T P P - 旬刊経理情報

特集 経理財務部門が成功の鍵を握る
複数の軸による適用シミュレーションを
個々の国や地域間で協定が結ばれる
FTAの交渉活動に拍車をかけた。
FTAの意義は、これまで「国」単
位で独立して行われていた経済活動
を国という枠組みを外して1つの経
済的領域のなかでの活動とみなすこ
とにある。具体的には、関税等の障
壁をなくすことで、領域内での交易
を活発化させることを意図してい
本章では、TPPをはじめとする
と進め方、また、それらの改革を推
ル・サプライチェーン改革の必要性
に お け る E F T A( 欧 州 自 由 貿 易 連
在する。代表的なものとして、欧州
る。世界にはさまざまなFTAが存
FTAの国際的潮流と日本の状況に
合 )、 東 南 ア ジ ア に お け る A F T A
吉永 和弘
㈱クニエ
TPP/FTAを活用した
サプライチェーン見直し
はじめに
進するにあたっての経理財務部門の
が、それらの関係は図表1のように
携 協 定 )な い し F T A の 1 つ で あ る
な お、 T P P は、 E P A( 経 済 連
が締結されることも多い。
国と国、国と地域間で単独でFTA
などが挙げられるが、これ以外でも
けるNAFTA
(北米自由貿易協定)
日 本 に お い て も、 2 0 1 5 年 3 月
のFTAが発行済または
署 名 済 で あ り、 交 渉 中( 交 渉 完 了・
時点で、
限ったことでない限り、一律にFT
未 署 名 含 む )の 8 つ の F T A も 含 め
のFTAが存在している。実
自由貿易を世界全体に広げる多角的
当 初、 W T O( 世 界 貿 易 機 関 )は、
はなく、日本も参加しているRCE
いる(図表2を参照)。TPPだけで
2015年
月 に、 A E C
(アセア
2 0 1 6 年 3 月 現 在 交 渉 中 で あ り、
P(東アジア地域包括的経済連携)
が
月にそれ
を断念する発表をした。そのことが、
していたが、2011年
貿易交渉(ドーハ・ラウンド)を提唱
になって急激にFTAが推進されて
て遅れているといわれており、近年
は、日本のFTA戦略は他国に比べ
ると
Aとして記載することにする。
と 捉 え、 記 載 内 容 が 特 に T P P に
区別せず、かつTPPも両者の一種
なる。以下では、EPAとFTAは
(アセアン自由貿易協定)、北米にお
ついて解説するとともに、個々の企
1つの種類
役割について記載する。
161の国と地域が加盟している
(2016年3月時点)
機関であり、いずれの国に
対しても同一の貿易条件を適用すること等、
貿易の原則を定めている。
業における対応策としてのグローバ
WTO
(World Trade Organization:世界貿易機関)
加盟国全体で適用
日 本、 米 国 を 中 心 と す る TPP
月にニュージーラン
( 環 太 平 洋パー ト ナ ー シップ )協 定
が、2016年
ドのオークランドにて署名された。 日
本は、アベノミクスの政策の一環として
2013年7月に正式に参加表明した
が、2年以上 を 経てようやく 妥 結に
至ったことになる。 今後は引き続き各
EPA
(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)
貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策における
ルール作り、さまざまな分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強
化を目的とする協定。
FTA
(Free Trade Agreement:自由貿易協定)
特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃
することを目的とする協定。
TPP
(Trans-Pacific Partnership:環太平洋戦略的経済連携協定)
環太平洋地域の国または地域間における経済の自由化を目的とした多角的
な経済連携協定。
FTAの世界的潮
流とTPP
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国と連携して協定の早期発効が目指
され、5年 程 度 を 目 途に段 階 的に関
税が撤廃されることになる。
日本はTPP加盟だけでなく大幅な
FTA
(自由貿易協定)拡大を目指し
ており、それに伴 う 関 税の撤 廃 ない
し削 減は、グローバルにビジネスを 展
開している日本 企 業がサプライチェー
ンの見 直しを 検 討 するう えで無 視で
特定の国・地域間で適用
実質的差異なし
経理情報●2016.4.10(No.1443)
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きない重要な外部環境の変化となる。
(図表1) TPPとEPA/FTAの関係
第Ⅱ章
グローバル・サプライチェーン見直しへの処方箋