体ほぐし - 香川県小学校体育連盟

体ほぐし運動(5・6年)
体ほぐしの運動
~自分を見つめ、友だちのことを考え、気付きを大切に~
高松北ブロックⅠ
1 体ほぐしの運動のねらい
(1)主題について
体ほぐしの運動は、体つくり運動の領域の中にあり、これまで何をどう行い、それがどこにどのように
つながっていくのかということに曖昧さを感じるものであった。それゆえ、各単元の帯活動として組み入
れることや、学級開きの際に仲間づくり、学級づくりとして授業実践が行われることがあった。そこでは
評価も含めて、学習内容がはっきりとしていないものが多かったのではないかと考えられる。しかし、学
習指導要領に明記されている体ほぐしの運動のねらいは、①心と体の関係への気付き②体の調整③仲間と
の交流の3つである。これらのねらいに基づいて、今回の体ほぐしの授業を、従来までの帯活動としてで
はなく、単元として構成することが価値があると考えた。体ほぐしの運動では、そのねらいから技能面に
ついては評価をしない(参考文献:文部科学省 学校体育実技資料集 第7集 体つくり運動-授業の考
え方と進め方-)こととし授業を構成した。したがって、単元を通して何ができるようになったかではな
く、子どもたちの思考面や仲間との関わりにおいて、どのような変容があったかを重点的に捉えていく方
向で研究を進めていくこととした。
これまでの体ほぐしにおける課題は、授業後の子どもの成長した姿(ゴール像)が明確でないというこ
とが挙げられる。また、活動における方法ばかりに目を向け、その活動を通してどう成長すればよいのか
という内容面をはっきりとイメージし、具体化することなく授業を進めてきたことにある。さらには、系
統性が分かりにくい。また、単なる帯活動として取り扱い、準備運動で終わってしまっている現状がある。
体ほぐしでは、運動に取り組んでいる子どもから「やった!」
「友だちと一緒にできた!」
「任せて!」
「信
じて!」
「楽しいね!」などのねらいに迫ることのできる具体的な言葉を引き出すことを目標とし、教師
が指導・支援を行っていく必要がある。また、教師の発問においても、技能面に焦点化しがちなものから、
体ほぐしに合ったものにしていかなければならない。従来の「どうやったらうまくできる?」というもの
ではなく、学習のねらいに即した言葉かけで、子どもの学習の視点を方向付けしていく必要がある。
そこで本研究では、体ほぐしのねらいを明確にし、単元化することで子どもたちの思考や気付きが深ま
っていくと考え、授業実践を行った。
<体ほぐしの運動のねらいのイメージ図>
☆生理的・機能的な状態
・すぐに息がきれる
・心臓がドキドキする
・体が柔らかくなった
☆心に及ぼす影響
・気分がスッキリする
運動の楽しさ
心地よさ
☆眠った状態から目覚めた状態へ
☆心身の調子を整える(ストレス解
消)
心と体の解放
体への気付き
運動への
スイッチ・オン
体の調整
技能は評価しない
☆コミュニケーション能力
・仲間を思いやる心
・対立を修復する力
仲間との交流
(参考文献:平成26年度体育実技伝達講習会資料)
高松・北Ⅰ 1
<体ほぐしの運動のねらい>
1 心と体の関係に気付く
運動すると心が軽くなったり、体の力を抜くとリラックスできたりす
るなど、心と体が関係し合っていることなどに気付くこと。
2 体の調子を整える
運動を通して、日常生活での身のこなしや体の調子を整えるとともに、
心の状態も軽やかにし、ストレスを軽減したりすること。
3 仲間と交流する
運動を通して、仲間と豊かに関わる楽しさを体験し、さらには仲間の
良さを認め合うことができること。
(2)体ほぐしの運動の研究の視点
子どもと共に創る体育学習に迫るために・・・
児童の願い・思い
・いろいろな技ができるようになりたい。
・友だちと仲良く関わりながら学びたい。
・体をたくさん動かせて楽しく運動したい。
教師のねらい
・誰もが楽しく運動に取り組んでほしい。
・肯定的な関わりを生み出したい。
・できる・かかわる・わかる喜びを!!
すり合わせる
重ね合わせる
必ず学習指導要領を基にした
ねらいの設定・考案
①主体的な活動を促し、児童の意識の流れを大切にした単元構成
子どもたちが進んで学習に取り組むには、単元を貫く課題をもつことができ、その課題が子どもた
ちにとって必要感のあるものでなければならない。また、子どもたちがみんなで力を合わせて、チャ
レンジしてみたくなるような活動を設定する必要がある。仲間がいたからこそ達成できたという集団
的達成感を味わわせることで、運動することの楽しさや友だちと一緒に解決することができた喜びに
触れさせたい。
単元を構成することで、活動を通して生み出された課題を次時への活動へとつなぎ、みんなで解決
する方法を見出していく学びをつくることができると考える。
②めざす子ども像の明確化
どんな学習にも、単元を通して身に付けたい力やめざす子どもの姿があり、そこをめざして児童の
実態を考慮しながら単元を構成していく。この「体ほぐしの運動」においても同様であり、単元終了
後の子どもたちの姿を明確にもった上で、授業を計画・実践していくことが重要であると考える。
③児童の願いと教師のねらいをすり合わせる授業づくり
授業づくりを考えていく際、
「○○な子に育ってほしい」という教師のねらいと、
「○○ができるよ
うになりたい」などという児童の思いができる限り寄り添い、両者の思いや願いが一つの方向に向か
って学習活動が展開されることが大切である。高松北ブロックでは、それらをすり合わせるために、
複数名の教師集団でビデオ撮影された毎時間の授業を観察し、教師行動や子どもの反応などを分析
しながら、次時への計画(PLAN)修正を行う。
高松・北Ⅰ 2
実践Ⅰのねらい 「体ほぐしで運動大好き!(5年)
」
(1)子どもの実態と目指す姿
本学級の児童は、男子27名、女子12名、計39名である。新体力テストの結果から、運動能力が高
いA・B判定の割合は、全国及び県平均よりも高いが、D・E判定の割合も同様に高く、運動能力の二極
化傾向が見られる。日常は、体を動かしたり、運動したりする児童は多く、休み時間は外でドッジボール
やサッカーをして遊んでいる児童が多い。しかし、外遊びを好まず、教室等で読書をしたり、友だちと話
したりして過ごしている児童も数名いる。
Q1 体を使って遊んだりスポーツしたりすることが好きですか?
Q2 体育の学習が好きですか?
Q9 友だちと教え合ったり協力したりして活動していますか?
Q13 体育の学習が「楽しい」と感じたことはありますか?
Q14 体育の学習が「楽しくない」と感じたことがありますか?
アンケートの結果から、友だちとともに活動することには、喜びや楽しみを感じている児童が多い。し
かし、工夫して活動することや役割を果たしながら活動することは苦手としている児童が10名程度い
る。
Q1とQ2で「どちらかといえば嫌い」「とても嫌い」と答えた運動を苦手としている児童は2名おり、
その理由は、「運動すると疲れるから」「練習してもうまくならないから」「体を動かすのが面倒だから」
などといった理由であった。また、Q13やQ14から体育の学習については、楽しく感じた経験が少な
いという結果であった。
これらの実態を受けて、
「わかる」
「かかわる」喜びを感じ取れる授業づくりの重要性を感じ、単元構成
や学習内容を工夫して、易しい運動を多様に設定し運動意欲を継続させていくことが必要であると考えた。
運動に積極的に取り組む児童の中には、勝敗にこだわりをもつ者がおり、逆に、運動時間が少ない児童は、
技能面に対する自信のなさから運動することへの関心が低下していると考えられる。したがって、運動経
験の有無に関係なく誰もが楽しめる手軽で易しい運動を様々に経験することで、運動の技能の習得や向上、
勝ち負け、運動の得意不得意を気にせずのびのびと運動のもつ本来の楽しさを味わわせていきたい。そう
することで、運動に対して消極的な児童が、友だちと協力したり、相手のことを考えて体を動かすことを
楽しんだりして、意欲や興味を高めながら運動を楽しむ姿を期待したい。
(2)教材設定の理由と学習内容
上述した通り、運動する子どもとそうでない子どもの二極化に対する課題や、運動に対して技能の向上
を主として捉えている子どもの意識の変容をねらい、「体ほぐしの運動」を通して、易しい運動を多様に
経験させることで体を動かすことの楽しさを味わい、運動意欲の継続につなげてく。運動量、心や体の気
付き、調整、仲間との交流といったねらいを各種の運動の中に位置付けた単元構成にし、心と体をほぐし、
子どもの豊かな動きを引き出したいと考えた。
また、運動経験の有無が影響することなく、誰もが楽しめる手軽な運動や律動的な運動に単元を通して
ペアやグループで取り組み、運動の得意不得意を越えて仲間と運動を楽しんだり協力して運動課題を達成
したりできるようにした。
今まで気付いたり意識したりしたことがあまり無いであろう心や体の変化について、気付いたり意識し
たりできるような発問や言葉かけは、「体ほぐしの運動」のねらいに迫るために重要になってくる。自他
の体についての気付きを促す発問や言葉かけを意図して行うことで、「体ほぐしの運動」特有の楽しさや
喜びを感じ取れると考えた。また、運動中や運動後に自分や相手の心や体の状態などについて、気付きの
言葉かけをお互いに行うことで、さらに友だちとのかかわりが深まるようにした。
本単元の「体ほぐし運動」は、5年生の現段階では、動きのバリエーションを増やすとともに、ねらい
の一つである「自分や相手の心や体の関係に気付く」ことで、心と体が一体であることを実感・体得でき
ることを中心に計画し、個々の動きの質を高める洗練化については、6年生で実践したいと考えた。
わかる
かかわる
体ほぐしの運動を通して、体を動かすことの楽しさや心地よさが分かる。
運動を通して仲間と豊かに関わる楽しさを体験し、仲間のよさを認め合うことができる。
高松・北Ⅰ 3
3 単元計画
体ほぐしで運動大好き! 全4時間
目
単
元
の
は
じ
め
標
主な学習内容
単元を通しての体ほぐしの 単元の目標を共有化すると共に、自己の課題を明確に設定する。
運動の目標や自分のめあて 様々な体ほぐしの運動を行い、その行い方を知る。
を設定し、学習の流れを理
解する。
体ほぐしの運動に慣れ、心
と体の状態に気付いたり、
体の調子を整えたり、友だ
ちと一緒に活動することの
よさを楽しんだりすること
ができる。
単
元
の
な
か
気 運動すると心や体に変化が起こることに気付く。
○
調 運動すると気分がすっきりする。
○
交 友だちと一緒に活動すると楽しくできる。
○
○やや活動的な運動(運動の楽しさ・心地よさを味わう)
・友だち運び
・人間オセロ
・風船運び
・手つなぎ鬼 等
○ゆったりと静的な運動(心と体の状態や変化に気づく)
・リラクゼーション
・ストレッチング 等
○気持ちを合わせて活動的な運動(友だちと交流する)
・あんたがたどこさ
・手つなぎラン 等
ペアやグループで相談しな
がら、運動のねらいに合っ
た、やってみたい運動を選
んで行い、心と体の関係を
考える。
単
元
の
ま
と
め
気 運動すると相手の心や体にも変化が起こることに気付く。
○
調 運動すると気分が落ち着き、ストレス解消になる。
○
交 友だちのよさを認めながら運動できると心が温かくなる。
○
○やや活動的な運動
・友だち運び
・人間オセロ
・風船運び
・手つなぎ鬼 等
○ゆったりと静的な運動
・リラクゼーション
・ストレッチング 等
○気持ちを合わせて活動的な運動
・あんたがたどこさ
・手つなぎラン 等
の中から、やってみたい運動を選んで行う。
高松・北Ⅰ 4
4 授業の詳細【3/4(本時)
】
① 易しい運動の多様化や単元構成の工夫(PLAN)
体ほぐしのねらいを子どもたちと確認し、単元の目標をおさえている
ので、子どもたちの学習の思考や方向性がぶれることはなく、単に勝ち
負けや上手にできることに価値を置いていなかった。また、単元を通し
てねらいを大切にし、子どもと共有しながら実践を行っていくことで、
学習の積み重ねが見られた。
活動面で見ると、易しい運動を、個人で→ペアで→グループでと変化
をもたせて意図的に変えてきたことでも捉えられる。運動の得意な子ど
もだけが意欲的に活動するのではなく、誰もが取り組みやすいスタート
にすることで、みんなで楽しく、体を通して心を通わせていた。用具を
用いた運動や、リズムを取り入れること、互いの体への気付きを促すス
トレッチ、動作や人数の変化など、多岐にわたる工夫で、子どもたち
は元気に笑顔で運動を行い、男女関係なくかかわりながら活動に没頭し
ていた。
そして、これまで単元を通して学習してきたこと
が明確になるよう板書が整理されており、積み重ね
が視覚的にも捉えられ、子どもたちが何に向かって
学習しているのかわかりやすいものとなっていた。
その内容は、子どもたちの気付きの内容を掲示して
おり、心の言葉を大切にしていた。
② 仲間と豊かにかかわる楽しさを体験するとともに、心と体に気付き合える言葉かけの工夫(DO)
体ほぐしの活動では、どう技能を高めていくかというものではなく、で
きることを生かして動きを工夫し、仲間と交流することが大切である。そ
して自他の心や体の気付きを促していくことが求められる。本実践の一活
動である風船バレーでは、用具(リングバトン)を用いたものから、体全身
を使って自ら工夫していく姿が見られた。友だちと相談しながら息を合わ
せて動きを調整していく様子は、相手意識をもち、気付きや動きを大切に
していなければ成り立たないものではないかと考える。易しい運動を発展
させることで、様々な気付きや思考を深めていけるとわかった。
子どものワークシートから、
「体がやわらかくなった気がしました。
」
「友だちに気持ちいいところをたた
いてもらってスッキリしました。
」という体への気付きや、心地よさを感じること、体の調子を整えるこ
と、また「息を合わせながらとんで楽しかった。
」
「友だちが指示してくれた。
」
「協力してできました。
」
など仲間との交流のこともあり、改めて関係を深め、互いのよさを認め合うことにつながった。
子どもたちが運動の楽しさや心地よさを感
じ、どう気付き、どう深めるかということは
教師の言葉かけが重要になってくる。また、
振り返りでは子どもの言葉が率直に表れる。
その価値を吟味し、まとめて価値付けていく
ことが大切だと感じた。本実践では、子ども
たちと多様にかかわり、学習内容に沿った
意識的な声かけをする様子が見られた。そ
の声かけは活動を発展的にし、仲間とのか
かわりを深めるものであったが、気付きを
促す面では課題も見られた。研究課題とし
て今後も体ほぐしに合ったものを考えて
いきたい。
高松・北Ⅰ 5
実践Ⅱのねらい 「心を一つに!体も心もときほぐそう!(6年)
」
(1)子どもの実態と目指す姿
本学級の児童(男子13名、女子12名、計25名)は、活発で運動好きな児童が多く、業間や昼休み
は運動場や体育館で元気に遊んでいる。また、体育の授業は、積極的に活動に取り組む児童が多い。加え
て、スポーツ少年団や校外での運動系クラブに参加している児童も学級の半数程いる。その反面、運動に
対して苦手意識をもつ児童がおり、普段の体育授業では活動に対して消極的になる児童も見られる。
また、児童からとったアンケートは以下のとおりである。
体育の授業が好きである。
友だちと関わって運動することは好きである。
運動を通して(運動後)体の変化に気付くことはある。
自分の体の調子を整えたり、ほぐしたりすることは好きである。
はい 20人
はい 22人
はい
4人
はい 12人
いいえ
5人
いいえ
3人
いいえ 21人
いいえ 13人
アンケートの結果より、体育の授業が好きと答えた児童は20人(8割)はいるものの、5人(2割)
の児童が体育の授業は嫌いと答えている。しかし、その5人のうち4人は友だちと関わって運動すること
は好きであると答えている。その理由として、
「友だちと関わると楽しい」と答える児童が多くいた。こ
のことから、誰もが運動に親しむためには友だちとの交流は必要な活動であると言える。しかしながら、
クラスの実態として友だちと関わり、学習することが好きな児童は多いものの、友だちとうまく関われず、
自分から積極的になれない児童や自己表現することが苦手な児童がいる。児童のアンケートからも子ども
たちの自尊感情は低く、友だちに認められていないと感じている児童も数名いた。また、クラスがまとま
っていると感じている児童は多くいるものの、クラスの実態を見ると、自分自身のことを優先することが
多く、相手の動きをみて進んで動いたり、相手の気持ちをくんで共感的に受け止めたりすることには課題
も感じる。仲のよい友だち同士では肯定的な人間関係を築くことができているものの、クラスの中では相
手に対して否定的な言葉が飛び交う場面もある。
また、気付きに関しては、アンケートより運動後の体の変化を感じることのある児童は4人と少ない。
どのようなことに気付くかという答えには、
「運動後は体が軽くなる」や「アキレス腱や足が痛くなる」
があった。しかし、多数の児童が自分の体に意識が向けられていないと感じる。体の調整に関しては、自
分の体の調子を整えたり、ほぐしたりすることが好きな児童は12人とクラスの約半数いた。理由として
「体をほぐすと気持ちがよい」や「体が動きやすくなる」
、
「体が温まる」などがあった。しかし、約半数
の児童が体の調子を整えたり、ほぐしたりすることに好意的でないことが分かる。
このようなクラスの実態から、クラス全体が肯定的な人間関係が築けるよう本単元のねらいにある仲間
との交流を通してお互いを認め合い、関わりを深めていけようにする。そして、交流を行う中で、自分や
相手の体に関心を向け、気付きを深めたり、体を調整することの心地よさを感じたりすることができるこ
とを目指して単元構成を考えた。
(2)教材設定の理由と学習内容
本学級の児童は、これまでの6年間、体育授業における全ての領域の学習に関して、その運動がもつ特
有の技能向上を中心に学習を進めてきた。そのことにより、上記のアンケート結果の通り、運動すること
に関心をもっているが、運動することによって、自分や相手の心や体に変化があること、運動前と運動後
の心や体に変容が起こること、体をほぐすことで心地よさを感じることができること、などに意識を向け
て運動することができていないことが分かる。
よって、本実践では、技能習得をねらいとしない体ほぐしの運動を取り上げ、友だちとの交流を中心に、
易しく楽しい運動を取り上げて体を動かすことの心地よさを体感させるとともに、心と体への気付きや体
の調子を整えることへのねらいにも迫っていきたと考えた。
わかる
かかわる
体ほぐしの運動のねらいを知り、ねらいに応じた運動の行い方を工夫して取り組むこと
ができる。
体を動かす楽しさや心地よさを感じ、友だちとルールを守り、協力して運動することが
できる。積極的にペアやグループの友だちと関わり、進んで運動に親しんでいる。
高松・北Ⅰ 6
3 単元計画
事
前
心を一つに!体も心も ときほぐそう! 全4時間
学習内容
「予想される子どもの姿」と「教師の支援」
○アンケート調査や簡易な運動
運動の技能の向上をねらいとしない体つくり運動の学習の進め
を行い、自分の体について理解
方について理解できない。
する。
学級目標の「心を一つに」に着目させ、学級活動とも関連を図り
ながら、
「協力」することの本質を探ることを周知する。
○学習の進め方を知る。
○ペアやグループの中で、スト
レッチや息を合わせて行う運動
を通して、体ほぐしのねらいに
気付く。
単
元
の
は
じ
め
単
元
の
な
か
○ストレッチやマッサージ、深
呼吸を行う。
○ペアやグループで体や心をほ
ぐす運動を行う。
○「平均台で大移動」を行い、
「体
への気付き」
「体の調整」
「交流」
について課題をもつ。
○ペアでストレッチやマッサー
ジを行う。
○ペアやグループで体や心をほ
ぐす運動を行う。
○「平均台で大移動」を行い、
前時に出た課題について解決す
る。
個を中心とした活動になり、体ほぐしの運動でねらう「気付き」
「調整」
「交流」の視点をもって運動に取り組むことができない。
学習のねらいを再確認する声かけを行う。
うまく関われているペアを取り上げ、紹介して広げる。
体ほぐしの運動のねらいを理解し、ペアやグループで積極的に
関わりながら取り組む。
思考が深まったり広がったりせず、課題が単調になる。
各グループの活動を巡視し、友だちとの関わり、相手を意識した
気付きなどに対して、積極的に賞賛していく。
付けたい力に迫ることができるいくつかの活動を用意してお
き、興味・関心をもって取り組めるようにする。
人数や難易度に段階を設け、児童の実態に応じて提示する。
前時に行った「平均台大移動」の活動の様子が分かる静止画を提
示し、自分や友だちの動きを確認させて本時の課題につなげてい
く。
「協力する」とはどんなことだったのかを、前時までにまとめた
具体的なキーワードを示しながら、再確認してから活動する。
自分とグループの課題意識にズレがあり、活動や解決の視点が共
有できていない。
「何人乗れるかな」を行い、友だちとの関わりや相手への意識に
着目させ、体ほぐしの運動のねらいを再確認する。
継続した活動に取り組むことで、
解決の見通しをもって学習して
いる。活動に飽きが見られ始める。
本時までに学習した内容を活用して、次時では自分たちで活動を
選択しながら運動に挑戦していくことを伝える。
単
元
の
ま
と
め
○ペアやグループでこれまで行
ってきた体ほぐしの運動を選ん
で行う。
○選んだ体ほぐしの運動を工夫
し、進んで運動に親しむ。
「仲間との交流」を主なねらいとした多種多様な活動を用意して、
ペアやグループで選択して取り組めるようにする。
体ほぐしの運動のねらいを理解し、
「仲間との交流」に着目しな
がら、課題を解決しようと取り組んでいる。
「協力する」ことの具体を子どもから出た言葉でまとめ、今後の
学校生活において意識して取り組んでいくことを伝える。
高松・北Ⅰ 7
4 授業の詳細【2/4・3/4(本時)
】
第2時 : 授業の実際
本時の学習内容
○ストレッチやマッサージを行う。
○ペアやグループで体や心をほぐす運動を行う。
○「平均台で大移動」を行い、
「体への気付き」
「体の調整」
「仲間との交流」について課題をもつ。
子どもの反応
・ 体ほぐしの運動のねらいを理解し、ペアやグループでストレッチやマッサージを行っている。
・ 課題意識が明確になっていない児童がおり、学習内容に迫る活動や関わりが見られない。
本時の学習内容の振り返り
・ 「平均台で大移動」に取り組んだものの、思考が深まったり広がったりせず、課題が単調になる。
・ できることにこだわったり、仲間との肯定的な関わりがもてていなかったりする児童がいる。
・ 自分ができたらそれで終わっている児童が見られる。
・ 「協力」について意識はしているものの、行動に表れていない場面が見られる。
リフレクション内容
・ 「協力」の捉え方に、教師と子どもの間でズレが見られる。教師がこだわっている「協力」することに
ついて話し合う時間をもち、共通理解のもと学習に取り組んだ方がねらいに迫ることができる。
・ 授業後のワークシートから、視点が多すぎるため子どもは区別して書くことができていない。もっと単
純に授業をふり返らせ、教師が「体への気付き」
「体の調整」
「仲間との交流」のそれぞれを仕分けして、
キーワードとしてまとめてやると意識化を図れると思う。
・ 児童がつぶやいた瞬間や気付いた瞬間に、教師がどのような言葉かけをするのかを考えておかなければ
ならない。事前に児童からの言葉を予想し、それに対する教師の言葉かけをイメージしておく必要があ
る。
・ シンプルな活動なので、子どものつぶやきや反応を予想し、3つのねらいに分類しておくと、実際の授
業での評価を適切に行うことができる。
・ 「人間イス」が成功したときに大きな歓声があがった。達成感を感じていることがよく分かる。
リ
フ
レ
ク
シ
ョ
ン
前
リ
フ
レ
ク
シ
ョ
ン
後
リフレクション後の修正(次時の予定・教師の意識の変容)
・ 朝の活動の時間等を利用して、
「協力」の捉え方についてのズレを
すり合わせる時間をもち、次時への活動とつないでいく。
・ 学習に積極的に取り組めるように、ペアグループをつくってお互い
を見合う活動を取り入れる。
・ 児童が、授業を素直にふり返ることができるようにワークシートの
形式を工夫する。
・ 集団的な達成感を味わうことができ、安心感をもって取り組むこと
ができる「人間イス」を、次時のグループで心をほぐす活動として
取り入れてみよう。
高松・北Ⅰ 8
第3時(本時) : 授業の実際
本時の学習内容
○ストレッチやマッサージを行う。ペアやグループで体や心をほぐす運動を行う。
○「平均台で大移動」を協力して行う。
子どもの反応
・ 体ほぐしの運動のねらいを理解し、ペアやグループでストレッチやマッサージを行っている。
・ 導入の場面において、
「協力する」ことは、
「いいよ。
」
「おしいおしい。
」
「もう一度やってみよう。
」
「大
丈夫。
」などの温かい言葉をかけたり、友だちのために「支え合い」
「助け合い」
「励まし合う」などの関
わり方をしたりすることであることを確認しておいたため、見通しをもって活動に取り組むことができ
ている。
・ 友だちが通りやすいように小さくしゃがむ、落ちないよう
に手で支える、どうすればいいのか動きを言葉で伝える、
失敗しても「いいよ。もう一回やってみよう。
」と温かい
声をかける姿が多く見られる。
・ ペアグループをつくって、お互いの活動の様子を見合うこ
とで、自分たちには無い声かけや関わりを発見し、生かそ
うとする姿が見られる。
・ 自分が動き終わった後にも役割があることに気付き、友だ
ちのために「もっとみんなが詰めて座ろう。
」
「そこで、手
を貸してあげるといいんじゃない。
」など最後まで関わり
をもとうとしている。
気付きや思考を促す、教師の言葉かけや発問(DO)
○「リラックスできているね。
」
「相手のことを考えて、強さを調整しながらほぐすことがで
きているよ。
」
【体の調整】
○「相手の心の状態を聞き取りながら、体をほぐしているね。
」
「ほぐされている人は今どんな気持ち?」
【心と体の気付き】
○「何で小さくしゃがんだの?」としゃがんだ側に問いかける
だけではなく、
「しゃがんでもらってどんな気持ちがした?」としゃがんで
もらった側にも問いかける。
【仲間との交流】
○「みんなが終わるまで友だちにアドバイスをあげている
ね。
」と自分が移動し終わっても最後までみんなのために関
わろうとしている児童を賞賛し、価値付ける言葉かけをす
る。
【仲間との交流】
○「みんなで達成したからこそ、うれしい気持ちがおおきくな
るね。
」
リフレクション内容
・ 導入場面で活動のねらいが明確になっていたので、子どもたちの思考がスムーズに流れた。
・ 体ほぐしの運動のねらいに迫るための言葉かけや発問を単元を通して行うことで、少しずつ児童の意識
も変わり始めた。
・ さらに、心の内面に迫る問いかけや発問が必要になってくる。
・ 教師を介してのつながりから、児童同士の関わりをさらに深めていきたい。
高松・北Ⅰ 9
5 成果と課題
(1)子どもの変容
子どもの実態(単元前)
わかる
かかわる
・相手の行動や表情から気持ちを読み取ったり、気 ・友だちの様子を見て、自分から進んで行動するこ
付いたりすることができず、自分の行動が相手に
とができず、自分の役割が終わると仲間に働きか
どう伝わるか気付くことができていない。
ける声かけや補助をする様子がほとんど見られな
い。
・体と心はつながっており、自分の行動が相手の心
に影響を与えることを十分意識できていない。
・
「協力すること」について、自分と比較的近いとこ
ろにいる友だちには声かけをして指示を出した
・課題を達成するための協力の仕方が分からず、相
り、タイミングをとろうとしたりする場面は見ら
手の動きに関心が向けられていない。
れたが、グループ全体には広げられていない。
子どもの実態(単元後)
わかる
かかわる
・相手の行動や様子に目を向けて、課題解決に向け ・グループの課題達成のために自分ができる役割を
て動きを工夫することができた。しかし、自分の
考え、積極的に友だちにかかわろうとする姿があ
行動が相手の気持ちにどう伝わるか、どう影響を
った。グループ全体に声を出して指示をしたり、
あたえるか、心と体のつながりの意識は弱い。
課題を達成するとみんなで喜んだり、共感したり
する場面が増えた。
・課題を達成するための協力の方法が分かり、相手
に合わせて平均台の渡り方や相手の渡らせ方、相 ・自分から相手の動きに合わせて手を差しのべたり、
手の補助の仕方が分かる。
相手に合わせてしゃがみ方をかえたりして、相手
の気持ちになって自分の行動をかえ、協力するこ
とができた。
実践Ⅰについて
◯ さまざまな活動を取り入れて運動することで、全員が楽しそうに活動することができていた。また、ペ
アやグループでの活動も豊富に設定されていたので、友だちと必然的に関わりながら運動する姿が見られ
た。
◯ どの児童も友だちと積極的に関わりながら活動することができていた。また、同じ活動において、人数
を増やす工夫をすることで関わりが広がっていく様子が見られた。それらの活動の中で、
「痛くない?」
「大
丈夫?」と相手の体を気遣った言葉のやりとりがあったり、
「もう一回!」
「ごめん」
「がんばろう!」と
お互いを励ましたりする声があった。
■ 教師からの言葉でまとめることが多くあった。子どもが何に気付き、感じているのか「気付き」に関し
て子どもから引き出すことができるとよかった。また、心と体の変化の気付きが広がったり深まったりす
る声かけ・発問の工夫が必要である。
■ 与えられた活動に取り組んでいくだけではなく、子どもたちがペアやグループで話し合って運動を考え
出したり試したりする主体的な学びを生み出す工夫がほしい。
高松・北Ⅰ 10
実践Ⅱについて
◯ 単元前や単元途中で、学級活動の時間を活用して学級全体の課題を考えたり、再確認したりする場を設
定することにより、共通理解のもとで単元を通して学びを進めることができた。
◯ 技能面に関すること以外の言葉かけや発問を意図的に投げかけることで、児童の意識も技能の向上では
なく、仲間との関わりなどに向けることができつつあった。
◯ 「平均台で大移動」をペアグループで行うようにリフレクションで再修正したことで、グループを超え
た関わりを生み出すことができた。
■ 教師が話す場面が多くあり、児童同士で心の変化や体への気付きを問い合うような活動があればよかっ
た。また、児童から出た言葉を「体ほぐしの運動」の3つのねらいに合わせて分類して板書すると、子ど
もたちも意識しやすかったのではないか。
■ 「仲間との交流」に関しては子どもたちの中に意識があったことは伝わってきたが、
「心や体への気付き」
「体の調子を整える」に関する言葉は聞かれなかった。それぞれ3つのねらいに迫ったり、気付かせたり、
考えさせたりするための教師の声かけ・発問を精選しておく必要がある。
主張点に対して
主体的な活動を促し、児童の意識の流れを大切にした単元構成
成果
課題
単元を構成し、単元を貫く課題を設定することで、活動の見通しと安心感をもって取り組む
ことができた。また、活動を通して生じた課題について、ペアやグループで学び合いながら解
決を図る授業をつくることができた。
こちらから与えた活動に子どもたちが受動的に取り組んでいた印象が強かった。つまり、子
どもたちが学習課題に対して必要感をもっていないため、新たな学びを自分たちで発見したり
獲得したりしていこうという主体的な学びを促すことができなかった。
技能の向上をねらいとしない「体ほぐしの運動」における、チャレンジしてみたくなるよう
な活動の工夫について今後研究していく必要がある。
めざす子ども像の明確化
成果
課題
「仲間との交流」に関して教師の思いが明確にあり、その思いに迫れるように言葉かけを考
えたり、発問を工夫したりしながら学習を進めていくことができた。単元後のゴール像をしっ
かりと描いておくことで、学習中の子どもたちに問いかけたり揺さぶりをかけたり、賞賛の言
葉をかけたりすることができる。
クラス全体が肯定的な人間関係が築けるように、
「仲間との交流」を通してお互いを認め合
い、関わりを深めていき、そして、交流をする中で、自分や相手の体に関心を向け、気付きを
深めたり、体を調整することの心地よさを感じたりすることができることを目指して単元構成
を考えた。
「心と体の気付き」を学んだ子どもたちが、単元終了後にどんな姿であってほしい
のか、また、その他の「体の調子を整える」
「仲間との交流」に関しても同様であり、明確に
もつことを意識して取り組んだが、抽象的な部分が多くあり目の前の子どもにどう声をかけれ
ばいいのか悩むことが多くあった。
学級の実態や人間関係に関する課題をしっかりと把握し、
「体ほぐしの運動」のねらいと照
らし合わせながら、どんな姿をめざしているのか、どんな関わりをもってほしいのか、どんな
気付きをしてほしいのかなどについて、より一層深めて捉えておく必要がある。
高松・北Ⅰ 11
児童の願いと教師のねらいをすり合わせる授業づくり
成果
本実践において、毎時間の授業終了後に研究部を中心としてリフレクションを行った。子ど
もの「実態」を的確に把握し、習熟に応じて次時へのPlanを修正することを通して、授業
をデザインし直すリフレクションは、子どもにとって価値ある学習が展開されるために有効な
手段であると考えている。
単元を構成する際に授業者のねがいをもとに、さまざまな活動の中からねらいに迫っていけ
ると考えた活動を選択して単元を計画した。単元計画当初は、さまざまな活動に取り組ませる
ことで意欲を継続させたり、多様な視点でねらいに迫ったりしてほしいという思いがあった。
しかし、VTRから見られる児童の実態や授業者の手応えから、多様な活動に取り組ませるこ
とで児童の意識がつながっていなかったり、ただ活動に取り組んだだけで終わってしまったり
している現状があった。そこで、授業者の思いを大切にしながら今後の授業の方向性について
話し合った結果、誰もが間違いなく参加することができ、行うことができること、また、
「仲間
との交流」が必要不可欠である活動を柱として授業を組み立てていくことにした。次時の活動
では、ペアやグループで関わり合いをもちながら、安心して活動に取り組む様子が見られた。
課題
体育と言えば、多くの子どもたちは、外に出て走ったり跳んだり、ボールを投げたり蹴った
りしながら元気に体を動かし、友だちと協力したり競争し合ったりしながらできることを増や
していくというイメージを持っている。今回実践した「体ほぐしの運動」は、これらの内容と
は違ったねらいをもつ活動である。
今回実践を通して感じたことは、児童の願いと教師のねらいを重ね合わせていくことが思う
ようにできなかったことである。そのことが主体的な学びを創り出すことができなかったり、
子どもたちに必要感をもたすことができなかったりした要因であると考える。学習を進めてい
く上で、児童の願いと教師のねらいが重なり合い、同じ方向を向いて進んでいくことが大事で
ある。
体育と言えば・・・、と思い描いている児童の意識をどのように教師のねらいや思いと重ね
合わせていくかが今後の研究課題である。
◎ 体ほぐしの運動に関する今後の課題
■ 系統性(意識の系統 ・ 深化)
学習指導要領の改訂により、
「体つくり運動」の領域の内容のうち、全ての学年で「体ほぐしの運動」が
位置付けられた。小学校低・中学年では、核となる易しい運動を幅広く行い、基本的な動きを身に付けてい
く素地を養っていく上で重要であると考える。
今回行われた2つの実践は、5・6年生(高学年)が11月に行ったものであった。本実践を行った2学
級ともに、体ほぐしの運動における「心と体の気付き」
「体の調整」
「仲間との交流」のねらいに迫るような
実践はこれまでに行っておらず、準備運動やレクリエーションとして体を動かす程度の意識で活動を行って
きている。そのため、体育学習においては各領域における特有の技能の向上に重点を置いた実践を行ってき
ているので、
「体ほぐしの運動」のねらいが理解できなかったり、児童同士または、男女とのふれ合いに大
きな抵抗を示したりする様子が見受けられた。
「体ほぐしの運動」は、心と体の関係に気付き、体の調子を整え、仲間と交流することが主なねらいであ
り、特定の技能を系統的に向上させることではない。小学校1年生から高等学校まで体ほぐしの運動が位置
付けられている今、心も体も柔軟である低学年児童の実態と、心と体の関係や調整を意識した「体ほぐしの
運動」の学習の素地(流れ)をつくっていく導入学年であることを踏まえると、低学年段階から系統的な実
践を積み重ねることで、活動の系統性はもとより、児童の意識をつなぎ、深化させていきながら、より一層
深まりのある学習を展開することができるのではないかと考える。
高松・北Ⅰ 12
■ 言葉かけに関して
「体ほぐしの運動」では、運動による心と体の変化に気付くことができるよう、運動したときの気持ちを
言葉で引き出したり、みんなで確かめ合ったりすることが大切になってくる。
「どんな気持ちになった?」
などの問いかけや、
「リズムに乗って気持ちよく動いているね」などの評価の言葉かけによって、動いたと
きの気持ちの変化に気付かせるよう、教師の働きかけは不可欠である。
教師の言葉かけや発問は、学習を深める上で欠かすことができず、学習の道筋や価値付けをしていくもの
である。本実践の体ほぐしの運動においては、体育学習の他の領域とは異なる特性があり、技能面ではなく、
気付きや思考を促すものでなければならない。
「体ほぐしの運動」は、心と体の関係に気付き、体の調子を
整え、仲間と交流することが主なねらいであるため、自分の心や体の変化に気付いたり、体の調子を整えよ
うとしたりする気付きを促す教師の言葉かけや問いかけが重要な役割を担っている。授業者は、そのことを
念頭に子どもたちの動きや反応を評価し、言葉をかけたり思考を深める発問をしたりする必要がある。
本実践において、授業者は技能面に関わる言葉かけや発問ではなく、
「心と体の気付き」
「体の調整」
「仲
間との交流」を意識させるものでなければならないと心得て授業に臨んだ。全て、技能に関する言葉かけを
せずに子どもたちに関わることは難しかったが、概ね実践できたのではないかと感じる。
しかし、できた、できないなどの技能面に関する言葉かけをしなければ子どもたちの意識も技能面から離
れるかというとそうではなかったりする。どうしても、技能にこだわろうとする児童も存在するし、できな
いかもしれないことに不安を感じている児童もいる。本実践では、高学年での体ほぐしの運動であり、これ
までの学習経験として「心と体の気付き」
「体の調整」
「仲間との交流」をねらいとした学習を積み重ねるこ
との必要性を感じ、低学年の頃からの、体ほぐしの運動に対する児童の意識づくりの重要性を感じた。
また、学習中において教師がかける言葉、児童から引き出したい言葉の精選だけではなく、
「心と体の気
付き」
「体の調整」
「仲間との交流」のそれぞれに関する言葉の区別や意図に関して、教師が意識してキーワ
ードとしてまとめたり問いかけたりしながら使い分けをしていく必要があることも感じた。児童の意識を体
ほぐしの運動のねらいに迫らせていくために、どんな活動に取り組むかではなく、めざす子ども像に向けて、
どんな言葉をかけて気付きや思考を促すか、そして、どの場面でどのタイミングで言葉をかければいいのか
を研究していく必要がある。
■ 保健領域との関連
生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続するために、
「体ほぐしの運動」を通して、心の健康が運動
と密接に関連していることなどを体得できるように指導することが求められている。具体的には、心と体の
関係に気付いたり、心や体の状態に応じて調子を整えるために運動したり、仲間と交流するために運動を行
ったりすることである。
小学校の第1学年及び第2学年においては、保健領域の内容が示されていないことから、体ほぐしの運動
を通して、
「体を動かすと気持ちがいいこと」
「力いっぱい動くと汗が出ること」
「動くと心臓の鼓動が激し
くなること」など、健康と運動の関わりなどについての認識が求められており、高学年では「体ほぐしの運
動」と保健学習(5年)
「心の健康」の「不安や悩みへの対処」について、相互の関連を図って指導するこ
とが求められている。他の領域での運動学習と保健学習との内容を関連付けた指導のあり方についての研究
も必要であると考える。
【引用・参考文献】
・文部科学省(2009)
「多様な動きをつくる運動(遊び)
」パンフレット.
・文部科学省(2010)小学校学習指導要領解説.体育編.東洋館出版社.
・文部科学省(2014)学校体育実技指導資料 第 7 集 体つくり運動-授業の考え方と進め方-(改訂版)
.
・白旗和也(2012) これだけは知っておきたい「体育」の基本.東洋館出版社.
・徳永隆治(2014)
「体つくり運動」の内容構成を問い直す.体育科教育.60.(11):14-17.
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