428KB - さけますセンター

サクラマスの 生理学的研究―
1
筋肉内側 棚 量にっいて
野村
A
Study
the
On
哲―
Physiology
Of Masu
Salmon
(Oncorhynchus masou) -1
Change
in Crude Fat COntent
Tetsuichi
Changes
in freshwater
in
the
and
The
seawater
samples
were
determined
collected
were
in muscle
fat content
crude
from
NOMURA
using
rivers
and
tissue 0r
the
SOxlet
coastal
salmon
masu
(Oncorhynchns
masou)
method.
waters
of
HOkkaido
and
Niigata
Prefec
tures.
The
time
to
crude
fat
summer
approximately
Over
time
・
increased in parr
The
crude
and
rapidly
percent
one
in the
content
and
muscle
decreased
ln
0r muscle
but
declined
fat
content
wet
weight.
Of fish in freshwarer
increasend
In winter,
fat content
the
crude
rn spring of the next
year
ft-0m release
the crude
declined
to
fat content
in smolt.
ln the
muscle
significantly higher than
サクラマス fo0ncorゆ%C ね硲
tissue
autum.
加び
that
Oめはサケ
tissue 0f fish
collected
of fish collected
from
the
coastal
sea
increased
in freshwater.
rcu. 比切 .カラフトマス ro. 叩袖硲C肋)
とともに,我が
国
における主要な
増殖対象魚 種であるが,他の
_- 魚 種とは異なりl ― 2 年の長期の河川生活を
有するといゲ 特質を
もっている。
―般に河川の生産力は海洋に
比べて著しく小さいと考えられており
,その上我国の河川環境の
荒廃
で自然条件下でサクラマス
資源の培養をもくろむことは
不可能に近く サクラマスの
生態や河川条件からして
サ
・
ケ のような人工増殖効果を
望むことは極めて
難しいのが実情であ
る。 しかしサクラマスは
食品的にもサケ,カラ
フトマスに比べて
勝るとも劣らない
価値を有しており
,その資源の
増大による経済的効果は
極めて高いと見なさ
れ,資源増大のための
技術開発が強く望まれている。このため著者は,サクラマスの
生理学的特質を明らかに
し,人工増殖技術開発のための
―助にしたいと考え
・
まずサクラマスの
各生活期におげる
筋肉内租脂肪量につい
ての検討を試みた。
魚類の脂質に
関する研究は・
魚類生理学,生化学,魚類栄養学,等の
広範な分野においてなされているが
, 対
象魚種ば主として池中飼育の養殖魚であり・その対象となる
脂質も種々である。 しかしサクラマスの
天然生育魚
に関する報告は
少
く
,著者の知るかぎりでは
太田,山田 C197@. 1974) ・クリフチン(1962) の報告があるにす
北悔道さけ・ますふ
化場研究業績・
第2比号
33
北海道さけ・ますふ
化場研究報告 第胡号
ぎない。魚類においても,脂質の―部はエネルギー源としても
重要であり・環境条件に
大きく支配され,影響さ
れ易い ,天然生育
魚にあっては脂質の
動態を明らかにすることは
増殖技術の確立のためにも
,有意義であ
ると考
えられる
o
本報告ではソックスレー
法により,サクラマスの
筋肉内租脂肪量 (以下粗脂肪量とする) について検討した
結
果について報告する。
材料および方法
供試魚 : 図 I の 北海道および新
潟県三面川沿岸で
採集したサクラ
マスを供試した。
供試魚は出来得
る限り生鮮な
状況で分析に
供した
が,―部は採集後 ,
90 。
―
C
0
密封して,
雄武沿岸
で凍結保存した 後分析
斜里川
粗脂肪甘の定R: 粗脂肪量の定
量はジエチルエーテルを
用い ソッ
努 部沿岸
クスレー法により
行なった。分析
尻別 Hl
(目名川 )
用 試料は大型魚では
,図2 に示し
石狩川 (千 哀ハ D
V/
た 筋肉部を採取し 皮唐,骨格を
除去し筋肉 2-3
K を細切後.
精秤し, 粗脂肪抽出用試料とした。
小型の供試魚では・内臓,頭部,
皮膚,骨を除去した
全筋肉部のみ
サクラマス採集地点 O 海洋生活期サクラマス採集地点
●淡水生活期サクラマス採集地点
図@
を試料とした。
前記した試料を
脱
水のため7-8
倍量の無水硫酸
ナ
トリウムとともに乳林内で磨砕
。
づ
し ,ソックスレー
抽出器により
16
時間抽出した。
抽出終了後,溶媒
を留去し,恒量として
粗脂肪重量
を求め,試料の
湿重量に対する
パ
図 2
大型魚におげる
試料採取部位(,二 *)
―セントで表示した
O
結果および考察
う
I)
河川生活期サクラマス幼魚の
粗脂肪L
@
スモルト化幼魚期以前の
粗脂肪片 : サクラマスはふ
化後,河川内でI 年もしくは2 年間,淡水生活を
行な
。 この淡水生活期の
内 スモルト化幼魚の出現する
以前までの
粗脂肪量の変化について
尻別州および千歳川で
採
集したサクラマス
幼魚を用いて
検討した。両河川とも定点において
月 1 回,投網により
10-20 尾の幼魚を採集し
4
サクラマスの
生理学的研究―I
分析に供した。
尻別川における
供試魚の測定結果および
粗脂
粗
肪量の平均値は表 l に, 粗脂肪量の変化は
図3
に夫々 示した。尻別川における河川生活期の幼
(ガ )l
―
I
。
図3
4
魚の粗脂肪量は測定開始の7 月より8 月末まで
月
。
3% にまで低下し,その後も1 月には若干高、
値を示したものの
, ほ pま 3 月末までI. 0-1.4%
尻 別川におけるサクラマス
幼魚の粗脂肪量の変
化 平均値(C) および標準偏差(1)
と低い値を示した
o なお9 月およびH 月におけ
る体重と粗脂肪との関係は
図 4 に示されるとお
りである。 9H には体重の大きいものは
粗脂肪
9f120H
量がより多いという
関係が見られたが
, ll
乃乃
K@
は逆に体重の
増加に伴い,
粗脂肪量の低下が
認
祖 2
められた。
o@ @0 o8
0Q @8oo
o
また9 月より1I@] が同じ体重であ
っても低、
L4 1)@125
粗脂肪を示すなど
時期によっても
体重と粗脂肪
肪
(%)3
の 関係に差が認められた(図 4) 。
以上のように
尻W 川における粗脂肪量の変動
は ,太田・山田(1974) が久根川川において
測
1o0
20
体
図 4
L
定した結果と同様,夏期K@ は高く,秋期には
忌、
(e )
尻別川において9 月 20 口 およびllJ 12 日採取
傲に低下し,冬期間の
越冬中にはI. 4% 以 ドの
了
されたサクラマスの
体重と粗脂肪量の関係
低い値が示された。
真山他 (t983) の報告に
幼魚の胃 内容指数 (胃 内容物重量/ 魚体重) は 8 月前後には低F するとされて
よれば尻Bl llにおけるサクラマス
おり,これら
粗脂肪量の低下は
河川水温の低下による
摂餌量と代謝量のバランスのくずれによるものと
推察され
るが,更に詳細に
検討する必要があ
る 5。
次に,石狩川の
支流,千歳川におげる
租脂肪量を測定した
結果は夏期においても
粗脂肪量の増加は
認められず,
図 5 に示されるとおり
尻別川とは全く異なる変動が認められた。このような千歳川と
尻別川における
粗脂肪量の
幼態における相違は河川の生育環境によって
,個体の粗脂肪量も大きく
左右されることが
暗示される。このこと
について河川の
生育条件による
魚体の生長並びに
脂肪含量との相互関係について
更に検討が待たれる。
2
スモルト期における
粗脂肪R の変化 : 尻別川におけるサクラマス
幼魚は越冬後4-5
月にスモルト 化幼魚
となり降
海移動をする個体と
,さらに河川内での
生活をするもの(残留型) とに分かれる。
それらスモルト 化幼
魚と残留型幼魚における粗脂肪量について比較した。分析標本は尻Sl 川の支流目名川 (図 l) において1982 年
3月
-5 月に採集し
スモルト 化 幼魚の判定は
休色の銀白化および
背鰭先端の黒色化を
目安として行なった。
残
留型幼魚については
図 6 に示されるように
体重の増加に伴い粗脂肪量は高くなる傾向が
認められたが,スモルト
化幼魚では逆に
体重の増加に伴い粗脂肪量の低下が
認められ,同じ
体重レべルにおいてはパー
型幼魚が高い値が
示された (図 6)o
35
北海道さけ・ますふ
化場研究報告 第% 号
租
O
肪
2
08
(%)
(%)
l982 年
石狩川 (千歳川 ) で採取されたサクラ
図5
l0
20
三 (g)
・
体
マスの粗脂肪量の変化
尻@U 川におけるスモルト 化期サクラマス幼魚
図 6
の粗脂肪量 (1982 年 3M-4
前記の河川生活期におけるサクラマ
ラ
ス においては
粗脂肪量は夏期に増加し
月
)
0 』―型サク
マス幼魚 ■スモルト 型サクラマス幼魚
, 再び春先に上昇した
越冬時に減少し
が (図 3) ,スモルト化時には粗脂肪
表]
供試魚の平均体長・
体重・供試尾数
昆は再び減少することが
示された。ス
体重
山
@
粗脂肪 (%)
モ ルト 化時における
粗脂肪の低卜が脂
質組成中のどのような
成分の減少によ
るものかは今回明らかにすることが
出
来なかったが,通常,
リン脂質の
量は
ほ任―定で,魚 体重の0 . 4-0
. 9% 程度
1982
7 -1
I0
6.5
7 ― 16
8 -Z0
10
I0
8 .上
7. 6
9-20
I1-
であるとされていることから
,これら
1
12-21
祖脂肪量の減少は
上Ki 中性脂質の減少
0.57
2.86
02
上・
.67
1 . 0g
5.02
0.75
1.2
0.30
1,85
4.1
1.63
.52
.20
20
8. 8
1. 40
9 . 42
4 . 96
2 . 2 1 . 47
10
g5
8.48
3.62
1.3
0.42
18
9.9
L
T
I . 37
3.57
1.2
0.fio
・
・
・
26
II
上
ではなかろうかと
推察される。太田,
1 -24
T2
10.2
1.23
11.16
3.56
1,4
0.65
山田 u974)
2-25
9
10.1
0.98
10.76
3.28
1.0
0.32
3 -28
II
10.8
0,94
14.24
3.74
1.4
0.39
4 -14
II
10.1
1.25
12.62
5.93
1.8
1.04
Sheridan
のサクラマスについて
,
et
(1978)
al
・
(1983)
WO0
et
19 紐
al.
のスチールへ ッドについての
研究によれば,スモルト化の
時期にお
米
S . D .標準偏差値
いてはスモルト 化幼魚、より残留
型幼魚
が高い脂肪含量を
示しまた減少する 脂質画分はエネルギー源となる
中性脂質画分であると報告している。
今回
報告されたスモルト時における
粗脂肪の減少は,スモルト期における
代謝速度の増加によってエネルギー
源であ
る中性脂質が
減少しその結果 租脂肪が減少したと
見られよう。
何れにしても粗脂肪の
減少は生理的に
重要なス
モ ルト化の指標ともなり
得るとも考えられる。
降海移動にはより多くのエネルギーを
必要と考えられることから
これらエネルギー
源となる中性脂質の
低下が以後の降海行動にどのような
影響があるのか,降侮移動後の生理生
態の早期の解明が
期待される。
3
局別川に秋季に
放れしたサクラマス
幼魚の粗脂肪甘の変化 : 前項までに主として
天然河川で生育した
サク
36
サクラマスの生理学的研究―I
ラ
マス幼魚の
粗脂肪量の動態について
記したが,越冬時におげる
粗脂肪量の動態についての
知見をさらに集積す
るために.秋季に
尻別川に放流した
飼育サクラマス
幼魚の冬期間の
粗脂肪量の動態について
検討した。放流した
サクラマス幼魚は
1981 年 9-10
月に尻別川にそ上したサクラマス
親魚より採卵し 翌年ふ化後・敷生事業場にお
いて幼魚・まで 飼育したものであ
る。 これら飼育魚の
中,平均体重10.1K の 57,700 尾を右腹 ビレ 切除後, 尻別川に
19S2 年lIn4-5
口に放流した。
放流後.毎月約IO 居前後を定期的に
支流の目名 川において採集し
粗脂肪含量を
測定した0
放流時の粗脂肪量はI . 8%
であったが12 月
には2 . 4% を示した。その後は図7 に示さ十
L
る通り天然サクラマス
幼魚、の越冬期の粗脂肪 4L
且旨
量 と同様に
0 . 8-1
肪
. 0% の低い粗脂肪量が示さ
3
これらの結果から
推察すると前記した
天然
―
生育サクラマ
ス と同様に冬期には
粗脂肪量は
著しく低下すると
推察される。しかし放流
時
図7
における
粗脂肪量が低かったため
粗脂肪量の
ラ
l1
"'
「卜
l2
2
3
4B
"'"
。
1982 年11 月に尻SI 川に放流された
サク
マス幼魚の粗脂肪量の変化
O
は平均
値, 互は標準偏差を示す
減少度合について
十分に検討するに
至らなか
ったが,前記天然生育サクラマスにおいても
秋口から冬期には
急激に粗脂肪量が低下する二とから見て
人 エ飼育
魚を秋期に放流した
場合,冬期間その
粗脂肪量の低下が
生ずるものと
推察され・放流後の
河川環境に順応するま
でに必要な
ユ ネルギー源となる
脂質を ト分畜漬
させたのち放流することが
望ましいと考えられる。
以上,淡水生
活期の幼魚の粗脂肪量の動態を
観察した結果,夏期の
成長期には増加するが・
冬期の水温低下にともなう
摂餌の
不活発化にともない
,急激に低下し
, 低い水準で越冬し ,春期に再び
増加を示すが,スモルト
化個体は低い
粗脂
肪量を示して
降侮移動することが
明らかになった。
H) 海洋生活期サクラマスにおける
粗脂肪R
侮洋生活期@l@おげる粗脂肪量につ
海洋生活期サクラマス
供試魚の平均体重・
体長・肥満度
採取地点
体長 (cm@
平均 (S D@
年月日
・
利用沿岸,寿郡沿岸・さらに新潟県
表2
二面川沿岸で
採集された計
74 尾の供
試魚について分析した。
供試魚は、
雄武沿岸
1982 n 17
・
・
9 33 4 (4 05)
・
・
体重し )
平均(S D@
肥満 度 "
平均(S . D)
・
473
(2H L
・
いては,図l に示された雄武沿岸,
I. 17
(0 . 09)
fm 1983.1.7
1982.5.10
2435.4
19
47.7
(9.77)
(2.35)
1777
519
(1003
(120.2)
) I4
C33[77
(1
00
C<2rll
11
体であり,それらの
平均体重,体長,
万部沿岸 19田
肥満度 (( 体重ノC体長 ザ ) x 100)
二面沿岸
尻 沿岸
上上
・
3 % 22 4 . 6 (2. 46@
・
,未熟の個
氷 (体長乃 本重 ") X1
L97 (235@
・・
ずれも生殖線指数の
低ぃ
l. 51 (0. 2U
山
は表 2 に示されるとおりであ
る。
IW8W 年11 月にオホーツクの
雄武沿岸で漁獲されたサクラマス
末成魚 (平均473K)
の 粗脂肪量は2 . 1-11%
と淡
水 期サクラマスの
夏期におげる
値 より高い値が
示された。
IW1.@年 l 月に利尻 沿岸で採集されたサクラマス
雌1F5尾,
雄 4 尾 (平均体重518g) の 粗脂肪量はI. 0-?.4%
であったが,その
平均値は前記した
雄武沿岸で漁獲されたサ
クラマス より高い値を
示した。さらに,3 月
乃 28 日に 寿郡沿岸の定置網で
漁獲された雌13 尾, 雄 9 尾についての
測
37
北侮道さげ,ますふ
化場研究報告 第胡弓
定結果では前記した2 地点で採集されたサクラマスに
比較して8 . 4-29.3%
C平均16.7%)
と極めて高い
粗脂肪
新潟県三面川沿岸で
採集された供試魚につ
量となっている。
また河川そ 上前と考えられるサクラマスについて・
いて.雌13 尾 , 雄li 尾を分析した
所, いつれも寿部沿岸で漁獲された
個体と同様に
平均20.2%
と高い値が示され
た。 以上の海洋生活期におけるサクラマスの
粗脂肪量 と体重との関係については
図 8 から知られるように
, 侮洋
生活期においては
体重の増加に伴い粗脂肪量が増加することが
明らかとなった。
海洋生活期サクラマスの回遊経路についてはまだ
推測
の段階ではあるが,待鳥 (1981) によって想定された
回
30
通路にそっての
標本分析を試みた
所・時期の推移にとも 粗
なって体重,肥満度の
増加が認められ,同時に
租脂肪の
脂
増加も見られるなど
,想定される
回遊コースの
妥当性が 肪
暗示される。また,3 月に寿部沿岸で採集されたサクラ
マスの粗脂肪量が30% にも及ぶ個体も
出現し サケ ( シ
p ザケ)
20
I
(%)l"
L
菩
吋
に見られない
特徴が示されるなど
,食品学的に
L p十
も極めて価値あ
る魚種であることが知られた。
mmm) 河川そ上役のサクラマス
親魚の粗脂肪L の変化
体
三 (kg)
悔洋生活期サクラマスにおげる
粗
図 8
侮洋生活のサクラマスは
, 春から初夏にかけ
,河川に
脂肪量と体重の関係 ●利尻沿岸,O
三面沿岸,A 寿部沿岸,□雄武沿岸
そ 上し成熟に至るまで 再び淡水域で
生活す
るが,成熟に
伴い大ぎな生理的な
変化も予測
される。
摂餌活動も殆んど停上すると
見なさ
れていることから
, 祖脂肪量にも大きな
変化
が起ると考えられ
,河川にそ上後のサクラマ
スの粗脂肪量にっいて
測定した。
供試魚はオ
20 8*
ホーツク海沿岸の
斜里川,太平洋岸の
風速川
にそとしたサクラマス
雌親魚を用いた。
斜里
川については・6J3 5 日, 7 月
日 6 日, 9 月
H 4
風連川ではlo
日に計24 尾を供試し,
刀乃
6 日に
採集した8 尾を供試した。
供試魚は, 斜里川
では捕獲後・河川水を用いた
蓄養地内で・風
連川では河川内で
成熟まで催熟のため薔 養を
行なった個体であ
る。 蓄養過程の親魚の筋肉
内の粗脂肪量は図 9 に示されるとおり
時間の
経過とともに・ほぱ直線的に減少し
,
9月 4
日にはI. 9% まで低下した。また肝臓におげ
る 粗脂肪量は 7 月 6 日には3 . 4% にまで低「
増加が認め
したが,9 月 4 日には逆に若十の
られ, lo 月の興連川では
肝,筋肉とも斜里川
斜
図9
里
川
斜里川および風蓮川に湖上したサクラマスの
筋肉内
と肝臓内の
粗脂肪量の変化.ヒストグラムは
粗脂肪量.
互標準偏差O …
100) を示す
38
O
は生殖線指数 ( w卵巣重量/ 体重) ,
サクラマスの生理学的研究―I
より低い
粗脂肪量が示された (図 9) 。 次に
生殖線指数 ( W卵巣重量/ 体重)
x 100)
と
粗脂肪の関係は図 l0 に示されるとおりであ
り・海洋生活期において
高い粗脂肪量を示し
た サクラマスも
河川そ L 彼は性成熟にともな
って危傲に租脂肪量が低下することが
明らか
蛆 20
となった。
なお供試魚は長期間蓄養されたも
ので,それら
蓄養条件が,祖脂肪量にどのよ
。
脂
肪
うな影響を与えるかも
充分検討する必要があ
ろう。
0
80
(姥 ) l0
以上サクラマスにおける
粗脂肪量は各生活
期によって大きく
変動し者生活期における
8
%0
0
サクラマスの
生理生態との
密接な関連のあ
る
ことがうかがわれる。
この点について
木報告
0000
00
30
で得られた
粗脂肪量について
若干の考察を
加
えたい。魚類においてはその―次的なエネル
8
生舛肢指盆(即某sm/
図l0
体旦) X100)
斜里川に糊 としたサクラマスの
筋肉内粗脂肪
るが,脂質の
貯蔵部位
ギー 源は中性脂質であ
量 と生殖線指数( W卵巣重量/ 体重) x100)
は魚種により
異なるとされている。
本報告で
関係
の
は上として筋肉内の
粗脂肪量について
観察し
たが,Drledzlc and
HOchaka
(1978) によると,サケ
科 魚類における脂質の貯蔵部位は体側筋であるとされ
ていることから
,筋肉内の
粗脂肪量が,サクラマスにおける
脂肪量をほぱ代表していると
考えられる。しかしソ
,クスレー法による
結果はあくまでも粗脂肪量であ
って,抽出により
得られた粗脂肪中には,脂質以外の
ジェチ
ルエーテル可溶性物が
全て含まれている。
またジェチルエーテルによる
抽出では体構成脂質の
主要な脂質である
りソ 脂質の抽出が
不完全であるといわれている。
しかし脂質以外の
租脂肪中に混入する
物質はわずかであり .
リ
リ脂質はほ
ぱ―定の量であるとされていること
,およびソックスレー
法による結果の
報告が多く見られることか
ら,サクラマス
各生活期の脂質量の
変化を検討するには
本法で十分であると考えられる。
しかしこれらの
脂質量
の 変化とエネルギー
代謝を合せ考える
上にはエネルギー
源となる中性脂質量の
測定は不可欠であり,今後それら
の点についてさらに
詳細な検討が必要であろう。
淡水生活期におけるサクラマスの
粗脂肪量は尻別川などにおいて
放流後から8 月までと昇し・その
後急激に低
ド
している。
しかし千歳川においてはこのような
変化が認められず
,成長や餌料条件によるものか
,水温条件に
よるものかを
本報告では明らかにすることが
出来ないが,
粗脂肪量は河川環境によって
相違することは
明らかで
あ ろう。従って増殖事業においては
適正密度や餌料条件の把握と併せて,放流魚の
生化学的面からの
検討も重要
であると考えられる。
スモルト期におげる
粗脂肪の低下は
太田・山田 (1971
・
1974), WO0
et al. (1978)
らの報告と同様な
知見が
得られたが,健康な
降海種商の放流を目的とする
増殖事業において
,深く考慮すべき
問題と云えよう。しかしこ
のような淡水生活期から
海水生活期への移行時の生理生態学的知見は
乏しく,今の
段階では,これらの
低い祖脂
肪が, 降海後の生活,生残りにどのような
影響を与えるかは
明らかにすることは
出来ない。―方秋から春の間の
39
北海道さけ,ますふ
化場研究報告 第38 号
海洋生活期における
粗脂肪量が体重の
増加に伴い,経時的に
増加することは,冬期におげる
活発な摂餌活動が行
われていることを
暗示し,サクラマス
成魚の生態的特性が
指摘されるとともに
,成長過程におけるサクラマスの
より経済的負荷価値を
高めて利用すると
I'@) ことを資源の
有効利用という
面から検討することも
有意義であると
考えられる。
謝
辞
す研究の推進にあ
たって多大の
助言を得たさけますふ
化場小林哲去調査課長,標本採取に
助言,便宜を図って
いただいた北海道止水産ふ
化場莱倉輝彦魚病科長,さげますふ
化場阿部進 ―資源研究室長,
広井修主任研究官,
真土 紘主任研究官,大熊―正技官,機器の
使用を快よく許可していただいた
北海道立水産ふ
化場岡田鳳二飼料
科長に対して深く 御礼申し上げる。
また粗脂肪の定量には
加藤郁子さんに
多大の協方をいただいた。
記して深謝いたします。
約
要
I
北海道内の河川および
海洋生活期サクラマスの
粗脂肪量をソ ,クスレー法によって
測定した。
2
河川生活期におけるサクラマス
幼魚における
粗脂肪量は春から夏につれて
増加するが越冬時には1 % 程度
まで減少した
0
3
@ 歳魚 となった春先には
残留型幼魚では粗脂肪量は増加するが,スモルト
化幼魚は粗脂肪量が減少する
二
4
秋から翌春の海洋生活期サクラマスの
末成魚は体重の
増加とともに経時的に粗脂肪量の増加が
示された。
5
河川内にそ上した
親魚では性成熟にともない
粗脂肪量が時間の
経過にともなって
略人,直線的に減少する
ことが観察された。
献
DriedziC
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