第7章 高等学校における基礎的・汎用的能力と生徒の学習意欲

第7章
高等学校における基礎的・汎用的能力と生徒の学習意欲
1 .「 基 礎 的 ・ 汎 用 的 能 力 」 と 「 学 習 意 欲 」 の 関 係 を 見 る 必 要 性
キャリア教育に求められている課題の一つは,学校から社会・職業への円滑な移行であ
り,具体的には無業者や早期離職等の状況改善である。また,個人に対する実践上の課題
は,社会的・職業的自立に必要な基盤となる能力の個人レベルでの育成である。この基盤
能 力 は ,各 種 の 調 査 報 告 書・審 議 会 答 申 で 例 示 さ れ て い る ( 注 1 ) 。例 え ば ,社 会 的・職 業 的
自立と社会・職業への円滑な移行に必要な力の要素として,「基礎的・汎用的能力」が挙
げられている(注2)。
そして,近年はこれらの課題に加えて,キャリア教育は「学習意欲の向上」及び「学習
習慣の確立」に寄与するものとして政策的にも期待されている(注3)。
こ う し た 観 点 に 立 ち ,近 年 の 幾 つ か の 調 査 研 究 に お い て も ,キ ャ リ ア 教 育 と「 学 習 意 欲 」
の関連について分析がなされている。例えば,国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研
究センターは学校並びに教員を対象とした調査結果から,充実した計画に基づいてキャリ
ア 教 育 を 実 践 し て い る 学 校 ほ ど「 学 習 意 欲 」が 向 上 す る 傾 向 が あ る こ と を 示 し て い る( 注 4 )。
しかしながら,学習意欲を抱く主体である生徒を対象にした調査を分析した結果に基づい
たものではなく,生徒に直接回答を求めたデータでも同様の結果が得られるのか,分析が
待たれている。
そこで,本章においては「高等学校普通科におけるキャリア教育の実践と生徒の変容の
相関関係に関する調査研究」
(以下,
「 変 容 調 査 」)の う ち ,生 徒 調 査 デ ー タ を 用 い て ,キ ャ
リア教育を通じて育成が目指されている「基礎的・汎用的能力」と「学習意欲」の関連に
つ い て 分 析 を 行 う ( 注 5 )。
2 .「 学 習 意 欲 」 に 関 す る 調 査 項 目
「 変 容 調 査 」で は ,高 校 生 の「 学 習 意 欲 」に 関 す る 項 目 と し て ,
「 意 欲・態 度 」
「学ぶこと
に つ い て の 意 識 ・ 意 味 付 け 」 に つ い て の 質 問 が あ る 。 例 え ば ,「 授 業 を 熱 心 に 受 け て い る 」
「 家 で の 学 習 に 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」「 こ れ か ら も っ と た く さ ん の こ と を 学 び た い と
思 う 」 な ど が あ る 。 こ う し た 質 問 項 目 に 対 し て 四 つ の 選 択 肢 (「 あ て は ま る 」「 や や あ て は
まる」
「あまりあてはまらない「
」 あ て は ま ら な い 」)の 中 か ら 生 徒 が 回 答 す る 形 式 で あ っ た 。
こうした質問項目の中で,
「 家 で の 学 習 に 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」に つ い て 見 る と ,
「あ
てはまる」
「 や や あ て は ま る 」と 肯 定 的 に 回 答 す る 割 合 が ,他 項 目 に 比 較 し て 最 も 低 い こ と
が 示 さ れ て い る ( 図 1 ・ 図 2 )。 と り わ け , 2 年 生 前 半 の 時 期 の 肯 定 的 回 答 率 が 最 も 低 く ,
「 あ て は ま る 」が 8.5%,
「 や や あ て は ま る 」が 34.7%で あ っ た 。こ の 2 年 生 前 半 の 時 期 は ,
い わ ゆ る「 中 だ る み 」と 一 般 的 に 言 わ れ る 時 期 で あ り ,
「家での学習に積極的に取り組んで
い る 」生 徒 は 半 数 以 下 で あ る こ と か ら ,
「 学 習 意 欲 」が 行 動 に 表 れ て い な い 時 期 と 考 え ら れ
る。
50
図1「意欲・態度」に関する設問の集計結果
( 出 典 :『 変 容 調 査 報 告 書 』 9 ペ ー ジ )
図2「学ぶことについての意識・意味付け」に関する設問の集計結果
( 出 典 :『 変 容 調 査 報 告 書 』 10 ペ ー ジ )
3 .「 基 礎 的 ・ 汎 用 的 能 力 」 の 自 己 評 価 と 「 学 習 意 欲 」 の 行 動 側 面 の 関 連
次に,キャリア教育を通じて育成が目指されている「基礎的・汎用的能力」と「学習意
欲 」の 関 連 に つ い て 検 討 し た と こ ろ ,
「 基 礎 的・汎 用 的 能 力 」の 自 己 評 価 が よ り 高 い 群 ほ ど ,
「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」 こ と が わ か っ た ( 図 3 ~ 図 6 )( 注 6 )。
具 体 的 に は ,次 の 手 順 で 結 果 を 得 た 。
「 基 礎 的・汎 用 的 能 力 」に つ い て は 四 つ の 下 位 領 域
( ①「 人 間 関 係 形 成・社 会 形 成 能 力 」,②「 自 己 理 解・自 己 管 理 能 力 」,③「 課 題 対 応 能 力 」,
④ 「 キ ャ リ ア プ ラ ン ニ ン グ 能 力 」) が あ る と 言 わ れ て い る ( 注 7 )。 今 回 の 分 析 に 用 い た 「 変
容 調 査 」で は ,こ の 四 つ の 領 域 に つ き 6 項 目 ず つ 計 24 項 目 に つ い て ,生 徒 が 4 段 階 で 自 己
評 価 す る 形 式 で 回 答 を 得 て い る(「 あ て は ま る 」
「ややあてはまる」
「あまりあてはまらない」
「 あ て は ま ら な い 」)。
本 章 の 分 析 で は ,四 つ の 各 領 域 自 己 評 価 得 点 の 合 計 点( 24 点 満 点 )を 基 に し て ,当 該 能
力 の 自 己 評 価 「 低 群 」「 中 群 」「 高 群 」 の 3 群 に 分 類 し た 。 な お , こ の 3 群 の 人 数 は , ほ ぼ
51
均等になるように分けた。そして,この三つの群の間に「学習意欲」に差異が見られるの
か に つ い て ク ロ ス 集 計 を 行 っ た ( 図 3 ~ 図 6 )。 こ こ で の 「 学 習 意 欲 」 に は ,「 家 で の 学 習
を積極的に取り組んでいる」という学習行動側面についての質問項目を用いた。分析の結
果,
「 基 礎 的・汎 用 的 能 力 」の 四 つ の 下 位 領 域 全 て に お い て ,自 己 評 価 が「 よ り 高 い 群 」
(低
群 よ り 中 群 ,中 群 よ り 高 群 )ほ ど ,
「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」と い う 項 目 に
「 あ て は ま る 」「 や や あ て は ま る 」 と 肯 定 的 に 答 え る 傾 向 が あ っ た 。
各 能 力 別 に 見 る と ,「 人 間 関 係 形 成 ・ 社 会 形 成 能 力 」( 図 3 ) に お い て は , 1 年 生 前 半 ~
3 年 生 後 半 で「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」こ と へ の 肯 定 的 回 答(「 あ て は ま る 」
と 「 や や あ て は ま る 」 の 合 計 ) の 割 合 に 約 20~ 28 ポ イ ン ト の 違 い が 見 ら れ た 。 次 に ,「 自
己 理 解・自 己 管 理 能 力 」
( 図 4 )に お い て は ,1 年 生 前 半 ~ 3 年 生 後 半 で「 家 で の 学 習 を 積
極 的 に 取 り 組 ん で い る 」 こ と へ の 肯 定 的 回 答 の 割 合 に 27~ 39 ポ イ ン ト の 違 い が 見 ら れ た 。
「課題対応能力」
( 図 5 )に お い て は ,1 年 生 前 半 ~ 3 年 生 後 半 で「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に
取 り 組 ん で い る 」 こ と へ の 肯 定 的 回 答 の 割 合 に 21~ 37 ポ イ ン ト の 違 い が 見 ら れ た 。「 キ ャ
リアプランニング能力」
( 図 6 )に お い て は ,1 年 生 前 半 ~ 3 年 生 後 半 で「 家 で の 学 習 を 積
極 的 に 取 り 組 ん で い る 」 こ と へ の 肯 定 的 回 答 の 割 合 に 23~ 38 ポ イ ン ト の 違 い が 見 ら れ た 。
ま た ,2 年 生 前 半 の 時 期 が 最 も「 学 習 意 欲 」が 低 下 す る 時 期( 第 7 章 2 節( 図 1 )参 照 )
で あ っ た こ と を 踏 ま え て ,こ の 時 期 に お け る「 あ て は ま る 」の 割 合 に 着 目 す る と ,
「人間関
係 形 成・ 社 会 形 成 能 力 」( 図 3 )で は 高 群 が 18.6%,低 群 が 2.6%で あ っ た 。「 自 己 理 解 ・自
己管理能力」
( 図 4 )で は 高 群 が 21.6%,低 群 が 2.0%で あ っ た 。
「課題対応能力」
( 図 5 )で
は 高 群 が 21.1%,低 群 が 2.1%で あ っ た 。「 キ ャ リ ア プ ラ ン ニ ン グ 能 力 」( 図 6 )で は 高 群 が
20.1%, 低 群 が 2.3%で あ っ た 。 こ の よ う に 2 年 生 前 半 に お い て は ,「 基 礎 的 ・ 汎 用 的 能 力 」
に 対 す る 自 己 評 価 が 高 い 生 徒 は 低 い 生 徒 よ り も 8~ 10 倍 程 度 「 あ て は ま る 」 と 答 え る 傾 向
にあった。
この結果から,
「 基 礎 的・汎 用 的 能 力 」に 対 す る 自 己 評 価 が 高 い 生 徒 ほ ど ,学 習 意 欲 が 高
い (「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」) こ と が 指 摘 で き る 。
52
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
26.9%
60.0%
38.5%
50.0%
44.2%
40.0%
30.0%
44.0%
20.0% 33.2%
10.0%
0.0%
41.6%
39.5%
38.9%
39.3%
37.0%
29.6%
39.6%
44.3%
38.7%
答えた⽣徒の割合
(%)
45.7%
41.1%
51.2%
31.9%
28.3%
33.2%
30.5%
22.8%
19.8%
18.6%
16.9%
12.9%
9.8%
8.6%
6.8%
6.5%
3.7%
3.5%
2.6%
22.2%
10.6%
4.8%
「ややあてはまる」と
「あてはまる」と答え
た⽣徒の割合(%)
低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群
前半
後半
前半
後半
1年⽣
図3
前半
2年⽣
後半
3年⽣
「人間関係形成・社会形成能力」に対する自己評価得点群別の
「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」 割 合 ( %)
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
26.2%
60.0%
「ややあてはまる」と
50.0%
39.8%
45.9%
43.3%
40.0%
30.0%
20.0% 31.5%
10.0%
0.0%
40.6%
47.5%
41.7%
23.8%
24.4%
9.9%
4.1%
50.8%
45.1%
40.6%
21.8%
22.4%
7.0%
2.5%
39.7%
27.9%
21.6%
2.0%5.7%
54.2%
33.0%
12.8%
6.6%
答えた⽣徒の割合
(%)
「あてはまる」と答え
38.0%
37.0%
25.8%
7.8%
3.4%
46.3%
た⽣徒の割合(%)
26.1%
14.7%
低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群
前半
後半
1年⽣
前半
後半
2年⽣
前半
後半
3年⽣
図4「自己理解・自己管理能力」に対する自己評価得点群別の
「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」 割 合 ( %)
53
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
26.9%
60.0%
39.6%
50.0%
45.0%
42.9%
40.0%
30.0%
20.0% 31.0%
10.0%
0.0%
41.5%
26.4%
25.2%
10.0%
4.2%
51.9%
27.9%
21.1%
2.1%5.3%
3.4%
34.2%
25.8%
7.8%
12.2%
6.1%
と答えた⽣徒の割合
「あてはまる」と答
53.4%
35.5%
「ややあてはまる」
(%)
43.6%
45.1%
39.8%
21.8%
20.5%
3.1%5.9%
39.7%
40.5%
46.2%
39.6%
33.9%
えた⽣徒の割合
(%)
15.6%
低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群
前半
後半
前半
1年⽣
後半
前半
2年⽣
後半
3年⽣
図5「課題対応能力」に対する自己評価得点群別の
「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」 割 合 ( %)
90.0%
80.0%
70.0%
28.7%
60.0%
40.1%
50.0%
45.5%
40.0%
30.0%
45.0%
20.0% 32.2%
10.0%
0.0%
43.4%
41.1%
27.0%
23.0%
10.2%
5.0%
3.5%
41.8%
2.3%
50.0%
42.9%
40.9%
22.5%
21.3%
7.2%
42.0%
25.0%
20.1%
6.1%
3.1%
12.9%
6.1%
と答えた⽣徒の割合
「あてはまる」と答
52.7%
35.0%
「ややあてはまる」
(%)
43.2%
35.0%
24.6%
7.0%
39.0%
31.1%
えた⽣徒の割合
(%)
14.8%
低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群 低群 中群 ⾼群
前半
後半
1年⽣
前半
後半
2年⽣
前半
後半
3年⽣
図6「キャリアプランニング能力」に対する自己評価得点群別の
「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」 割 合 ( %)
54
4 .「 基 礎 的 ・ 汎 用 的 能 力 」 の 個 別 項 目 と 「 学 習 意 欲 」 の 関 連
次に,
「 基 礎 的・汎 用 的 能 力 」を 構 成 す る 個 別 の 質 問 項 目 と「 学 習 意 欲 」
(「 家 で の 学 習 を
積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」)と の 相 関 を 求 め た 。結 果 の 詳 細 は ,参 考 資 料( 付 表 7 - 1 )に
示した。
総じて,
「 自 己 理 解・自 己 管 理 能 力 」
「課題対応能力」
「 キ ャ リ ア プ ラ ン ニ ン グ 能 力 」の 中
に ,「 学 習 意 欲 」(「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」) と 比 較 的 強 い 関 連 を 示 す 項 目
が含まれていた。具体的には,以下の項目が「家での学習に積極的に取り組んでいる」と
比較的強い関連があった。
特に「キャリアプランニング能力」に含まれる「勉強をすることの意味について自分な
りの考えを持っている」と「学習意欲」は,学年・時期を追うごとに互いの関連を強めて
いく傾向があった。この結果は,学ぶことに対する「自分なりの意味付け」を生徒自身の
中で深めていくことが,具体的な学習行動(家庭学習)を喚起する可能性を示唆するもの
と考えられる。
「 学 習 意 欲 」(「 家 で の 学 習 に 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」) と 比 較 的 強 い 関 連 の あ っ た 項 目
◆「自己理解・自己管理能力」
‣「 必 要 な と き に は , 苦 手 な こ と に も が ん ば っ て 取 り 組 む よ う に し て い る 」
‣「 や る べ き こ と が わ か っ て い る と き に は , ほ か の 人 か ら 指 示 さ れ る 前 に 取 り 組 む こ と が で き る 」
◆「課題対応能力」
‣「 何 か に 取 り 組 む と き に は , 計 画 を 立 て て 取 り 組 む よ う に し て い る 」
◆「キャリアプランニング能力」
‣「 勉 強 を す る こ と の 意 味 に つ い て 自 分 な り の 考 え を 持 っ て い る 」
‣「 将 来 の 夢 や 目 標 に 向 か っ て 努 力 し て い る 」
5 .「 学 ぶ こ と に つ い て の 意 識 ・ 意 味 付 け 」 の 個 別 項 目 と 「 学 習 意 欲 」 の 関 連
ま た ,「 学 ぶ こ と に つ い て の 意 識 ・ 意 味 付 け 」「 生 活 の 充 実 度 」「 意 欲 ・ 態 度 」「 勤 労 観 ・
職 業 観 」 に 関 す る 個 別 項 目 と ,「 学 習 意 欲 」(「 家 で の 学 習 を 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」) の
相 関 を 求 め た( 詳 細 は 参 考 資 料 付 表 7 - 1 参 照 )。そ の 結 果 ,以 下 の 項 目 が「 家 で の 学 習 に
積極的に取り組んでいる」と比較的強い関連があった。
「 学 習 意 欲 」(「 家 で の 学 習 に 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 」) と 比 較 的 強 い 関 連 の あ っ た 項 目
◆「学ぶことについての意識・意味付け」
‣「 学 校 で た く さ ん の こ と を 学 び た い と 思 う / こ れ か ら も っ と た く さ ん の こ と を 学 び た い と 思 う 」
‣「 学 校 で の 勉 強 は ふ だ ん の 生 活 を 送 る 上 で 役 に 立 つ と 思 う 」
‣「 学 校 で の 勉 強 は 将 来 の 仕 事 の 可 能 性 を 広 げ て く れ る と 思 う 」
‣「 学 校 で の 勉 強 は 将 来 の 生 活 を 豊 か に す る と 思 う 」
◆「意欲・態度」
‣「 授 業 を 熱 心 に 受 け て い る 」
55
上記の「学ぶことについての意識・意味付け」の項目は,質問文の内容を考慮すると,
「 学 校 で の 学 習 の 有 用 性 」を 尋 ね て い る 質 問 と 読 み 取 る こ と が で き る 。こ の 結 果 か ら ,
「ふ
だ ん の 生 活・将 来 の 仕 事・将 来 の 生 活 」と い っ た 様 々 な 場 面 に お い て ,
「学校での学習の有
用 性 」が あ る と 思 う ほ ど ,積 極 的 な 学 習 行 動( 家 庭 学 習 )を 取 る 傾 向 が あ る と 考 え ら れ る 。
また,上記の結果から「学校でたくさんのことを学びたいと思う/これからもっとたく
さ ん の こ と を 学 び た い と 思 う 」 と い う 「 学 び へ の 志 向 性 」 を 有 す る ほ ど ,「 家 庭 学 習 場 面 」
において積極的に学習を行う可能性が示唆された。
6.まとめと今後の方向性
キャリア教育を通じて育成が期待されている「基礎的・汎用的能力」と「学習意欲」の
関 係 に つ い て ,各 学 年 段 階 で の「 基 礎 的・汎 用 的 能 力 」の 状 態 と「 学 習 意 欲 」
(家庭学習行
動)の関連を検討した結果,両者の間に関連が見いだせた。
このことは,これまでも「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」の「学校
調査」及び「学級担任調査」による分析結果に基づく,キャリア教育実践と学習意欲の関
連 に 関 す る 報 告 と 整 合 的 な 結 果 で あ る ( 注 8 )。本 分 析 で は「 生 徒 調 査 」か ら も「 基 礎 的・汎
用的能力」の育成と「学習意欲」向上の関連の可能性が示唆された。
今後は,具体的にどのようなキャリア教育実践が基礎的・汎用的能力を育成し,かつ,
それらと連関しつつ学習意欲が高まっていくのかという統合的枠組みの観点から検討する
ことが必要である。
(注1)
国 立 教 育 政 策 研 究 所 2002『 職 業 観・勤 労 観 を 育 む 学 習 プ ロ グ ラ ム の 枠 組 み( 例 )』。
(注2)
中 央 教 育 審 議 会 2011「 今 後 の 学 校 に お け る キ ャ リ ア 教 育・職 業 教 育 の 在 り 方 に
つ い て 」。
(注3)
中 央 教 育 審 議 会 2008「 幼 稚 園 ,小 学 校 ,中 学 校 ,高 等 学 校 及 び 特 別 支 援 学 校 の
学習指導要領等の改善について」。
(注4)
国 立 教 育 政 策 研 究 所 生 徒 指 導 ・ 進 路 指 導 研 究 セ ン タ ー 2013『 キ ャ リ ア 教 育 ・ 進
路指導に関する総合的実態調査 第二次報告書』。
(注5)
本章では,
「 基 礎 的・汎 用 的 能 力 」の 上 昇 が で き る よ う に な る こ と を 増 や し ,そ
の結果,更なる能力の伸びに対して肯定的になるからこそ,学習意欲が向上す
るという仮定の下,分析を進めている。
(注6)
図3~図6は全て統計的検定を行っている。その詳細については,参考資料欄
を参照のこと。
(注7)
中 央 教 育 審 議 会 2011「 今 後 の 学 校 に お け る キ ャ リ ア 教 育・職 業 教 育 の 在 り 方 に
つ い て 」。
(注8)
国 立 教 育 政 策 研 究 所 生 徒 指 導 ・ 進 路 指 導 研 究 セ ン タ ー 2013『 キ ャ リ ア 教 育 ・ 進
路指導に関する総合的実態調査 第二次報告書』。
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