抄録 - 京都大学外科交流センター

「ナイフレス自動縫合器と手縫い吻合を用いた腹腔鏡下食道胃吻合法」
京都大学 消化管外科
岡部 寛、角田 茂、田中 英治、平井 健次郎、水本 素子、塩田 哲也、坂井 義治
【背景】我々は腹腔鏡下噴門側切除の際、開腹手術での手縫い縫合による食道残胃前壁
吻合と同様の形態を再現するために、ナイフレス自動縫合器を用いて食道左側と残胃前
壁間の固定を先行する工夫を行い、手縫い連続縫合による再建を採用している。その手
技と短期成績を紹介する。
【方法】食道は左右方向に自動縫合器を用いて切離し、胃は残胃大彎側が十分残るよう
に切離する。胃切離断端から約 3cm の前壁中心を吻合予定部位として、約 3cm の横切開
を行う。食道の左側断端にも小孔を開けておく。次いで、ナイフレス自動縫合器の片側
のフォークを胃の切開孔から断端側へ向けて挿入し、もう片側のアンビルを食道の小孔
から口側に向けて挿入することにより、食道左側背側と残胃前壁を縫合固定する。食道
断端を開放したのち、自動縫合器により固定された食道左側端から右側端へむかって、
3-0 バイクリルを用いた連続縫合で食道胃吻合の後壁吻合、次いで同様に前壁吻合を行
う。数針全層縫合を追加して食道胃吻合を完成したのち、残胃断端右側を吊り上げて右
横隔膜脚に 2 針縫合するとともに、食道右側を胃前壁に 2 針縫合固定する。
【結果】本法を施行した 24 例中合併症は縫合不全の 1 例(4%)であった。数カ月以内
に狭窄症状を訴えた症例が 7 例(29%)あったが、全例バルーン拡張術で改善した。術後
体重減少率は 2 年で 9.4%と当院の胃全摘症例(13.9%)に比較して少ない傾向にあった。
【考察】食道胃吻合は、食道が縦隔内に牽引されるため、手縫い縫合で施行することは
かなり難しい。本法では、ナイフレス自動縫合器による食道左壁と胃前壁の先行固定に
より、食道裂孔部からかなり尾側に吻合予定部が並んで位置する形となり、吻合操作は
格段に容易になる。縫合開始から噴門形成完了までの所要時間は約 50 分程度である。
ステイプラーの固定力により噴門形成の形態が再現性をもって確実に担保され、臨床的
に問題となる逆流性食道炎は生じない。
【参考文献】
1) 噴門側胃切除術後再建 手縫い食道胃吻合:ナイフレス自動縫合器による固定先行
法
岡部 寛ほか、臨床外科、2014; 69(6):722-730
2) 胃外科のすべて 第 9 章 5-2 腹腔鏡下噴門側胃切除術(早期胃癌)
岡部 寛ほか、株式会社メジカルビュー社、胃外科・術後障害研究会編
3)
Laparoscopic
proximal
gastrectomy
with
a
hand-sewn
esophago-gastric
anastomosis using a knifeless endoscopic linear stapler. Okabe H et al., Gastric
Cancer. 2013; 16(2):268-274