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本展では抱一画風を習得する門弟時代、躍動感溢れる作風を次々と手掛けた壮年期、 しゅいつ 息子・守一に家督を譲った晩年と、其一の生涯と画風の変遷を丁寧に追います。 また其一は多くの弟子を育成して江戸琳派の存続に大きく貢献しており、近代まで 続くその系譜も辿ります。まさに「江戸琳派の旗手」として目覚ましい活躍をみせた 其一。広く知られた其一の名品や新出作品など、国内外からかつてない規模で作品 が一堂に揃うこの展覧会は、江戸の画壇を豊かに彩った其一画の魅力とその展開を、 存分に堪能していただける貴重な機会となります。 《 展示構成 序章 胎動 》 ~江戸琳派の始まり~ 俵屋宗達、尾形光琳らが中心となり京都で隆盛した琳派。光琳の活躍から約 100年後、江戸の地で琳派の再興を図ったのが酒井抱一です。 抱一は大名家の名門・姫路酒井家の次男として江戸に誕生。のちに出家して酒井家 を離れ、後半生を画家として過ごします。抱一は京都の琳派様式からさらに写実的 で洗練された画風を描くようになり、のちに「江戸琳派」と呼ばれる作風を確立 しました。 序章では、其一の師・抱一の優美な作品をご紹介するとともに、抱一の最初の れいたん 弟子で其一とも関係の深い、酒井家家臣の鈴木蠣潭にも光を当て、其一画が育まれた 土壌を探ります。 【おもな出品作品】 さくら しょうきん ず 桜 に 小 禽図 まき あきくさ ず びょう ぶ 槇に秋草図 屛 風 酒井抱一 江戸時代 19 世紀 細見美術館 酒井抱一 江戸時代 19 世紀 細見美術館 2 第1章 誕生 ~抱一門下の秀才~ 其一は寛政8年(1796) 、江戸中橋の紫染め職人の家に誕生したと通説では 言われています。文化10年(1813) 、数え年18歳で抱一に入門。4年後に 兄弟子で酒井家家臣の鈴木蠣潭の急死を受け、養子に入り鈴木家の家督を継ぎ ました。 う げ あん 当時、抱一の隠居所「雨華庵」には画塾として多くの弟子が集っていましたが、 其一は早くから師・抱一の厚い信頼を得、重要な仕事を任されることも多かった ようです。師弟の合作もたびたび行なわれ、まさしく一番弟子として最も抱一に 近い存在でした。 第1章では、其一が抱一に師事した文化10年から文政年間末期(1813~ 29)頃までの作品を展示します。これらの初期作品からは、抱一譲りの伸びやか で美しい花鳥図はもとより、のちに大きく開花する大胆で力強い作風の萌芽、また 其一がすでに幅広い画題を手掛けていたことなどがうかがわれます。抱一に出会い、 こまやかな師弟関係を築いたことが、其一の画業展開にとり大きな足掛かりとなった のです。 【おもな出品作品】 ぐんかく ず びょう ぶ 群鶴図 屛 風 ふみ よ ゆうじょ ず 文読む遊女図 ちょう しゃくやく ず 蝶 に 芍 薬図 第2章 躍動 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 ファインバーグ・コレクション 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 細見美術館 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 板橋区立美術館 ~其一様式の確立~ 風神雷神図襖 東京富士美術館 鈴木其一筆 八面 江戸時代 19 世紀 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom 夏秋渓流図屛風 鈴木其一筆 六曲一双 根津美術館 3 江戸時代 19 世紀 水辺家鴨図屛風 鈴木其一筆 六曲一隻 江戸時代 19 世紀 細見美術館 文政11年(1828) 、33歳の時に師の抱一が没し、其一は大きな転機を迎え ます。 おう ほ 抱一の正式な後継者は、抱一の養子で雨華庵を継いだ酒井鶯 蒲 (1808~ 1841)でした。其一は12歳年下の鶯蒲を支えつつ、次第に抱一画風を離れ、 独自の作風を展開していきます。その傾向は30代半ばから40代半ば頃まで、 かいかい 「噲々」という号を好んで署名や落款に使った時期に顕著に見出すことができます。 この時期に其一はさまざまな試みを行ないました。その中でもきわめて躍動感に 溢れるのが、宗達や光琳の作風を意識しながら大胆にアレンジした作品です。とくに ふうじんらいじん ず ふすま 「風神雷神図 襖 」 (東京富士美術館)は、宗達以来、琳派の主要な画家が描き継いだ 画題を襖8面という大画面に再構成したもので、二神の周りを取り巻く墨のにじみ を生かした暗雲が妖しい雰囲気を醸し出しています。 なつあきけいりゅう ず びょう ぶ 「夏秋渓 流 図 屛 風」 (根津美術館)は「噲々」時代を通じて最も豪奢で強烈な 印象を残す代表作品の一つです。檜の樹林も琳派がよく手掛けた主題ですが、其一は きらびやかな金箔地に、無数に増殖するかのような緑の苔や目にも鮮やかな青い かつしかほくさい うたがわくによし 水流を取り合わせ、同時代の葛飾北斎や歌川国芳の作品とも響き合う独創的な絵画 空間を描き出しました。 このように、琳派の伝統的な画題や技法を自在に操り、幕末の時代性とも親和 しながら、明快で鮮烈な作品に意欲的に取り組んだ其一は、もはや抱一の画風に 囚われることなく、新たに其一様式を確立したといえるでしょう。 【おもな出品作品】 ふうじんらいじん ず ふすま 風神雷神図 襖 なつあきけいりゅう ず びょう ぶ 夏秋渓 流 図 屛 風 はぎつき ず ふすま 萩月図 襖 みず べ あひ る ず びょう ぶ 水辺家鴨図 屛 風 すすき の ず びょう ぶ 芒 野図 屛 風 まつしま ず こ ぶすま 松島図小 襖 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 東京富士美術館 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 根津美術館 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 東京富士美術館 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 細見美術館 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 千葉市美術館 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 ファインバーグ・コレクション 4 第3章 挑戦 ~絢爛たる軌跡~ 藤花図 鈴木其一筆 一幅 江戸時代 19 世紀 細見美術館 其一は40代の後半には家督を長男の守一(1823~1889)に譲り、この頃 せいせい からさらに多様な作風へ挑戦し続けていきます。 「菁々」と号した晩年の約15年間、 その筆勢は留まることがありませんでした。 あさがお ず びょう ぶ 「朝顔図 屛 風」 (メトロポリタン美術館)をはじめとして、鮮麗な色彩で見る者 りん ご ず を圧倒する作品を次々と手掛ける一方、 「林檎図」 (愛知県美術館/木村定三コレク ション)のように、写実性の追求にも挑んでいます。 か き つ ば た ず びょう ぶ とくに「朝顔図屛風」は、かの有名な光琳の「燕子花図 屛 風」と同様の色彩構成を 取りながら、其一の色彩や造形に対する鋭敏な感覚が明瞭に発揮された大画面作品 とう か ず ほお お ながどり ず といえます。また「藤花図」や「朴に尾長鳥図」 (ともに細見美術館)などの諸作品 は、琳派風ながら透徹とした写実性も兼ね備え、清新なその作風は近代日本画を 予見するかのようです。 かきびょうそう そのほか其一には、描 表 装(表装まで絵画化した一種のだまし絵)を用いた なつよいづき くい な ず 「夏宵月に水鶏図」 (個人蔵)のように、虚実がない交ぜになる錯覚を企図した洒脱 な作品がしばしば見受けられます。また、能が式楽として広く行き渡った時代を 反映するとともに、能に造詣の深かった光琳を慕ってか、能や謡曲に取材した作品 に優品が多いことも特筆されます。さらに、きわめて精緻に描き込まれた仏画も 手掛けるなど、縦横無尽にその手腕を発揮しました。 安政5年(1858)9月10日、其一は63歳で生涯の幕を閉じます。大名家 や豪商に愛され、思いのままに筆を揮った晩年。幕末に向かう動乱の江戸で、其一 の活躍は最後まで絢爛な軌跡を描き、人々を魅了し続けました。 5 【おもな出品作品】 あさがお ず びょう ぶ 朝顔図 屛 風 りん ご ず とう か ず ほお お ながどり ず 林檎図 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 メトロポリタン美術館 愛知県美術館/木村定三コレクション 藤花図 朴に尾長鳥図 なつよいづき くい な ず 夏宵月に水鶏図 し き か い ず かん 四季歌意図巻 第4章 継承 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 細見美術館 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 細見美術館 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 個人蔵 鈴木其一 江戸時代 19 世紀 細見美術館 ~其一派と江戸琳派の展開~ 其一は多くの抱一門弟と競い合い、江戸琳派を盛りたてました。また其一自身も 弟子の育成に力を注ぎ、江戸琳派の中でも「其一派」というべき最大勢力を築き 上げます。江戸琳派は明治維新後も存続しますが、その継承には其一派の存在が 大きく寄与していました。 抱一や其一の作品は、夏目漱石の小説にもたびたび取り上げられるなど、すでに 明治期より江戸の美意識を色濃く伝えるものとして高い評価を得ていました。江戸 琳派の後継者たちはその残影を伝えるべく、近代社会にふさわしい変容を遂げながら 昭和中期まで命脈を保ったのです。 第4章では其一を取り巻く抱一門下のほかの画家や、其一派の作品を取り上げ、 近代以降の江戸琳派の展開を辿ります。 【おもな出品作品】 かえでさくらもみ じ ず 楓 桜 紅葉図 鈴木守一 江戸~明治時代 19 世紀 細見美術館 【本展における展覧会関連プログラム】 ◎記念講演会「鈴木其一 ブレイク!江戸琳派」 講 師:岡野智子 氏(細見美術館 上席研究員) 日 時:10月16日(日)14時~15時30分 会 場:6階ホール 定員:100名 聴 講 料:700円(別途要入館料) 6 対象:一般 応募締切:9月25日(日) 「鈴木其一 ▼会 江戸琳派の旗手」展 開催 期:2016年9月10日(土)~10月30日(日) ※作品保護のため、会期中展示替を行ないます ▼主 催:サントリー美術館、読売新聞社 ▼協 賛:三井不動産、光村印刷、サントリーホールディングス ▼会 場:サントリー美術館 港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階 <最寄り駅> 都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結 東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結 東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩約3分 【基本情報】 ▼開館時間:10時~18時 ※金・土、および9月18日(日)、9月21日(水)、10月9日(日)は20時 まで開館 ※いずれも入館は閉館の30分前まで ※shop×cafeは会期中無休 ▼休 館 日:火曜日 ▼入 館 料:一般1,300円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料 ※20名様以上の団体は100円割引 ▼前 売:一般1,100円、大学・高校生800円 サントリー美術館、 チケットぴあ、 ローソンチケット、 セブンチケット、 イープラスにて取扱(各種プレイガイドは一般のみ販売) ※前売券の販売は6月29日(水)から9月9日(金)まで ※サントリー美術館受付での販売は6月29日(水)から8月28日(日)まで ▼割 引: ■きもの割:きものでのご来館で100円割引 ■HP割:ホームページ限定割引券提示で100円割引 ■携帯割:携帯サイトの割引券画面提示で100円割引 ■あとろ割:国立新美術館、森美術館の企画展チケット提示で100円割引 ※割引の併用はできません ▼点茶席(お抹茶と季節のお菓子) 1日限定50名(当日先着順) 1,000円(別途要入館料) 6階茶室「玄鳥庵」にて 日 時:9月15日(木)、22日(木・祝)、29日(木)、 10月13日(木) 、27日(木) 11時30分~17時30分(入室は17時まで) 13時、14時、15時にはお点前があります。 ※点茶券は当日10時より3階受付にて販売(予約不可、お一人様2枚まで) 7 ▼一般お問い合わせ:03-3479-8600 ▼ホームページ: http://suntory.jp/SMA/ ▽次回展覧会 「小田野直武と秋田蘭画」 (仮称) 2016年11月16日(水)~2017年1月9日(月・祝) ▽プレスからのお問い合わせ:〔学芸〕石田、 〔広報〕羽鳥、北口 TEL:03-3479-8604 FAX:03-3479-8644 メールでのお問い合わせ、及びプレス用画像ダウンロードのお申し込み: 4月7日(木)から http://www.suntory.co.jp/sma/info_press/ 以 8 上
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