別記第3号様式 事 後 評 価 調 書 機関名 整理番号 5 研究課題名 衛生研究所 ドクニンジンに関する調査研究 ※重点領域・一般試験等 事業区分 一般試験 研究区分 研究 試験 調査 分析 共同研究機関 (協力機関) 研 究 の 概 研究期間 平成 11 年度 全 体 所 要 額 (千円) (一財 ∼ 平成 13 年度 304 304 ) 要 ○ 研究背景 平成9年に札幌市内でドクニンジンによる中毒事故が2件発生した.これらはいずれも山菜として人気のあるシャクとドクニンジン (共にセリ科)を間違えたものであった.北海道でドクニンジンによる中毒事故は初めてであった.ドクニンジンは,形態がシャクと 非常に似ており,特に芽出しの頃は見分けが困難である.また,繁殖力が非常に強いことから,今後その生育域を拡大していくと予想 され,中毒事故発生の危険性が高い植物と考えられる. ○ 研究目的 広報活動や講演会などで,ドクニンジンを誤って採取しないように注意を促したり,万が一中毒事故が発生した場合,採取場所から 植物の推定が出来るようにドクニンジンの分布を調査する.中毒事故が発生した場合,病因物質の同定が治療に与える影響は大きいの で,中毒症状が重篤であるほど正確で素早い対応が求められる.そのため,迅速で化学的な分析法を確立する. ○ 研究内容 ドクニンジンの分布調査を行う. ドクニンジンの栽培試験を行い,北海道における生育実態を明らかにする. 迅速な植物鑑定が可能となる機器分析法を確立する. ○ 研究実績 分布調査の結果,ドクニンジンは札幌市北区内2カ所で確認された.ドクニンジンとシャクが混生もしくは隣接して生育していて注 意を要する場所は一カ所あった. 栽培試験の結果,ドクニンジンは秋と春に発芽し,それぞれ翌春と秋に食べ頃の大きさに成長することが確認された.すなわち,こ れらの時期に誤食による中毒の危険性が高まると予想された. ドクニンジンの有毒成分(コニイン及びγ−コニセイン)を超音波処理により抽出し,GC-FIDを用いて定量性よく分析する方法を確 立した.この方法を用い,コニイン及びγ−コニセイン含量の季節による変化,また,茹でることによりこれら有毒成分が減少するこ とを明らかにした. 研 究 の 成 果 ○ 具体的な成果及び研究目標の達成度 北海道におけるドクニンジンの分布を確認し,シャクと隣接して生育している場所を特定出来したこと,春と秋2回発芽し,春先と 秋口に誤食の可能性が高まることを明らかにしたことで,啓発活動の際に説得力のある説明・解説が可能と考える.また,今回確立し たドクニンジンの有毒成分の分析法は,短時間に簡便に試験溶液を調製出来るという点で優れており,迅速な植物鑑定が可能になる. 以上のことから研究目標はおおむね達成されたと考えられる. ○ 研究期間・経費の妥当性 ドクニンジンに関する情報・知識の収集及び分析法の確立が達成できたことから,研究期間・必要経費ともに妥当であったと考えら れる. ○ 新たな展開に向けた課題 毒草の有毒成分の研究を進めるには,その標準品が必要不可欠である.しかし,現在は入手が困難であ るため植物から単離をしている.純粋な標準品を大量に得るため,操作手順の改良や合成の検討を行う必 要がある. 目 標 の 達 成 度 a・b・c 期 間 の 妥 当 性 a・b・c 経 費 の 妥 当 性 a・b・c 成 果 の 有 益 性 a・b・c 成 果 の 活 用 策 ○ 活用される分野 本研究は,食の安全という観点から保健福祉部の施策「健やか・安心・いきいき21 のであり,食品衛生行政に活用できる. 北海道保健医療福祉計画」の基本方針に沿うも ○ 具体的な活用方策 ・毒草の誤食による食中毒防止のための広報活動・講演会の際の資料となる. ・中毒事故が発生した場合,迅速で化学的な植物鑑定が可能となり,治療・救命活動に役立つ. ○ 成果の普及 道衛研所報第52集(2002)に投稿(2編) . 活 用 の 可 能 性 a・b・c 【自己評価】 【意見】 保健所の食中毒防止の啓発事業として有用であり、十分な研究成果が得られている。 A・B・C (追跡評価の必要性 有・無) 【総合評価】 A・B・C 【意見】 本研究により、ドクニンジンの札幌市における分布、生態を明らかにし、また、有毒成分の分析法を確立することに より、中毒患者が発生した際の迅速な対応を可能とするなど、一定の成果を得ている。 今後は、有毒成分の分析法の保健所等への技術移転や食中毒防止のための啓発に積極的に取り組む必要がある。 (追跡評価の必要性 有・無) (A)目標を達成し、十分な研究成果が得られている (B)目標を概ね達成し、一定の研究成果が得られている (C)目標の達成度が低く、十分な研究成果が得られていない (a)極めて高い、適切である (b)高い、概ね適切である (c)低い、改善の余地がある
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