1章 物理量の記述と数学的準備

基礎物理学
2007年度
担当
木口 勝義
担当教員の所在
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15号館3階物理学研究室
物理は実験科学である。
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概念は実験操作に基づいている。
何をどのように測定しているかを明確
にしないといけない。
物理の公式は色々な測定値のあいだの関
係を表す。公式
を見たら
の測りかたを理解しなければ
公式は意味をなさない。
「時間」は何をどのように測って
いるのか?
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ガリレオは19歳のとき、ピサの大聖堂の
シャンデリアを見て、考えた。
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自分の脈拍数とシャンデリアの振動の数には比
例関係がある。
実際に測ってみたことがガリレオの天才の所以。
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この世界の現象にはリズムがあり、どの2つの現
象の間の拍数の間にも比例関係がある。
時間が遅れるってどういうこと?
1秒の定義
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原子の基底状態の2つの超微細準位の
間の遷移に対応する放射の
9 192 631 770 周期の継続時間。
量子力学の原理によって、すべての
原子
は同一で区別できない。したがって、一秒の定義
は原理的には明確である。
しかし、現実には一個の原子を観測することは技
術的に不可能であり、技術的な挑戦がある。
距離、長さの測りかた
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三角測量
基線の長さ は測れない。
L はその何倍かが分かる。
例
αCenという星は視差が0.76秒である。
この星までの距離を求めよ。
実際とは異なるが、簡単のため、この星は地球の公転面に
垂直方向にあると仮定せよ。
地球-太陽間の距離を基準にすれば距離がわかる。
距離、長さの測りかた(続き)
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光を使って距離を測る。
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光の速度 c が分かっていれば、光が反射して戻って
くるまでの時間 t を測れば、L=ct/2 から距離が分
かる。
真空中の光の速度は
この値はどこから測っても同じである。もし異なるなら、
地球の速度の方向とそれに垂直な方向では異なるは
ずである。しかし、マイケルソンの実験によって、方向
による光速度の差はないことが分かっている。
マイケルソン
の実験
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三角測量と光を使った距離測定の結果は
同じか?
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答え:わずかに異なる。
これを空間が曲がっているという。
どちらの値を使うべきか: 光による測定の結
果を使うべき。
なぜ? 三角測量はユークリッド幾何学を使っ
ている。三角測量と光による測量を比べると
ユークリッド幾何からのずれが分かる。
質量とは何を測ったものか?
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これこそが力学の基本。
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あまりにも本質的なので、後で詳しく説明する。
物理次元
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時間の長さの次元を T, 空間中の長さの
次元を L, 物質の質量の次元を Mであら
わすと、すべての物理概念はこの3つで
分類できる。
同じ次元に分類される量は互いに比較で
きる。
物理の公式の右辺と左辺は同じ次元を持
つ。
次元への分類例
無次元量
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数学的な数で表される量。具体的な物理と
は関係のない絶対的な意味を持つ。
例:
物理量
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物理量は単なる数では表せない。
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3.0 m と 5.0 kg はどちらが大きいと聞くのはナンセンス。次元
が違う。
同じ次元でも30.5 mm と 0.2 km のどちらが大きいかは数
値からだけでは決まらない。単位をあわせないと比べられない。
物理的な次元に対応した単位が必要である。
SI 単位系では
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M の次元を持つ量は kg,
L の次元を持つ量の単位は m,
T の次元を持つ量は s を単位として測る。
物理量と単位の表示法
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物理量を表す記号は斜体文字を使う。
単位は立体文字を使う
例: 力
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力の記号
は数値と単位の両方を含んで
いることに注意。
数値と単位の間には小さな空白が必要。
単位は英文では単数である。複数にはなりえ
ない。
次元解析
„
„
物理公式の右辺と左辺は同じ次元を持た
なければならない。
分類学からは無次元量の大きさは決まら
ないが、無次元量は角度のようなもので、
それは 1 から大きくはずれない。
次元解析の例
„
振子の周期 T が錘の質量 m, 糸の長さ
l,および重力の加速度 g に関係して定ま
ることから,T を次元解析によって見いだ
せ。
物理での計算
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量は単位の何倍であるかで示される。
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単位を落とした計算は意味をなさない。
測定値は誤差を持つ。
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計算で言えないことは言ってはいけない。
言えることは漏れなく言わなければならない。
微分、積分のコツ
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微分、積分の意味は、徐々に、調べていく。
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微分の技術で学生がもっとも戸惑うのは合成関
数の微分である。
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速度や加速度の考え方は微分を使わなければ明らか
にできない。
チェイン ルールを使えばよい。
積分は微分の逆計算。
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置換積分(合成関数の微分)、部分積分(積の微分)
チェイン ルールの例
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V が t の関数であるとき
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典型的な計算
最後に
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分かろうと分かるまいと、計算しよう。
ノートを広げ、鉛筆を持ち、手を動かして計
算しよう。
頭で考えず、手で考えよう。