事 後 評 価 調 書 機関名 整理番号 12 研究課題名 食品加工研究センター 味噌用優良酵母の検索 ※重点領域・一般試験・外部資金等 事業区分 一般試験 共同研究機関 研究期間及び 10年度∼ 12年度 所要額(千円) 研 究 の 概 最終前々年度以前 最終前年度 最終年度 全体所要額 1933千円 (1933千円) 1936千円 (1936千円) 2551千円 (2551千円) 6420千円 (一財 6420千円) 要 ※研究目的及び研究計画内容、年次別目標など (1)研究目的 味噌の製造に利用される有用微生物として酵母があり、味噌の芳香性に効果を与えるだけでなく、酵母の生成する香気成分の中には 抗酸化性などの機能性を有するものがある。したがって、優良酵母を選択利用することは味噌の品質向上につながる。優良味噌用酵母 を検索するためには、味噌用酵母を菌株レベルで正確かつ迅速に分類・同定する技術が必要となる。そこで、北海道産味噌の品質向上 を最終目標として、北海道独自の優良味噌用酵母選定のための味噌用酵母分類技術を確立することを目的とする。 (2)研究計画内容 1)由来の明確な酵母を用いて、遺伝子工学的手法を使った味噌用酵母の分類・同定技術の検討。具体的には、RAPD法、RFLP法などに より、味噌の主発酵酵母であるZygosaccharomyces rouxii(ザイゴサッカロマイセス ルーキシー)を菌株レベルで分類・同定す る方法を確立する。(H10∼11) 2)実際の味噌を使っての、分類・同定方法の確認(H12)。 3)味噌用酵母の収集。優良味噌用酵母の検索に当たって、より多数の酵母からの選定を可能にするために、味噌中より酵母を分離・ 凍結保存して、収集する(H10∼12) 。 研 究 の 成 果 ※研究目標の達成度、研究期間・経費の妥当性、他機関との連携度など (1)味噌用酵母を菌株レベルで識別するために遺伝子工学的手法を使った。 1)特定プライマー(δ配列プライマー)を使って酵母DNAを増幅させた時の、増幅パターンの違いによって分類する方法について検討 した結果、味噌の主発酵酵母であるZ.rouxiiを菌株レベルで識別することはできなかったが、その他の酵母と区別することは可能 であった。この手法を用いることで、味噌中の有用酵母とその他の雑菌の区別が可能となった。 2)酵母DNAの特定部位を増幅後、種種の制限酵素処理をし、その切断パターンの違いによって分類する方法について、味噌用酵母識 別の可能性について検討した。その結果、Z.rouxiiを菌株レベルで完全に識別することはできなかったが、試験に使用した9株に ついてはグループ分けすることが可能であった。この手法を用いることで、味噌醸造時において、添加酵母の消長・動態を追うこ とが可能となった。 (2)H10∼H12の3年間において、北海道味噌醤油工業協同組合主催の北海道味噌品評会出品味噌より酵母の分離を試みた。その結果約 200株の酵母を分離・凍結保存した。また、H10∼H12の3年間に全国味噌鑑評会において賞を受けた味噌30点を北海道味噌醤油工業 協同組合より恵与していただき、味噌用酵母を分離したところ約50株の酵母を分離・凍結保存することができた。 目標の達成度a・b・c 期間の妥当性a・b・c 経費の妥当性a・b・c 成果の有益性a・b・c 成 果 の 活 用 策 ※活用される分野、具体的な活用方策(技術移転や特許出願・製品化の可能性、基礎研究の応用策等)など (1)味噌用酵母Z.rouxiiをその他の酵母と区分する方法を活用することによって、味噌の雑菌汚染防除が可能となった。また、 Z.rouxiiは、ビールなどの発酵食品では有害菌となるため、これらの食品におけるZ.rouxii 検出法としても利用可能である。 (2)味噌は古くからある伝統食品であるが、味噌中の酵母の消長・動態などについては、あまり研究が進められておらず、不明な点が 多い。味噌用酵母をある程度菌株レベルで識別する方法を活用することによって、味噌における酵母の働きをさらに追求すること が可能となった。また、味噌の醸造時に、添加酵母が実際に機能しているかどうかの確認方法としても有効である。 (3)北海道味噌品評会出品味噌および全国味噌鑑評会受賞味噌より約250菌株の味噌用酵母を分離・保存することができた。これらの酵 母を活用して、北海道独自の優良酵母の選抜を行うことができる。さらに、選定された酵母の働きを検討するために、実際の味噌 醸造で添加試験を行い、その動態を今回得られた識別方法を用いて追求することが可能である。その結果として、選抜優良酵母の 実用化が可能となり、北海道産味噌のさらなる品質向上が期待できる。 (4)現在、一般試験研究(課題名「道産味噌の高品質化に関する試験研究」平成13年∼14年)において、香気成分生成能の高い酵 母の選抜を行っているところである。優良酵母が検索された場合の実用化・商品化の受け皿としては、北海道味噌醤油工業協同組 合があり、組合との統一仕込み試験を通じて、添加酵母の効果確認が可能である。実際の醸造試験で良い結果が得られれば、優良 酵母添加による、品質の向上した新しい味噌の開発が可能となる。 活用の可能性a・b・c 【自己評価】 【意見】 A・B・C 遺伝子工学的手法を使って味噌用酵母を菌株レベルで識別する方法をほぼ確立し、味噌の高品質化に貢献できること から、目標を概ね達成し一定の研究成果が得られている。 (追跡評価の必要性 有・無 ) 【総合評価】 【意見】※ 道民生活や産業振興上の必要性、活用方策の適切性など A・B・C 優良酵母の探索に必要な手法をほぼ確立できたことから、目標を概ね達成し、一定の研究成果が得られたものと認め られる。 (A)目標を達成し、十分な研究成果が得られている (B)目標を概ね達成し、一定の研究成果が得られている (C)目標の達成度が低く、十分な研究成果が得られていない (a)極めて高い、適切である (b)高い、概ね適切である (c)低い、改善の余地がある
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