医療支出 一般的に、日本の医療支出は他の先進国よりも低いと考えられている。しかしながら、医療へ の公的支出の割合や医薬品支出は OECD 平均よりも高く、公的支出については医療支出全 体の 82%を占めているi。(OECD, 2014) 総医療費 近年、日本の総保険医療支出(国民医療費に加え、保険適用外のものも含むすべての医療 機器や医療サービスにおける支出)の対 GDP 比は増加傾向にある。2008 年から 2012 年にか け、GDP における医療支出の割合は 8.5%から 10.1%へと増加し、OECD 平均の 8.9%をはるか に上回る数字となっているii。また、2014 年の日本の医療支出は対 GDP 比 10.2%と推計されて いるiii。OECD の試算によれば、日本の医療支出は今後徐々に抑えられていく見込みであるが、 同時に、日本は OECD 加盟国の中で 2009 年以降も医療支出が増加している数少ない国のう ちの一つであるiv。増加の原因のひとつとしては、医療支出が経済的成長を上回るペースで膨 張していることが考えられている。一方で、人口一人当たりにおける公的支出と民間支出の割 合は OECD 平均と近い数字であるにもかかわらず、2008 年から 2012 年までの日本の人口一 人当たりの年間の医療費支出の増加率の平均は、同期間における OECD 加盟国全体の平均 増加率と比べてはるかに高い数字が示されているv。 医療費の増加要因 医療支出が増加する要因は、他の国と同様に、高齢化、医療技術の高度化、医療需要の増 加などと考えられている。なかでも人口の高齢化に伴う医療費の増加は重要な要因のひとつ である。例えば、2011 年には病院の支出のおよそ 64%が 65 歳以上の高齢者(2012 年時点で 総人口の約 23%)のケアに充てられていたviが、2020 年までには高齢者の割合が総人口の約 30%に上り、高齢者ケアに対する支出は全体の 66%まで達する見込みであるvii。さらに、2011 年から 2012 年にかけて後期高齢者医療制度の加入数が 3%、介護サービスの受給者数が 5.5%(約 285 万人)とそれぞれ増加の一途をたどっている。 医薬品 医薬品支出額に関しては、高齢化の進行だけでなくジェネリック医薬品の使用率の低さも、支 出の増加傾向に歯止めがきかない理由である。ジェネリック医薬品の市場占有率は OECD 平 均が 24%、ドイツやイギリスでは約 75%にまで上っているixのに対し、日本のジェネリック医薬品 の市場占有率は 11%に留まっているx。この現状に対し政府は、後発品の使用割合を数年以内 に 80%以上とする新たな目標を 2015 年に設定した。 © 2015 JAPAN HEALTH POLICY NOW OECD. 2014. “OECD Health Data 2014.” http://www.oecd.org/els/health-systems/health-data.htm (accessed 15 April 2015). ii Data extracted on 08 Jul 2015 02:36 UTC (GMT) from OECD.Stat iii Data extracted on 08 Jul 2015 02:36 UTC (GMT) from OECD.Stat iv OECD. Focus on Health Spending. OECD Health Statistics 2015. p. 3 Retrieved from: http://www.oecd.org/health/health-systems/Focus-Health-Spending-2015.pdf (accessed on 30 July 2015) v OECD. Health at a Glance 2013: Health Indicators. p.155. Retrieved from: http://www.oecd.org/els/health-systems/Health-at-a-Glance-2013.pdf (accessed on 10 August 2015) vi OECD. Health at a Glance 2013: Health Indicators. p.162-163. Retrieved from: http://www.oecd.org/els/health-systems/Health-at-a-Glance-2013.pdf (accessed on 10 August 2015) vii Ikegami, N., B.-K. Yoo., Hashimoto, H., Matsumoto, M. Ogata, H., Babazono, A., Watanabe, R., Shibuya, K., B.-M. Yang, Reich, M.R. and Kobayashi, Y. Japanese universal health coverage: evolution, achievements, and challenges. The Lancet. 2011; 378: 1106–15 ix OECD. Health at a Glance 2013: Health Indicators. p.14. Retrieved from: http://www.oecd.org/els/health-systems/Health-at-a-Glance-2013.pdf (accessed on 10 August 2015) x OECD Health Statistics 2014, “How does Japan compare?” i © 2015 JAPAN HEALTH POLICY NOW
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