無機化学演習 問1 2016 年度 学期末試験問題 2016 年 8 月 1 日 以下の(1)〜(6)の設問に答えよ。 (1)以下の分子またはイオンについて、すべての原子がオクテット則(水素原子について はデュエット則)を満たすようなルイス構造式を書け。VSEPR 則に従って、中心原子 まわりの立体構造を予測すること。また、必要に応じて形式電荷を正しく記すこと。 ①HNO3、 ② BF3、 ③ SnCl3–、 ④ SO2、 ⑤ PCl4+ (2)以下の錯体の構造式を記せ。 ① トリス(アセチルアセトナト)鉄(Ⅲ) ② クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I) ③ ④ ⑤ テトラカルボニルコバルト(-Ⅰ)酸ナトリウム ヘキサアクア鉄(3+)硝酸塩 cis-ジクロロビス(エチレンジアミン)ルテニウム(Ⅱ) (3)第 4 周期元素には K から Kr までがある。これらの元素の原子において、電子が軌道 を占める順番は、軌道のエネルギーと電子間反発とのかねあいによって決まる。 K, Ca, Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, As, Se, Br, Kr ① 軌道のエネルギーは、K と Ca では 4s < 3d であるが、Sc 以降は 3d < 4s となり、そ の差は徐々に広がっていく。原子番号が増えるにつれて 3d 軌道が 4s 軌道よりも相 対的に安定になっていくのはなぜか。 ② Sc 原子の軌道のエネルギーは 3d < 4s であるが、その基底状態における電子配置は、 [Ar](3d)3(4s)0 ではなく[Ar](3d)1(4s)2 である。この理由を説明せよ。 ③ Cr 原子および Cr3+イオンのそれぞれについて、基底状態における電子配置を記せ。 (4) PH3 分子の定性的なエネルギー準位図を右に示す。 ① 最高被占軌道 2a1 と最低空軌道 2e における 原子軌道の重なりの様子を示せ。 ② トリメチルホスフィンが遷移金属と結合を 形成する際のσ供与およびπ逆供与のそれぞれ を表す軌道相互作用を定性的に図示せよ。 (5)3d 金属 M の正八面体型錯体 ML6 において、M の軌道と配位子 L の軌道がσ型の重な りのみを形成する場合について考える。配位子の対称適合群軌道を以下に示す。 ① 金属の原子価軌道(3d, 4s, 4p)を a1g、t1u、eg、t2g の対称性に分類し、図示せよ。 ② ML6 の定性的な分子軌道エネルギー準位図を図示せよ。 ③ M–L 間の結合性軌道、非結合性軌道および反結合性軌道はそれぞれどれか。 ④ [Co(NH3)6]2+と[Co(NH3)6]3+のうち、より強い Co–NH3 結合をもつのはどちらか。 根拠とともに答えよ。 (6)正八面体型錯体 ML6 において、L がπ供与性配位子またはπ受容性配位子である場合 を考える。配位子のπ型軌道からつくられる対称適合群軌道を以下に示す。 ① 金属の原子価軌道と配位子の群軌道との間で生じうるπ型の重なりを図示せよ。 ② L がπ供与性配位子である場合の ML6 の分子軌道エネルギー準位図を図示せよ。 ③ L がπ受容性配位子である場合の ML6 の分子軌道エネルギー準位図を図示せよ。 ④ [CoF6]3–と[Co(CN)6]3–はともに Co3+の錯体であるが、前者が常磁性であるのに対し、 後者は反磁性である。この違いが生じる理由を説明せよ。 問2 Scheme 1 に 10 族金属であるパラジウム錯体触媒によるカップリング反応(Heck 反応)の触媒 反応サイクルを示す。(1)~(2)の設問に答えよ。 (1) 中間体(A)~(G)について以下を記せ。 a) 中心金属の形式酸化数 b) 最外殻のd電子数 の和 c) b)と配位子から供与される電子数 (2) (i)~(vii)の各段階がどのような素反応であるかを記せ(例:CO の解離) 。 (3) 生成物であるアルケンにはシス体とトランス体が存在するがトランス体が主生成物となる。 その理由を、(v)のステップの遷移状態の構造をふまえて説明せよ。 Scheme 1 PPh3 Pd Ph3 P PPh3 Ph3 P (A) (i) 2 PPh3 Ph Br [R3 NH]Br Ph 3P NR3 H Ph3 P Pd PPh3 Pd PPh 3 (ii) (B) (vii) Ph Ph 3P Br (G) R Pd R R PPh3 Ph Ph 3P Br (F) Br (iii) R Ph H Ph3 P PPh3 (C) (vi) Ph Pd (v) (iv) R Ph Ph 3P Pd ( E) PPh3 Br Pd (D ) PPh3 Br
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