オスミウム/DABCO 触媒による アルキンの Z 選択的ヒドロホウ素化 Osmium/DABCO-Catalyzed Z-Selective Hydroboration of Alkynes 杉沢 啓介、小針 良仁、浪越 毅、渡邉 眞次、村田 美樹 (北見工大) ヒドロホウ素化は通常シス付加で進行するため、(E)-1-アルケニルボロン酸エステルはアルキン から容易に得られるものの、(Z)-体など他のタイプのアルケニルボロン酸エステルの合成は多段階 を要していた。(Z)-1-アルケニルボロン酸エステルを一段階で与える trans-ヒドロホウ素化が宮浦 らによって報告されているが 1)、同様の反応の研究例は極めて少ない。以前我々は、ピナコール ボランをホウ素化剤とした芳香族アルキンのヒドロホウ素化において、RuHCl(CO)(PPh3)3 が触媒 として働き、(E)‐ビニル型ホウ素化合物が得られることを報告している 2) 。今回、触媒量の OsHCl(CO)(PPh3)3 と DABCO 存在下、高選択的に (Z)‐ビニル型ホウ素化合物を与えることを見出 した。 DABCO を加えない場合、Z:E は、ほぼ 1:1 であった。同様の条件下、RuHCl(CO)(PPh3)3 を用い た場合は (E) 選択的に反応が進行する。重水素ラベル実験の結果、本ヒドロホウ素化は、末端ア ルキンの 1,2-水素移動を伴って進行することが分かった。さらに詳細な触媒サイクルについて、 DFT 計算により検討したところ、アミンによるアルキンの 1,2-水素移動を伴うオスミウムビニリ デン錯体の形成が、(Z) 選択性の鍵になることが示唆された。 <参考文献> 1) Ohmura, T.; Yamamoto, Y.; Miyaura, N. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 4990. 2) Murata, M.; Watanabe, S.; Masuda, Y. J. Chem. Res. (S) 2002, 142. 発表者紹介 氏名 杉沢 啓介(すぎさわ けいすけ) 所属 北見工業大学大学院工学研究科 マテリアル工学専攻 学年 博士前期課程 1 年 研究室 有機材料研究室(村田研究室)
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