65 HE 標本を用いた FISH 法の検討 ◎山中万次郎 1)、重藤 翔平 1)、仲田 梨恵 1)、松田 和之 1)、菅野 光俊 1) 信州大学医学部附属病院 1) 【はじめに】FISH 法は間期核上で腫瘍特異的な遺伝子の増 ルと 0.1M グリシン塩酸緩衝液 pH2.8 の二種類の脱色液を 幅や染色体転座の有無を検査できる方法で、病理診断を補 用いて行った。以降はヒストラ HER2 FISH キット(常光) 助し得る重要な検査法のひとつである。しかし、一般的に を用いて前処理を行い、脂肪肉腫例については Vysis®LSI パラフィン標本切片を用いた FISH 法の場合、連続切片上 MDM2 Probe (Abbott)を、滑膜肉腫例については Vysis®LSI での評価となり、必ずしも同一細胞での解析ではない。 SS18 Probe(Abbott)を用いて一晩ハイブリダイゼーション HE 染色標本を用いて FISH 法が可能となれば、同一細胞に を行った。洗浄操作後、蛍光顕微鏡にて観察を行いシグナ ついて病理組織学的所見と遺伝子・染色体異常所見を併せ ルの視認性の比較を行った。 ることが出来るため、正確な病理診断に有用であると考え 【結果と考察】二種類のスライド、二種類の脱色法を用い られる。そこで、HE 標本を脱色操作後そのまま FISH 法を て実験を行ったがいずれもシグナルが観察できた。スライ 行うことによって、同一標本でシグナルを検出することが ドについてはシランコーティングスライドを用いた検体の 出来るかどうかを検討したので報告する。 方が核の辺縁が明瞭でシグナルの視認性が良好であった。 【対象と方法】疾患・材料:脂肪肉腫と滑膜肉腫を対象疾 脱色法についてはグリシン塩酸緩衝液を用いた方法では組 患として、各手術材料パラフィン包埋標本を用いた。検討 織の保持性が良好であった。今回の検討により同一標本、 ①:適切なスライドグラスを検討するため、各パラフィン 同一細胞において HE 標本による病理診断と FISH 法による 包埋標本を薄切し、剥離防止コートスライドグラスとシラ 遺伝子・染色体レベルでの評価が出来るということが示さ ンコーティングスライド(Dako)の二種類のスライドグラ れた。また本方法は、通常の FISH 法の操作法に脱色の工 スに載せ HE 染色後に各標本のバーチャルスライド像を撮 程が増えるのみであることから日常検査業務においても有 影した。検討②:脱色法の検討を行うため、塩酸アルコー 用と考えられた。
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