試験研究は今No.805「石狩湾のシャコ調査と漁獲状況について」

試験研究は今 No.805
石狩湾のシャコ調査と漁獲状況について
・はじめに
石狩湾のシャコの漁獲量は増減を繰り返しながら推移し、平成 26 年は 166 トンに増加してい
ます(図 1)。中央水産試験場では毎年シャコの漁獲物測定調査を行っています。これまでの調
査結果に基づいて現在の石狩湾のシャコの状況について紹介したいと思います。
石狩湾のシャコの生態と漁業については「試験研究は今」601 号(三原行雄:石狩湾のシャコ
のおはなし)に詳しくまとめられています。その概要を紹介しますと、シャコは砂~泥場の海底
に巣穴を掘って生活し、6~7 月に産卵します。卵は 7 月下旬~9 月下旬にふ化し、浮遊生活の
後に海底生活に移行します。石狩湾では北側の厚田沖に着底するシャコが多く、成長しながら南
下していくと考えられています。漁業は刺し網で行われ、小樽市~石狩市の沿岸域が漁場となっ
ています。漁期は産卵前の 5~6 月に行われる春漁と、産卵と脱皮が終わった後の 10~11 月に
行われる秋漁の二漁期に分かれます。
・調査結果
漁獲物の測定調査では、春漁(石狩市厚田地区)と秋漁(小樽市高島地区)で漁獲されたシャ
コを対象に頭胸甲長(以下、甲長。図 2)を測定しています。
その測定データを見ると(図 3)、大型の漁獲物では雄が多くなることが分かります。また漁
獲物の大きさは年によって異なりますが、図 1 の漁獲量のグラフと比較してみると、平成 19 年
に甲長 30mm に満たない小型シャコが獲れ、それ以降の年で漁獲量が増加しています。平成 25
年にも石狩市厚田地区の小型シャコが増加した後、平成 26 年にかけて漁獲量が増加していま
す。
シャコは他のエビ・カニ類同様、鱗や耳石のような年齢を調べる方法が確立されていないので
はっきり分かりませんが、本州の知見を踏まえると甲長 20mm 台前半の 2 歳で小型のシャコと
して漁獲され始め、その豊度が大きいときに、その後数年間の漁獲が増加している可能性が見え
てきました。中央水産試験場では今後も毎年、小型シャコの漁獲状況を注目していくことが資源
動向の把握には重要と考えています。
350
春漁 :1~8月の漁獲量
秋漁 :9~12月の漁獲量
漁獲量(
トン)
300
250
年計の漁獲量(昭和62年以前)
200
150
100
50
図 2 シャコの甲長(頭胸甲長)
年
図 1 石狩湾海域におけるシャコの漁獲量の推移
平 25
平 20
平 15
平 10
平 5
平 元
昭 60
昭 55
昭 50
昭 45
昭 40
0
・さいごに
シャコの年齢を調べる研究も行われてきましたが石狩湾では決定打となっていません。また資
源量がどのくらいあるのか、適切な漁獲圧はどのくらいなのか評価が難しいのが現状です。一
方、石狩湾の沿岸漁業では主要水産物の資源水準の低下や魚価の低迷の中、シャコは貴重な収入
源として重要性が増しています。不明なことが多いだけに、例えば産卵期前の春漁では漁獲規模
(漁期や網数)の無秩序な拡大を自制する意識を高めるなど、上記のような漁獲物の動向を注意
深くモニタリングしながら、今後もシャコ資源を大事に利用していくことが必要です。
(中央水産試験場 資源管理部 本間隆之)
雌
雄
平成19年
20%
10%
0%
10%
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成20年
20%
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成21年
18
20 22 24
平成22年
26
28
30
32
34
36
38
雌
雄
40
割
18
20 22 24
平成23年
26
28
30
32
34
36
38
合
雌
雄
40
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成21年
0%
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成22年
0%
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成23年
10%
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成24年
20%
0%
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成24年
20%
10%
10%
18
20%
20 22 24
平成25年
26
28
30
32
34
36
38
雌
雄
40
0%
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成25年
20%
10%
10%
18
20%
20 22 24
平成26年
26
28
30
32
34
36
38
雌
雄
40
0%
18
20
22
24
26
28
30
32
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38
40
雌
雄
平成26年
20%
10%
10%
18
20%
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成27年
0%
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
雌
雄
平成27年
20%
10%
0%
18
20%
10%
0%
24
10%
20%
0%
0%
20%
10%
0%
22
10%
20%
0%
20
平成20年
20%
10%
0%
18
10%
20%
0%
0%
20%
10%
0%
雌
雄
平成19年
20%
10%
18
20
22
24
26
28
30
32
甲長(mm)
34
36
38
40
0%
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
甲長(mm)
図 3 平 成 19~ 27 年 の シ ャ コ の 甲 長 組 成 の 推 移
石 狩 市 厚 田 地 区 の 春 漁 (5~ 6 月 左 ) と 小 樽 市 高 島 地 区 の 秋 漁 (11 月 右 )
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