第6回講義資料(自習用)

都市システム経済学 (第6回)
ここで、学習すること
■完全競争市場
■完全競争の条件
■需要曲線・供給曲線
■価格調整過程
■余剰分析
学籍番号:
氏名:
2014.11.07.作成
2015.10.24.修正
■競争経済の均衡
自習用教材
消費者と企業と呼ばれる経済主体の個々の行動を明らかにした。
多数の消費者、多数の企業からなる経済を分析する。
財の需要と供給は市場において成立する価格に依存している。
市場における価格の調整は需要と供給とが等しくなるまで続き、
最終的には、需要と供給が等しい状態、すなわち均衡市場に
おいて実現し、財の価格が決定される。
競争市場(competitive market)
市場に参加している経済主体が非常に多数ならば、
個々の経済主体は価格を自分で決定することはで
きず、財の価格は市場の需給によって決定されると
いう市場
■完全競争における条件
自習用教材
1)消費者と生産者はプライステイカー
市場に参加する消費者と生産者は、市場で決定される価格を
「与えられたもの」として行動する。一物一価ともいう。
2)多数の消費者と生産者の存在
市場には多数の消費者と生産者がいて、自由に参入・退出ができる。
超過利潤を持った産業が存在すれば、超過利潤がなくなるまで新規
の企業が参入する。
3)財の同質性
完全競争市場では、そこで扱われる財はすべて同質である。個々の
財にない場合を想定します。
4)情報の完全性
売り手と買い手は、お互いに情報が完全に通じていて、買い手は常に
最も安く販売している売り手の存在を知り、すぐそこに買いに行くこ
とが可能である。
自習用教材
■消費者行動と需要(復習)
消費者の行動について分析から需要曲線を求めた
1)所得制約での「効用最大化問題」
→ 等号制約つきの数理最適化問題
2)通常の需要関数
x 0j  x 0j  p1 , p2 , I 
3)通常の需要曲線:名目所得と第2財の価格を一定とする
第1財の需要量と価格の関係を
表す関数 → x1  D p1 
p
D
p1
A
p1
需要曲線(demand curve)
マーシャルの需要曲線
O
D
x1
x1
自習用教材
■社会の需要曲線
これまでの話は「個人」の需要曲線 → 社会全体の需要曲線?
社会=家計全体の需要曲線は、その財を需要するすべての
家計の需要曲線から導出される。
p
p
p
家計A
xA
家計B
xB
社会
x A  xB
それぞれの個人の需要曲線を横軸方向に合計したものが
家計全体の需要曲線である。
■供給曲線(復習)
AP
MP
利潤最大化の1階条件より
p  MC
利潤が最大になる点では
価格=限界費用
財の供給曲線
MC
損益分岐点
break-even
point
AC
AVC
操業停止点
shut-down
point
が成り立っていることがわかる。
企業による生産量は:
自習用教材
O
ŷ
x̂
x
損益分岐点と操業停止点を区別する
価格=限界費用 を満たし かつ利潤非負条件
(AC<MC)を満たすようなところ。
→ 企業による財の供給曲線(supply curve)
価格が可変平均費用の最低点より低ければ、生産活動を行わない。
財の価格の上昇に対して、企業は生産量を増やす。
自習用教材
■産業の供給曲線
企業の分析 → 利潤最大化 → 生産物価格(限界費用)
→ 利潤非負 → 生産物供給曲線(限界費用曲線)
同じ製品を作る企業が多数操業しているとき
p
企業A
yA
p
企業B
yB
p
産業
y A  yB
各企業の最適化行動の集計として求められる市場供給
自習用教材
■価格調整メカニズム
完全競争市場において、
p
消費者行動から導出した
需要曲線
p2
生産者行動から導出した
市場の供給曲線
p0
価格水準が p1のとき:
超過需要・・・価格 ↑
p1
供給量
需要量
超過供給
供給量
超過需要
需要量
供給曲線
需要曲線
x
価格水準が p2のとき:
超過供給・・・価格 ↓
このような価格調整メカニズムを通じて、価格はp0 に決定する。
自習用教材
■需要曲線のシフト
需要関数が右へシフトする要因
p
①所得が増大することにより、
需要量が増大した場合
②その財の人気が上昇し、人々
の需要が高まった場合
③その財の価格は変化しないが
代替財の価格が上昇し、その
財の需要が高まった場合
需要曲線
④その財の価格は変化しないが
補完財の価格が下落し、その
財の需要が高まった場合
補完財・・・ゲーム機(本体)とゲームソフトの関係など
x
自習用教材
■供給曲線のシフト
供給曲線は、価格と生産量の
関係を表している。
p
価格変化以外の要因で、供給量
が拡大したとき、右へシフトする。
供給曲線
供給関数が右へシフトする要因
①生産コストが下落(原材料の下落
賃金の下落)
②技術革新が起こった場合
③市場に参加する企業の数が増え
た場合
供給関数が上方へシフトする要因
①コストが上昇する場合、特に課税が課せられた場合
x
自習用教材
■均衡点が存在しないケース(1)
均衡価格が存在しないような
ケース
p
需要曲線
供給曲線
どの価格水準でも、常に供給量
が需要量を上回っているような
場合
たとえ価格がゼロだとしても
供給量のほうが需要量より
大きい。
自由財(free goods)
「空気」のようなケース
均衡価格はゼロになる
供給量
p0
需要量
0
x
■均衡点が存在しないケース(2)
自習用教材
均衡需給量が存在しないような p
ケース
どのような取引でも、常に消費
者が払える金よりも生産するた
めに必要なコストが上回ってし
まう場合
p0
供給曲線
生産する
ための費用
消費者がほしいと思っても全く
手が出ない財と考えられる。
たとえば、「宇宙旅行」
0
消費者が
払える費用
x
自習用教材
■市場の安定化(1)
均衡点がどのような調整過程
を経て実現するのか
ワルラス的調整過程
p
p2
超過需要や超過供給が価格を
変動させ、需給が均衡する
【プロセスー1】
超過需要の状態 → 価格上昇 p
1
【プロセスー2】
超過供給の状態 → 価格下落
供給量
需要量
供給曲線
超過供給
E
供給量
超過需要
需要量
需要曲線
x
需要量にあわせて生産しようとしても時間がかかる財には
この調整過程は当てはまらない。
■市場の安定化(2)
マーシャル的調整過程
p
市場において、需要価格と供給
価格に差が生じているとき、生 p
産量の拡大・縮小を通じて、需 2
給の均衡がなされる。
【プロセスー1】
需要価格>供給価格 →
生産者が供給量を拡大
(需給点右へ)
【プロセスー2】
需要価格<供給価格 →
生産者が供給量を減少
(需給点左へ)
供給曲線
E
p1
需要曲線
x
自習用教材
■くもの巣理論
財の生産には時間がかかり、
需要に一定の時間経過が必要
とする。
【プロセスー1】(B→C)
最初の供給点:Q0 → 需要価格:P1
→供給量:Q1 (マーシャル的調整)
【プロセスー2】(C→D)
超過供給: Q1 → 価格引き下げ
(ワルラス的調整)
【プロセスー3】(D→E)
供給価格>需要価格
(マーシャル的調整)
p
供給曲線
B
C
p1
E
p0
D
A
需要曲線
→ 供給量減少
Q0
Q1
需要関数と供給関数の傾きによって、「収束」と「発散」の2種
類の場合に分けられる。
■消費者余剰(余剰分析)
ある財の需要曲線の解釈
自習用教材
需要関数の意味を考えてみる
最初の1単位を消費するときの財に対する評価
価格
追加需要分の評価は需要曲線に沿って次第に低下する
QE を需要するときの追加需要に対する評価: p0
K
このときの総評価額
W   D x dx
QE
0
E
消費者の自発的支払いという
(WTP:willingness to pay)
p0
需要曲線
O
1 2 3 -----
QE
数量
すなわち、需要曲線はWTPが示されている
D x 
■社会的便益と消費者余剰(consumer’s surplus)
自習用教材
それぞれの消費者の限界評価は需要曲線の高さに等しい
(なぜなら、需要曲線の高さに等しい費用を支払って財を消費するので)
価格(費用)
財を消費する場合の総評価額(自発的支額):OKEQE
財を消費する場合の実際の支払額:OIEQE
K
消費者の得た純便益の合計(消費者余剰):IKE
消費者余剰(CS)=総評価額ー実際の支払額
CS
E
需要曲線
I
O
1 2 3 -----
QE
数量
自習用教材
■供給曲線と生産者余剰
供給者は、与えられた生産物価格のもとで利潤を最大化する
このとき限界費用曲線=供給曲線
生産物の売上額: OIEQE
総生産費用: OLEQE
S   MC  x dx
QE
0
Supply ( x)  MC  x 
E
I
供給者の利潤(生産者余剰)
SS
Supplier’s surplus
L
O
QE
自習用教材
■社会的余剰
社会的余剰=生産者余剰+消費者余剰(CS+SS)
社会的余剰の最大点では、社会的限界評価=社会的限界費用
任意の消費者の状態が
以前より改善される
(パレート改善)
それ以上のパレート改善が
不可能になった状態
【パレート最適】
CS
p0
O
供給曲線:S
SS
需要曲線:D
x*
市場均衡で社会的余剰
が最大となり、
パレート最適である
■本日の課題(問題6)
自習用教材
ある個人の効用関数が、x財の消費量と貨幣の保有量に
依存し、 u  4 x1 2  y(u:効用水準,x: x財の消費量,y:貨幣量)
で示されるとする。
個人は当初貨幣を100だけ、保有しているとする。他方ある
企業はx財を生産し、その費用関数が
x2
c   x  5 で示されるとする。
2
1)個人のx財の需要関数と企業のx財の供給関数を求めよ。
2)個人と企業がプライステイカーとして行動するとき、
均衡における経済余剰はいくらか。
★次回講義時に提出してください。
★かならず次頁の課題様式を利用して提出してください。
(A4サイズのまま利用してください)
★次回の「講義確認問題」解答を記入して、講義の最後に提出して
ください。
自習用教材
[解説]
当初貨幣を100だけ、保有しているとする。・・・予算制約
貨幣の価格は1である。すなわち
px  y  100
max
・・・予算制約
u  4 x1 2  y
効用最大化
Lagrange 関数で解いてもよいが、この場合は制約条件が
1式しかないので、代入するとよい
max
u  4 x1 2  y  4 x1 2  100  px 
■講義日程の案内
自習用教材
講義日程の確認です。講義日程変更箇所に注意してください。
(赤字の部分)
第5回 10月26日(月)通常講義➡レポート締切(11/5)
第6回 11月02日(月)【休講】学園祭➡自習教材(WEB)
第7回 11月09日(月)通常講義
第8回 11月16日(月)通常講義
第9回 11月23日(月)【休講】
第9回 11月26日(木)6時限【補講】教室同じ:304号室
第10回 11月30日(月)通常講義
第11回 12月7日(月)通常講義
第12回 12月14日(月)通常講義
第13回 12月21日(月)通常講義
第14回 1月7日(木)月曜講義
第15回 1月18日(月)到達度確認(試験)
自習用教材
【問題】以下の下線部が正しい場合は○を記入し、間違っている場合は、正
しい文章に修正せよ。
1.均衡点より上の部分で、価格pに対して、需要量>供給量であるとき
ワルラス的安定の状態である。
2.均衡点より左の部分で、需給量xに対して、需要価格>供給価格である
とき、マーシャル的不安定の状態である。
3.供給曲線の傾きの絶対値>需要曲線の傾きの絶対値となるとき、くもの
巣調整は安定となる。
4.消費税が8%から10%に上昇するとき、消費者余剰は増加する。
5.ある財の需要曲線:p=100-(2/3)q 供給曲線:p=q であるとき、均衡点
での消費者余剰は、生産者余剰より大きい。
★ 解答用紙(前回の課題用紙)に記入し、授業支援(11/5)に提出してく
ださい。