2007年 8月10日現在 育成状況

イクタツライス産地情報
【秋田県大潟村イクタツライス生産組合】
ほぼ順調に無事
稲穂
が誕生!
暑い夏の訪れと共に稲は出穂期を迎えました。人間で言うと出産時期ということにな
ります。稲には早生から晩生の品種があり、穂が出るには、その時点までの積算温度(平
均気温のトータル)や日照時間が影響します。また、人間の年齢に相当する葉齢(平年
は葉の数が13∼14枚で出穂)も関係しますが、大方は積算温度と日照時間で出穂時
期が決まります。今年は、平年より3日程早く出穂しました。「あきたこまち」で8月
4日頃、新品種「萌みのり」で8月9日頃でした。この後、稲は受粉を終え、炭酸同化
作用により葉で作られた炭水化物が猛烈な勢いで稲穂に移動して
お米
になります。
この炭水化物の移動は、昼暖かく、夜涼しいほどスムーズにいきますが、夜に熱帯夜の
ように暑いと稲自体が活動して炭水化物をエネルギーとして消耗しますので、稲穂に蓄
積されないことになります。稲も人間同様、 寝る子は良く育つ
なのです。この出穂
から約50∼60日で収穫期を迎えます。
あきたこまちの田んぼ
稲の高さに注目!
あきたこまちは、出穂と同時に急激に稲が伸びます。余りにも背が高くなると稲穂へ
徐々に炭水化物が蓄積して重くなりますので、強風(台風)や強い雨に遭遇すると稲穂
を支えきれなくなり、倒伏することになります。そうなると稔りが悪くなって、品質・
収量共に良い結果にはなりません。
萌みのりの田んぼ
稲の高さをこまちと比較してどうですか!
「萌みのり」は「あきたこまち」に比べて背が低いことが分かりますか?稲には早生
か晩生だけでなく背の高低・穂の大小・粒の大小、そして近年特に重視される食味など、
見た目では気が付かない様々な違いがあり、その品種によって農家は栽培方法も変えて
育てます。
左が「あきたこまち」
・右が「萌みのり」です!
上2枚の写真で品種による違いがわかるでしょうか?あきたこまちは稲穂が葉の上
に出ていますが、萌みのりは葉と稲穂の高さがほぼ同じです。
左が「萌みのり」・右が「あきたこまち」
上の写真で萌みのりとあきたこまちの背丈の違いが良く分かるでしょう。こまちは1
10cm 位, 萌みのりは95cm 位です。稲に限らず作物の品種改良は背丈が短くて多く
取れ、品質・食味が良いものへと改良が続けられてきました。背丈を短くすることは、
炭酸同化作用の産物を人間が必要とする実の部分に如何に蓄積を多くするかというこ
とです。
「萌みのり」はこの面で期待される品種と思っております。
世界の人口増加と食糧
世界の人口は20世紀に爆発的に増え、現在約65億人、21世紀前半には90億人
に達しようとしています。この背丈を短くする品種改良によって、稲に限らず麦などの
作物は大変多く収穫できるようになり、現在の人口をかろうじて養っていますが、今後
画期的な技術革新は、遺伝子組み換え等を使ってもほぼ限界に近づいていると言われい
ます。先進国で最低の食糧自給率(穀物ベース28%・カロリーベース40%)である
日本は今後も潤沢な食料に囲まれた生活を維持できるのでしょうか?世界人口の約4
0%を占める中国・インド・ブラジルの経済発展を続ける振興工業国は、豊かになると
と同時に豊かな食生活を求めて大量の食料を消費します。日本の食の海外依存は保障さ
れるのかどうか、グローバルな世界は経済効率一辺倒で相互扶助の精神とは相反するも
のです。日本の食料輸入は保障されたものではありません。農水省の19年版農業白書
では、現在の日本の農地面積で芋類を主体とした食生活に変えると自給可能としていま
すが、農家の高齢化と農村の荒廃を見るにつけ、それさえも疑問に感じます。
食の安全と安心
最近、中国の輸入農産物の安全性が大きな問題となり、国内でもミートホープの偽装
事件が問題になりました。これはグローバル経済の負の部分が現れたことで、当然起こ
るべくして起こったことだと思います。食糧事情の逼迫と共に今後もこのようなことは
起こるでしょう。このため様々な法律(JAS法や適正農業規範GAP)などでの規制
が行われる動きはありますが、経済合理主義の中では常に不正の動きがあり、こうした
問題は「のど元過ぎれば何とか」で、常に再発をはらんでいると思います。
従って、我々が㈱イクタツと取り組んでいる試みは、互いに顔の見える関係です。い
くら法律で規制しても必ず抜け道はあります。生産から流通、消費まで互いに顔の見え
る関係こそが、究極の安全と安心ではないでしょうか。
話は変わって、この後の稲の管理は、カメ虫の防除作業、収穫作業へと進み、10月
上旬には新米を届けることが出来るでしょう。それまで大きな台風が来ないことを祈る
だけです。ところでカメ虫の防除作業には非常に疑問を感じます。農作物検査法という
のがあって1等・2等・3等米などの格付け(見た目だけの検査)が行われますが、カ
メ虫の食害がある斑点米が1000粒に2粒(0.2%)あると1等から2等に格下げ
されます。この斑点米は、一部の小売店を除いてほとんどの会社では色彩選別機で取り
除くことができます。しかしながら、この格下げによる価格低下のため、農家は仕方な
く農薬を散布します。消費者は、野菜を買う際に、虫の食害のある野菜と無い野菜では、
大方の消費者は無い方を買うと思いますが、どちらが安全でしょうか。こうした流通の
あり方は、食の安全と環境とコストを考えるうえで大きな問題があると共に、消費者も
どちらが安全かを理解する必要があるかと思います。