平成 27 年度 公益財団法人 納税協会連合会会長賞 私の暮らしと税金 帝塚山高等学校 一年 上 奈々子 私の住む地域は、日本で有数の観光地だ。それと同時に近年急激に過疎化が進みつつあ る地域でもある。そんないわゆる「田舎」である場所が観光地として成り立っている理由 の一つとして、国からの補助金が挙げられる。この地域は、古都保存法対象地区、歴史的 風土特別保護地区、風致地区であるため、国から補助金の交付を受けている。その補助金 を使って道路、公園の整備や、遺跡の発掘調査、自然環境の保全などを行っているらしい。 そしてその補助金は税金が元となっている。もし補助金が出なければ、元々過疎化の進 む地域であるだけに、道路は整備されることもなく、観光地としての価値はあっても誰も 訪れようとはしない場所になっていただろうと思う。つまり、私の住んでる地域は、税金 によって観光地としての美しさや価値が保たれているということが言える。 私は、自分の住んでいる場所がこんなにも人口が減ってきているにもかかわらず、なぜ 観光地として成り立っているのか、ということを、今まで特に疑問にも思わず生活してき た。しかしある時、父が話してくれたことが、それを疑問に感じさせた。 「こんなに『田舎』なところでこんなに道路が広くてきれいなところはないらしい。」 私は驚いた。そういえば、近隣の市町村の道路と見比べてみると、私の地域の道路は広 く美しく整備されている。私は整備された道路が勝手に湧き出てくるわけではないという ことを初めて意識した。 普段私は、自分の財布に入っているお金を自分のものだと感じ、自分の住む家があるの は当然であると考える。しかしそのお金は親が汗水たらして稼いだお金で、私が何不自由 なく生活できるのは親の苦労あってのことだ。私はお金というものを、甘く見ている面が あるように思う。 大人の用意した道を大した苦労なく歩いてきた私にとって、道路があるのが当たり前、 お金があるのが当たり前だった。私は、いままでそういう道を何のありがたみも感じずに 歩いてきた。しかし、少しずつ大人の仲間入りをしつつある中で、私たちが生活している この場所が、だれかたくさんの人によって作られているということを認識したい。そして 自分が実際、納税の義務を課せられた時には、自分もその「だれか」の一員であることを 自覚できるようになりたい。
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