Q&A 商標:白井里央子

藤本昇特許事務所 白井 里央子◇弁理士
当社の商標登録に対して、先に商標登録されたX社から4条1項11号に該当することを理由
に無効審判を請求されました。当社商標権の指定商品とX社商標権の指定商品は類似群コー
ドが異なるため、指定商品は非類似で無効にされることはないと判断していいですか?
1.商品の類否判断
『商標審査基準〔改訂第11版〕
』
(宮崎県 I.N)
2.商品が類似となるケース
(1)
「備考類似」に該当する場合
があるかどうかにより判定すべきもの
ではなく、それらの商品が通常同一営
において、商品の類否判断(指定商品
前記「類似商品・役務審査基準」で
業主により製造又は販売されている等
が類似するか否か)
は、原則として、
「類
は、類似群コードとは別に、いわゆる
の事情により、それらの商品に同一又
似商品・役務審査基準(特許庁 商標課
「備考類似」と呼ばれる商品の類否判
は類似の商標を使用するときは同一営
編)
」により判断される旨が規定されて
断の基準が設けられており、これに該
業主の製造又は販売にかかる商品と誤
おり、特許庁による審査では同基準に
当する場合は、類似商品と推定される
認される虞がある認められる関係にあ
基づき、同一のいわゆる
「類似群コード
ことになります。
る場合には、たとえ、商品自体が互に
(数字とアルファベットの組み合わせか
備考類似に該当する商品は、類似群
誤認混同を生ずる虞がないものであっ
ら構成される5桁の共通コード)
」を付
コードが相違し、原則として審査官の
ても、それらの商標は商標法
(大正10年
与された2つの商品は類似するものと
審査対象とはなりませんが、異議申立
法律99号)
2条9号にいう類似の商品の
推定して商品の類否を判断しています。
てまたは無効審判の請求があれば、類
商品にあたると解するのが相当である
例えば、
第1類「化学品」について、
第19類「家庭用帯電防止剤」との関
似商品と推定して取り扱われます。
例えば、第3類「歯磨き」
(04B01)
(最高判昭和36年6月27日
〈原文ママ〉
)
」
〔商品類似と判断された例〕
係を見ると、類似群コードが「01A01」
は、第21類「歯ブラシ」
(21F01)と
① 平成27年
(行ケ)
第10134号
で共通するため類似と推定されます
類似であると推定されます。
第10類 体脂肪測定器、
体組成計
(10D01)
が、第5類「薬剤」
(01B01)との関
係では、類似群コードが異なるため、
非類似と推定されます。
したがって、貴社商標権の指定商品
=第9類 脂肪計付き体重計、体組成
(2)審
判・裁判等の審理で個別具体的
に商品の類否が検討される場合
審査段階では指定商品の類似群コー
とX社商標権の指定商品の類似群コー
ドが相違するため非類似だと認定され、
ドが相違する場合、指定商品が類似し
商標登録された場合であっても、その
ない可能性が高いと考えられます。
後の無効審判や裁判の審理等において、
計付き体重計、体重計(10C01)
② 異議2013-900124
第16類 プラスチック製包装用袋
(18C09)
=第16類 紙袋(18C04)
3.むすび
しかし、類似群コードはあくまで商
以下のような基準で商品の類否が実質
このように、指定商品の類似群コード
品の類否を
「推定」
するものにすぎず、類
的に検討された結果、指定商品が類似
が異なる場合であっても類似と判断さ
似群コードが異なる商品でも、例えば
と判断される場合も考えられます。
れる可能性がありますので、上記基準
右記のようなケースでは類似と判断さ
れる可能性があるため注意が必要です。
58 The lnvention 2016 No.5
〔商品の類否に関する判例〕
「……商品自体が取引上誤認混同の虞
を参考に、指定商品の類否ならびに無
効の可能性を慎重に検討してください。