追加利上げに向けた米国経済動向

追加利上げに向けた米国経済動向
大和総研
ニューヨークリサーチセンター
エコノミスト 橋本政彦
◆ 本日の内容
 高まる追加利上げ圧力
 弱含む企業景況感の背景
 個人消費増加の持続性
◆ 雇用者数は着実に増加し、失業率は自然失業率近くまで低下
非農業部門雇用者数と失業率
(万人)
(%)
60
非農業部門雇用者数前月差
(3ヵ月移動平均)
40
11
10
20
9
0
8
-20
7
失業率
(右軸)
-40
6
-60
5
自然失業率
(右軸)
-80
4
-100
07
08
09
10
11
(出所)BLS, CBO, Haver Analyticsより大和総研作成
12
13
14
15
3
16 (年)
◆ 原油価格下落が物価を下押しも、コアインフレ率は上昇幅拡大
PCE(個人消費支出)価格指数とコアPCE価格指数
5
(前年比、%)
4
コアPCE価格指数
3
2
1
0
-1
PCE価格指数
-2
07
08
09
10
(出所)BEA, Haver Analyticsより大和総研作成
11
12
13
14
15
16 (年)
◆ コアインフレ率上昇の背景には賃金上昇率の高まり
民間部門時給とコアPCE価格指数
(前年比、%)
4.0
3.5
民間部門時給
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
コアPCE価格指数
0.0
07
08
09
10
11
(出所)BLS, BEA, Haver Analyticsより大和総研作成
12
13
14
15
16(年)
◆ 一方、企業景況感は製造業を中心に軟調
製造業、非製造業の景況感
70
(DI)
ISM非製造業
65
60
55
50
45
ISM製造業
40
35
30
07
08
09
10
(出所)ISM, Haver Analyticsより大和総研作成
11
12
13
14
15
16 (年)
◆ 輸出停滞とドル高による価格下落が製造業の売上を下押し
製造業出荷の要因分解
20
(前年比、%)
輸出向け価格要因
輸出向け数量要因
国内向け価格要因
国内向け数量要因
製造業出荷
15
10
5
0
-5
-10
10
11
12
13
(出所)Census, BEA, Haver Analyticsより大和総研作成
14
15
(年)
◆ サービス業の売上のうち製造業向けはごくわずか
主な業種別国内産出の需要先(2014年)
製造業中間需要
製造業
34.2
30.6
非製造業中間需要
サービス業 5.4
0
32.0
個人消費
35.3
20
その他最終需要
49.3
40
(注)その他最終需要は個人消費以外の最終需要の合計。
(出所)BEAより大和総研作成
60
3.3
10.4
80
100(%)
◆ 雇用者数が増えれば個人消費が増える
個人消費の雇用者数、賃金に対する弾性値
1.0
0.8
雇用者数弾性値
0.6
賃金弾性値
0.4
0.2
0.0
個人消費
財
サービス
(注)雇用者数、賃金の弾性値は以下の推計式における、α、βの値。
実質個人消費=α×非農業部門雇用者数+β×実質雇用者報酬/非農業部門雇用者数+定数項
変数はいずれも前年比。推計期間は1980年1-3月期~2015年10-12月期。
(出所)BEA、BLS、Haver Analyticsより大和総研作成
◆ 個人消費の増加は更なる雇用を生み出しやすい
非農業部門雇用者数の業種別内訳
(万人)
4,000
3,500
3,000
2,500
(万人)
6,000
個人向けサービス業(右軸)
5,500
企業向けサービス業(右軸)
2,000
製造業
1,000
0
4,500
4,000
1,500
500
5,000
建設業
鉱業
3,500
3,000
2,500
2,000
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年)
(注)個人向けサービス業は小売、教育・医療、レジャー・娯楽、その他サービスの合計。
これら以外のサービス業を企業向けサービス業とした。
(出所)BLS、Haver Analyticsより大和総研作成
◆ 追加利上げに向けた米国経済動向
 高まる追加利上げ圧力
⇒労働市場は着実に改善、賃金上昇でインフレ率も徐々に加速
 弱含む企業景況感の背景
⇒輸出停滞とドル高による価格下落で製造業の売上が低迷
ただし、実質ベースでは国内向けを中心に堅調維持
 個人消費増加の持続性
⇒製造業部門の悪化はサービス業に波及しづらい経済構造
雇用との相互作用で個人消費は増加が続く公算
◆ 結論
◆ 米国経済は内需主導で緩やかな成長が続く
◆ FRBによる利上げペースは、経済情勢や市場動
向を注視しつつ、緩やかなものに