銀河系・近傍銀河の星生成と物質進化 班 検討報告 銀河中の星生成と物質進化の相互作用の解明 石原大助(名古屋大学) 金田英宏・鈴木仁研・永山貴宏・山岸光義 2015年9月15日 @ 光天連シンポ 2020年代の課題 ⇒ 星・惑星形成 1. 銀河の星生成率の多様性 - 見えないH2ガス (CO-dark gas) の定量化 2. 銀河の物質 (ガス・ダスト) 進化 ⇒ 銀河・銀河団 - 低金属量銀河の星生成 - ガス・ダスト進化の多様性 ⇒ 恒星物理・超新星・ - 氷で探る銀河の現在と過去 晩期型星 3. 銀河の磁場の進化 1. 銀河の星生成率の違いを生んでいる物理条件は? 星生成率は銀河ごとに異なり、8桁の幅を持つ 星生成率と[OI]輝線光度の関係 星生成率と[CII]輝線光度の関係 ※ Kennicut-Schumidt則(経験則)…ガス(材料)の量と星生成率に相関 Herschelによる近傍銀河の統計 De Looze +14 ・輝線によって相関が異なる [OI]は8桁に渡って良い相関を示すが[CII]は分散が大きい ・Populationによって相関が異なる 2 1. 銀河の星生成率の違いを生んでいる物理条件は? 星生成率は銀河ごとに異なり、8桁の幅を持つ 星生成率と[OI]輝線光度の関係 De Looze +14 星生成率と[CII]輝線光度の関係 これまでの研究 (Herschelの成果) ・明るい領域(銀河中心、巨大星形成領域)に限る ・限られた輝線(おもに、[OI]、[OIII]、[CII])のみ ⇒ 銀河中あらゆる領域において、複数のラインを用いた ガス診断により、星生成率の違いを生む背景物理に迫る 3 1-2 星形成をトリガーするメカニズムの多様性 Closed bubble Hattori+ 2015 あかり9μm帯 S137 Broken bubble あかり9μm帯 「あかり」全天サーベイ9μm帯マップ PAH放射 (=中性物質の分布) N107 1-2 星形成をトリガーするメカニズムの多様性 Closed bubble あかり9μm帯 S137 Broken bubble あかり9μm帯 Lwarm /Lcold 放射場強度 Hattori+ 2015 LPAH /Ltotal PAH存在比 (破壊度?) 励起星による 周囲物質の加熱 Deharveng+ 2010 分子雲衝突に ⇒ 系統的に異なる形成起源 よる大質量星生成 ⇒ 星生成をトリガーするメカニズム (radiation, shock, etc.) N107 Habe&Ohta 1992 ⇒ ダスト診断や複数の輝線によるガス診断 1-3. 見えないガス (CO-dark gas) Langer+ 2014 我々銀河系では、H2の30〜100%はCOで見えない。 CO-darkなH2分子の割合 Herschelによる銀河系の 広域 [CII] 輝線の観測 観測されたI[CII]は、IHIから 見積もられる強度を大きく超過 12CO H2 C, C+ H2 Diffuse cloud Transition cloud Dense cloud Diffuse分子雲では、 H2の殆どがCO-dark。 C+ HI ⇒ HD輝線、[CII]輝線の 高感度観測 6 PAH放射とCO分布 Sano+ 2014 高銀緯分子雲 MBM 53, 54, 55 銀河面 3 deg. (450 pc @8.5 kpc) 0 3 deg. (5.8 pc @110 pc) 「あかり」9μm帯マップ 60 [MJy/sr] 0.1 0.2 0.3 0.4 [MJy/sr] PAH放射 (=中性物質の分布) 20 40 Image : PAH (AKARI 9μm) Contour : Dust opacity (Planck) Image : PAH (AKARI 9μm) Contour : Dust Opacity (Planck) PAH放射とCO分布 Sano+ 2014 銀河面 3 deg. (450 pc @8.5 kpc) 高銀緯分子雲 MBM 53, 54, 55 3 deg. (5.8 pc @110 pc) 見えないガスはdiffuse H2に多い ⇒ 低金属量銀河のダスト・ガス質量比に影響 ⇒ 次の星生成の材料を担う貯蔵庫 0 20 40 60 [MJy/sr] Image : PAH (AKARI 9μm) Contour : 12CO (NANTEN) 0.1 0.2 0.3 0.4 [MJy/sr] Image : PAH (AKARI 9μm) Contour : 12CO (NANTEN2) 2 ガス・ダスト進化と銀河成長の関係を理解する - 銀河進化とガス・ダスト進化は密接に関連している。 - 指標: ガス進化(金属量の増加)、 ダスト進化(ダスト・ガス質量比の増加、組成・結晶度変化) 冷却効率 の向上 銀河中心核活動 星生成活動 星間輻射場の増加 光昇華 分子乖離 分子生成 超新星爆発 降着 ダスト成長 表面反応 ダスト生成 金属量増加 光変性 ダスト変性 (結晶化・非結晶化) ダスト破壊 衝撃波 破壊・破砕 光解離 凝縮 星の質量放出 2-1 銀河成長初期の星生成・金属量・ダスト進化の関係 低金属量の矮小銀河 (~1/30 Z◉): 宇宙初期銀河のanalog I Zw18 Fisher+ 2014, Natur SBS 0335-052 Hunt+ 2014 Color: HST/ACS 555nm Contour: ALMA 870 μm Color: 100 µm Contour: HI 予想の1/200の ダスト量 I Zw18 SBS 0335-052 予想の4倍の ダスト量 ⇒ 同じ金属量でも、 星生成活動度は既に高い。 ダスト・ガス質量比に2桁以上の差。 ダスト生成が始まったばかり? ダスト・ガス質量比、金属量、 現在の星生成メカニズムと異なる 星生成率の関係を決める 10 (ダストcoolingが働かない) 本質の物理条件とは? 2-2 近傍銀河におけるダスト形成・進化 ダスト・ガス質量比が、一つの銀河の中で1桁も違う 308.8 308.6 R. A. (deg.) (Walter+ 2008) 0.04 Dec. (deg.) 60.1 60.2 Gas: HI: THINGS 308.8 308.6 R. A. (deg.) CO: HERACLES (Leroy+ 2009) 5 7 6 8 (log(M◉/kpc2) Dec. (deg.) 60.1 60.2 Herschel 70 μm HI + H2 ダスト・ガス質量比 0.4 Dust: Herschel 70〜500μm SED 1 Dec. (deg.) 60.1 60.2 3 2 (MJy/sr) 例: NGC6946 Aniano+ 2012 < 500 pcスケールで空間分解 ⇒ SED→スペクトルマッピング 11 2-3 我々銀河系におけるダストの組成進化 Ishihara+ 2011 ダスト供給源 Image : PAH (AKARI 9μm) ・ C-rich AGB stars ・ O-rich AGB stars AKARI mid-IR PSC (in galactic coordinates) 9 μm & 18 μm sources 星間ダスト 0.05 0.1 0.15 AKARI mid-IR diffuse 0.2 maps Image : AKARI 9 (in μmgalactic / 90 μmcoordinates) ratio ⇒ 数千個の多様な近傍銀河に対して、 9 μmgrains) & 18 μm bands (PAH / silicate 星からのダスト供給の様子・化学進化を調査 2-4 氷で探る銀河の現在と過去 Yamagishi+ 13 H2O氷 … 分子雲内部の低温環境 (AV~10 mag. T~10 K) で、ダストの表面反応で生成。 CO2氷 … H2O - CO氷への紫外線照射で生成 ⇒ CO2/H2O比 … 分子雲における 紫外線照射 (SNRの影響) の歴史 「あかり」によるM82のスペクトルマッピング カラーマップ: H2O+CO2 iceの柱密度 Contour: 分子雲 (12CO) カラーマップ: H2O ice Contour: PAH (星生成) カラーマップ: CO2 ice Contour: PAH (星生成) 星生成活動が、分子 より詳細な空間分布 ←高空間分解 氷の結晶構造 (熱史) ← 44, 62 µm帯観測 進化・組成に与える影響 3. 銀河の磁場の進化 銀河スケールでの磁場 磁場は星生成に重要 Face-on 星形成領域 Serpense by IRSF/SIRPOL Sugitani+ 09 ローカルな磁場構造と 銀河スケールの磁場の関係? Edge-on M51 (Scarrott+ 87) NGC891 (Fendt+ 96) 宇宙初期から普遍なのか? Mergerによって磁場は どのように進化するのか? 広視野・高空間分解 偏光マッピング 遠くの銀河の空間分解 偏光マッピング Interacting/merger 銀河 磁場の進化は銀河の星生成にどう影響するのか? 4. まとめ 2020年代の課題 ⇒ 星・惑星形成 1. 銀河の星生成率の多様性 - 見えないH2ガス (CO-dark gas) の定量化 2. 銀河の物質 (ガス・ダスト) 進化 ⇒ 銀河・銀河団 - 低金属量銀河の星生成 ⇒ 恒星物理・超新星・ - ガス・ダスト進化の多様性 晩期型星 - 氷で探る銀河の現在と過去 3. 銀河の磁場の進化 • 研究手法 - 赤外線スペクトルによるガス・ダスト診断 + 可視・近赤外偏光観測 - 銀河サンプル: <100 Mpc の無バイアスサンプル (約4,000個)に対する、スペクトルマッピング 15
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