第 49 回日本水環境学会年会優秀発表賞(クリタ賞)を受賞して 岐阜大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻 この度は「第 49 回日本水環境学会年会」において, 年会優秀発表賞(クリタ賞)を授与していただき,誠に ありがとうございます。公益財団法人クリタ水・環境科 学振興財団の皆様および,学会関係者の皆様,そして審 査に関わられた皆様に心より御礼申しあげます。 私は,微生物燃料電池を用いて廃水からリンを回収す る方法についての研究を行っています。これは,微生物 燃料電池のカソード(正極)に MAP としてリンを析出 させ,回収するという方法です。微生物燃料電池は,廃 水中の有機物をエネルギー源として発電できる,次世代 型の廃水処理技術として実用化が期待されています。一 方で,水環境保全および資源確保のために,栄養塩類を 多量に含む廃水等からリンを除去・回収することが望ま れています。微生物燃料電池におけるカソード上へのリ ン析出は,酸素還元反応で水酸化物イオンが生成され, カソード近傍の pH が局所的に上昇することによると考 えられます。しかし,実測例がないため,実際にリンが 析出する程度まで pH が上昇しているのか,pH の空間 分布はどうなっているのかといったことがわかっていま せん。そこで本研究では,微小 pH 電極を作成し,微生 物燃料電池の運転条件を変えてカソード近傍の pH 分布 を測定しました。そして,カソードにリンを析出させた 実験での析出量およびパターンとの比較を行い,微生物 燃料電池の運転条件が,カソード近傍 pH およびリン回 収に与える影響を明らかにしました。pH 分布の測定で 本 山 亜友里 は,内部が見えず視認が困難であったことから,電極の 先端位置を把握するために自作した位置センサーを用い る工夫を行い,さらに駆動装置を用いて自動制御を行う ことで,カソード近傍の pH 分布を 2µm おきという非 常に細かい間隔で実測することができました。実測の結 果,いずれの条件においても pH はカソード近傍で急激 に上昇し,最大のもので 9.4 に達していたことがわかり ました。またリン析出量が多くなる条件では,カソード 近傍の pH が高くなるという傾向がみられました。これ は,リン析出がカソード近傍の pH 上昇によるものであ るという仮説を支持する結果でした。 ポスター発表の際には,多くの方々が足をとめ,私の 拙い説明に熱心に耳を傾けていただき,誠に有難うござ いました。貴重な御意見,御指摘を多数いただけたこと で,今まで気づかなかった点や研究の新しい切り口など を知ることができ,大変勉強になりました。また,他の 発表者の皆さんが熱心に自身の研究について説明してい る様子を目の当たりにして,私自身も大きな刺激を受け ました。今回の受賞を励みに,博士後期課程に進学後も より一層研究に精進していきたいと思っております。皆 様, 今後ともご指導のほどよろしくお願い申しあげます。 最後に,本研究を遂行するにあたり手厚い御指導,多 くの御助言を賜りました諸先生方,そして辛いときにも 励まし支えてくれた家族や友人,研究室の皆様に心より 御礼申しあげます。
© Copyright 2024 ExpyDoc