長崎大学病院 研修医グランドラウンド2015 長崎大学病院 救命救急センター 泉野 浩生 輸液を含む医薬品の費用 ¥1.3億カット/年 褥瘡治療にかかる費用 ¥1.8千万カット/年 抗菌薬の費用 ¥311万カット/月 医学管理料 ¥1.3億アップ/年 p<0.001 p<0.05 (日) 10 8 6 4 2 0 2011年度 2012年度 2013年度 (Wilcoxon test) 高カロリー輸液 経静脈栄養 (%) (本/年) 100 250 p<0.01 80 60 200 (例) p<0.05 30 24例 20 150 42.9 40 20 p<0.0005 100 15.2 8.6 0 50 13例 10 5例 0 2011年度 2012年度 2013年度 (Pearson test) 0 2011年度2012年度2013年度 (Wilcoxon test) カロリー不足は罹患と死亡の前兆である カロリー不足が10000kcalを超える ICU患者の死亡率は76% Bartlett, Surgery, 1982 臓器重量 • 実質臓器30%減少 心理面 • 不安・うつ指数増加 骨格筋 • 数日の絶食で収縮力20%低下 • 呼吸筋萎縮 術後合併症 • 発生率が4倍上昇 アルブミン≒栄養の指標 重症患者では疾患に関わらず必ず下がる ある日突然上がる…なんてことはない アルブミン製剤なんて一時しのぎ アルブミンが低い 合併症をよく起こす むくみがひどい 入院が長い 救命処置が優先される 消化管機能の評価ができていない エネルギー代謝が著明に亢進している 基礎疾患・これまでの栄養状態が不明 時間・秒単位で代謝動態が変動する 多臓器不全・多彩な病態 嚥下障害が起こりやすい 内因性エネルギー 外因性エネルギー 適量? 飢餓 侵襲 コンセプト 節約 消費 糖新生 ↓ ↑↑↑ 蛋白異化 ↓ ↑↑↑ 脂肪分解・酸化 ↑↑↑ ↑ 代謝率 ↓ ↑↑↑ エネルギー 保存 喪失 尿中窒素排泄 ↓ ↑↑↑ 体重減少 緩徐 急速 広範囲熱傷 150% 重症急性膵炎 多発外傷 重症感染症 悪性高熱症 蘇生後脳症(痙攣あり) 100% 50% 廃用症候群 クモ膜下出血(深い昏睡) 内因性エネルギー 外因性エネルギー 測る手段がない! 不足 異化が亢進 過剰 Overfeeding ? エネルギーとタンパクの投与量を推奨量 に近づけるとアウトカムが良くなる Elke G, et al. Crti Care 2014 人工呼吸管理中の敗血症患者 2270名(経腸栄養のみ施行) 1000kcalの熱量および30gの タンパク質量の増量は、60日 死亡率の減少と人工呼吸非装 着期間の増加と有意に関連す る。 健常時:除脂肪体重 100% 筋肉量の減少 内臓タンパクの減少 免疫能の障害 創傷治癒遅延 臓器障害 生体適応の障害 窒素死:除脂肪体重 70% 急性期には1.2~2.0g/kg/日が必要。 窒素バランスの評価 N-balance=窒素投与量ー窒素排泄量 窒素投与量:投与タンパク質÷6.25 窒素排泄量:尿中UN×5/4 Overfeeding 高CO2血症 脂肪肝 高血糖 白血球貪食低下 感染リスク増加 高浸透圧利尿 電解質異常 Refeeding syndrome 遷延した低栄養状態に、栄養(とくに糖 質)が急激に投与されることで、水・電 解質の分布異常が起こり、心停止を含む 重篤な合併症をもたらす病態の総称。 神経性食思不振症では、1日125kcalでも 起こったという報告がある。 笠井ら 精神誌 111, 2009. 長期の飢餓状態 脳 ケトン体 FFA P 筋肉 細胞内 脂肪肝 高浸透圧状態 グルコース↑ 好中球機能低下 ビタミンB1欠乏 ATP消費 インスリン↑ 糖 Mg K P 痙攣・テタニー 不整脈 AT P AT P AT P 赤血球:虚血症状、貧血 筋肉:横紋筋融解、尿細管壊死 NICE*ガイドライン 以下の項目を1つ以上満たす場合: BMI<16 kg/m2 最近3~6か月以内の15%を超える体重減少 10日を超える絶食、摂食障害 P、K、Mg、血糖などの低値 以下の項目を2つ以上満たす場合: BMI<18.5 kg/m2 最近3~6か月以内の10%を超える体重減少 5日を超える絶食、摂食障害 アルコール中毒、糖尿病の既往、担癌患者 *The National Institute for Health and Clinical Excellence 安定期 Full Nutrition 過小栄養許容期 Permissive Underfeeding 蘇生期 Resuscitation ストレス侵襲 24~72時間 10~14日 TEE:1日エネルギー消費量 BEE×AF(活動係数)×SF(ストレス係数) 飢餓状態 0.6~0.9 多発外傷 1.4 ベッド上安静 1.2 術後(合併症なし) 1.0 敗血症 1.2~1.4 歩行可能 小手術 1.2 重症感染症 1.5~1.6 中等度手術 1.2~1.4 多臓器不全 1.3~1.6 大手術 1.3~1.5 熱傷 寝たきり 1.0~1.1 1.3 1.2~2.0 BEE:基礎エネルギー消費量 Harris-Benedictの式:Overになりがち 男性⇒66.47+(13.75XBW)+(5.0XBH)+(6.75XAge) 女性⇒655.1+(9.56XBW)+(1.85XBH)+(4.68XAge) 代替値(痩せている人は現体重) 理想体重X15~35 kcal/kg/day 多くの施設ではX20~30kcal/kg/day IgA分泌 GALT・MALT 2週間のTPN・絶食で 腸管粘膜は萎縮する →免疫能低下 →Microbial Translocation (Bacterial Translocation) 可能であれば腸管を利用する 嘔吐、消化管出血、腸閉塞、腸管穿孔、 腸管損傷の疑い→TPNを考慮する 腸管粘膜萎縮の予防 代謝亢進(異化)抑制 胆汁うっ滞の回避 Bacterial Translocation の予防 生理機能の維持 (蠕動、ホルモン) TPNに比べて 感染が少ない 長期管理が容易 安価 食事の加算がとれる 循環動態が安定したら開始 EN(経腸栄養)が遅れると・・・ 必要カロリーが欠乏する 腸蠕動の低下・消化管逆流が増悪 腸管がEN耐性になりやすい 補充的PN EN単独での栄養管理が不調の場合に用いる 血行動態が不安定な患者では… 「栄養は吸収・代謝され、 環流や酸素化に有害な影響はない」 Revelly J, et al. Intensive Care Med 27:2001 昇圧薬を使用しているICU患者1174名 48時間以内に経腸栄養を開始した群で 生存率が高かった Khalid I, et al. Am J Crit Care 19: 2010 開始の基準は、蠕動音・排便・ 排ガスじゃない! 静脈経腸栄養ガイドライン(推奨度BII) 経腸栄養はできるだけ中断しな い! 静脈経腸栄養ガイドライン(推奨度BII) 下痢は経腸栄養中止の適応に ならない! 静脈経腸栄養ガイドライン(推奨度BII) 早期EN→感染性の合併症が少なく、代謝亢 進を抑制し、窒素平衡が良好となりやすい、 生存率も高くなる(24時間以降だと逆に低くなる) Int Care Med 2009 ESPEN:3日以内に食事開始ができない場 合、重症とみなして入室24時間以内にEN 開始を推奨 ASPEN:入室24時間以内のEN開始を推奨 JSPEN:治療開始後48時間以内のEN開始を 推奨 ESPEN ICUに入室したら早期に 非経口投与で開始すべき! あくまでPNは補助。 1週間まで待とうよ。 EPaNIC trial (Early versus Late Parenteral Nutrition in Critically Ill Adults) ASPEN Casaer MP et al. N Engl. J Med. 2011 1週間後から静脈栄養を投与した群の方が、在院日数、 感染症合併率、呼吸器装着期間、医療費で有意差あり。 24時間以内のEN開始が禁忌の患者1327名 に対して早期PN開始群では、人工呼吸 管理日数の短縮、筋肉喪失量が減少し た。 Doig GS, et al. JAMA 2013 経腸栄養のみよりも4日目からPNで不足 カロリーを補充した群の方が感染性合併 症発生率が低かった。 Heidegger CP, et al. Lancet 2013 経腸栄養が開始できないとき ASPEN:PCM(protein-calorie malnutrition)があ るときは早期にPNを開始する。 ESPEN:24~48時間以内にPNを開始する。 Supplemental PN(静脈栄養の併用) ASPEN:7~10日以内にENで目標量を達成で きないとき ESPEN:EN開始2日後に目標量以下であると き 消化管は利用可能? Yes No 経腸栄養 静脈栄養 短期 長期 経鼻胃管 短期 末梢静脈栄養 PPN 胃瘻/空腸瘻 栄養必要量の不足 長期 Yes 中心静脈栄養 TPN 消化管機能の回復 No 静脈栄養で補充 栄養アセスメント項目の身体計測値や 生化学検査値は急速に変化する→不適切 最近の栄養状態:RTP (rapid turnover protein)や総コレステロール値を 参考にする *ただし、腎不全ではRBPに注意 半減期 アルブミン トランスフェリン プレアルブミン (トランスサイレチン) レチノール 結合タンパク 2~3週間 7~10日 数日 12時間 栄養不良 <2 半減期が長い 特異度にかける < 200 半減期が長め 特異度にかける < 20 腎障害で増加 肝硬変で低下 <2 腎不全で増加 肝障害で変化 アルブミンは後からついてくる! 重要 院内採用経管栄養 ・アイソカルRTU ・アイソカルサポート ・アイソカル2K ・プルモケア ・インスロー ・リーナレンLP(1.0) ・リーナレンMP(3.5) ・レナウェル ・ペプタメンAF ・ペプタメンスタンダード ・ハイネイーゲル ・E-7 ・GFO ・REF-P1 院内採用補助食品 ・クリミール ・ブイクレス ・ポチプラス ・アガロリーゼリー ・カロリーメイトゼリー ・プロッカゼリー ・メイバランスアイス ・とろめりんV 成分栄養剤 消化態栄養剤 エレンタール ツインライン ペプタメン タンパク質 結晶アミノ酸 アミノ酸、ペプチド ペプチド 糖質 デキストリン デキストリン デキストリン 脂肪 少ない 消化 不要 原則不要 必要 残渣 なし 極めて少ない 少ない 適応 半消化態栄養剤 多くの栄養剤 ラコール(薬品) エンシュア(薬品) 比較的多い 上部消化管術後、膵炎、短腸症候群、 炎症性腸疾患、タンパク漏出性胃腸症 脂肪・微量元素 欠乏に注意 選択の幅が広い GFO療法 グルタミン:腸管粘膜細胞の主要なエネルギー源 →粘膜細胞の活動維持、粘液産生促進 水溶性ファイバー:粘膜表面を物理的に刺激する ことによって粘膜萎縮を抑制するとともに、排便 の促進・粘膜細胞のエネルギー基質 オリゴ糖:ビフィズス菌、乳酸菌を増やしてバク テロイデス属を減少させる 約30~50mlに溶解して1日3回投与 でも本当は、3包ではグルタミン不足… RTH製剤 1ml 1kcal 糖質 62% 乳糖フリー 6 蛋白質 20% 2 脂質 18% 2 食物繊維 1g/100kcal 浸透圧 340mOsm/L 味 爽やかなヨーグルト ・日本人の食事摂取基準に準拠 ・Na・タンパク質・微量元素が多め RTH (ready-to-hang)製剤 感染のリスクが減る スタッフの労力削減 希釈や混合の防止 脂質が多い 1ml 1.5 kcal 糖質 28% 乳糖フリー 3 蛋白質 17% 2 脂質 55% 5 食物繊維 0 g/100kcal 浸透圧 384mOsm/L 味 バニラ ・抗炎症組成(EPA・GLA) ・低糖質・高脂肪で呼吸商を考慮 ・抗酸化ビタミン配合 プルモ Pulmonary タンパク制限 リーナレ Renal 1ml 1.6 kcal 糖質 LP71%、MP61% 乳糖フリー 7 蛋白質 LP4%、MP14% 1 脂質 25% 2 食物繊維 1.0g/100kcal 浸透圧 720mOsm/L 味 コーヒー ・低P、低K、低Na ・吸収を考慮した独自の糖質組成 ・カルニチン配合 ・亜鉛、銅、セレン配合 2kcal/ml 1ml 2.0 kcal 糖質 50% 乳糖フリー 5 蛋白質 12% 1 脂質 38% 4 食物繊維 1.0g/100kcal 浸透圧 460mOsm/L 味 ・少量高エネルギー ・摂取時間の短縮 ・逆流性誤嚥への配慮(胃のボリュー ムが小さな高齢者に) 量 速度 開始速度 持続投与 間欠投与 10~20ml/hr 50~100ml/hr 最大速度 経胃 経十二指腸 200ml/hr 120~150ml/hr 経鼻胃管は8~10Frのフィーディング チューブを選択する できるだけ開放する 栄養剤をよく混和する 60cm以上の落差を保つ 水じゃなくて微温湯 投与後に微温湯を流す 酸化マグネシウムは 使わない 持続投与では1日4~6回 フラッシュする 循環動態が安定 GFO 1日3回 1日後 E-7持続 10ml/hr 下痢なし、胃残渣が多くない E-7持続 40ml/hr E-7間欠 100ml/hr 【速度アップしない】 下痢がある 胃残渣200ml/6hr以上 胃残渣200ml/day以上 下痢に関わる因子 感染 投与経路 投与速度 濃度 浸透圧 薬剤 乳糖不耐 消化吸収 障害 下痢に関わる因子 感染 ▪ 長期絶食によるBacterial Translocation ▪ 抗菌薬による偽膜性腸炎 下痢が起こったらまず感染の否定 →クロストリジウム・デフィシル抗原検査 →便培養 感染巣が大腸ならGFOは使用可能 GFOの吸収は小腸だから グルタミン:腸管粘膜細胞の主要な エネルギー源、粘液産生促進 水溶性ファイバー:粘膜表面を物理的 に刺激することによって粘膜萎縮を 抑制、排便の促進 オリゴ糖:ビフィズス菌、乳酸菌を 増やしてバクテロイデス属を減少させる 下痢に関わる因子 投与経路:経十二指腸は下痢しやすい 投与速度:早いほど、下痢しやすい ▪ 投与速度を50ml/hrまで落としてみる →下痢しなければ速度の問題 →下痢持続するなら他の問題 濃度が高いほど、下痢しやすい 浸透圧が高いほど、下痢しやすい ▪ 十二指腸でダンピング症候群を起こすことも 下痢に関わる因子 薬剤性:意外に多い 乳糖不耐症:ほとんどの製剤は乳糖フリー 消化吸収障害 ▪ 吸収不良症候群:脂肪やタンパクの濃度に注意 ▪ 長期絶食:腸管粘膜が萎縮→絶食で再燃 下痢への対処 できるだけ止痢薬は使わない どうしても下痢するときは… ・栄養剤を変えてみる ・REF-P1(増粘剤)を使ってみる 浸透圧が低い 1ml 1kcal 糖質 49.1% 乳糖フリー 蛋白質 13.2% 脂質 37.7% 食物繊維 0.6g/100kcal 浸透圧 280mOsm/l NPC/N 160 味 プレーン ・下痢発生リスクを低減 ・詳細は企業秘密・・・らしい 5 1 4 粘度調整食品(ペクチ ンがカルシウムと反応 することにより、液体 流動食を半固形化 胃食道逆流・下痢に 有用 下痢に対しては、30分 以内に投与しなくても 効果がある 救命センターでは栄養管理も 研修できます! TNT:アボットジャパン主催のセミナー。 医師教育セミナー:年1回開催される座学 のセミナー。東京で開催。 日本静脈経腸栄養学会総会:栄養学会で 世界一を誇る会員数の学会。今年度の総会は 福岡で開催(2月25~26日)。 「実践的!」「色々とおいしい講義だった」と昨年大好評! ワンコインでワンランク上の内容を美味しく学べる講義内容です。 日時:2015年5月16日(土) 11:30~13:00 場所:長崎大学病院7階 シミュレーションセンター 対象:長崎大学病院 初期研修医 *5月13日のグランドラウンド受講後が望ましい 参加費:500円 参加受付〆切:2015年5月13日(水) 内容:栄養剤のレシピ(実践編)*5月13日に基礎編を学習します ①栄養剤の選び方 ②食欲がない、下痢、誤嚥など、よく遭遇する問題点への対処方法 ③栄養剤やごはんの固さの体験、いま話題の嚥下食の実食 申し込み:医療教育開発センター 濱邊さんまで
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