのアドバイス 3 先生からのアドバイス 交流を通して,「参考になった」「なるほど」と思った友だちの意見 を意識させることが大切である。友だちの意見をしっかり聞こうとする 態度を養うとともに,自分の意見と比較して,価値判断を促すことで, それを表現する力が生まれる。 また,相互評価や他者評価では,肯定的評価が基本であり,そのこと によって,自分に自信をもち意欲的に学習に取り組む姿が期待できる。 <低学年> ・自分の気持ちを表現させる。 ・友だちの様子に目を向けさせる。 <中学年> ・友だちの意見を意識させる。 ・友だちと自分の違いを表現させる。 <高学年> ・根拠を明らかにし,論理的に表現させる。 ・「囲みで仲間分けする」や「記号で関連を示す」などの表現 法も身に付けさせる。 - 10 - 2 「見通す・振り返る」学習活動と言語活動を適切に組み合わせた授業展開の工夫 (1) 「見通す・振り返る」学習活動と言語活動を組み合わせた授業過程例 □言語活動: ☆話す ★聞く ◆読む ◇書く 過程 つ 思考の流れ 前時の振り返り □言語活動 ■検証の視点 ◆前時のまとめを読み返す ◎教師のかかわり ◎実物投影機の活用 か む 課題をつかむ ◆全員で声に出して読む ■課題からゴー ◎前時との違いに気付 ◇課題をノートに書く ルが見えている かせる か。 板「予想」を板書する ○ ☆結果(予想)を発表する ■何がわかれば 板 ○「違い」 「既習事項」 ・答えは~かな? ☆前時との違いを発表する よいかをつかめ 「方法」等を板書する ・たぶん~かな? ☆既習事項を想起する ているか。 ・~がわからないな ☆★ペア交流を通して見通し ・今日は○○の勉強か ・○がわかればいいんだ 見 通 す を確かにする ◇解決の見通しをノートに書 考 く え 自分で調べる ・ ・これでやってみよう 深 ・友だちの意見も聞きた め る ◇自分なりの解決方法をノー トに書く ■既習事項を活 ◎支援を要する子に 用しているか は,前時までの学習内 ☆★ペア交流を通して,友だ 容が書かれたノートや ちの考えを知る いな 掲示物を活用させる ・ほかにはできないかな ☆互いにノートを見せ合う みんなで交流する ☆個々の考えを発表し合う ■自分と友だち 板 ○ キーワードとなる言 ☆自分の考えと友だちとの違 の意見を比較し 葉を板書する(色チョー て考えているか クや吹き出しや強調マ ・私の考えと同じだ… ・○○がちがうな… いを発表する ・今日の課題は… ☆課題を意識した発表をする ・今日の勉強は~のまと ☆グループでまとめを話し合う ■課題を意識し ◎板書を活用して,学 ☆全体で発表し合う ているか 習の流れを振り返りな めになるかな ーク等) がらまとめに向かう まとめる ・課題から考えるとまと めは~になるよ ま と ☆キーワードを発表し合い, 全体でまとめをつくる ◇自分で作ったまとめと全体 ■課題と正対し 板 まとめに繋がる言葉 ○ たまとめをしよ を色チョークで板書す うとしているか る のまとめを比較しメモする 振り返る め ・今日は~がわかった る ・○○さんの考えが参考 になったよ □板書で学習を振り返る ■キーワードを □「振り返り問題」をして, 順を追って見る 自己で確認する ことができてい ◇本時の学習でわかったこ と,わからないことをノー ・次の学習は~かな トやワークシートに書く - 11 - るか (2) 板書等の事例 ① 心がけたい板書 検証授業を通して「見通す・振り返る」学習活動の必要性を支える手立てとして「板 書」の重要性を確認し,以下の5点にまとめた。 *1時間の流れがわかる板書 *「見通し」と「振り返り」の違いが明記された板書 *子どもの考えや疑問が書かれている板書 *強調は黄色チョークで,赤や青は極力使わな板書 *子どものつぶやきや考え等は,吹き出しを使うなどしてまとめに活用できることが 示された板書 ② 算数科の実践より(小学校第5学年「三角形・四角形の角」の板書例) (長野県総合教育センター『信州 Basic』より) ③ 国語科の実践より(「三つのお願い」単元を見通せる板書例) (『秋田県式「授業の達人」10 の心得』より~小松尚子先生の板書) - 12 - (3) ワークシートの活用例(研究員の実践より) 実験の方法を端的に示し,個々 に学習の見通しをもたせるよう にしています。 予想だけでなく理由を書かせ ることが大切です。 実 験結果を表やグラフに表すこ とで気付きが明確になります。 気付きと考察を分けた設 問にしています。 学習を振り返る自己評価は大切 なことです。 感想を書かせて,次への意欲をもた せることは大切なことです <引用文献> ①文部科学省『小学校学習指導要領』平成 20 年 3 月 ②文部科学省『小学校学習指導要領解説総則編』平成 20 年 8 月 ③小学館『秋田県式「授業の達人」10 の心得』平成 27 年 1 月 ④佐藤真編著『各教科等での「見通し・振り返り」学習活動の充実』教育開発研究所,平成 22 年 ⑤相模原市立総合学習センター『さがみはらきょういく』2015.9 №.159 <参考文献> ①東洋館出版社『初等教育資料』平成 26 年 4 月号 ②佐藤真編著『各教科等での「見通し・振り返り」学習活動の充実』教育開発研究所,平成 22 年 ③長野県総合教育センターホームページ ④東洋館出版社『初等教育資料』平成 28 年 3 月号 - 13 -
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