シミュレーションとデータ解析の融合計算の基礎 情報・システム研究機構 統計数理研究所 モデリング研究系・データ同化研究開発センター 樋口 知之 異種の情報を計算機上で統合・融合するためには、その情報往来の架け橋となる数理的仕 組みが必須である。これまでさまざまなアイデアが提案され実用化されているが、そのほ とんどはベイズ統計学の枠組みで解釈可能である。シミュレーション計算結果を計測デー タに直接的に紐付けるデータ同化についても同じである。本講義では、初学者でも学べる ことを念頭に、条件付き確率、同時確率、周辺化、ベイズの定理といったベイズ統計学の 初歩から入り、シミュレーションモデルを状態空間モデルへ埋め込むことで、諸々の計算 操作の意味が体系的に把握できるようにする。その後、時間に依存する状態ベクトルやモ デル内のパラメータの推定のための諸計算アルゴリズムを紹介する。具体的には、逐次ベ イズフィルタ、特に Particle filter, Ensemble Transform Kalman filter などの逐次ベイズフィル タ、Markov Chain Monte Carlo (MCMC) 法などのモンテカルロ計算、またアジョイント法に 代表される 4 次元変分法について触れる。最後に、シミュレーション計算を効率的に実施 するための実験計画法であるエミュレーションについて概説する。エミュレーションは、 シミュレーション計算のある出力値を目的変数として、説明変数群(記述子)の選択と応 答関数の同定を同時に行う、実験計画法の一つである。クリギングを用いた部分空間内挿 法も、その特殊版と見なせる。なお本講義は、吉田講師による情報統合型物質・材料探索 の基礎となっていることを申し添える。
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