報 道 発 表 国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research 平 成28年3月29日 「インクルーシブ教育システム構築に向けた 学校施設に関する基礎的調査研究」報告書について 国立教育政策研究所では,障害のある幼児児童生徒の障害種に応じた学校施設に おける合理的配慮等に関する知見を得るため, 「インクルーシブ教育システム構築に 向けた学校施設に関する基礎的調査研究」を実施し,このたび,報告書を取りまと めました。 1.調査研究の趣旨・内容 本報告書は,当研究所が平成 26~27 年度に実施したプロジェクト研究「インクル ーシブ教育システム構築に向けた学校施設に関する基礎的調査研究」の成果を取りま とめたものである。 平成 24 年 7 月に公表された中央教育審議会初等中等教育分科会報告「共生社会の 形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」 では,障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒が,できるだけ同じ場で共 に学ぶことを目指すべきであり,そのための環境整備が必要との方向性が示されてい る。 また, 「障害者差別解消法」の平成 28 年 4 月 1 日の施行により,国や地方自治体等 における合理的配慮の提供が義務づけられることになる。 施設面においても,障害のある幼児児童生徒が,公立小中学校の普通教室などを含 む一般の学校施設を利用するに当たり,障害種に応じた合理的配慮の提供が必要にな る。 本調査研究では,学校施設・設備に焦点を当て,「合理的配慮」及びそれの基礎と なる「基礎的環境整備」に関する知見を得るため,文部科学省の「インクルーシブ教 育システム構築モデル事業」の採択校を対象としたアンケート調査等を行い,109 事 例について整理・分析を行った上で,学校施設・設備の合理的配慮の提供に係る留意 点を取りまとめた。 また,調査で得られた事例を収録したデータベースを本日 3 月 29 日に開設した。 2.報告書の概要 別添を参照 3.ウェブサイトへの掲載 報告書及びデータベースは当研究所のウェブサイトに掲載している。 ( http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div11-shisetsu.html ) (お問合せ) 国立教育政策研究所文教施設研究センター センター長:磯山 武司 総括研究官:西 博文 電話:03-6733-6992(直通) 〔広報担当〕企画室 企画・広報係 電話:03-6733-6925(直通) インクルーシブ教育システム構築に向けた 学校施設に関する基礎的調査研究報告書(概要) 平成28年3月 本報告書は,国立教育政策研究所のプロジェクト研究において,中央教育審議会報告※や「障害者差別解消法(平成28 年4月1日施行)」等を踏まえ,障害のある児童生徒等の障害種に応じた学校施設の「合理的配慮」等の手法についてアン ケート調査等を実施し,事例分析の上,学校施設・設備の合理的配慮の提供に係る留意点を取りまとめたものです。 ※ 「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(平成24年7月) 第1章 調査研究の経緯・目的 第2章 施設・設備の取組状況 2-1 アンケート調査 平成24年7月 中教審報告⇒合理的配慮の調査研究,DB整備が必要 平成25年8月 学校教育法施行令改正⇒就学先決定方法の改正 平成28年4月 障害者差別解消法施行⇒合理的配慮の提供義務 (1)目的: 障害種に応じた学校施設の合理的配慮及び基礎的環境整備に ついて,施設・設備の種類,設置場所,経費などの基礎的知見を 得て,データベース化を図る(109事例を収録)。 (2)対象: 文部科学省の平成25年度インクルーシブ教育システム構築モデル 事業採択校 ●障害のある幼児児童生徒が,公立小中学校の普通教室などを 含む一般の学校施設を利用 (3)内容: 施設・設備の合理的配慮・基礎的環境整備の取組内容の把握 児童生徒等の障害種に応じた学校施設に 関する「合理的配慮」の提供の必要性 障害のある子供 に対し個別に必 要となるもの。 アンケート調査 を実施した範囲 (障害種ごとに) (合理的配慮) ●地方公共団体等における学校施設・設備に関する合理 的配慮の検討や「対応要領」等の策定の参考に資する ことを目的に調査研究を実施 国,都道府県,市町村による環境整備 (基礎的環境整備は,不特定多数の子供を 対象に整備されているもの。) ※中教審報告(平成24年7月)の図を準用 (4)調査結果:調査対象校で先行して行われた施設・設備に関する合理的配慮等の内容を,障害のある児童生徒等の障害種(10種)別※に整理・分析 ※障害種(10種):視覚障害,聴覚障害,知的障害,肢体不自由,病弱・身体虚弱,言語障害,自閉症,情緒障害,学習障害(LD),注意欠陥多動性障害(ADHD) いずれの障害種においても,主に校内の移動や学習・生活・安全面に即した施設・設備の整備が,合理的配慮として提供さ れていることが明らかとなった。一例として,肢体不自由の場合の分析内容を示す。 肢体不自由単一障害(8事例)の分析内容 12 合理的配慮 基礎的環境整備 10 10 6 4 2 0 8 7 8 6 6 3 11 6 4 1 3 1 3 1 1 5 2 2 11 1 スエ階手誘ト洗シ空二出ク教諸間じカサ机緩ベカ補パ電タ教そ ロレ段す導イ面ャ調重入ー室室仕ゅーイ・衝ッメ聴ソ子ブ材の ーベ昇りブレ所ワ設窓口ル配確切うテン椅材ドラ器コ黒レ 他 プー降 ロ ー備・ ダ置保りたン・子( ・・ン板ッ ・タ機 ッ 室等二 ウ (・ん・掲 テ モ補・ ト 重 ン クつ・ブ示 ニ ニ聴プ 型 段ー ク 扉 ス ーいタラ 差 ・ ス タシロ 端 等 ペ ル立イイ 解 点 ボ ースジ 末 消 字 ー ダてルン ー テェ ス ウ等カド ル ムク ン ー ) 等タ ー 除 ペ 等 く ッ ) ト 合理的配慮の事例 ●車いすや補助用具(歩行器・杖(つえ))等の 多様な移動方法を考慮し,昇降口の段差解消や校 内動線の段差箇所にスロープ(携帯スロープを含 む)を設置。 ●自分で体温を保持することが困難な児童生徒等 が体温調整に適した良好な環境条件を確保できる よう空調設備を設置。 ●多機能トイレ,休憩用・着替え用のベット,高 さ等の調節可能な机・椅子の設置。 ●障害の有無にかかわらず,児童生徒等が共に助 け合い・学びやすい環境とするため,特別支援学 級と通常の学級の配置を,同学年の両学級を同じ 階に隣接して配置するなど,学習・生活面の交流 を意識した教室配置。 ●教室配置の変更による新たな動線や使用するト イレ等が変わることに伴い,必要な施設・設備を 計画的に整備。 ●災害時の移動の困難さを,教室配置の工夫をし て最短の避難経路を確保し,手すりなど必要な施 設・設備の整備を行うとともに,車いす,担架な どの災害等発生後に必要となる物品を準備。 肢体不自由(単一) (事例) 8 a b 基礎的環境整備の事例 ●スロープ,エレベーター,手すり,トイレ,段 差のない床面等,基本的な学校施設のバリアフリ ー対応を実施。 2-2 公立小学校と特別支援学校等の複合施設計画事例(寄稿) ① 十日町市立十日町小学校・ふれあいの丘支援学校・発達支援センター(上野 淳 首都大学東京 学長) ② 糸魚川市立糸魚川小学校・ひすいの里総合学校(長澤 悟 国立教育政策研究所客員研究員,東洋大学名誉教授) 2-3 フィンランドにおけるインクルーシブ教育システム構築の現状(寄稿) ① PISAでヨーロッパの上位国であり,障害のある子供の教育のアプローチなど,日本との共通点も多いフィンランドの現状を分析紹介。 (渡邊あや 津田塾大学准教授) 第3章 とう 施設・設備の合理的配慮の提供に係る留意点 ⇒ 関係者間の合意形成プロセスの重要性に留意 1 施設の計画・設計プロセスの ⇒ 体制面,財政面を勘案した,総合的・客観的な判断 構築 ⇒ 発達段階や成長に応じた,施設計画の見直し 等 ⇒ 合理的配慮と基礎的環境整備の両者併せて必要な配慮の提供 2 合理的配慮と基礎的環境整備 ⇒ 同じ施設等の配慮でも障害種により有効性は異なることに留意 の検討 ⇒ 施設の質的水準向上による全ての児童生徒等への配慮 等 3 校内環境のバリアフリー化 4 ⇒ 多様な利用者を想定したユニバーサルデザインの概念を 取り入れた配慮 等 発達,障害の状態及び特性等 ⇒ 既存教室の転用などスペースを確保しての活用・配慮 ⇒ 移動面,生活面等における分かりやすさに配慮したサイン計画 等 に応じた配慮 5 災害時等への対応 ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ 1階に教室を配置するなど最短の避難経路の確保 避難経路を分かりやすく表記する掲示・サインの設置 担架や車いすなど必要な避難器具の準備 効果を上げるための,ハード,ソフト両面の対応 等 ⇒ 児童生徒等の日常的な交流を支える教室配置の工夫 6 交流及び共同学習を支えるた ⇒ 教室配置を柔軟に見直す際の安全面への配慮 めの配慮 ⇒ 共に学び・遊ぶための交流スペース・移動空間の充実 等 7 施設整備によらない創意工夫 ⇒ つい立てや既存教室の転用など既存施設の有効活用 ⇒ 教室配置の見直しによるゾーニングの工夫 等 による対応 インクルーシブ教育システム構築支援学校施設データベース(インクル学校施設DB)を開設 ●分析対象とした109事例を,対象児童生徒等の障害種,在籍状況,合理的配慮の観点,施設・設備の整備状況それぞれ の項目で検索が可能。下記にその一部を示す。 障害のある児童生徒 等の状況に応じた施 設・設備の整備内容 整備費・財源 施設整備によらない 創意工夫による対応 報告書全文及びデータベースは,国立教育政策研究所文教施設研究センターのHPに掲載しています。 (URL:http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div11-shisetsu.html)
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