PowerPoint プレゼンテーション

言語表現と
視覚表現の比較
関西大学社会学部 雨宮俊彦
話しの流れ
• 言葉と視覚表現の位置づけ(言語ウィルス
説、視覚記号菌説)視覚表現は言葉の解釈
系に依存している
• 純粋な視覚表現の記号的弱点(否定表現、
階層性、抽象性)
• 視覚表現の修辞法とスタイル
• マンガにおける話し言葉の視覚化と、絵の
言葉化
言語は人類に寄生するウィルスである
• 文化感染症説(梅棹1967の宗教伝染病論、
Sperpber1996の表象の疫学)
• 言語は人間の認知系に寄生するよう進化したウィ
ルスである(Deacon1997)
• 言語修得(感染)能力には、一般的認知機能だけ
ではなく、言語に特異的な基盤があり、これは遺
伝子に書き込まれている。しかし、どの言語に感
染するかは、言語ウィルスを伝搬するどの集団に
属したかによって決まる。
言語ウィルスは人類の認知能力に革命
をもたらした
• 記号の表現面における二重の分節化(音素
と単語)と内容面の階層化によりもたらさ
れた数千の語彙による指示能力の飛躍的拡
大( Deacon1997 )
• 命題表現による状況に依存しない事実の叙
述。否定表現。意図的に事実と異なる表現。
視覚記号は人間の視覚情報処理系に言
語ウィルスの力を借りて寄生するよう
になった有用な細菌である
• 面的・オブジェクト的で膨大な情報を持つ視覚画
像を記号的に扱えるため、適切に使えばきわめて
強力な認知能力を発揮する
• 視覚画像の潜在的な情報量が多すぎるため、記号
の表現面と内容面との対応には言語によるアン
カーや解釈が必用。視覚記号は歴史的にきわめて
遅くに発達した。
• 視覚記号菌は、進化ではなく歴史に属し、言語
ウィルスのような特定の遺伝的基盤はない。言語
の強力な補助者にとどまる。
視覚情報処理
視覚記号菌のさまざま
視覚記号の分類
視覚記号の確立された分類はない。視覚情報処理のどの段階の
出力を利用しているか、図式化、構成要素の規格化の程度で
およそ分けることができる。両者はおよそ対応するが、最近は
規格化されたObject表示も用いられるようになった。
視覚の初期
出力の利用
アイコン 文
図・グラフ
視覚の後期
出力の利用
写真・絵
図式化・構成要素の規格化
(記号の表現面と内容面との対応が比喩的な場合が表現、そう
でない場合が表示である。両者を区別しない場合には表現とい
う用語を用いる。)
話し言葉と書き言葉
内容面
表現面
話し言葉
書き言葉
間エージェント的・線条的・
二重分節化による綴りと数千
以上の語彙・声の調子
否定・ウソ・命題、階層
性、抽象性、状況依存性と声の
感性伝達
(声の文化)
オブジェクト的に提示される
間エージェント性・面に展開
される線条性・文字による綴
りの定着と数万の語彙
否定・ウソ・命題、階層性、
抽象性の強化と分析性の獲得
(文字の文化)
言葉と視覚表現の位置
有用体内細菌と
しての視覚記号
視覚図式へ
の寄生
視覚表現
潜在的に膨大
な情報をIconic
に提示しうる
アンカー・解釈の文脈提示
環境
階層的語彙
と命題
社会集団
言葉
集団的に脳に感染し、遺伝
子に基本が書き込まれたレ
トロウィ ルスとしての言葉
純粋な視覚表現で否定形は可能か?
「海には誰も泳いでいない。」
?
否定は命題論理の基本要素。否定が表現できないと
命題を組織的に表現することも不可能。
手塚治虫の試み(言葉)
手塚治虫の試み(絵とバルーン)
言葉は抽象の階層の任意のレベルで対
象を指示できる
絵は特定のレベル(基本レベル)との
自然な結びつきがあるので任意のレベ
ルの指示対象のラベルにはなりにくい
PICの形容詞、抽象名詞の正答率は低い
比喩的に抽象概念を表現しても言語的
注釈がないと分からない
感性的内容は対象の指示によらずやや漠
然と表現可能(音象徴や声の調子に相
当)
アイコン文は要素と意味、構文が規格
化された記譜(Notational)記号システム
であって絵ではない
中間的まとめとこれからの話し
• 言葉による注釈や文脈の提示なしの、純粋
な視覚記号のみの表現はかなり限られたも
ので、実際的には存在しない。
• 以下の、視覚表現の修辞法、視覚表現のス
タイルでは、言葉による注釈や文脈の提示
を前提にして、視覚表現を扱う。
• 最後のマンガ表現では、視覚表現と言語表
現の融合を扱う。