あいさつ 山梨県教育委員会では,毎年,教育課程研究委員会を組織し,学習指導要領に基づいた教 育課程の一層の充実を図るため,学習指導の工夫・改善や適切な評価の在り方等について研 究し,その成果の普及を図っています。 学習指導要領では生きる力を知の側面から支える確かな学力の育成を提唱しており,学校 教育法第30条第2項では,「基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用 して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的 に学習に取り組む態度を養う」として,学力の三要素を定めています。これらは,知識基盤 社会の到来や,グローバル化の進展など急速に社会が変化する中,幅広い知識と柔軟な思考 力に基づいて判断することや,他者と切磋琢磨しつつ異なる文化や歴史に立脚する人々との 共存を図ることなど,変化に対応する能力や資質が次代を担う子供たちに一層求められてい ることによるものです。 これら学力の三要素を確実に育むためには,単元や授業の中で,「見通し.振り返る」学 習活動と言語活動を適切に組み合わせた学習指導の展開が重要であると言われています。 この「見通し.振り返る」学習活動は,「中学校学習指導要領」第1章総則の「第4 指 導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」及び,「中学校学習指導要領解説総則編」の第 3章「第5節 教育課程実施上の配慮事項」に,「6 見通しを立てたり振り返ったりする 学習活動の重視」として,「各教科等の指導に当たっては,生徒が学習の見通しを立てたり 学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるようすること」が示されていま す。 「見通しを立てたり振り返ったりする学習活動」とは,具体的には,まず,子供が授業の 導入段階で学習の見通しを確実に持ち,次に,展開段階で筋道を立てて考えたり話し合っ た り,観察したり実験したり,レポートを書いたり論述したりし,その後,まとめ段階で子供 自身が学習活動や学習内容を振り返るなどの学習過程 が考えられます。 そこで,今年度は,研究主題を「学習の主体性と思考力・表現力・判断力等を育む『見通し・ 振り返り』」,研究副主題を「言語活動の充実を通して」として,研究に取り組んできまし た。 山梨県教育委員会では,時代の要請に的確に応えながら,本県教育の一層の振興を図るた め,平成26年度から30年度までの5年間を計画期間とする『新やまなしの教育振興プラ ン』を策定しました。この計画では,「未来を拓く『やまなし』人づくり」の基本理念の下, 「夢と希望に向かって自ら学び,考え,行動する『たくましい力』を育てる」こと,「他者 を思いやり,社会の絆を深める『しなやかな心』を育む」ことの2つを基本目標としていま す。そして,基本理念の実現と基本目標の達成のために10の基本方針を設定し,その中の 1つとして確かな学力と自立する力の育成を目指しています。この研究が,知識や技能を活 用して,思考力・判断力・表現力を育むとともに ,子供たち が興味を持って取り組むことが できる達成感のある授業を行うための授業改善の研究となり,今,まさに子供たちに必要と されている資質・能力・態度を形成することにつながっていきます。 県教育委員会では,冊子とともにホームページ版の作成も計画しており,今後,「見通し・ 振り返り」を取り入れた具体的な学習指導の事例についても, 紹介していきますので,これ らの資料が広く活用され,本県子供たちの確かな学力の定着・向上に向けた授業改善等が, 各校において積極的に推進されることを期待します。 平成26年10月 山梨県教育庁義務教育課長 -1- 渡井 渡
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