ベルソムラ錠 - コンパス調剤薬局

コンパス薬局横浜西 スキルアップ勉強会
2015.1.29 根井
第 89 回『ベルソムラ錠』
MSD 日野大志郎さん
参加者:川村先生、野口、野田、宮内、近藤、小西、前田、小瀬村、鈴木、根井
日本において3人に1人は不眠症と言われている。不眠症治療はこれまでベンゾ・非ベン
ゾジアゼピン系・メラトニン受容体作動薬などが用いられてきたが、ベルソムラは日本人
科学者により発見されたオレキシンをターゲットに開発された、世界初のオレキシン受容
体拮抗薬である。名前の由来は Bel(美しい)somra(眠り)
。
【効能効果】
不眠症
【用法用量】
通常、成人にはスボレキサントとして 1 日 1 回 20mg を、高齢者には 1 日 1 回 15mg を就寝
直前に経口投与する。
用法及び用量に関連する使用上の注意
1. 本剤は就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中で一時的に
起床して仕事等で活動する可能性があるときは服用させないこと。
2. 入眠効果の発現が遅れるおそれがあるため、本剤の食事と同時又は食直後の服用は避け
ること。
〔食後投与では、空腹時投与に比べ、投与直後のスボレキサントの血漿中濃度が低
下することがある。
〕
3. 他の不眠症治療薬と併用したときの有効性及び安全性は確立されていない。
【作用機序】
オレキシン(神経ペプチド。覚醒の調節に重要な働きをしている)の受容体結合をブロッ
クし、過剰に働いている覚醒システムを抑制することで、脳を生理的に覚醒状態から睡眠
状態へ移行させ、本来の眠りをもたらす
【特徴】
・オレキシンという限局的な物質に作用するため、BZD・非 BZD 系でみられる筋弛緩の副作
用が少ない。
・内因性オレキシンの増加が薬効消失に関与しているため、半減期は消失に無関係である。
・他の不眠薬のように用量の調節は必要ない。
・反跳性不眠が起こりにくいため、中止しやすい。
【副作用】
不眠症患者を対象とした第 III 相国際共同試験では、254 例 (日本人 61 例) に本剤 (成人:
20mg、高齢者:15mg) が投与された。この試験の 6 ヵ月間の副作用は 53 例 (20.9%) に認
められた。主な副作用は、傾眠 (4.7%)、頭痛 (3.9%)、疲労 (2.4%) であった。
【考察】
これまでの不眠症治療薬は、その 95%以上が GABA 系に作用する同機序の薬剤であった。
したがって、異なった作用機序をを有するベルソムラにより治療の選択肢が増え、さらな
る睡眠・覚醒のメカニズムの解明につながっていくことを期待している。
最高血中濃度は服用後1時間半後だが、食後服用であると3時間後に延長する。よって
食後2時間は間隔をあけないと効果が発現しにくいため、投薬の際、口頭もしくは説明の
紙を用いて患者に注意を促す必要がある。また、吸湿性があり光に不安定なため、一包化
や粉砕は回避する薬剤であることも覚えておきたい。
ただ、新機序の薬剤のため実験結果が未だ少なく、他の不眠薬からの切り替えは推奨さ
れず併用もできないため、今後処方範囲が広がるとより使いやすい薬剤になると思われる。
【質問事項】
Q:どういった不眠患者に使いやすいか?
→中途覚醒の短縮効果が高い、また中途覚醒時からの再入眠への至りやすさが高いため、
こういった悩みをもつ不眠患者によい。
Q:高齢者には使える?
→ふらつきや持ち越し効果の副作用が少ないため、使いやすいとされる。