2016年3月28日 投資情報室 J-REITレポート 東証REIT指数 1,900ポイント台回復 東証REIT指数が約11ヵ月ぶりに1,900ポイント台を回復 3月22日、東証REIT指数が昨年4月17日以来、約11ヵ月ぶりに1,900ポイント台を回復しました。国内株式市 場が上昇したことに加え、主に以下の点が影響したものと思われます。 ① 同日発表された2016年の公示地価(注1)で地価の回復が続いていることが確認されたこと。 ② 不動産投資市場の活性化策を検討している国土交通省の有識者会議が同日、市場規模の拡大目標等 を発表したこと。(首都圏を中心に一部では不動産バブルが発生しているとの指摘もあり、規制措置が取 られるとの見方もありました。今回の発表では、不動産市場の活性化が引き続き「国策」として位置付け られており、不動産市況に悪影響を及ぼすような対応は当面回避されるとの観測を強めさせた可能性が あります) (注1)国土交通省が毎年3月に公表する、1月1日時点の全国の土地価格。一般の土地取引や公共事業用地 を取得する際の指標となる。「住宅地」「商業地」「工業地」等に土地の用途を分類して公表する。現在 の調査地点数は約2万5,200地点。 2016年公示地価 2016年公示地価動向の主な内容は以下の通りです【図表1、2】。 <地価動向> ●全国平均:全用途平均で2008年以来8年ぶりに上昇。牽引役は大都市の商業地。住宅地は下げ幅縮小。 ●三大都市圏(注2):住宅地はほぼ前年並みの小幅な上昇。商業地は最近3年間、上昇基調を強める。 ●地方圏:地方中核都市(注3)では、住宅地・商業地とも三大都市圏を上回る上昇を示す。その他の地域で も、下落幅が縮小。 <変動の主な要因> ◇住宅地:全国的な雇用情勢の改善、住宅ローン減税等の施策による需要の下支え効果。 ◇商業地:外国人観光客の増加等による店舗、ホテル需要の高まり。主要都市でのオフィス空室率の低下 等による収益性の向上。 (注2)東京圏、大阪圏、名古屋圏 (注3)札幌市、仙台市、広島市、福岡市 図表1:公示地価(前年比変動率) 図表2:公示地価の推移(前年比変動率) (各1月1日時点) 用途別 住宅地 商業地 全用途 圏域別・地域別 2015年 2016年 2015年 2016年 2015年 2016年 -0.4 全国平均 -0.2 -0.0 0.9 -0.3 0.1 三大都市圏平均 0.4 0.5 1.8 2.9 0.7 1.1 東 京 圏 0.5 0.6 2.0 2.7 0.9 1.1 大 阪 圏 0.0 0.1 1.5 3.3 0.3 0.8 圏 0.8 0.8 1.4 2.7 0.9 1.3 -1.1 -0.7 -1.4 -0.5 -1.2 -0.7 1.5 2.3 2.7 5.7 1.8 3.2 名 古 屋 地方圏 地方 中核都市(※) 8 (2006年~2016年 各1月1日時点 年次) (%) 6 全国(全用途) 東京圏(全用途) 4 三大都市圏(※)(全用途) 2 0 ‐2 ‐4 ‐6 ‐8 06 08 10 (※)札幌市、仙台市、広島市、福岡市 (※)東京圏、大阪圏、名古屋圏 出所:図表1~2は国土交通省データを基にニッセイアセットマネジメントが作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 12 14 16 (年) 01/02 (審査確認番号H27-TB222) 不動産投資市場の活性化策 有識者会議(注4)で発表された不動産投資市場拡大に向けた成長戦略の概要は以下の通りです。 ① J-REIT等、資産総額で現在約16兆円(内J-REITは約14兆円)の市場規模を、2020年頃に約30兆円 に倍増させる。 ② 2020年頃に名目GDP(国内総生産)を600兆円に拡大する政府目標を達成するには、医療福祉や観 光、物流等の成長分野に良質な不動産を供給する等、関連市場への投資促進を図る必要がある。 当戦略を補強するために国土交通省は、2017年度予算概算要求や税制改正要望に意見を反映させると ともに、関連法の改正も検討するとしています。 (注4)国土交通省は「2020年頃に名目GDP600兆円」という目標達成に向け、不動産投資市場の中長期的 な成長戦略を話し合う有識者会議を設置し、検討を開始しました。“今後の不動産投資市場の持続 的な成長に向け、東京五輪後まで見据えた中長期的な取り組み内容等、目標設定を含む今後の不 動産投資市場の成長戦略に関する幅広い検討を行う”ことを設置の目的としています。 J-REITに関する検討課題としては、1)ヘルスケア不動産(病院や介護施設等)の証券化促進のための税 制緩和措置、2)日本版アップリート(UP-REIT)制度(注5)の創設、3)公的年金等の投資促進のための方 策、4)現在米国REIT等と比べ限定的となっている資金調達手段の多様化等が考えられます。 (注5)UP-REIT(Umbrella Partnership REIT)とは不動産所有者が所有する不動産を現物出資する 際、不動産の譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることを可能とする仕組み。米国では、1992年 の同制度創設をきっかけにREIT市場の時価総額や流動性が飛躍的に向上したとされている。 J-REIT市場の今後の見通し J-REIT市場(東証REIT指数)は3月22日に1,900ポイント台を回復した後、戻り待ちの売り等に押され、再び 1,800ポイント台へと後退しています。但し、この下げを悲観的にとらえる必要はないものと考えます。 2月末頃のJ-REIT市場は、日銀のマイナス金利導入決定後の急上昇で過熱感がやや強い状況になっており、 冷却のためのスピード調整が必要であるとみていました。もしも急ピッチの上昇が続き、更に過熱感が強まるよ うなことになれば、2013年半ばや2015年年初頃のように、悪材料が出た場合等の調整幅が大きくなる可能性も あるからです【図表3】。 今後移動平均線が上昇してくることから、しばらく現水準近辺でもみ合いを続ければ過熱感も薄れると思われま す。1,900ポイント台到達後の足元の調整は、反って上昇基調を持続させる効果をもたらすことも考えられます。 2016年公示地価にみられる不動産市況の回復や不動産投資市場の活性化に向けた取り組み、比較的厚みの あるイールド・スプレッド(J-REITの予想配当利回り-10年国債金利)【図表4】等を材料に、J-REIT市場は戻り 待ちの売り等を消化しながら、少しずつ水準を切り上げていく展開になるものと考えます。 図表3:東証REIT指数の推移 図表4:J-REIT予想配当利回りと10年国債金利の推移 (2013年1月4日~2016年3月25日 日次) 2,200 (ポイント) (2015年1月5日~2016年3月25日 日次) 5 (%) 2,000 4 1,800 3 1,600 2 1,400 1 イールド・スプレッド(①‐②) 予想配当利回り① 10年国債金利② 東証REIT指数日々線 1,200 0 1,000 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 (年/月) ‐1 15/1 15/4 15/7 出所:図表3~4はブルームバーグデータ、不動産証券化協会データを基にニッセイアセットマネジメント作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価 証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しております が、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将 来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投 資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 15/10 16/1 (年/月) 02/02
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