公衆衛生学コース 演習①-1 人を対象にした研究のデザイン リスク その表現と評価 1 問題1 冠動脈疾患ありと診断された200名と、冠動脈 疾患なしの400名について過去の喫煙習慣の有 無を調べた。その結果、冠動脈疾患ありの200 名中、この病気が診断される前に「喫煙習慣が あった」と回答した者は112名、冠動脈疾患な しの400名中、「喫煙習慣があった」と回答し た者は176名だった。 (1)この研究デザインは何か。 症例対照研究 2 (2)2×2表 冠動脈疾 患群 対照群 喫煙あり 112 176 喫煙なし 88 224 計 200 400 3 2群間で何を比較するか 冠動脈疾 患群 対照群 喫煙あり 112 176 喫煙なし 88 224 計 200 400 喫煙率 112 = 200 = 56% 176 = 400 = 44% 4 喫煙習慣の冠動脈疾患発症に対するオッズ比 冠動脈疾 患群 対照群 喫煙あり 112 176 喫煙なし 88 224 計 200 400 オッズ比 ad = bc 112×224 = 176×88 =1.62 5 問題2 「脂肪摂取量が多い食習慣をしていると、前立腺癌を発 生しやすくなるか」を調べるために、高脂肪食摂取者 100人を、低脂肪食摂取者100人と比較した。両群ともに 65歳から調査を開始し、その後10年間、全員を追跡した。 追跡期間中、高脂肪食摂取者のうち10人と、低脂肪食摂 取者のうち5人が前立腺癌と診断された。 この研究デザインは何か。 (前向き)コホート研究、要因対照研究 6 (2)2×2表 高脂肪摂 取群 低脂肪摂 取群 前立腺癌 発症あり 前立腺癌 発症なし 計 10 90 100 5 95 100 7 2群間で何を比較するか 前立腺癌 発症あり 高脂肪摂 取群 低脂肪摂 取群 前立腺癌 前立腺癌累 発症なし 積罹患率 10 90 10% 5 95 5% 8 高脂肪食の前立腺癌発症に対する相対危険 度 RR 前立腺癌 発症あり 高脂肪摂 取群 低脂肪摂 取群 RR = 前立腺癌 前立腺癌累 発症なし 積罹患率 10 90 10% Ie 5 95 5% Ic Ie 10 = =2 Ic 5 9 高脂肪食の前立腺癌発症に対する寄与危険 度 AR 前立腺癌 発症あり 高脂肪摂 取群 低脂肪摂 取群 前立腺癌 前立腺癌発 発症なし 生率 10 90 10% Ie 5 95 5% Ic RR = Ie – Ic = 10%-5% = 5% 10 高脂肪食の前立腺癌発症に対する人口寄与 危険割合 PARP f(RR-1) PARP = f(RR-1)+1 高脂肪食摂取者は 日本人男性の25% RR=2 0.25(2-1) = 0.25(2-1)+1 = 20% 日本人の前立腺癌の内、20% が高脂肪食摂取によるものと推 定される。 11 問題3 悪性新生物に対する新薬のランダム化割付比較 試験が行われた。新薬投与群100人中15人が再発し た。対照薬群100人中20人が再発した。 新薬の効果を評価しなさい。 再発 再発率 あり なし 新薬群 15 85 15/100 Ia=0.15 対照群 20 80 20/100 Ip=0.20 12 新薬の再発に対する相対リスク(RR) 再発 再発率 あり なし 新薬群 15 85 0.15 対照群 20 80 0.20 相対リスク=0.15/0.20=0.75 意味:再発の可能性が新薬投与群では 1 3 対照群の75%になる 13 新薬の再発に対する相対リスク減少(RRR) 再発 再発率 あり なし 新薬群 15 85 0.15 対照群 20 80 0.20 相対リスク減少=100-RR=100-75=25 意味:再発の可能性が治療群では 対照群から25%低下する 14 新薬の再発に対する絶対リスク減少(ARR) 再発 再発率 あり なし 新薬群 15 85 0.15 対照群 20 80 0.20 絶対リスク減少=0.20-0.15=0.05 意味:再発の確率が治療群では0.05 低下する 15 新薬の再発に対する治療必要数(NNT) 再発 再発率 あり なし 新薬群 15 85 0.15 対照群 20 80 0.20 治療必要数=1/0.05=20 意味:20人を治療することで1人 の再発を防げる 16
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