地域医療支援センター発行広報誌「The Expert」第78号

平成28年4月10日発行
耳鼻咽喉科 和田 弘太
教授(平成8年・東京慈恵会医科大学卒)
好酸球性副鼻腔炎の治療
一般的な副鼻腔炎は、ウィルスや細菌感染が原因となり、鼻閉や鼻汁、痛みなど様々な症状を来しま
す。しかし、近年は気管支喘息やアスピリン喘息などを合併し血液中の好酸球の割合が高い好酸球性副
鼻腔炎が増加しています。
好酸球性副鼻腔炎の特徴として、鼻ポリープが多発し、嗅覚障害を来します。手術を行っても再発す
ることもあります。この鼻ポリープ内にも多数の好酸球が浸潤しています。本疾患は確立した診断基準
がありませんでしたが、2015年に診断基準が提唱され、厚生労働省により難病の指定を受けました。鼻
ポリープの有無、副鼻腔CTの所見、血液中の好酸球%により診断を行います。この診断基準で検討を行
いますと当院での手術症例の約40%が好酸球性副鼻腔炎となります。
治療にはある程度はステロイドの内服や点鼻薬も有効ですが、鼻ポリープが発生しますと内視鏡を用
いた手術が最も有効です。特に嗅覚は脱出している期間が長いと手術を施行しても改善しなくなるた
め、なるべく早期の手術が必要と考えられています。副鼻腔手術は、外側に眼窩が存在し、上方から後
方で頭蓋底と接しているため繊細な手術が要求されます。我々は、術前に詳細に解剖を検討し(Building
block concept、蝶形骨洞前壁形態の分類)、安全なAreaと危険なAreaを同定(Area management)
し、手術を進めることで安全な手術を追及しています。現在、当院では年間約400件の鼻副鼻腔手術を施
行していますが、過去4年間の検討では眼窩内損傷や頭蓋底損傷などの大きな副損傷は認めていません。
しかし、好酸球性副鼻腔炎は、いままでの慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)と異なり細菌やウィルス
などの外的要因ではなく、自身の内的因子が原因となるため再発しやすく難治な疾患です。日本耳鼻咽
喉科学会では、CT所見と末梢血好酸球%に加え、気管支喘息、アスピリン喘息などの有無により重症
度を分類しています。その分類から、鼻ポリープなどの再発率、最終的な難治率(治癒率)を公表して
います。当院では、非好酸球性副鼻腔炎症例(再発率、難治率:4.0%、0.5%)、軽症好酸球性副鼻腔炎
(再発率、難治率:8.9%、5.45%)、中等症(再発率、難治率:10.2.%、6.1%)、重症(再発率、難治率:
31.4%、17.1%)と全国平均と比べ10∼20%も良好であり、再手術が必要な症例もほとんどありません。
地域の皆様が安心して治療を受けられ、近隣の先生方に信頼して頂けるように、努力していきたいと
思います。
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発行元:地域医療支援センター