書評『保育でつむぐ子どもと親のいい関係』

書 評
うな声と、生き生きとした姿に、乳児
ただ訪ねた時、子どもたちの弾けるよ
り話し合うことはできませんでした。
リーを訪ねたり、保育についてゆっく
私 は 授 業 と 園 運 営 に 追 わ れ、ナ ー ス
ルームは幼稚園と隣どうしでしたが、
主任をされている同大学ナースリー
を続けてきました。著者の井桁先生が
業がない日の朝は、親子を迎えること
と家庭との連携の大切さ」を説き、授
してきた者として、
職員や保護者に
「園
「ともに育てる」ことの大切さを主張
私は東京家政大学在職中、付属幼稚
園園長を2年間務めました。保育や運
い意味を学ばせてもらいました。
り、改めて「ともに育てる」ことの深
れてきたと思いますが、私は本書によ
のです。皆さんは連載を読まれ、学ば
今」をもとに、一冊にまとめられたも
本書は、本誌2013年 月号〜
年6月号に連載された「子どもと親の
ルを起こすことがあるが、子どもの中
たり、物の取り合いをするなどトラブ
現できず、時に友だちを噛んでしまっ
す。子どもは自分の気持ちをうまく表
という倉橋惣三の言葉を紹介していま
「子どもは自分の気持ちに
そして、
気づいてくれる人がありがたい存在」
ださいね」と話す、と書いています。
で頑張らないで、いつでも相談してく
疲れた表情の母親に「大変な時は一人
そこから子どもに明るく声かけをし、
ことやその日の心もちが見えてくる。
親子の表情や口調、仕草などから、
昨夜、あるいは今朝、家族に起こった
いくことの大切さを説いています。
気持ちをしっかり受けとめ、対応して
子との接触を大事にする中で、親子の
援のポイント」がある、登降園時に親
は、
「何気ない日常の中に、大事な支
成立するのだと教えられました。先生
くことで書名のような「いい関係」は
見つめ、理解し合い、関係を紡いでい
保育の中で子どもの成長を親とともに
書を、ぜひ丁寧に読んでみてください。
実践に裏づけられた深い内容で、「と
もに育てる」ことの真髄を考察した本
ました。
の重要さを示唆していることを実感し
保護者との信頼関係を結んでいくこと
れていた」という母親の言葉からは、
に伝えてもらった保育には、
『子育て
(連絡帳で)子どものよいところや、
「
新しくできるようになったことを詳細
思います。
に列挙していて、とても参考になると
とりを大切と考え、その内容を具体的
ていくことを援助するのだといいます。
の中で親の「気づき」を待ち、変わっ
も、親の思いを理解し、その信頼関係
保育者の指導や説諭で親が変わり、
育っていくことはなく、保育者は子ど
といいます。
転換をしていくように伝えていくのだ、
たしていく、叱るだけでなく、発想の
受けとめ、保護者への通訳的役割を果
ター「みずべの会」スーパーバイザー)
は楽しい』というメッセージが込めら
そのために、保護者との連絡帳のやり
もこんな姿を見せるのだと驚きました。
には悪かったという自覚や様々な気持
営に携わることは少なかったのですが、
でも、その奥にある保育や保護者との
関係については理解不足でした。
育者は子どもの発達を理解し、思いを
( 新 澤 誠 治 / 保 育・ 子 育 て ひ ろ ば 推 進 セ ン
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ちがあり、優しい思いやりもある。保
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私の
「ともに育てる論」
は浅薄だった、
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保育通信■No. 732 2016. 4. 1.
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井桁容子・著
四六判・並製・144 ページ
本体 1300 円+税
(株)小学館
TEL 03-5281-3555
http://www.shogakukan.co.jp/
親と保育者が
「ともに育てる」こと
の真髄を考察した書
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保育でつむぐ子どもと親の
いい関係