古屋 聡 氏

杉浦地域医療振興助成
災害弱者をめぐる
防災マニュアルの作成と頒布
―地域包括ケアを災害への備え、災害時
の対応に活かす―
古屋 聡 氏
山梨市立牧丘病院 院長・医師
1.概要
2.具体的計画
平時にできないことを有事において行うことは難し
(1)
「災害弱者用マニュアル」の作成
い。最大の災害対策は、
平時からの住民、
行政、
地域の医療
(2)
「多機関・多職種協働マニュアル
(医療・福祉施設
福祉資源などとの連携と協働により、災害弱者を想定
用)」の作成
し、彼らを守っていくことであり、
実はこれは地域包括ケ
(3)地域の多機関・多職種対象のシンポジウムの開催
アシステムの構築のプロセスに合致する。申請者はさき
(4)住民対象のシンポジウムの開催
の東日本大震災以降、宮城県気仙沼市を中心に4年間の
(5)情報発信システムの構築
保健医療関連の支援実績がある。
本事業の柱は、
申請者の
被災地での活動経験を踏まえ申請者が院長を務める病院
3.期待される成果
の所在地である山梨市を含む峡東医療圏における、1)
多職種で編成されたチームをもって、在宅患者を含む
災害への備えおよび災害時の行動計画を網羅した「災害
地域住民との話し合い、多施設間や行政との話し合いも
弱者用マニュアル」
および
「多機関・多職種協働マニュア
経て、いくつかの異なるレベルで災害への備えや災害時
ル」を作成すること、2)住民および医療福祉従事者等に
の行動・活動の計画をマニュアル化していくプロセスそ
よる災害への備えや対応に関する議論、医療福祉現場で
れ自体が、地域包括ケアシステム構築に資するものであ
の実践の積み重ねなどを踏まえ、適宜マニュアルの内容
り、これを通じて、峡東医療圏全体の防災・災害対策意識
を改善していくシステムの構築およびそのプロセスの発
や実際の災害への対応力が高まることが期待される。ま
信の2点である。地域包括ケアシステム構築の一環とし
た、この一連のプロセスを可視化することで、全国の他の
ての災害への備えや災害時の行動・活動の計画をマニュ
地域における実行可能性の高い災害への備えと災害時の
アル化し、
地域で議論しながら取り組んでいくことで、峡
行動・活動計画立案に貢献しうると考える。
東医療圏全体の防災・災害対策意識や実際の災害への対
そして、
「災害時においても超急性期以外は普段の診療
応力が高まることが期待される。
また、
この一連のプロセ
の延長線上にあり、さらには超急性期への対応において
スを公開することで、さきの被災地であった東北地方の
も、地域の現場における普段の活動の積み重ねと準備
各地域、そしていつか被災地になる可能性のあるすべて
が、アドリブの効いた適切な対応をも支える」という申請
の地域の災害対策に資すると考えている。
者の4年間の実際の被災地支援活動から生み出された
エッセンスを含む本マニュアルの内容は、災害弱者の安
心につながり、多くの保健医療福祉従事者を直接激励す
るものになることが期待される。
(本マニュアルは日本在
宅医学会の大規模災害への取り組みの一環として日本在
宅医学会関係者にも共有される予定)
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