これは必ず!授業の進め方の基礎基本

第3部 【学習指導】
Ⅰ これは必ず!授業の進め方の基礎基本
1 授業の構想
(1) 「本時のねらい」を基に「めあて」を明確にする。
「めあて」づくりには教材研究が不可欠です。まずは、学習指導要領や教科書を読み込み、指導
者自身が児童生徒に教えたいことをつかみ、その上で児童生徒が主体的に追究できるようなめあて
を考えましょう。併せて、小中学校互いの指導要領や教科書も読み学習の系統をつかみましょう。
(2) ねらいに到達させるために、児童生徒に考えさせねばならない事項を明確にする。
授業で一番大切なのは、児童生徒に考えさせることです。ただし、基礎的な知識や考え方・調べ
方が定着していなければ、児童生徒は考えられません。教師が教える(説明する)ところは、しっ
かり教えましょう。
(3) 「まとめ」と「練習問題」の内容を、「ねらい」と関連させながら明確にする。
「まとめ」は、
「めあて」と対になります。
「~の人物像を考えよう」ならば、
「~の人物像は…
のように考えられた」となるでしょう。練習問題は、まとめで分かったことやできたことの習熟と
なりますが、教科によっては教科書の再読や鑑賞、日常生活への一般化など、振り返りの時間とな
るように工夫しましょう。
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めあて設定までの流れ
登山をするときに「山の頂上をめざす」という目標があるように、めあては1時間の授業の目標
です。目標があれば、児童生徒は何をめざしたらよいのかが明確となり、児童生徒主体の授業とな
るでしょう。しかし、同じ目標を提示するにしても、児童生徒が「めざしたい!」と思うような、
魅力的であり、かつ、本時のねらいを含むめあてを提示することが大切です。
以下に、めあて提示までの流れの例を示します。
① これまでの学習を想起し、どこまで分かっているのかを確認する。
② これまでの学習では説明できない事象を提示するなどして、
「なぜだろう」
「考えてみたい」
「調べてみたい」といった意欲がもてるようにする。
③ 下記の条件に沿っためあてを提示する。
めあて
よいめあての3つの条件
①本時のねらいを含んでいる
(まとめに結びつけることができる)
②追究の手立てや視点が含まれている
③子どもにとってわかりやすく、意欲がわく
3 授業の基本的な流れ
過程
目指す児童生徒の姿
(例)
・砂糖を水に溶かしてみよう(△)
→砂糖を水に溶かした時の粒子の変化を調
べよう(◯)
・東北地方について調べよう(△)
→東北地方の人々のくらしを資料をもとに
調べよう(◯)
指導上の留意点
これまでの学習を振り返り、新たな学習への意欲化を図る
○これまでの関連した学習(前時や前学年小学 ○小学校では前学年、中学校では小学校等の課題
校での学習等)を想起する。
解決に向けた知識や技能を想起させたり、身に
〇「めあて」を基に一人ひとりが問題解決に向
付いているかを確認したりし、必要に応じて復
けての見通しや予想をもち、意欲的に課題解
習を行う。
入
決に取り組む。
〇「めあて」を示し、課題解決のために、どんな
学習活動をしていくのか、どうすれば解決でき
そうなのか等の学習の見通しをもたせる。
導
展
見通しや予想に基づいた、自力解決や相互解決の場を設定する
開
○見通しや予想の基に自力で課題解決に取り ○課題追究の際には、複線型の指導を行うなど個
組む。
々の学力の向上を保証する。特に学力の高い児
童生徒が待たないような指導に取り組む。
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複線型指導について
児童生徒が授業時間内に自分の力を最大に発揮できる(「できた子どもを待たせない」「できない
子どもを放っておかない」
)複線型の指導に取り組みましょう。
(複線型指導の例)
まずは…すべての子どもが考えられる課題を提示しましょう。
そして…1つ考えられた子には、
「他の方法はないか」
「より速く正確に簡単にできないか」
「自分の考えに間違いはないか」など、新たに考える視点をもたせましょう。
〇課題解決した方法を相互に発表し、「よりよ
展
い解決方法」を話し合い、考えを深める。
・自分の考えをペアやグループ、全体の中で
発表する。
・友達の考えを聞き、共通点や互いの考えの
開
よさなどを見いだす。
・ICTなどを使い、友達に分かりやすく説明
する。
○板書を写すだけでなく、自分や友達の考えを
書くなど、自分のノートをつくる。
<板書例>
めあて
〇発表を関連付けたり、比較させたりし、考えを
深めるための発問や指示を意図的に行う。
○ペアやグループ、一斉など学習形態を工夫し、
一人一人の考えが学級全体の考えに反映でき
るよう配慮する。
○ICT等を効果的に使い、積極的な発言を促す。
○必要に応じて、ゆさぶりなど、思考を深める発
問をする。
〇発表内容を板書により構造化しまとめに結び
つくようにする。
これまでの学び
Aさん(グループ)
の考え
・~~
・~~
・~~
検討された内容
・共通点
・互いのよい点
Bさん(グループ)
の考え
・~~
・~~
・~~
など
まとめ
練習問題
これからの学び(新たな課題)
「分かる」まで、教師がしっかりと見取り、学習のまとめを行う
〇今日の学習で分かった事を一文で書くなど ○極力、児童生徒の言葉としてまとめるように配
してまとめる。
慮し、学習の成果を意識付けられるようにす
○自分でまとめた後、全体のまとめと比較して
る。
修正を加える。
補充・定着させ、
「できた子」には発展問題に挑戦させる
終
補充・定着・発展問題指導例
複線型指導について
末
算数・数学…ドリル等練習問題
理科…他の事象に当てはめて考える
音楽…簡単な発表会をする など
まずは…すべての児童生徒ができる練習問題
そして…簡単な問題ができたら
・より難しい問題に挑戦
・自分で問題づくり など
○練習問題を行う。
〇練習問題への個別指導を通して、学習状況を確
・分かるまで教えてもらう。
(補充)
実に把握し、補充・定着を図る。
・正しく、早くできるようにする。
(定着)
〇教科によっては、教科書の再読や鑑賞、日常生
・発展問題に挑戦する。
(発展)
活への一般化などを行い、学習の定着を図る。
○次時(次の学年や中学校)への意欲をもつ。 ○本時の評価をし、次時の予告をする。
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4
授業中の生徒指導について
授業の中に、
「自己決定」
「自己存在感」
「共感的人間関係」の生徒指導の3つの機能を位置づけま
しょう。
・自己決定の場・・・以下の手立てを参考に、児童生徒が自分で決める授業の充実を図りましょう。
学習形態の工夫
確実な時間と場の確保
評価
ひとり・ペア・グループ・学級
発表・表現
考えて、決めて、
表現する
選 択
自己評価と
学習のふり
かえり
みんなの前
で発表を
学習方法の工
個への対応
課題の追求と解決
課題の設定
発問の工夫
多様な考え
がもてるよ
うに
めあてを自分の追求課題へ
教材提示の工夫
これまでの
学びを想起
させ、考え
る視点を明
確に
問題解決的・体験的な学習など
考える・決め
る・表現する
ための支援
複線型指導(多様な教材等の準備)
・自己存在感・・・以下の手立てを参考に、一人一人が学ぶ楽しさや成就感を味わえる授業の充実を図
りましょう。
一人一人が活躍
考えを出し合い、深める
つぶやきを大切に
ひとりひとり
が授業にかか
わっている気
持ちをもつよ
うに
できた・分かった喜
びが感じられるま
とめとふりかえり
日々の授業の心がけ
個を大切に
認めるほめる
学習状況の
把握
ペア学習
ネームプレート
呼名
学級集団
ひとり学び
子どもに対して
誤答を大切に
場の設定
グループ学習
机間巡視
ノート指導
発問を工
夫し、発
言の機会
を増やす
子どもの言葉で説
明やまとめを
・共感的人間関係・・・以下の手立てを参考に、お互いに認め合い、学び合うことができる授業の充実
を図りましょう。
どの発言も最後ま
で聞く
小集団等の話し合いでの相互評価
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一人一人を受け入
れ、ほめる
受容的な態度で
教師が手本
師弟同行で約束は守る
学習規律をしつける
人の立場や
気持ちを考
える
人の良さを
見つけて、
認める
間違いでも
笑わない
認める
うなずいたり、拍手で
きる雰囲気と態度
学習のルール
発言をつな
ごうとする
自分と違う
意見も受け
入れる
発表をしっ
かり聞く
聴く
学び合い・励まし合い
よい姿をほめて、好
ましくないことは
毅然と正す
教師が自己開示す
る
教えることは、教え
きる
子ども考えに意味
づけをし、認める
子どもから学ぶ態
度をもつ
授業は子どもの顔
を見ながら
みんなで解決した
ことを共に喜ぶ
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