第 9 章 まとめと展望 9.1 まとめ ・ナノ寸法領域(<<光の波長λ)での光と物質との相互作用: 光の量子化のための仮想的な共振器の設定不可。 ・波数 k と位置 x の間の不確定性関係 k x 1 : ナノ寸法領域では x → k k ∴波数と運動量 保存量 ↓ 【第 2 章】 ・無数モードの光と無数エネルギー準位の電子・正孔対との相互作用を考 える。 →DP(ナノ寸法領域において光子と電子・正孔対とが結合した状態を表 す準粒子)の 描像導出。 ・DP の場はナノ寸法領域において時間的にも空間的にも変調 (時間的な変調特性は側波帯としての無数の固有エネルギーにより表さ れる) ----ナノ寸法領域での光と物質との相互作用の特徴(波数と運動量 保存量、 共振器の設定不可)の帰結。 ・DP の発生する系(ナノ系)は巨視的寸法の光と物質(巨視系)に囲ま れている。 →ナノ系と巨視系との間でのエネルギーの授受を考慮する必要あり。 ↓ 射影演算子法を使用 ↓ DP を介したナノ物質間の相互作用エネルギー=湯川関数 1 (巨視系の影響を受けた遮蔽ポテンシャルに相当。DP の空間的な変調特 性は湯川関数により表される。 ) ・湯川関数の導出 →ナノ物質間でのエネルギー移動の効率はナノ物質の寸法に依存(寸法 依存共鳴) 。 →長波長近似が破綻→電気双極子禁制遷移が許容【第 3 章】 。 ・階層性: 「何を観測するか」に応じて理論モデル(巨視的古典論~素 粒子論)のうち、 どれを採用するかに注意する必要あり。 【第 4 章】 ・DP はフォノンとも結合: ナノ寸法領域で多モードかつコヒーレント状態のフォノンと結合。 コヒーレント状態のフォノン 物質温度の上昇(フォノン 熱) 。 =近隣のナノ物質を励起。 →フォノン援用の光励起・脱励起が可能。 →ナノ物質中の電子の状態とフォノン励起状態との直積の状態を考える 必要あり。 (DP とフォノンと結合により、電子・正孔対の固有エネルーはさら に変調。 ) 【第 5 章】 ・寸法依存共鳴 ↓ DP のエネルギーは寸法の等しいナノ物質間を自律的に選んで移動。 → 耐タンパー性、生体系との類似性などの新機能。 2 【第 7 章】 ・フォノン援用の光励起・脱励起を寸法依存共鳴と組み合わせて利用 →半導体の Eg以下の光子エネルギーをもつ光を吸収。 し、また間接遷移型半導体も光を放出。 →材料工学が抱える問題から解放。→「光・物質融合工学」 。 【第 8 章】 ・階層性 →DP の発生位置とそのエネルギー局在寸法が多様 →解析には統計的手法、数理科学的手法が必要。 →加工への応用の場合、表面や内部の形状・寸法が刻一刻変化: 時間的空間的振る舞いの分析が必要。 9.2 今後の展望 今後の課題や解決すべき問題: 1. ナノ寸法領域において光子、電子、フォノンなどが互いに結合した状 態を表す準粒子 の理論的描像の高精度化 2. ナノ物質間でのDPまたはDPPのエネルギー移動と散逸の詳細の解明 3. ナノ寸法領域でのフォノン援用の光と物質の相互作用の詳細の解明 4. ランダム性、自己組織性、階層性の解明 5. 上記 4.の性質と両立する DP または DPP の発生、消滅の制御 6. 非平衡開放系の統計力学、数理科学モデルの構築とシミュレーション 手法の導入 【6.について】 ・DP を使って加工・作製された材料、デバイスの内部の形状、寸法、組 成は多様・不規則のように見える: これはナノ寸法領域での光と物質と 3 の相互作用による帰結。 →その個々について我々は評価しなくとも全体の性質を評価すればよい (実例は 8.4 節) 。 →従来の材料工学には無い。 (本技術では自然界が自律的に形成する構造を DP で制御し利用。 ) ・DP の科学技術の初期:DP 発生のためにプローブを使用。 →DP の発生位置を限定、応用技術も限定。 ・実は DP は物質表面・内部のどこにでも発生。 →今後はその発生と消滅とをより巧みに制御して包括的技術へと展開。 →価値ある工学が生まれ、技術が多才化。 ・上記の 1.〜6.はこのような包括的技術を実現する為に今後取り組むべき 課題。 4
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