大規模石油備蓄基地の現状と課題 大規模石油備蓄基地所在消防本部連絡協議会会長 北九州市消防局長 川 本 一 雄 北九州市は、中国大陸の鉄鉱石や筑豊地域の豊富な石炭を利用した重化学工業で栄え、日本の四 大工業地帯の一つとして発展し、経済成長を遂げてきました。 特に重化学工業は、その牽引的役割を担ってきた事に鑑み、昨年7月には「明治日本の産業革命 遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の産業遺産群として、本市の官営八幡製鐵所旧本事務所、修 繕工場及び旧鍛冶工場の3施設が世界文化遺産として登録を受けました。 時代は移り、近年のエネルギー改革による石炭から石油への転換によって、石油資源を海外から の輸入に依存している我が国においては、過去の石油危機での苦い経験から、安定的供給体制を構 築し維持することが必須となりました。 このような社会的背景を受け、当連絡協議会は、全国に設置された石油備蓄基地を管轄する消防 本部が、共通する保安上の問題や防災対策を調査研究するとともに、各消防本部間の連携を目的と して、昭和60年2月に発足いたしました。 当連絡協議会では、各消防本部の消防長を委員に、総務省消防庁特殊災害室長及び危険物保安室長 を顧問に、備蓄基地所在道県の消防防災担当課長を相談役に、さらに危険物保安技術協会企画部長を 参与として構成され、発足以来合計63回の連絡協議会を開催しており、危険物施設における各種安全対 策や構造審査等の案件を審議及び情報共有し、備蓄基地の安全操業の一助となるよう運営しております。 現在の石油備蓄の状況は、民間及び国家ともに計画的な備蓄がなされ、合算による備蓄量は製品 換算で8,300万 KL、国内の消費量の約200日分(平成27年11月現在:経済産業省資源エネルギー庁出 典)に相当いたします。 全国で石油備蓄の増強が順次行われ、今や世界有数の備蓄水準に至っており、地上タンク方式の ほか、地中タンク、海上タンク、岩盤タンクといった特殊な貯蔵方式も採用されております。 一方で当連絡協議会の課題として、 「大規模で特異な形態」や「沿岸部に立地」していることによ る防災安全対策の必要性の問題が存していることから、地震や津波等の大規模災害の発生を見越し た、各タンクの形態に応じた防災体制の整備強化について、引き続き危険物保安技術協会、総務省 消防庁、備蓄基地所在道県消防防災担当との連携を図り、国民生活の安定と経済の円滑な運営に資 する目的を完遂して参りたいと存じます。 結びになりますが、備蓄基地関連の皆様をはじめ、当連絡協議会の役員の皆様方のご尽力により、 安全な石油備蓄が維持できており、心から敬意を表しますとともに御礼を申し上げます。 1 Safety & Tomorrow No.166 (2016.3)
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