【2015.4月号】No.428

月刊
第37巻第4号通巻428号2015年4月1日発行(毎月1回1日発行)1980年10月23日第3種郵便物認可
4
2015年
◆社会広聴アンケート
◆企業広報研究
企業に対する信頼度が43%と4年ぶりに上昇
-第18回「生活者の“企業観”
に関するアンケート」
調査結果-
日本航空のレピュテーション向上を目指した広報活動
日本航空(株)総務本部広報部長 溝之上正充
企業広報におけるソーシャルメディア活用の7カ条
(株)メンバーズ エンゲージメント・ラボ 所長 植木耕太
(株)メンバーズ エンゲージメント・ラボ 小野寺 翼
◆ANGLE
エデルマン・ジャパン(株)社長 ロス・ローブリー
428
April
今 月 の 表 紙
昨年、開館20周年を迎えた「三菱みなとみらい技術
館」
。最先端の科学技術・製品を実物と模型、映像や
パネルなどで分かりやすく紹介している
『経済広報』では、裏表紙に関連する写真・イラストを表紙に
掲載しています。
4
月の動き
国内
6日
2月の景気動向指数速報
(内閣府)
7~8日
日銀の金融政策決定会合
8日
2月の国際収支速報
(財務省)
3月の景気ウォッチャー調査
(内閣府)
17日
3月の消費動向調査結果
(内閣府)
22日
2014年度と3月の貿易統計
(財務省)
海外
2日
2月の米貿易収支
(米商務省)
3日
3月の米雇用統計
(米労働省)
14日
3月の米小売売上高
(米商務省)
15日
ECB
(欧州中央銀行)
定例理事会
(ドイツ・フランクフルト)
16日
3月の米住宅着工件数(米商務省)
28 ~ 29日
FOMC(米連邦公開市場委員会)
(米FRB(連邦準備制度理事会))
29日
1~3月期の米GDP(国内総生産)速報(米商務省)
社会広聴アンケート
企業に対する信頼度が
43%と4年ぶりに上昇
2015年4月号目次
2
-第18回「生活者の“企業観”に関するアンケート」
調査結果-
ANGLE
信頼度調査から考える企業広報のポイント
ロス・ローブリー(エデルマン・ジャパン(株) 社長)
7
マスコミ事情
新たな編集方針導入で経済誌としての原点に回帰
~『週刊ダイヤモンド』
は何を伝えるか~
8
田中 博(『週刊ダイヤモンド』編集長)
企業広報研究
日本航空のレピュテーション向上を
目指した広報活動
10
企業広報における
ソーシャルメディア活用の7カ条
12
経営者は何を語るのか
どのように語るのか
16
溝之上正充(日本航空(株) 総務本部広報部長)
植木耕太((株)メンバーズ エンゲージメント・ラボ 所長)
小野寺 翼((株)メンバーズ エンゲージメント・ラボ)
川村秀樹(コミュニケーション・コンサルタント)
経済広報センター活動報告
日本企業らしいグローバル広報戦略
18
メディアに聞く
働く女性を応援する『プレジデント ウーマン』
今井道子(『プレジデント ウーマン』編集長)
23
連載
経済広報センター NEWS
企業広報ニュース(ウェブサイト/教育支援/広報トピックス/ Book)
企業・団体のCSR活動
(三菱重工業
(株)
)
4月の動き
20
24
裏表紙
表紙裏
発行/一般財団法人経済広報センター 国内広報部
東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館 TEL:03-6741-0021
印刷/三葉株式会社 TEL:03-3294-4751
※本誌掲載の記事・写真・イラスト・図版の無断掲載を禁じます。
2015年4月号〔経済広報〕
1
社会広聴アンケート
企業に対する信頼度が
43%と4年ぶりに上昇
-第18回「生活者の“企業観”に関するアンケート」調査結果-
経済広報センターは、社会が企業をどのように見ているかを調査するため、1997年度から毎年、「生活者
の
“企業観”に関する調査」を実施し、定点観測している。
調査では、例年同様、「企業に対する認識」や「企業に対する信頼度」といった生活者の総合的な企業観のほ
か、
「企業評価の際の情報源」や「企業評価の際の情報発信者の信用度」
について聞き、今年度は、発生する企業
不祥事を生活者がどのように認識しているかを確認するため、
「企業不祥事の原因」
や
「企業不祥事の防止策」
に
ついても調査した。
調査の対象は、全国の様々な職種、世代で構成される社会広聴会員のうち、インターネットで回答可能な
3104人。1696人が回答し、回答率は54.6%だった。調査期間は2014年10月23日~11月4日。
回答者の属性は、男女別では、男性(757人、44.6%)、女性(939人、55.4%)。世代別では、29歳以下
(61人、3.6%)、30歳代(204人、12.0%)、40歳代(301人、17.7%)
、50歳代
(536人、31.6%)
、60
歳以上
(594人、35.0%)。職業別では、会社員・団体職員・公務員(694人、40.9%)、会社役員・団体役員
(73人、4.3%)、自営業・自由業(134人、7.9%)、パートタイム・アルバイト
(224人、13.2%)
、専業主婦・
夫
(303人、17.9%)、学生(22人、1.3%)、無職・その他
(246人、14.5%)
。
1
企業の果たす役割や責任として
「安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格
で提供する」
ことが最も重要
企業の果たす役割や責任の重要度を項目ごとに調査したところ、
「安全・安心で優れた商品・サービス・技術を
適切な価格で提供する」ことが「非常に重要である」と82%が回答。
■企業に対する認識 - 企業の果たす役割や責任の重要度
(全体)
(単一回答)
■非常に重要である ■重要である ■あまり重要ではない ■重要ではない ■分からない
安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供する
82
社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する
不測の事態が発生した際に的確な対応を取る
52
雇用を維持・創出する
2
〔経済広報〕2015年4月号
53
5
0
6 11
69
15
メセナ
(スポーツ・文化・芸術支援)
や社会貢献などに取り組む
4 10
6 11
68
16
株主に利益を還元する
3 00
71
22
地域社会と共生する
5 11
65
28
社員の育成やワークライフバランスに取り組む
10
300
6 11
64
31
事業継続計画(BCP)の策定など、平常時から危機管理に取り組む
3 10
65
31
省資源・省エネや環境保護などに取り組む
44
58
35
利益を確保し、納税する
3 00
53
39
先進的な技術・研究開発に取り組む
44
54
43
経営の透明性を確保し、情報公開を徹底する
000
18
52
20
30
32
40
50
60
70
13
2 1
13
2 1
6
80
3
90 100%
*小数点以下第1位四捨五入のため、合計が100%とならない場合もある。
社会広聴アンケート
2
企業の商品・サービス・技術は高評価。企業倫理の確立・順守や情報公開への評価も前回
調査よりアップ
企業の果たす役割や責任について、企業がどの程度対応していると思うかを調査した。
「安全・安心で優れた商
品・サービス・技術を適切な価格で提供する」は「対応している
(対応している/ある程度)
」との認識が84%と高
い。
また、
「社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する」は
「対応している
(対応している/ある程度)
」が42%で、
前回調査(2013年度34%)から8ポイント上昇、「経営の透明性を確保し、情報公開を徹底する」も39%
(2013年度
31%)で、8ポイント上昇している。
■企業に対する認識 - 企業の対応状況(全体)
(単一回答)
■対応している ■ある程度対応している ■あまり対応していない ■対応していない ■分からない
安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供する
9
先進的な技術・研究開発に取り組む
8
65
21
33
利益を確保し、納税する
9
63
22
33
省資源・省エネや環境保護などに取り組む
6
株主に利益を還元する
6
58
4
40
社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する
3
39
4 3
29
53
雇用を維持・創出する
21
12
75
4
30
7
8
45
43
3
10
6
地域社会と共生する
3
36
45
10
6
経営の透明性を確保し、情報公開を徹底する
2
37
44
12
5
不測の事態が発生した際に的確な対応を取る
3
31
47
12
事業継続計画(BCP)の策定など、平常時から危機管理に取り組む
2
32
47
10
社員の育成やワークライフバランスに取り組む
2
メセナ(スポーツ・文化・芸術支援)
や社会貢献などに取り組む
28
28
2
0
51
10
50
20
30
40
50
60
70
7
9
13
5
14
7
80
90 100%
*小数点以下第1位四捨五入のため、合計が100%とならない場合もある。
3
企業に対する信頼度は、
「信頼できる」が43%と4年ぶりに上昇
企業に対する信頼度は、
「信頼できる」が2%、
「ある程度信頼できる」
が41%と、生活者の43%が信頼感を示し、
前回調査(2013年度)から8ポイント上昇し、4年ぶりに改善している(2010年度51%、2011年度43%、2012年
度39%、2013年度35%)。
■企業に対する信頼度(年度別・全体)
(単一回答)
■信頼できる ■ある程度信頼できる ■普通 ■あまり信頼できない ■信頼できない
2014 年度 2
(n=1696)
41
2013 年度 2
(n=1801)
33
2012 年度 1
(n=1944)
0
48
51
38
10
9
20
14
49
30
40
50
60
10
70
80
90
1
1
1
100%
*小数点以下第1位四捨五入のため、合計が100%とならない場合もある。
2015年4月号〔経済広報〕
3
社会広聴アンケート
4
企業が信頼を獲得するための最重要事項は「安全・安心で優れた商品・サービス・技術を
適切な価格で提供する」
企業が社会からの信頼を今後さらに勝ち得ていくための重要事項としては、85%が
「安全・安心で優れた商品・
サービス・技術を適切な価格で提供する」と回答。次いで、
「雇用を維持・創出する」
が49%、
「社会倫理に則した
企業倫理を確立・順守する」が40%だった。
■企業が信頼を勝ち得るための重要事項(年度別・全体)
(4つまでの複数回答)
85
安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供する
49
48
雇用を維持・創出する
社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する
36
35
経営の透明性を確保し、情報公開を徹底する
33
87
54
40
43
38
32
34
36
30
30
32
不測の事態が発生した際に的確な対応を取る
先進的な技術・研究開発に取り組む
利益を確保し、納税する
23
22
25
省資源・省エネや環境保護などに取り組む
社員の育成やワークライフバランスに取り組む
地域社会と共生する
株主に利益を還元する
事業継続計画(BCP)の策定など、平常時から危機管理に取り組む
2
2
3
メセナ(スポーツ・文化・芸術支援)や社会貢献などに取り組む
0
5
84
11
11
13
10
8
10
9
10
10
10
28
24
27
22
19
18
■2014年度
(n=1696)
■2013年度
(n=1801)
■2012年度
(n=1944)
20
30
40
50
60
70
80
90
100%
企業評価の際の情報源としては、
「新聞」に次いで「企業以外のインターネットサイト」
企業を評価する情報源としては、前回調査(2013年度84%)よりポイントを下げているものの、
「新聞」が75%
と最も高い。次に「企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)
のインターネットサイト」
(46%)
、
「テレビ」
(45%)、「企業が運営するインターネットサイト」
(37%)
、
「企業が発行する刊行物
(会社案内、CSRレポート、
アニュアルレポートなど)」
(30%)、
「雑誌・書籍」
(23%)と続いている。
■企業評価の際の情報源(年度別・全体)
(3つまでの複数回答)
75
新聞
企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)
のインターネットサイト
33
37
企業が運営するインターネットサイト
27
29
企業が発行する刊行物(会社案内、
CSRレポート、
アニュアルレポートなど)
21
20
23
雑誌・書籍
0
〔経済広報〕2015年4月号
10
20
30
■2014年度
(n=1696)
■2013年度
(n=1801)
31
33
30
62
61
37
■2012年度
(n=1944)
3
2
3
その他
4
46
45
テレビ
84
83
40
50
60
70
80
90
100%
社会広聴アンケート
6
企業評価に際して最も信用度が高い情報は「メディアからの発信」
企業評価の際に利用する情報の発信者ごとの信用度について、「メディアからの発信(ニュースや記事など報
道)
」は79%が「信用する(信用する/ある程度)」と回答。次いで「企業からの発信(企業ホームページ、各種刊行
物、ソーシャルメディアなど)」が74%。一方、
「タレントなど著名人のコメントや評価」
を信用している人が1割
にとどまり、企業評価にはあまり影響しないことがうかがえる。
年度別では、「企業からの発信(企業ホームページ、各種刊行物、ソーシャルメディアなど)
」が前回調査
(2013
年度71%)から3ポイント上昇している(2014年度74%)
。一方、
「専門家
(大学教授、有識者、評論家など)
のコメ
ントや評価」の信用度(
「信用する(信用する/ある程度)
」
)が2013年度66%、2014年度62%と、4ポイント低下し
ている。
7
企業不祥事の主な原因は「企業の管理体制」と「経営者の姿勢や経営方針」
企業不祥事の原因として考えられるのは、
「企業の管理(社員の教育不足やコンプライアンス管理の不徹底など)
に問題がある」
(73%)と「経営者の姿勢(倫理観)や経営方針に問題がある」
(66%)
が多い。
年度別で見ると、2010年度、2012年度調査においてもこの2項目が特に多く、6割を超えており、企業の管
理体制と経営者の姿勢および経営方針が企業不祥事の大きな原因として認識されている。
また、
「企業に古い制度や慣習が残っていて、時代の変化に追いついていない」
との回答が、2010年、2012年度、
2014年度と増加している。
■企業不祥事の原因(年度別・全体)
(3つまでの複数回答)
企業の管理(社員の教育不足やコンプライアンス管理の
不徹底など)
に問題がある
73
69
75
66
65
経営者の姿勢(倫理観)
や経営方針に問題がある
企業に古い制度や慣習が残っていて、時代の変化に追い
ついていない
40
32
32
経営者、従業員ともに社会常識に欠ける面がある
45
70
47
39
19
19
17
不祥事防止のための予算や人員が不足している
適切に管理しても発生し得る機械の故障や、
ヒューマン・
エラーなどによる事故
16
16
16
13
法令や国の制度が、時代に追いついていない
9
18
8
8
8
法令が複雑で、企業関係者の理解が十分でない
4
3
2
取引先(含む外国企業など)の不祥事・事故に巻き込まれ
ている
■2014年度
(n=1696)
■2012年度
(n=1944)
1
2
1
その他
0
■2010年度
(n=1961)
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100%
2015年4月号〔経済広報〕
5
社会広聴アンケート
8
企業不祥事の最大の防止策は
「経営者が自ら先頭に立って倫理観を醸成し、法令を順守す
る」
「従業員の倫理観や考え方を変えるように社内教育を徹底する」
企業不祥事を防止するために具体的に取り組むべきことは、
「経営者が自ら先頭に立って倫理観を醸成し、法令
を順守する」
(66%)と「従業員の倫理観や考え方を変えるように社内教育を徹底する」
(57%)の割合が高い。
■企業不祥事の防止策(全体)
(5つまでの複数回答)
経営者が自ら先頭に立って倫理観を醸成し、法令を順守する
66
従業員の倫理観や考え方を変えるように社内教育を徹底する
57
企業が内部通報制度を整備し、
コンプライアンスを徹底する
40
社内コミュニケーションを良くする
39
37
商慣習や古い制度などを見直す
企業が不祥事防止のための組織を設置したり、予算や人員を増やす
32
社外取締役や社外監査役を設置し、コーポレート・ガバナンスを強化する
24
消費者として、不祥事を起こさない企業の商品やサービスを積極的に購入する
23
子どもの時から倫理観を養うよう、家庭と学校、地域が協力していく
20
企業と社会との対話を促進していく
19
不祥事を起こした従業員、経営者、企業などを厳しく罰する
18
企業のお客様相談窓口を充実する
16
マスコミやNGO、消費者団体などによる監視をさらに強化する
9 14
行政が企業に法令などを分かりやすく解説する
9
取引する相手先をよく調査する
6
その他
1
0
9
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100%
将来性を感じるのは「技術力・研究開発力がある」
「優れた商品・サービスを提供している」
「人材育成に力を入れている」企業
将来性を感じる企業として最も多く挙げられているのは、
「技術力・研究開発力がある」
(81%)
。次いで、
「優れ
た商品・サービスを提供している」
(76%)、
「人材育成に力を入れている」
(71%)
で、この3項目が際立って高い。
k
■将来性を感じる企業(年度別・全体)
(5つまでの複数回答)
技術力・研究開発力がある
69
69
優れた商品・サービスを提供している
56
人材育成に力を入れている
経営トップに魅力がある
36
財務内容が安定している
27
新成長分野に積極的に投資している
グローバルな事業展開に優れている
28
19
日本国内の事業基盤を堅持している
社会貢献活動(CSR活動、環境への
取り組みなど)
に力を入れている
19
8
株価が安定している
7
採用者数が増加している
1
1
1
その他
0
10
21
49
50
35
34
26
■2014年度
(n=1696)
15
17
■2012年度
(n=1944)
12
11
■2011年度
(n=2010)
20
(2012年度調査より
「日本国内の事業基盤を堅持している」を追加)
〔経済広報〕2015年4月号
71
51
44
42
45
41
76
29
18
20
21
ダイバーシティ推進に力を入れている
6
31
22
64
81
30
40
50
60
70
80
90
100%
(文:国内広報部主任研究員 伊藤貴範)
ANGLE
信頼度調査から考える
企業広報のポイント
「2
015 エデルマン・トラスト
信において、最も信頼されているス
バロメーター」注1の日本の
ポークスパーソンは一般社員(39%)
調査結果が2月に発表された。それ
であり、CEOに対する信頼度は
によると、日本人の政府、企業、メ
15%である。企業のビジョンや戦略
ディア、NGOに対する信頼度は全
を主要なステークホルダーに伝え、
てにおいて低下し、特に自国に対す
理解を得るためには、企業情報に精
注2
に
通し、企業とのエンゲージメントを
おいては、日本人の信頼度は37%
確立している社員をスポークスパー
で、 調 査 対 象27カ 国 で 最 下 位 と
ソンとして持つことがますます重要
る
「国民の信頼度ランキング」
なった。
そこでこの調査結果を踏まえ、企
業が実践可能な広報の3つのポイン
トについてお話したい。
まず1つ目は、オウンドメディア
の重要性についてである。今回、日
本人のメディアに対する信頼度は
ロス・ローブリー
エデルマン・ジャパン(株) 社長
複数の証券会社で上級管理職を経験
し た 後、 P R 業 界 に 入 り、 ギ ャ ビ
ン・アンダーソンのマネージング・
ディレクターとして、M&Aや外資
系企業の日本市場参入キャンペーン
などを手掛ける。プラップ・ジャパ
ン専務取締役兼最高執行責任者を経
て、2010 年より現職。
になっている。
最後の3つ目は、多様なスポーク
スパーソンの重要性についてであ
る。企業のコミュニケーションにお
いて、最も信頼されているスポーク
スパーソンは企業内技術者(43%)、
次いで学者/専門家
(34%)で、企業
のCEOに対する信頼度は28%であ
40%から31%に下落した。理由は
言うまでもない。興味深いのは、日本人はメディ
る。CEOが情報発信をしなければならない機会が
アの報道に頼るよりも、事実が得られ、自分で判
多くある一方、より効果的に信頼を構築するには、
断できる情報源を信頼し、利用しているという点
スポークスパーソンとして訓練された企業内技術者
だ。一般的なニュースや情報を得るための情報源と
を持つことや、CEOの意見を後押しするために外
して、オンライン検索エンジンが今では最も信頼さ
部の専門家や学者と連携することも考慮する必要が
れている
(39%)
。次に信頼されているのはオウン
ある。
ドメディア
(36%)で、トラディショナルメディア
では、信頼を得ることで、企業は何を得られるの
(35%)に対する信頼度を初めて上回った。企業が
だろうか。日本人回答者の61%が、信頼している
検索エンジン最適化戦略、包括的なウェブサイトな
企業の製品やサービスを購入すると答えている。ま
どのオウンドメディアのプラットフォームを持つこ
た、41%が信頼している企業には、製品やサービ
とは、強力なメディアリレーション・チームを持つ
スにより多くを支払い、22%がそれを友人や同僚
のと同様、もしくはそれ以上に重要になっている。
に薦めると回答している。企業が信頼を構築できれ
2つ目は、社員の重要性についてである。信頼を
構築するためには、企業はステークホルダーとのエ
ンゲージメントを確立し、誠実さを示さなければな
らない。企業のエンゲージメントに関する情報発
ば、得られるものも大きいのである。 k
注1 エデルマンによる世界で15回目、日本で11回目となる信頼度調査。
調査は、世界27カ国3万3000人を対象に、2014年10月13日から11
月24日にかけて実施された。
注2 調査対象27カ国における各国民の自国の政府、企業、メディア、
NGOに対する信頼度の平均値をランキング形式で表したもの。
2015年4月号〔経済広報〕
7
企業広報研究
マスコミ事情
新たな編集方針導入で
経済誌としての原点に回帰
~『週刊ダイヤモンド』
は何を伝えるか~
田 中 博(たなか・ひろし)
『週刊ダイヤモンド』編集長
かつて、どちらかというと堅かった経済誌の見出しが、最近、柔らかくなってきたように思われる。どの
ような方針で編集されているのか。
『週刊ダイヤモンド』
の田中博編集長に執筆していただいた。
週刊ダイヤモンドの紹介
『週刊ダイヤモンド』は週1回発行しているビジネ
きた
『週刊ダイヤモンド』
の
“成功要因”
の行き詰まり
が見えてきたからだ。
ス誌・経済誌で、書店でご覧になったり、会社で回
ビジネス系は一般週刊誌に比べると、部数がそれ
読されたりしている方も多いと思う。定期購読者と
ほど落ちていなかったため、健闘していると見られ
市販読者の割合がほぼ同じで、定期購読者のプロ
てきた。
『週刊ダイヤモンド』も、危機に強いといわ
フィールを見ると、40代以上の管理職の方が多く、
れていることもあり、2008年のリーマンショック
企業経営者も目立つ。
前後には部数を増やすなど、まさに読者のニーズに
歴史をさかのぼれば1913(大正2)年に『経済雑誌
応えているという自負があった。
ダイヤモンド』として産声を上げ、戦災による休刊
好調の原因はほかにもあった。企業や産業の動
以外は戦時中も発行を続けるなど、独立系メディア
向、政策などの大所高所の話よりも、個人のお金の
として歩んできた。その在野精神が根元にあるため
話、自分の子どもの教育問題など、「半径5メート
か、切り口や記事は企業におもねることなく、本質
ル」の話題の方が断然、反応が良くなり、そちらの
にずばり斬り込むことで辛口のメディアとして認識
特集の頻度が増していた。編集部内では、ライフス
されていると思う。
タイルモノ、ノウハウモノと称されていたが、特集
ところがご存じのように、活字メディアに対して
は、団塊世代の引退や若者の活字離れ、デジタル化
のポートフォリオを徐々に変えてきたことで、好調
を維持できていたという側面も見逃せない。
の進展といった逆風が吹き付けている。ビジネス系
ところが、2011年の東日本大震災を境に状況が
も例外でなく、
『週刊ダイヤモンド』
もこの厳しい時代
一変した。特に世の中が落ち着きを見せ始めた数カ
をいかに生き残っていくかが、大きなテーマとなっ
月後から市販の部数が明らかに落ち始めたのだ。と
てのしかかっている。
りわけ、ライフスタイルモノ、ノウハウモノの下落
そこで昨年4月、編集長に就任するに当たって、
『週刊ダイヤモンド』の置かれている現状を分析した
上で、新たな編集方針を打ち出した。内容は非常にシ
ンプルで、ビジネス誌・経済誌として原点回帰し、第
8
実は、ここ数年、好調を維持しているといわれて
幅が目立つようになっていた。
「半径5メートル」
のも
のでも、財布の口を開ける際には、よりシビアな判
断を下すようになったのではないかと推察される。
こうした状況に私自身、非常に危機感を抱いた。
一線で活躍するビジネスパーソンに必要不可欠な企
『週刊ダイヤモンド』編集部には30人前後の記者が
業・産業・経済情報を提供しようということだった。
いるが、彼らは皆、担当業界を持って日々取材に当
「原点回帰」
の背景
たっている。ライフスタイルやノウハウ関連につい
なぜそのような編集方針を打ち出したのか。
頼るのではなく、極力、自分たちで取材して原稿を
〔経済広報〕2015年4月号
ては専門外であることが多いものの、外部の原稿に
マスコミ事情
企業広報研究
書いていこうという“風土”が根強くある。誤解を恐
イルモノやノウハウモノをまったく排除したわけで
れずにいえば、取材に着手したばかりの時は素人同
はない。ただし、恒例だった保険特集については、
然だが、特集が終わった時にはその分野に精通し、
商品の話題は押さえつつも業界の激動の話に相当の
専門家からも「お詳しいですね」とお褒めの言葉をい
ページを割き、直近の家の売却の特集に関しては、
ただくことは珍しくない。
仲介業界の悪しき習慣に光を当てたり、日本を襲う
問題はその間、自分の担当分野が手薄になること
空き家問題といった社会問題も展開するなど、特集
だ。それを良しとしているわけではないが、締め切
担当者にはビジネス誌・経済誌としてなぜ特集を組む
り直前に徹夜が続いたり、業界でたまたま大事件が
のかを問い、構成に必ず反映させるよう努めている。
勃発したりすれば、物理的に企業取材への支障が出
この1年間特集を世に送り出してあらためて感じ
ないはずはない。それでも、ノウハウやライフスタ
たのは、日本のビジネスパーソンの知的好奇心のレ
イルの特集がよく売れたという実感があれば満足感
ベルは非常に高いということだ。例えば、先述のピ
が得られたかもしれないが、部数が落ちてくると
ケティ特集に関しては、類似の本や特集が数多く組
「自分の担当分野を回る時間が取られている」という
まれていたにもかかわらず、
『週刊ダイヤモンド』
は
不満の方が強くなるのは道理である。また、複数
回、同様の特集を担当すれば視点や特集の中身もマ
ンネリ化するのは否めない。
非常に多くの読者の手に取ってもらえた。
ピケティ教授の来日後、雑誌としては最速でピケ
ティ教授の最新の考えをしっかりと紹介できたこと
今の部数水準を維持しつつも、ここをできる限り
もさることながら、当代一の名解説者である池上彰
修正することを、内部的には今回の新たな編集方針
氏に噛み砕いて解説していただいたつくりについて
のポイントに据えた。我々の最大の強みは、日本の
も、評価いただいたと実感している。こうした知識
主要産業に張り巡らせた取材網にあり、同じ記者が
に対する強い渇望がある限りは、経済誌として果た
3年近く担当するため、業界に対する知識、人脈も
すべき役割はまだまだあると感じている。
広く深いと自負している。この強みを最大限生かし
て、産業や経済といった経済誌の本筋のテーマにエ
ネルギーを注いだ方がいいと判断した。
今後の特集づくり
今、特集は7人の副編集長に加え、編集長直轄の
そうした内側の論理に加え、外部的には部数の落
下で数名の部員を特集担当として指名し、企画案を
ち込みの少ないこうした特集を深掘りする方が、読
出させたり、とりまとめの責任者として仕切らせた
者の支持を得るのではないかという読みもあった。
りしている。部員を特集担当に充てたのはここ10
実際に組んだ特集
年以上なかったが、新たな視点、アイデアを盛り込
実際、1年が経過した中で、どんな特集を組んで
きたか簡単に紹介したい。
第1に、話題の会社や人物に斬り込む
「企業モノ」
。
んでいかないと雑誌としての進化は見込めないと考
えた。現時点では予想以上の頑張りを見せてくれて
おり、新たな風を吹き込んでいる。
もっとも現状に満足しているわけではなく、常に
代表的なものとしては、ソニーや武田薬品工業のほ
斬新な企画がないか、鋭い切り口はないか探してい
か、孫正義ソフトバンク社長などの特集がある。
る状態に変わりはない。特集をつくるに当たって
第2に、あまり知られていない業界や、逆に旬の
は、
「オーナーシェフであれ」
と言っている。つまり、
業界を深掘りした「産業モノ」がある。物流業界や水
副編集長や特集担当の記者自らが常に新鮮な素材を
素革命、不動産の特集がそれに当たり、変わり種で
仕入れに出掛け、料理の腕を磨き、盛り付けやテー
は労働基準監督署に焦点を当てるというチャレンジ
ブルの配置にまで最大限の工夫を凝らす――。特集
ングな企画もやってみた。
づくりに置き換えれば、ネタ仕入れのための取材を
第3に、マクロ経済を分析したものや政策モノ、
大所高所の話など、ビジネスマンとして知っておく
べきくくりとしての「経済モノ」である。例えば今、
怠らず、構成や文章、図版などの水準をトータルで
上げていくということである。
ネタの仕入れこそが生命線であり、我々が他の媒
話題のピケティを扱ったものや原油安のメカニズム
体と差別化を図り、読者に評価していただけるか否か
を取り上げたものなどがそこに該当するだろう。
はここにかかっていると思う。まだ、その途上ではあ
もちろん、まだまだ読者の反応が良いライフスタ
るが、一歩ずつでも前に歩みを進めていきたい。 k
2015年4月号〔経済広報〕
9
企業広報研究
日本航空の
レピュテーション向上を
目指した広報活動
溝 之 上 正 充(みぞのうえ・まさみつ)
日本航空
(株)
総務本部広報部長
経済広報センターは2月27日、日本航空の溝之上正充総務本部広報部長を講師に迎え、
「日本航空の広報活
動」
をテーマに企業広報講座を大阪市で開催した。参加者は25名。
日本航空広報部の組織体制
ていたが、文章が長過ぎることもあり、社員に浸透
日本航空の広報部は企画、報道、メディアの3グ
し、実践されているとはいえなかった。一方、新た
ループに加え、羽田と成田に広報室を置いている。
な企業理念は、全社員の物心両面の幸福の追求を根
企画グループでは、全体の運営方針と社内報作成や
底に、お客さまへの最高のサービスの提供と、社会
工場見学など、報道グループは、新聞・テレビの取
の進歩発展に貢献するという2項目で、非常にシン
材対応やプレスリリース、メディアグループでは、
プルなものとなった。お客さまに最高のサービスを
報道以外の雑誌・テレビの取材対応や作家・オピニ
提供するには社員が幸せであることが前提で、社員
オンリーダー対応を担っている。報道グループには
の幸福を追求することにより、社員がお客さまや企
海外メディア担当者が1名おり、外国メディアの取
業により貢献してくれるという考え方である。
材対応やプレスリリース作成を行っている。また、
新たな企業理念を実現するために、
「JALのサー
運航や整備などの専門知識が求められる報道に対応
ビス・商品に携わる全員が持つべき意識・価値観・
するため、整備に精通した広報担当部長と広報部付
考え方」として制定されたのがJALフィロソフィ
機長が1名ずつ在籍している。
だ。このフィロソフィが社員に浸透し共通の判断基
企業イメージの向上に向けた取り組み
●最大のポイントは社員の意識改革
準となることで、個々のお客さまに寄り添った、マ
ニュアルを超えたサービスが可能となり、さらには
上司をはじめとした周囲からのサポートを受けるこ
2010年の経営破綻以降、決定的に毀損された企
とができる。植木義晴社長も、様々な場面でJAL
業レピュテーションを回復するために、「変わった
フィロソフィの重要性に繰り返し言及している。ま
感」をキーワードにコミュニケーション活動に取り
た、意識改革はまずリーダー層から行うことが重要
組んできた。消費者が抱く企業イメージを変えるた
であると考えている。
めに、鶴丸のロゴマークの復活や新たな企業メッ
●経営トップやイベントを活用した広報活動
セージ「明日の空へ、日本の翼」の発信、新サービス
破綻後当面の間、定例記者会見をほぼ毎月実施
の導入や設備への投資、制服の一新などにも取り組
し、稲盛和夫会長
(当時)をはじめとした経営トップ
んできたが、最大のポイントは社員の意識改革だと
から弊社の考え方を世間に述べる場として活用した。
考えている。
10
全や品質、お客さま視点などの5項目から構成され
業績回復を機に、硬派なテレビ番組や書籍を通じ
会社更生法の申請からちょうど1年後の2011年
ての露出だけではなく、情報番組にも積極的に出る
1月19日に記者会見を実施し、鶴丸ロゴの復活、
ようにした。これらの取材依頼は可能な限り受けて
新たなJALグループの企業理念とJALフィロソ
いるが、浮かれた感じが出ないよう留意し、現場視
フィを発表した。それまでの当社の企業理念は、安
点での露出を心掛けている。
〔経済広報〕2015年4月号
企業広報研究
また、各種広報イベントも活用し、積極的にメ
で積極的に社会部を対象にした記者勉強会を開催し
ディアに声を掛けている。当社は毎月25日を「ニッ
ている。
コーの日」としており、被災地支援を目的とした東
●インターナルコミュニケーション
北物産展などを開催しているが、こうしたイベン
インターナルコミュニケーションのツールとし
トは地方紙の東京支社にも声掛けを行っている。
て、社内報
『ROUTE』
とイントラネットを活用し
また、9月20日の
「空の日」には歴代の制服ファッ
ている。現場社員が多いこと、家に持ち帰って家族
ションショーなどを開催しているほか、男性スタッ
に見せることができるといったことから社内報は紙
フのみの「こいのぼりフライト」、女性スタッフのみ
媒体にこだわっている。同時にイントラネットやパ
の
「ひなまつりフライト」など、季節感のあるイベン
スワードを介してのインターネット、スマートフォ
トを開催している。
ンでの閲覧も可能となっている。
露出を増やすために、新商品などの発表の際には
現場の若手社員にまで情報を届けることが、社内
イベント仕立てにしたり、記者に体験してもらうこ
報の重要な役割だと考えている。そのため、メール
とを心掛けている。例えば、機内インターネット
マガジンで社内報の掲載内容を定期的に配信した
サービスのJAL SKY Wi-Fiを発表した際
り、目を引くような尖ったコンテンツの発信にも取
には、報道関係者向けに体験会を実施し、体験レ
り組んでいる。また、決算や経営状況などの難解な
ポート形式での露出を獲得することができた。
話題は、図を用いて分かりやすく伝わるよう工夫し
SNS
(ソーシャル・ネットワーキング・サービ
ている。
ス)を活用したコミュニケーションでは、フェイス
イントラネットには広報部のコーナーを設けてお
ブック、リンクトイン、ツイッターなどに公式アカ
り、記者会見の社長挨拶やテレビ放映・雑誌掲載情
ウントを設けている。特に活用が進んでいるのが
報、トップのインタビュー記事などを転載してい
フェイスブックで、ファン数は116万人に上る。現
る。トップが社外に向けて何を語っているか、社外
場社員が実名で顔を出し、長文で投稿するスタイル
からどのように報じられているかを社員に意識させ
が基本で、ファンから共感を得られるような情報を
る目的がある。
届けることを心掛けているが、御巣鷹山の事故やフ
●今後の課題
ライトイレギュラーなど、お客さまに不安や混乱を
当社の課題のひとつが、地域拠点の広報活動との
招くような情報をどう扱うかが非常に悩ましいとこ
連携だ。年2回、地域拠点の広報担当者が一堂に会
ろである。
する広報担当者会議を実施し、本社広報部が事例紹
●スピード感が求められる危機管理広報
介やガイドラインを提供するほか、事前のアンケー
危機管理対応においては、迅速なQ&Aの作成を
トに基づいたディスカッションを実施している。ま
最も重視している。機材トラブルや不祥事などが発
た、フェイスブックのグループ機能を活用して、広
生した場合、すぐに広報部に情報が入る体制となっ
報担当者間で日常的に情報を共有している。地域で
ており、関連部署と連携して速やかにQ&Aを作成
実施したお客さま向けのイベントや報道事例を報告
し、報道機関とのやり取りに備えている。同時に、
し合い、広報担当者の知見を高めている。今後も地
フロントライン用に簡略化したQ&Aを日本語・英
域の広報担当者とのコミュニケーションを強化し、
語で作成し、運航、客室や予約部門、販売部門な
JALグループとしての統一感のある情報の発信
ど、お客さまから直接問い合わせを受ける現場と共
と、広報スキルのレベルアップに取り組む方針だ。
有している。機材トラブルや情報漏えいなど、お客
また、グローバル広報も大きな課題となってい
さまにご迷惑をかけるような事例の場合には、でき
る。現在は海外メディア担当を1名、海外社内報担
る限り早い段階で弊社ホームページとフェイスブッ
当を1名、広報部に配置しているが、日本に駐在す
クにも情報をアップしている。 る海外メディアとのやり取りにとどまっており、グ
また、日ごろのコミュニケーションを通じて記者
ローバルな発信力に乏しい状況である。今後は、海
に航空事業を理解してもらうこともリスク回避の重
外支店における広報活動も、より組織的に支援する
要な手法であると考えている。専門知識が浅いため
必要があると考えており、海外発の海外メディアに
に、記者が公正さや正確性を欠く記事を書いてしま
よる情報の発信に取り組んでいきたい。 うこともある。そのため、成田・羽田をはじめ各地
k
(文責:前 国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
2015年4月号〔経済広報〕
11
企業広報研究
企業広報における
ソーシャルメディア
活用の7カ条
植 木 耕 太(うえき・こうた)
(株)
メンバーズ エンゲージメント・ラボ 所長
小 野 寺 翼(おのでら・つばさ)
(株)
メンバーズ エンゲージメント・ラボ
植木氏(左)、小野寺氏(右)
フェイスブック、ツイッター、LINEといった、ソーシャルメディアの利用者数は年々増えています。また、
自社のPRやブランディング、ユーザーサポートなど、様々な目的でソーシャルメディアをビジネスに活用
している企業も増えてきています。この潮流の中、企業の広報活動においてもソーシャルメディアの存在を
無視するわけにはいきません。
我々メンバーズでは、多くの企業のソーシャルメディア活用のコンサルティングや運用をしています。そ
の中で得られた知見を「ソーシャルメディア活用の7カ条」というフレームワークにまとめました。自社でど
の程度できているか、チェックしてみてください。
1:効果測定の方法が確立されているか
ソーシャルメディア活用の成果は分かりにくい、
ソ ー シ ャ ル メ デ ィ ア は、 主 に 初 期 段 階 の
Attention、Interestの 部 分 を 担 い ま す。 ソ ー シ ャ
効果測定はどうするのか、そのような声をよく聞き
ル メ デ ィ ア を き っ か け に、 企 業 や 商 品 を 知 り
ます。もちろん、企業やプロジェクトの活用目的に
(Attention)
、関心を持ちます
(Interest)
。その
合わせて、計測方法も異なりますが、パターン化す
後、 グ ー グ ル な ど の 検 索 エ ン ジ ン で 商 品 を 探 し
ることはできます。
(Search)、ECサイトや実店舗で商品を購入しま
ネット上のユーザーの購買プロセス「AISAS」を
Action
KPI
How
Attention
投稿/広告
キャンペーン
インプレッション・リーチ
商品認知度
Facebookインサイト
アンケート調査
Interest
投稿/広告
キャンペーン
エンゲージメント
購入意向
Facebookインサイト
アンケート調査
Search
(口コミを誘発する
キャンペーン)
(検索数)
(Google
キーワードプランナー)
投稿からの送客
ソーシャル広告
キャンペーン
コンバージョン/ROI
WEBサイト解析ツール
キャンペーン
WEB上のポジネガ
ブランドキーワード言及量
「シェア」「リツイート」
リスニングツール
Facebookインサイト
Action
Share
〔経済広報〕2015年4月号
す
(Action)
。購入後、評価や感想をソーシャルメ
ディアに戻って発信
(Share)
するという流れです。
まず、前段のAttention→Interestの部分です。実
際にどのくらいのユーザーに情報が届き
(リーチ・
インプレッション)
、興味を持ってもらえたか
(いい
ね!、コメント、シェアなどのエンゲージメント)
といった定量的な数値
(KPI)は各ソーシャルメ
ディアが提供している解析ツール(フェイスブック
インサイトなど)で計測できます。一方で、各ユー
Page 0
12
もとに、一例を紹介します。
ザーの興味・関心の深さ、好意度への影響といった
企業広報研究
定性的な要素は、自社の公式アカウントのファン向
かが問題です。海外の事例に目を向けると、体制の
けのアンケート調査により知ることができます。年
重要性に気付かされます。
に1度は実施し、定性的な態度変容を見ていくとよ
いでしょう。
ターアカウントの投稿事例です。
■フェイスブックページのファンになっている企業
の商品購入経験(ファン、非ファン比較)
120%
100%
企業 Facebook ページ投稿タイプ別のリーチ率の推移
■ファン ■非ファン
97%
97%
85%
80%
83%
76%
77%
56%
60%
35%
35%
40%
カンフットボール・スーパーボウルの試合中継中に
突如停電が発生しました。そのタイミングでOreo
「YOU CAN STILL DUNK IN THE DARK(暗く
ても
(クッキーをコーヒーやミルクに浸す)
ダンクは
できる)」。このリアルタイム性の高いツイートの
リツイート回数が、1万5000を超えました。スー
20%
0%
米国最大のスポーツイベントといえるプロアメリ
がツイートした画像が話題になりました。
83%
68%
40%
米国の事例を1つご紹介します。Oreoのツイッ
パーボウルの試合中に、なんと15名を超える専任
楽天市場
ソフトバンク
Amazon
ANA
au
平均
ファンは非ファンに比べて+48%の商品の購入経験
ファンは非ファンに比べて+48%の商品の購入経験あ
りという結果に
出典:「フェイスブックページファンの価値計測アン
ケート調査 」
(メンバーズ独自調査)
スタッフ
(プランナー、ライター、デザイナーなど)
が待機していました。ここまでとは言いませんが、
何か起きた時、スグに反応できる体制や承認フロー
の整備が重要といえます。
3:ソーシャルメディアで動画を活用しているか
Shareはユーザーの発信を測る指標です。いい
コンテンツマーケティングのひとつとして、動画
ね!やコメント同様、その数は解析ツールで計測し
コンテンツの重要性も高まっています。フェイス
ます。Shareされた内容を分析するにはソーシャル
ブックに関するメンバーズの調査結果では、2015
リスニングツールを使います。企業ブランドに対
年2月時点、動画を使った投稿が高いリーチを獲得
し、どのような声が寄せられているか、内容はポジ
(多くのユーザーに情報が届く)しています。また、
ティブかネガティブか、ユーザーからの自社に対す
フェイスブックやツイッターが動画の新機能を積極
る定性的な意見を収集し分析します。
的に導入しています。今後もソーシャルメディアに
2:コンテンツを生み出す体制はあるか
おける動画活用の重要性が高まっていくでしょう。
企業 Facebook ページ投稿タイプ別のリーチ率の推移
リンク
2014年ごろから、
「コンテンツマーケティング」と
20.00%
いうワードが注目され、国内でも「コンテンツ」その
18.00%
ものの重要性が高まっています。その前段階とし
て、コンテンツを生み出す体制はできているかどう
写真
(1 枚)
写真
(複数)
動画
16.00%
14.00%
12.00%
10.00%
8.00%
6.00%
4.00%
2.00%
0.00%
8月
9月
10 月
11 月
12 月
動画投稿のリーチ率が特に高いことが分かる
出典:「企業フェイスブックページ投稿タイプ別のリー
チ率の推移」
(メンバーズ独自調査)
調査期間:2014年8月~ 12月
Page 2
2015年4月号〔経済広報〕
13
企業広報研究
4:ユーザーの声をきちんと
聞いているか
(リスニング)
り組みです。
■コカ・コーラ
(@cocacola)によるフォロワーと
のコミュニケーション
ソーシャルメディアはユーザーが情報を発信でき
る貴重な場所です。ユーザー発信の情報に耳を傾け
るツール、ソーシャルリスニングを活用しない手は
ありません。ソーシャルリスニングの重要な目的は
大きく3つあります。
1つ目は、ユーザーが発信した情報のウォッチで
す。これにより、企業がソーシャルメディア上で最
も危惧する炎上の回避にも繋がります。ユーザーや
企業関係者が発信した情報が火種となる炎上事例も
多く、この火種に対し、早い段階で適切な対応が取
れれば被害を最小限にすることができます。時に、
「誕生日にコーラを飲む」とツイートしたフォロワーに誕
生日メッセージを返信
Page 3
■コカ・コーラのお客様相談室
(@cocacolacare)
アクティブサポート
迅速かつ誠意ある対応が、評価に繋がることもあり
ます。
2つ目は、キャンペーンの効果測定です。自社が
実施したキャンペーンが、ソーシャルメディア上で
どの程度話題になっているかを分析します。ツイッ
ターを使ったキャンペーンの場合、キャンペーン参
加時のツイートに付与したハッシュタグの計測も有
効です。
3つ目は、自社の商品・コンテンツの開発です。
商品探しに困っているユーザーを見つけ、お客様相談室
を紹介しフォロー
6:運用テクニックを活用できているか
ソーシャルメディア上には自社や競合他社に対する
ソーシャルメディア運用には幾つかのテクニック
生活者の本音が溢れています。自社商品に対する意
があります。特にフェイスブックは、全ユーザーに
見、競合他社の脅威に関する発言を聞くことのでき
コンテンツが届くわけではありません。ニュース
る貴重な機会といえます。
フィードアルゴリズムというロジックにより、その
5:コミュニケーションを積極的に
取っているか
企業と生活者が直接コミュニケーションできる
ことは、ソーシャルメディアならではの特徴です。
フェイスブックやツイッターを通じ、コミュニケー
Page 4
コンテンツに興味や関連がある、多くのユーザーに
評価されているといった基準でリーチが最適化され
ます。そのため、テクニックを活用できている運用
とそうでない運用では成果に大きな差がでます。
例えば、先に紹介した動画投稿の活用もひとつの
テクニックです。また、ほかにも現状(2015年2月
ションを実現している事例も多くあります。例え
ば、フェイスブックページ上で、コメントで受けた
質問に答える。また、最近では、自社や商品に対す
る生活者の声を見つけ、企業から語り掛けるとい
う、アクティブサポートの事例も増えてきていま
す。例えば、自社や商品に対する喜びや称賛に対し
ては、お礼を返信。悩みや苦情といったネガティブ
な内容を見つけたらフォローを返信するといった取
Page 5
14
〔経済広報〕2015年4月号
企業広報研究
時点)の傾向として、写真を投稿する場合、1枚で
はなく複数枚を同時に投稿する方が高リーチに繋が
ソーシャルメディアでの投稿をWEBサイトに反映
各ソーシャルメディアの
投稿の一覧
ります。
複数枚写真をアップすると、スマートフォン閲覧
時に写真の表示を切り替えるアクションが発生。こ
ブランドやメディアの
絞り込み
のアクションが起きることで、反応がよい投稿だと
フェイスブックが判断しリーチが伸びます。
7:オウンドメディアが
ソーシャル対応しているか
Page 7
導入するといった両メディアを連携したサイトも少
なからず存在しています。
企業のソーシャル化を考えるに当たり、ソーシャ
米 国 コ カ・ コ ー ラ 社 の サ イ ト「Coca Cola
ルメディアだけではなく、オウンドメディアの存在
Journey」では、ソーシャルメディアの投稿をオウン
も忘れてはいけません。それぞれの特性を生かし、
ドメンディアで紹介するといった連携を実現してい
両軸で成果を出していくことが求められます。
ます。
海外ではソーシャルメディアとオウンドメディア
がどういった関係性を構築しているのかを、メン
バーズが独自で調査※したところ、以下のような結
果が見えてきました。
(結果)
1.ほとんどのサイトが3つ以上のSNS(ソーシャ
ル・ネットワーキング・サービス)を運用
企業広報ソーシャル活用のこれから
ソーシャルメディアは生活に広く普及し、そこに
費やす生活者の時間も大きく伸びています。そんな
中、企業にとってソーシャルメディア上で接点を持
つことはますます重要性を増しています。
例えば米国では、その企業や商品についてのソー
2.自社の投稿をサイトに適応しているサイトは20%
シャルメディア上でのコミュニケーションを部署横
3.ソーシャルログインを利用しているサイトは26%
断的に一括で管理するために「ソーシャルメディア
4.ユーザーの投稿を積極的に利用していたのは1社
コマンドセンター」という部門を持つ企業も増えて
きています。
実際、オウンドメディア、ソーシャルメディアの
「ソーシャルメディア活用=公式アカウントでの
どちらかのみを運用しているというケースはごくわ
定期的な情報発信」という状況から、一歩前進する
ずかでした。ソーシャルメディアのコンテンツをオ
ことが求められています。企業として長期的な視点
ウンドメディアで発信する、ソーシャルログインを
でソーシャルメディア上でのコミュニケーションを
※調査対象:INTERBRANDの「BEST GLOBAL BRANDS2012」より
1~ 30位までのコーポレートサイトを中心に調査
考えていく上で、ぜひ、今回ご紹介した
「7カ条」
を
活用してください。 k
2015年4月号〔経済広報〕
15
企業広報研究
経営者は何を語るのか
どのように語るのか
川 村 秀 樹(かわむら・ひでき)
コミュニケーション・コンサルタント
事業のグローバル化や経済・社会情勢の変化に伴い、日本の経営者には新たなコミュニケーション能力が
求められている。経済広報センターは2月10日、コミュニケーション・コンサルタントの川村秀樹氏を講師
に迎え、
「経営者の言葉の原点 発想と視点」と題する講演会を開催し、今月号では、このテーマについて川村
氏に寄稿いただいた。
春先は新社長発表の記事が出てくる。テレビや
何を語るのか
ネットで新社長発表会見を見る機会があると、
「どの
ような話をするのだろうか」、そして、「どのような
プロ野球の監督であれ、消費者団体の会長であ
話し方をされるのだろうか」といった視点から考え
れ、企業経営者であれ、組織のトップが語る内容を
てしまう。
おおまかに整理してみると、現状認識、方向性、ア
これまで国内外の数多くの社長、CEOとお会
いする機会があり、責任者としての“What to say &
How to say it”について、私なりに考えてきたこと
をお伝えしてみよう。
クションという3つに分けることができるのではな
いだろうか。
一般的な経済・社会情勢、事業環境を左右する法
規制の問題、消費者・取引先の動向、そして、社内
社長が語る内容は、相手、テーマ、場によって
の事情
(ヒト、モノ、カネ)
といった要因が現状認識
様々である。経営方針に関する取締役会、機関投資
の対象になる。事業を海外で展開するグローバル企
家に対する決算の説明、消費者向けの新商品・サー
業は、対象が拡大する。地場産業として何十年と活
ビスの発表会、さらには、不祥事後の被害者説明会
動している企業では、地域の動向をより綿密に把握
といったケースもある。
する必要があるだろう。広く俯瞰する中で、どの要
内容は多岐にわたるが、いずれにも共通するの
因・動向が事業経営に、より大きな影響(プラス面
は、会社を代表する責任者として、人を動かす話を
とマイナス面の両方)
をもたらすと判断するのかが、
することが求められることである。
現状認識の重要なポイントになる。
スピーチ・トレーニングの場では、時として、
「ど
説得力がある話とは、「どこまで大きく見ている
のような話し方がよいのか」
「誰の話し方が模範にな
か」
「どこまで遠くを見ているか」
、そして、
「どこま
るのか」といった質問を受ける。話し方には、「正し
で細かく見ているか」という3つのポイントに集約
い」とか
「間違っている」というのはない。
「 うまい」
できる。
「へた」というのが基準となる。つまり、技術の問題
である。
例えば、今後数十年という将来だけではなく、歴
史全体の流れを見ているのかが問われる。さらに、
ヒトをマスで見るだけではなく、一人ひとりの消費
16
〔経済広報〕2015年4月号
企業広報研究
者、従業員、投資家に配慮する姿勢があるかが問わ
では、おのおの、どのように語るのがよいのかを考
れる。すなわち、経営者には、多種多様な「視点」を
えてみたい。誌面の都合上、動詞の使い方だけに
自由に操る力量が求められる。
絞って説明する。
方向性は、経営方針や事業計画といった形で社内
まず、現状認識である。例えば、原油価格の変動
外に提示される。現状認識を踏まえて、事業環境の
を語る際には、
「1バレル50円である」
というBe動詞
今後の変化を読み取り、今後進むべき道を検討す
が基本となる。
「先週は○○円でした」
「今後は○○円
る。自社の強みと課題を見極めて、どこに可能性を
になるという予想もある」といったように、「ある」
見いだすのか。責任者は、数年、数十年という時間
「なる」が中心で、話し手本人の判断は含まれない。
軸を設定して、組織として、どこまで実現可能なの
「ある」
「なる」
といった動詞を多く使うと、責任を伴
かの決断を下さねばならない。経営判断の根拠を、
わない評論家のような話となる。
「○○円になると思
どこまで客観的に説明できるかが重要なポイントに
う」という表現にすると、話し手の意思が伝わり、
なるだけに、数字を巧みに使って説明できる経営者
さらに、
「○○円になると判断する」
といった言葉で
の話には説得力がある。
は、話し手の責任すら感ずるような強い言葉遣いと
方向性を決めたら、具体的にどのようなアクショ
ンを取るのかといった「段取り」を詰めることにな
なる。
方向性を語ることは、社長の判断を示すことであ
る。
「段取り」は、ヒト、モノ、カネの問題でもある。
る。すなわち、責任が伴うことを意識しながら発言
社内外のリソースを効率的に活用する方策が必要と
する必要がある。
「ある」
「なる」
というBe動詞ではな
なる。この段階になると、数字の説明だけで人が動
く、
「する」
という意思を直接伝える言葉が基本にな
くとは限らない。様々な価値観を持つ社内外のス
る。
「 ○○を目標にします」という形が基本となり、
テークホルダーが期待するアクションを起こすよう
これに、
「決定した」
「決意している」
といったように
にすることが社長の役割となる。
意思を強く示す言葉を選択する。
社長が語るべきことは、一人でも多くのステーク
それでは、人を動かすために、どのような動詞を
ホルダーが共有できる価値、すなわち、企業理念に
使えばよいのだろうか。
「ある」
「なる」
ではない。
「す
集約される。これを、話すべき相手、話す場所(状
る」というのは、話し手本人の意思を伝えることは
況)に応じて、臨機応変に話し掛ける力量が社長に
できるが、聴衆を動かす表現としては使いにくい。
は求められる。
「書き言葉」では人はなかなか感動し
「○○せねばならない」といった使命感に訴えるか、
ない。社長の口から直接出てくる「話し言葉」が、聞
「○○してください」
というお願いとするか、
「○○で
く人を動かすことになる。 どのように語るのか
冒頭、話し言葉には、うまい、へたがあると申し
きる」といったように聴衆の能力を信頼するといっ
た3つの基本パターンがある。
ちなみに、オバマ米大統領の
“Yes, we can”は、
聴衆の能力を自覚させる典型的な表現である。こ
上げた。その判断を下すのは聞き手である。例え
のほか、英語では“Let's”という表現も使われるが、
ば、決算内容を説明するとして、アナリストと一
日本ではあまり使われない。せいぜい、集会の場で
般投資家では、説明のうまい、へたの判断が異なる
右の拳を突き上げて、
「頑張ろう」
と言う程度である。
のではないだろうか。経営方針を社員に説明する
また、名詞や形容詞の使い方、話し言葉では効果
場合、新人と中堅幹部の判断基準は異なるはずであ
が出る構文
(例えば倒置法)
、リズム感を持たせた言
る。
葉の使い方などがあるが、詳細になるのでここでは
話し言葉は、テーマ、相手、状況(話す場)によっ
割愛する。
て変化させることが説得力にも繋がってくる。別の
読者の中には社長のスピーチ原稿を書かれる方も
言い方をすると、相手が誰であれ、どのような状況
おられるかと思う。説得力のある話をするために
であれ、紙に書かれた書き言葉の原稿を読むだけで
は、聴衆、場によって話す内容を変える
(調整する)
は、説得力はないということである。
だけではなく、社長の思いが伝わるように、言葉遣
社長が語るべき要素として、現状認識、方向性、
アクションという3つのポイントを挙げたが、それ
いにも細心の注意を払っていただきたい。本稿が参
考となれば幸いである。
k
2015年4月号〔経済広報〕
17
経済広報センター活動報告
日本企業らしい
グローバル広報戦略
経済広報センターは、2月13日にコミニュケーション・コンサルティング会社アシュトン・コンサルティ
ングのジョン・サンリーCEO、福井容子アカウント・ディレクター、ブレンダン・ジェニングス シニア・
コンサルタントの3名を招き、「日本企業らしいグローバル広報戦略」と題する海外広報セミナーを開催した。
参加者は約70名。
ジョン・サンリー
福井容子
ブレンダン・ジェニングス
アシュトン・コンサルティング
CEO
アシュトン・コンサルティング
アカウント・ディレクター
アシュトン・コンサルティング
シニア・コンサルタント
プレゼンテーション
外から見る日本のイメージ
め、PRをツールとして本格的に活用する動きがあ
日本や日本企業についての良い面が海外になかな
る。中韓との関係など、海外メディアから公平な扱
か伝わっていない状況がある。海外メディアでは情
いを受ける方策を検討中だ。日本への訪問者数を見
報量の不足から、日本(企業)についてネガティブな
ても、1300万人に伸びたがまだまだ少なく、日本
ニュースを取り上げやすく、これが海外での日本
の良さを伝える余地はさらにある。日本のイメージ
(企業)の低いイメージに繋がっている。技術力の高
さ、礼儀正しさ、アベノミクスの成功など、日本に
ついての好意的な報道もある一方、政府債務、人口
が良くなるほど企業イメージも高まる。
日本の企業と広報
減少、女性の社会進出の困難さ、捕鯨問題など、ネ
これらを伝えるには、伝える内容
「ストーリー」
と
ガティブ報道も多い。日本がアピールすべき点とし
伝え方
「ツール」
が重要である。まず、伝える
「内容」
ては、平均寿命の長さ、富の分配の公平さ、肥満率
については、日本企業には元来良いものがあり、そ
の低さ、充実した医療、少ない収監者数、安全な都
れを掘り起こしていく必要がある。例えば、日本企
市、そのほか、サービスの質の高さ、都市の清潔
業は
「決めたら早く、契約をしっかり守る」
という評
さ、居住環境の良さなど多数あるが、うまくアピー
判のように、自分から見て当たり前と思うことも
ルしなければ海外には伝わらない。英語による情報
しっかり訴求することだ。社歴が長い会社は、単に
発信が限定的なことも一因だ。
18
この数年間は、日本政府が海外の認識向上のた
〔経済広報〕2015年4月号
「長い」
でなく、なぜ長く価値を認められ成長してき
経済広報センター活動報告
たかを一貫性ある「ストーリー」として伝えるべき
だ。日本企業特有の長期的視点、従業員を大切にす
した。
(3)
M&Aコミュニケーション
ることで生まれる「カイゼン」風土なども同様だ。
「顔
M&A
(企業の合併・買収)
において、買収計画か
が見える」ことも重要だ。社長が前面に出るスタイ
らクロージングまでに時間がかかったことで発生し
ルは日本では少ないが、欧米企業のまねをする必要
た多様なステークホルダーの懸念を払拭し、買収へ
はなく、スポークスパーソンを置く方法もある。
の悪影響を防止することに協力した。
次に、「伝え方」については、相手を理解し伝え方
(4)
危機対応
を変えること、正しく効果的に伝えること
(例:日
「危機時の対応は平時のコミュニケーションの集
本語の直訳では効果的に伝達できない)、広報部任
大成」であり、危機をうまく乗り越えるためには普
せではなく、社員全員が会社を理解してもらう意識
段のメディアとの対話が重要だ。危機時は時間の制
を常に持つこと
(社員を大切にする仕組みがあるか
約が厳しい。早急な対応チーム編成、シナリオ別の
らこそできる日本企業の強み)、広報部が伝えるべ
対応策の作り込み、関係者の情報共有による一貫性
き情報がしっかり社内から集まる仕組み(トップの
のあるコミュニケーションなどを支援している。
コミットが重要であり、危機時に差が出る)、広報
まとめ:6つのキーポイント
の専門家の育成
(ローテーションも重要だが専門家
(1)
情報提供自体はストーリーではない。会社の
も併せて必要)などがポイントだ。
意義を掘り起こしてストーリー化
ケーススタディー
(2)伝える相手の特定、相手に対する理解
(1)
グローバル・メディアリレーションの立案
グローバル展開する日本企業の広報体制につい
て、競合他社の人員、メディアコンタクト頻度、内
(3)同業他社との比較やメディアの理解度などの
調査
(海外記者は同一業界を長く担当すること
が多く、適切な記者への打ち込みが必要)
容などをベンチマークしてアドバイスした。スタッ
(4)
広報計画(海外向け計画も重要)、ガイドライ
フ数のほか、CEOが広報に費やす時間、リリース
ン整備
(例:グローバルメディアへの対応は本
発行数など、あらゆる点で差が歴然としていた。
社が統括するなど、齟齬のない対応が必要)
(2)
社内広報
そ
ご
(5)
国内外の広報担当者の育成、代理店の慎重な
グローバル展開している企業が、グループ全体と
してコミュニケーションを促進し、一体感を醸成す
るために、グローバル参加型の社内報の作成を支援
選定
(広報、IR、広告など分野に合わせ検
討)
(6)質の高い広報活動を継続的に実施
ディスカッション
問 ストーリーの掘り起こしと訴求タイミングは。
答 「会社のストーリー」を初めに作ることが必要と
セージも掲載、などを方針とした。
問 海外メディアに興味を継続させるコツは。
考え、コンサルティングもそこからスタートす
答 アクセス頻度などはケース・バイ・ケースだ
る。訴求タイミングはケース・バイ・ケースだ
が、
「会社のこの人に聞けば情報が取れる」
という
が、決算発表、代表者交代など、あらゆる機会を
認識を得るべく、時間をかけた関係づくりが重要
活用する。海外出張時やIRイベント時もメディ
ア訪問のいい機会だ。
問 グローバル社内広報の支援事例のポイントは。
だ。
問 日本企業のM&Aコミュニケーションの課題は
何か。
答 顧客との対話を通し、①英語のみで発行、②完
答 発表前の計画期間は最低2週間が必要だ。M&
璧な英語を使用、③地域別に記事バランスを考
A発表は貴重な発信機会であり、会社のメッセー
慮、④日本の社内報からの記事は、日本の事情が
ジを効果的に織り込むことが必要だ(買収先の社
明確に伝わるよう再編集、⑤既存の保守的な会社
員も注視しており、メリットは大きい)
。
k
イメージを払拭すべく軽くカジュアルな内容も挿
入、⑥ビジネスの好例や社長・地域トップのメッ
(文責:国際広報部主任研究員 田中 勲)
2015年4月号〔経済広報〕
19
2014年12月9日~ 2015年1月28日
NEWS
12
/
10
早稲田大学商学部で「企
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
た。
( テーマ:「日本企業の国内外
展望~情報セキュリティ(1)
」
、
講師:寺村 亮一 NRIセキュア
テクノロジーズ 事業開発部)
における利益獲得競争の最前線」
、
Keizai Koho Center News
講師:山口 忠克 全日本空輸 企画
部主席部員)
12
/
16
慶應義塾大学総合政策
学部・環境情報学部で「企
業人派遣講座」を実施した。
( テー
12
/
9
マイナンバー制度への
12
/
10
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
マ:
「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
で「企業人派遣講座」を実
ロードバンド時代のビジネス戦略
め、
「マイナンバーガイドライン説
施した。
( テーマ:「科学技術特論
~デジタル社会における新ビジ
明会」を経団連会館で開催した。
~エネルギー・環境技術の最先端
ネス開発」
、講師:中尾 光宏 凸
参加者は約750名。
と将来展望~二酸化炭素の回収・
版印刷 取締役情報コミュニケー
貯留技術の現状と展望」、講師:
ション事業本部トッパンアイデア
熊谷 司 日揮 営業本部中国・環境
センター長兼メディア事業推進本
事業開発部長)
部長)
ロードバンド時代のビジネス戦略
12
/
10
12
/
17
~デジタル時代の学びの場をつく
に向けて」と題する
「意見広告」を
交流を目的とした第2回
「広報実
る」
、講師:石戸 奈々子 CAN
掲載した。 務担当者向け実践フォーラム・交
12
/
9
円滑な対応を促進するた
慶應義塾大学総合政策
学部・環境情報学部で「企
業人派遣講座」を実施した。
( テー
マ:
「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
日本経済新聞に
「国をあ
げたイノベーション創出
流会」を開催し、メンバーズのエ
VAS 理事長)
12
/
10
パ ブ リ ッ ク・ デ ィ プ ロ
マシーの現状と企業の役
割・オポチュニティーに関するシ
12
/
12
日本郵船歴史博物館
(神
ンゲージメント・ラボ所長の植木
奈川県横浜市)で「生活者
耕太氏と小野寺翼氏が
「企業にお
の企業施設見学会」を開催し、社
け る 広 報Facebook活 用 ~ 企 業 P
会広聴会員27名が参加した。
Rにつなげる最新運用ノウハウを
ンポジウム「『パブリック・ディプ
ロマシー』日本の対外発信と企業
活動」を開催した。
伝授~」をテーマに講演した。参
12
/ 「企業人派遣講座」を実施
15
加者は約60名。
した。
( テーマ:「21世紀における
12
/
17
早稲田大学理工学部で
科学技術と社会~情報通信技術の
20
〔経済広報〕2015年4月号
広報実務の実践的な演
習と他社の広報部員との
早稲田大学商学部で「企
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
た。
( テーマ:
「日本企業の国内外
所コミュニケーションプラット
における利益獲得競争の最前線」、
フォームディビジョン暗号・認証
1
/
7
講師:濱田 賢司 アサヒグループ
基盤グループグループリーダー)
題する「意見広告」を掲載した。
企画部門ゼネラルマネジャー)
12
/
24
1
/
7
12
/
17
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
施した。
( テーマ:「科学技術特論
施した。
( テーマ:「科学技術特論
日本経済新聞に
「日本の
良さをもっと世界に!」と
ホールディングス 執行役員経営
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
で「企業人派遣講座」を実
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
で
「企業人派遣講座」を実
で「企業人派遣講座」を実
~エネルギー・環境技術の最先端
~エネルギー・環境技術の最先端
施した。
( テーマ:
「科学技術特論
と将来展望~航空業界における
と将来展望~地熱発電の現状と展
~エネルギー・環境技術の最先端
エネルギー・環境先端技術」、講
望」
、講師:加藤 久遠 三菱マテ
と将来展望~北海道における風
師:木下 陽介 全日本空輸 整備セ
リアル 資源・リサイクル事業本
力・太陽光発電の導入拡大への
ンター部品事業室原動機生産業務
部エネルギー事業部地熱・電力部
取り組み」
、講師:木元 伸一 北
部生産技術チームリーダー)
長補佐)
12
/
25
1
/
9
海道電力 工務部電力システムグ
ループリーダー)
12
/
18
日本と主要各国に関す
る最新の統計データを147
社会広聴活動を取りま
とめた『ネットワーク通信
経団連会館で講演会「知
の表やグラフで掲載した、ポケッ
新春号
(No.61)
』を発行した。
「健
らなかった放射線の話~
トサイズの英文国際比較統計集
康維持増進に関するアンケート」
低線量被ばくの誤解~」を開催し
『JAPAN2015』を発行した。
た。講師は、東京大学の中川恵一
ングス、花王における「企業と生
緩和ケア診療部長。参加者は約
1
/
6
110名。
業人派遣講座」を実施した。
( テー
医学部附属病院放射線科准教授/
調査結果や、サッポロホールディ
慶應義塾大学総合政策
学部・環境情報学部で「企
活者懇談会」
、竹中大工道具館に
おける
「生活者の企業施設見学会」
の模様などについて掲載した。
マ:「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
12
/ 「企業人派遣講座」を実施
22
ロードバンド時代のビジネス戦略
~金融サービスの高度化を巡っ
1
/
13
した。
( テーマ:
「21世紀における
て」
、講師:岩下 直行 日本銀行 金
業人派遣講座」を実施した。
( テー
科学技術と社会~情報通信技術の
融機構局金融高度化センター長)
マ:
「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
早稲田大学理工学部で
慶應義塾大学総合政策
学部・環境情報学部で「企
展望~情報セキュリティ(2)」、
ロードバンド時代のビジネス戦略
講師:伊達 浩行 セコム IS研究
~創業期の経営」、講師:村上 義
PR・IR・危機管理
5月号
定価:1300円(税込)
編集・発行
株式会社宣伝会議
購読申込
月刊「広報会議」読者サービスセンター
TEL:03-6418-3328
インターネットからもお申し込みいただけます。
http://sendenkaigi.com/
[巻頭特集]創刊10周年記念号
経営と密接に関わる
広報の未来形
[特別編集]
「リスクと広報」
10年史
[シリーズ]
デジタル広報再入門
デジタル広報の効果測定
2015年4月号〔経済広報〕
21
2014年12月9日~ 2015年1月28日
NEWS
Keizai Koho Center News
1
/
20
欧州の「政治」
「経済」
「外
交・安全保障」の各分野の
1
/
26
「第107回事業企画委員
会」(委員長:内田章 東レ
研究者を講師に迎え、シンポジ
常務取締役)を開催し、2015年度
ウム「『2015の欧州と日本と世界』
企業人派遣講座 新規大学開講に
―研究者が斬る。
」を開催した。参
ついて審議し、了承された。ま
加者は約130名。
た、米国ビジネススクール教授招
聘プログラムの実施など6件につ
昭 日本政策金融公庫 総合研究所
主席研究員)
1
/
20
ASEANジャーナリ
いて検討し、了承された。さら
ストとのよりよい関係構
に、エネルギー環境講演会の開催
築を目的に、バンコクで
「日本企
1
/
14
早稲田大学商学部で「企
業の社会広報活動~タイジャーナ
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
リストとよりよい関係を築くため
など7件について報告した。
た。
( テーマ:
「日本企業の国内外
に~」と題する海外広報セミナー
1
/
26
における利益獲得競争の最前線」、
を開催した。参加者は現地日系企
講演会
「国民を幸福にするエネル
講師:黒崎 正吉 味の素 食品事業
業関係者など約40名。
ギー政策を考える」を開催した。
本部海外食品部長)
1
/
14
常葉大学経営学部の山
本隆三教授を講師に迎え、
参加者は約120名。
1
/
20
慶應義塾大学総合政策
で
「企業人派遣講座」を実
業人派遣講座」を実施した。
( テー
1
/
28
施した。
( テーマ:
「科学技術特論
マ:「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
地政学」を開催し、東京大学先端
~エネルギー・環境技術の最先端
ロードバンド時代のビジネス戦略
科学技術研究センターの池内恵准
と将来展望~原子力発電の現状及
~補論と総括」、講師:小澤 太郎
教授がイスラーム国の出現、アラ
び先進的原子力発電への展望」、
慶應義塾大学 総合政策学部教授)
ブの春の当面の帰結、中東地政学
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
学部・環境情報学部で「企
講師:藤田 玲子 科学技術振興機
構 革新的研究開発推進プログラ
ム プログラムマネージャー)
講演会
「イスラーム国の
出現で流動化する中東の
の行方などについて説明した。参
1
/
21
早稲田大学商学部で「企
加者は約120名。
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
における利益獲得競争の最前線」
、
1
/
28
の様子をまとめた『教員の
講師:小口 正範 三菱重工業 執行
アフレームメンテナンスビル、機
民間企業研修レポート2014』を発
役員グループ戦略推進室長兼戦略
体工場
(東京都大田区)で開催し、
行した。
企画部長)
東京工業大学・大学院の学生18
た。
( テーマ:「日本企業の国内外
1
/
15
「教員の民間企業研修」
「企業人派遣講座ANA
見学・懇談会」をANAエ
名が参加した。
1
/ 「企業人派遣講座」を実施
19
1
/
21
した。
( テーマ:
「21世紀における
施した。
( テーマ:「科学技術特論
1
/
28
科学技術と社会~情報通信技術
~エネルギー・環境技術の最先端
た。
( テーマ:「日本企業の国内外
の 展 望 ~ I C T が つ く る 未 来:
と将来展望~ 2050年に向けたエ
における利益獲得競争の最前線~
2020年 の 世 界 と 倫 理 問 題 」、 講
ネルギーシナリオと変革の切り
まとめ(試験)」、講師:高瀬 浩一
師:大谷 卓史 吉備国際大学 アニ
口」、講師:金田 武司 ユニバー
メーション文化学部准教授)
サルエネルギー研究所 代表取締
早稲田大学理工学部で
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
で「企業人派遣講座」を実
役社長)
22
〔経済広報〕2015年4月号
早稲田大学商学部で「企
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
早稲田大学 商学学術院教授) k
(国内広報部 岡本清美・鈴木陽子)
メディアに聞く
働く女性を応援する
『プレジデント ウーマン』
■
『プレジデント ウーマン』創刊の狙いとターゲッ
トは。
今井道子(いまい・みちこ)
『プレジデント ウーマン』編集長
今井 働く女性のためのビジネス誌を読みたい、と
いう要望を何度もいただくようになり、2年半前に
女性編集者6名で社長に企画書を提出し、創刊準備
方に対する満足度を調査した。すると、女性管理職
を開始した。昨年11月に第1号、今年2月に第2
の方が女性の一般社員よりも全ての項目の満足度が
号を発刊し、6月からは月刊誌となる予定である。
高いことが分かった。視野が拡大すること、組織を
「“働く喜び”は、あなたの中にある!」が弊誌の
動かせることで仕事に対する満足感が得られるだけ
キャッチフレーズで、独身、既婚や家族構成にかか
ではなく、自分の裁量で働けるため時間の使い方が
わらず、仕事に対して意欲があり、本気で働き続け
楽になる、昇進したことで家族から応援が得られ
たい女性をターゲットとしている。
る、などの意見が多く寄せられた。この結果をぜひ
創刊までの準備期間に、働く女性の悩みをヒアリ
ングしたところ、2つに大別された。
多くの女性に知ってほしい。
■今後の編集方針は。企業の広報部への要望は。
1つは、人生の分岐点で仕事を継続するかどう
今井 企業のトップに、会社の目指す方向性や、ダ
か、という悩みだ。日ごろの仕事と家庭の両立だけ
イバーシティに対する考えを取材したいと考えてい
ではなく、配偶者の転勤や出産・育児、介護など、
る。また、社内で活躍する女性の情報を積極的に提
女性は自分の都合だけで人生やキャリアを選べない
供してほしい。女性の役員や管理職への登用が進ん
環境に置かれることが多い。
でいる企業は、業績や株価が良いとの調査結果もあ
2つ目は、どうしたら組織の中で力を発揮できる
る。女性が活躍できる社風を社会に発信すること
か、というものだ。キャリアアップの方法や管理職
で、優秀な人材が集まるなど、企業にとって良いサ
の心構え、部下のマネジメントやコミュニケーショ
イクルが生まれる。
ンなどに悩む女性が多いようだ。弊誌では、これら
また、女性を部下に持つ男性社員を取材し、女性
の現状を解決するヒントとなるような情報を提供し
社員に対する要望や、能力を引き出すための工夫な
ていきたい。
ど、男性からの視点も取り入れながら誌面を作りた
■多くの女性に取材をしていると思うが、女性の働
い。男性管理職やダイバーシティの担当者が弊誌を
き方についてどのような現状が見えるか。
今井 働く女性に取材をすると、組織の役に立ちた
い、社会のために自分の持っている力を生かした
い、など仕事に対する前向きな意見が多い。女性
は、出世を目的とするよりも、組織・社会に貢献し
たいという欲求が強いのではないかと感じる。
また、創刊号では、働く女性1000人にアンケー
ト調査を実施し、仕事、プライベート、時間の使い
読むことで、女性の考え方や行動を理解する一助に
k
もなると思う。 (聞き手:国内広報部長 佐桑 徹、
文責:前 国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
一橋大学社会学部卒業後、サイマル出版会、西武タイム
(現・KADOKAWA 角川・エス・エス・コミュニケーショ
ンズ)を経て、1990年にプレジデント社に入社。
『プレジデン
ト』副編集長、編集次長を経て、2014年『プレジデント ウー
マン』編集長。
2015年4月号〔経済広報〕
23
企業広報ニュース
ウェブ
サイト
住友電工がウェブサイトを
リニューアル
住友電気工業
(住友電工)は、1月にウェブサイト日
本語版を全面リニューアルした。リニューアルのポイ
ントは、(1)VI(ビジュアル・アイデンティティー)
の適用、(2)視認性の向上、(3)ナビゲーションの改
良、
(4)製品情報の充実、の4つである。
(1)同月新たに導入したVIを反映したデザインに変
更しており、住友電工グループを視覚的に表現し
ている。
(2)メニューや文字サイズの大きさを変更、読みやす
いフォントを採用するなど視認性を重視し、知り
たい情報がすぐに見つかるようにしている。
(3)より簡単に目的のページにたどりつけるようナビ
ゲーション(メインメニューボタン)を改良。ナビ
ゲーション内の各項目に、製品やコンテンツのイ
メージ画像を表示することにより、行きたいページが一目で分かるようになっている。
(4)当社グループ製品についてより詳しくご理解いただけるよう、製品情報コンテンツに新
たに各製品の概要ページを設置した。また、製品がどのように使われているかをイメー
ジしやすいようなカテゴリ分けをすることで、目的の製品を見つけやすくしている。
今回は日本語のみだが、今後、英語版や中国語版も順次リニューアルしていく予定である。
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(住友電気工業
(株)
広報部広報グループ 藤間加奈子)
京王電鉄は、子どもたちの成長を促す機会を創出し、沿
教育支援
線コミュニティーの活性化を目的として、沿線周辺に住む
小学生向けに夏休み期間中、様々な体験プログラムを開催
している。
京王電鉄が沿線の小学生
向けに体験プログラム
小学生とその保護者を対象として、京王グループ各社の
実際の仕事を楽しく学べる体験プログラム
「京王キッズおし
ごと隊 ~ぼくの、わたしのお仕事体験~」
を2009年から実施
しており、2014年は、新たに5つのプログラムを加えた全
24プログラムに合計303組が参加した。
また1970年から、小学3~6年生を対象とした、髙尾山
ぶちゅう
薬王院での「髙尾山峰 中修行体験合宿」を開催してきた。参
加者は、豊かな自然に囲まれた高尾山で、座禅、法話、写
経、滝行など、「普段なかなか体験できない髙尾山薬王院の修行」
を体験するほか、ハイキング
コースで自然観察教室などのレクリエーション活動を行う。毎年好評で、2014年は約120名の
小学生が参加した。
今後これらを含め、新たな取り組みとして、京王沿線の大学・団体などとの連携により、幅
広い年齢層に向けて、
「文化」
「教育」
「子育て」
に関する
「学び」
の機会を提案する
「京王アカデミー
プログラム」を今年からスタートさせる。これからも
「住んでもらえる、選んでもらえる沿線」
づくりを実現するため、沿線の活性化に寄与していきたい。
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「髙尾山峰中修行体験合宿」での
滝行の様子
〔経済広報〕2015年4月号
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(京王電鉄
(株)
広報部広報担当 成田雄輝)
企業広報ニュース
建設業には女性が力を発揮できる仕事が数多くあり、すでに多くの女性が土木、建築、設
広 報
備、機械など、多様な職種で活躍しているが、「5年以内に女性技能者倍増」を目標に掲げる
トピックス
日本建設業連合会(日建連)は昨年、そのことを広く業界内外にPRするため、建設業で活躍す
「けんせつ小町」で
女性の活躍を応援
る女性技術者・技能者の愛称を募集し、2940件の応募の中から
「けんせつ小町」
と決定した。
「建
設」という語と、美しく聡明な女性を表現した「小町」の組み合わせは、建設業界の呼称として
分かりやすく、さらに「けんせつ」とひらがなで表記したのは、柔らかい雰囲気と親しみやすさ
を表したい、という思いが込められている。
そして今年、会員企業の女性技術者17名で構成する愛称推進分科会(愛称「けんせつ小町」
の選考も担当)で考案された「けんせつ小町」のロゴマークが決
定した。このロゴマークは、ヘルメットをオレンジ系の花びら
に見立て、建設業で明るく生き生きと活躍する女性を表現して
いる。5枚の花びらは、建設業の重要な5つのファクターであ
るQuality( 品質)、Cost( 費用)、Delivery( 工程)
、Safety( 安全)
、
Environment(環境)にちなんでいる。
日建連は今後、このロゴマークをヘルメットや名刺に貼るな
ど、様々な機会を通じて「けんせつ小町」の普及・定着に努め、建
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設業での女性の活躍を応援していく方針だ。 (国内広報部主任研究員 伊藤貴範)
メディア・トレーニングとは、インタビューや記者会見な
Book
ど、メディアへの対応力を高めるための訓練である。適切な
メディア対応は、企業の透明性を高め、信頼の維持・向上に
繋がるが、メディア対応を誤れば、企業はレピュテーション
メディア・トレーニング
『入門
マスコミ対応の実践ノウハウのすべて』
の悪化という大きなダメージを受けかねない。近年、危機管
理の一環としてメディア・トレーニングを実施する企業も増
えている。
同書は、第1章でメディア・トレーニングの対象者と目的、
効果を説明した上で、第2章以降でメディア・トレーニング
の実践ノウハウをポジティブ篇とネガティブ篇に分けて具体
的に紹介している。ネガティブ篇では、メディア対応の前提
として、「ポジションペーパーを作成する」
「ネガティブワード
(情報公開できない事項)を考えておく」や、緊急記者会見時に
「なぜ失言が飛び出すのか」「追及されるパターン」など、危機
発生時の被害を最小限に抑えるためのメディア対応を詳細に
篠崎良一 著、アニモ出版
2015年1月発行、
3000円
(税別)
解説している。第4章では実践的なメディア・トレーニングの進め方を紹介し、トレーニング
用のシナリオ例とチェックシートを掲載している。
著者は、PR総研所長としてメディア・トレーニングや危機管理セミナーの講師を務め、多
くの企業を指導している。実践で得たノウハウを公開した同書は、企業の役員から管理職ま
で、メディアの取材を受けるすべての人に役立つ一冊だ。
k
(国内広報部主任研究員 大野祥子)
2015年4月号〔経済広報〕
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2015
4
企業・団体のCSR活動
三菱みなとみらい技術館
三菱重工業(株)
お問い合わせ先
三菱みなとみらい技術館
TEL:045-200-7351 FAX:045-200-9902
HP
http://mhi.co.jp/museum/
http://www.kkc.or.jp/
平成
昭和
年 月 日発行
(毎月 回 日発行)
第
年 月 日第 種郵便物認可
55 27
10 4
23 1
3
1
1
ロケットのエンジン。左が旧型
(LE-7)
、右が現在のもの
(LE
-7A)
。手前の画面でエンジン噴射の様子を見ることができる
今年3月にリニューアルした海洋ゾーン。
「しんかい6500」
の分解
展示では、船内や組み立ての様子も理解することができる
子島宇宙センターからのH-ⅡBロケットの打ち上
浜市に三菱みなとみらい技術館を開館し、昨年、開
げや国際宇宙ステーションに結合する様子を体感で
館20周年を迎えた。
きる。
館内入口では、国産初のリージョナルジェット
海洋ゾーンは、今年3月にリニューアルされた。
テーマは
「出発しよう深海の世界へ!」
で、実物大の
有人潜水調査船
「しんかい6500」の一部を切り取っ
対話したり握手ができ、将来、人々の生活を豊かに
て内部の仕組みが分かるようにした“分解展示”を中
してくれる可能性を持つロボットだ。
心に、深海の探査に挑むものづくり技術が体感でき
1階は、航空宇宙、海洋、くらしの発見、輸送の
る展示となっている。
ゾーン。2階は、環境・エネルギー、技術探検の
技術探検ゾーンは、日々の暮らしを豊かにする
ゾーンとトライアルスクエア、乗り物の歴史のコー
様々な製品の技術やその原理を紹介している。子ど
ナーで構成されている。
もから大人まで、フォークリフトやクレーンなどの
航空宇宙ゾーンでは、
「MRJフライトチャレン
ジ」で操縦を体験できる。コックピットの窓に迫力
展示に触れて、
「てこ」
「滑車」
「ピストン」
などのメカ
ニズムを体感することができる。
ある景色が広がり、本当に飛行機を操縦しているか
また、トライアルスクエアは、体験プログラムで
のような感覚だ。また、ロケットのコーナーには新
楽しく学ぶことができるユニークなコーナーだ。未
旧2つのエンジンが展示され、燃焼する様子を映像
来の月面資源探掘船
(ドデカトロン)
の開発を体験で
も交えて学ぶことができる。さらに「チャンバーシ
きる
「スペース・プロジェクト」
では、タブレットや
未来の設計アイテム
「GA-BAN」
を使って設計を
行う。近い将来、子どもたちが大人になり設計者に
なるころを想定したものだという。
三菱重工業は、子どもから大人まで幅広い年代
に、より一層喜んでもらえるよう、今後も展示内容
の充実や新しい企画に取り組んでいく考えだ。ま
た、2020年の東京オリンピック・パラリンピック
を控え、外国のお客さまにも分かりやすく理解して
技術探検ゾーンのクレーン。
「滑車」のメカニズムを体感する
ことができる
発行:一般財団法人 経済広報センター
いただけるよう案内の充実を図る予定だという。k
(前 国内広報部主任研究員 杉山佳子)
Printed in Japan
428
発行人/中山 洋 編集人/佐桑 徹 [ ISSN 0918–4600
]
東京都千代田区大手町一 三
(本体価格三〇〇円+税)
- 二
- 経団連会館 電話〇三 六
- 七四一 〇
- 〇 二 一 〒一〇〇 〇
- 〇〇四 ( 送料別、賛助会員の購読料は会費に含む)
機MRJの 模 型 と コ ミ ュニケーションロボット
「wakamaru」が迎えてくれる。
「wakamaru」は、人と
4
号
対する関心を促進することを目的に、1994年、横
37
号通巻
アター」では、360度の大迫力の映像と音響で、種
巻第
三菱重工業は、地域の人々との交流と科学技術に