日本建築学会技術報告集 第 21 巻 第 48 号,517-520,2015 年 6 月 AIJ J. Technol. Des. Vol. 21, No.48, 517-520, Jun., 2015 パルス性地震動に対する免震建 パルス性地震動に対する 物の簡易最大応答評価 免震建物の簡易最大応答評価 MAXIMUM RESPONSE EVALUATION BASE OF ISOLATED BUILDINGS AGAINST PULSE-LIKE GROUND MOTIONS 岩崎光博 Mitsuhiro IWASAKI————* 1 Yasuhiro HAYASHI————* 3 *1 杉野未奈 岩崎光博— ———— * 1 林 康裕 — ———— * 3* 3 林 康裕 * 2 杉野未奈— ———— * 2 キーワード : パルス性地震動,最大応答評価,免震建物,エネルギーの釣合, キーワード : 応答スペクトル法 パルス性地震動 , 最大応答評価 , 免震建物 , エネルギーの釣合 , Keywords: 応答スペクトル法 Pulse-like ground motions, Estimation of maximum response, Base isolated buildings, Energy balance, Response spectrum method Mina SUGINOー ーーーー *2 The objectives of this paper are to analyze nonlinear response and establish the method of evaluating the maximum response of base The objectives this paper are to analyze response isolated buildingsofagainst the pulse-like groundnonlinear motions. To achieveand the establish the evaluating maximum of base objectives, we method considerofthe pulse-likethe ground motionsresponse as the sinusoidal pulse input and propose thethe prediction method based on theTotheoretical isolated buildings against pulselike ground motions. achieve solutions and energy balance with single-degree-of-freedom system. The the objectives, we consider the pulselike ground motions as the sinu proposed method in this paper evaluates approximately the maximum soidal pulse input propose the prediction response against theand pulse-like ground motions. method based on the theoretical solutions and energy balance with singledegreeoffree dom system.The proposed method in this paper evaluates approxi mately the maximum response against the pulselike ground motions. はじめに 解析手法 1 9 9 5 年の兵庫県南部地震をはじめ、内陸地殻内地震の断層近傍で 建物モデルは、バイリニア型の復元力特性( 図 1 ) を有する非減衰 は顕著なパルス状の速度波形を有するパルス性地震動が観測されて 1 自由度系とする。降伏せん断力係数を 、降伏変位を 、2 次剛 いる。これらパルス性地震動に対する建物応答に関する研究として、 性に基づく周期を 2 、2 次剛性比を α ( = 2 / 1 ) と定義し、免震層を想 観測波の卓越周期と振幅から応答スペクトルを近似する研究 1 ) や、 定した建物モデルを表 1 に、諸定義を( 1 ) 式に示す。本論では、パル 加速度が正弦波 1 波からなる正弦波パルスに対する弾性 1 自由度系 ス性地震動を簡単な数学的モデルで表現するため、入力波に( 2 ) 式の の応答理論解を求めた研究 2 ) がある。しかし、非線形時の応答特性 正弦波パルス(図 2)を用いる。 , , を順にパルス加速度振幅、速 に関しては、最大応答変位の発生時刻やエネルギーの観点を用いた 度振幅、変位振幅、 , ω をパルス周期、角振動数とする( ( 3 ) 式) 。 評価など、検討の余地があると考えられる。 本検討では、 =100[cm/s], =0.1~4.0[s]を基本的に使用し、時刻歴応 また、免震建物の応答予測には時刻歴応答解析の他に応答スペク 答解析は Wilson θ 法( θ =1.4)により行う。 デルや入力波によって時刻歴応答解析の結果と大きく異なるという 報告もある 3 ) , 4 ) 。そこで本論では、パルス性地震動を簡単な数学的モ デル( 正弦波パルス) で考え、免震建物を想定した非減衰 1 自由度系 の応答特性を分析する。さらに、運動方程式に基づく理論解とエネ 2π 2 1 ( = 1,2) , ω = , = τ = 1 = 2π 0 ( ) = sin(ω ) ≦ π 2π = = , 2 ω = ルギー釣合から最大応答変位を定式化し、簡易に評価できる手法を Model( ,2 ) [ton] Model(0.03,3.0) 981 Model(0.03,4.0) 981 Model(0.05,3.0) 981 Model(0.05,4.0) 981 O 1 2 2 Acc.[cm/s ] [kN] Dis.[cm] 0 0 time[s] ( a ) 加速度 図 復元力モデル 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 大学院生 *1 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 大学院生 (〒 615-8540 京都市西京区京都大学桂 C2 棟 316 号) *2 〒 6158540 京都市西京区京都大学桂 C2 棟 316 号 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 博士後期課程 修士(工学) 2 博士後期課程 修士(工学) * 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 日本学術振興会特別研究員 DC1 *3 日本学術振興会特別研究員 DC1 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 教授・工博 *3 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 教授・工博 *1 0 Vel.[cm/s] 比較することで、本手法の有効性について検討を行う。 (1) (2) 2π (3) 表 建物モデル 構築する。最後に、本手法と時刻歴応答解析、応答スペクトル法を 0 0.03 0.03 0.05 0.05 [cm] 0.5 0.5 0.5 0.5 2 [s] 3.0 4.0 3.0 4.0 α 0.0740 0.0047 0.0446 0.0025 0 Dis.[cm] トル法があるが、応答スペクトル法による最大応答予測は、建物モ time[s] (b) 速度 図 正弦波パルス 0 time[s] (c ) 変位 *1 Graduate Student, Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ. *1 Graduate Student, Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ. *2 2 Graduate Student, Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., M. * Graduate Student, Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., M. Eng. Research Fellow DC1, JSPS Eng.Research Fellow DC1, JSPS *3 Prof., Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., Dr. Eng. *3 Prof., Dept. of Architecture and Architectural Eng., Kyoto Univ., Dr. Eng. 517 最大応答変位 の評価 ≦ ≦ の応答 の定義 ≦ ≦ 1 の運動方程式は次式で表せる。 {( ) + 0 ( )} −1 + 2 ( ( ) + = ) 0 本節では、図 3 に示すように変位応答の 番目の極値を第 ピー (9) ク (: 自然数) 、 の発生時刻を と定義し、 max をもたらす を ) − 、 ( ) = から、変位の理論解は次式で ( 9 ) 式と初期条件 ( = 決定する。 表せる。 図 4 に示す 1 / =0.5, 1.5 の場合の変位応答時刻歴から分かるよう 2 ( ) = 1 cos 2 ω + 1 sin 2 ω − sin ω − (1 − τ ) 2 ω ≠ ω に、1 / =0.5 では第 2 ピークで、1 / =1.5 では第 1 ピークで最大応答 = ( ) ( 2 + 0.25 ) cos ω + 2 sin ω − (1 − τ 2 ) が生じている。また、図 5 の /(=1 ~ 3)と max/ の関係から、max 1 = (4) そこで以降では、 1 と 2 を求めることで max を評価する。なお、他 変位応答第 ピーク の評価 を と定義し、第 1 ピークまでの応答を 0 ≦ ≦ と ≦ ≦ 1 におけ る運動方程式で表す。以降では と 1 を求め、1 = (1 ) で表せるこ とを用いて 1 の定式化を行う。 ≦ ≦ の応答 = 0 ≦ ≦ の運動方程式は次式で表せる。 4π (ω cos ω − sin ω = ) − (18) 図 7 に示す時刻歴応答解析と( 1 8 ) 式による 1 / の比較から、 (18)式 で 1 / を概ね評価可能であると分かる。 (1 8 ) 式では、2 , を考慮で きないが、適用範囲を免震建物に限ることで十分な精度を持つ。ま た、 =50~150cm/s であれば評価精度が高いことを確認している。 1 (8) 1 は、1 = (1 ) から次式で表せる。 1 = Model(0.03, 3.0) 1 = 最大応答 Dis./ Dis.[cm] 1 10 図 の定義 Model(0.03, 3.0) 0.6 0.4 1 2 1/ 3 図 基準化応答変位 518 2 time/ 3 (20) る ( 図 9 参照 ) 。 4 0.3 0.2 4 0 1 1 0.8 0.8 0.6 Model(0.03, 3.0) Model(0.03, 4.0) Model(0.05, 3.0) Model(0.05, 4.0) (18)式 0.4 0.2 0.1 0 2 ω = ω 値発生時刻の真の値からやや離れた点を評価することに起因してい 1=1.5 1 Model(0.03,3.0)とModel(0.03,4.0) Model(0.05,3.0)とModel(0.05,4.0) (8)式 0.4 0.2 0 + 2 sin ω 1 − (1 − τ 2 ) (19) く評価していることが分かる。この誤差は、 ( 1 8 ) 式による 1 / が極 1=0.5 1 / 1/ 2/ 3/ max/ 0.8 ( 2 + 0.251 ) cos ω 1 2 ω ≠ ω 図 変位応答時刻歴 0.5 基準化応答変位 1 − sin ω 1 − (1 − τ 2 ) より 1 / を概ね評価可能である一方で、時刻歴応答解析より小さ 0 0.5 time[s] 1 cos 2 ω1 + 1 sin 2 ω1 時刻歴応答解析と(19 ) 式による 1 / の比較を図 8 に示す。 (19 ) 式に 0.5 3 (16) 2π (1 − 2τ 2 ) 1 4 = 1 + 4 概ね / を評価出来ると分かる。 2 2τ 2 (7) 図 6 に示す時刻歴応答解析と( 8 ) 式による / の比較から、 ( 8 ) 式で 3 −ω = 1ω = ω 2π 2 1 2ω 2 (15) (17) 3 2 2 (14) 1( Lin ) = 1+ ることで、( 6 ) 式から( 8 ) 式を求める。 =3 (13) (6) さく 1ω ≤ 1, ω ≤ 1 の場合に限り、テイラー展開で 3 次まで考慮す 1 cos ω cos 2 ω ) τ 1ω ≠ ω しかし、 (6), (7) 式から を陽に求めることは難しい。そこで、 が小 cos 2 ω 0 1 2 1 3 図 時刻歴応答解析と 式による の比較 4 0 0 1 2 1 3 図 時刻歴応答解析と 式による の比較 1/ 2ω 参考に、 1 を( 1 8 ) 式で仮定する。 ため、 ( 6 ) , ( 7 ) 式が条件となる。 (12) こで本論では、 ( 1 7 ) 式で示す線形応答の第 1 ピーク発生時刻 1 ( L i n ) を 初期条件は、(0) = 0 、 (0) = 0 である。 は ()= y となる時刻である 2π (1 − 2 ) (11) 1 は、 ( ) = 0 となる時刻であるが、陽な式で求めることが難しい。そ (5) ( sin1 ω − sin ω = ) − − 1 tan 2 ω τ 2 − + 2 tan ω + = 2 2ω cos ω = −τ 2 sin ω + cos ω ( − cos ω ) 2 ω 2ω 2 変位を ( ) 、相対速度を ( ) 、相対加速度を ( ) 、降伏変位到達時刻 2 cos 2 ω + (sin ω sin 2 ω + 1 の評価は、運動方程式を基にした理論解で行う。本節では相対 sin ω − τ 2 = −τ 2 sin 2 ω + 1 のモデルでも同様に( 4 ) 式で定義可能であることを確認している。 {( ) + 0 ( )} +1 ( ) = 0 = ω ここで、 (10),(11) 式中の 1 , 2 , 1 , 2 , は(12)~(16) 式である。 は 1 ないしは 2 で発生しており、次式で定義出来ることが分かる。 max = max( 1 , 2 ) 2ω (10) Model(0.03, 3.0) 0.6 0.4 時刻歴応答解析 0.2 4 0 0 (19)式 1 2 1 3 図 時刻歴応答解析と 式による の比較 4 変位応答第 ピーク の評価 降、 2 (Lin)/ 1 (Lin)と表記)の比較を図 12 に示す。図 12 の横軸は / 2 は、エネルギーの釣合から評価する。本節では、入力開始から としているが、線形時では固有周期 と が等しいため / と同義 1 までの履歴消費エネルギー の増分を 1 、 1 から 2 までの増分を である。各モデルの 2 /1 は、1.0 ≦ / では 2 (Lin)/1 (Lin)と似た傾 2 と定義する。従って、 1 は荷重変形関係から幾何的に(2 1 ) 式で( 向を示すが、 / ≦ 1.0 では 2 (Lin) / 1 (Lin) より大きい。これは、図 13 図 10 参照) 、 2 は が図 11 に示すように ab 間で①だけ減少、bc 間 に示すように、1.0 ≦ / では 2 が自由振動中に、 / ≦ 1.0 では で②だけ増加するため② ①で表せる。① , ②は荷重変形関係から 2 が強制振動中に発生することに起因する の差が要因であると考 (22),(23) 式となり、 2 は(24) 式で表せる。 えられる。 1 ( Li n ) と 2 ( Li n ) は、線形応答の理論解から 1 . 0 ≦ / で { 2 } 1 = 0.51 + 1 + 0.52 ( 1 − ) ( 1 − ) { − 1) } = ① ( 1 − ) + 0.5 2 (τ 2 + 1) − 1 { ② = 0.5 2 2 + (τ 2 (28),(29) 式となり、( / , ) は図 12 から得た知見を基に(30) 式で (21) } 2 評価出来る。ただし、( / , ) = 3 は 2 (Lin) / 1 (Lin)の最大値を表す。 (22) 2 ( Lin ) 1 (23) (24) = 2 ② − ① 2 ( Lin ) = (22)~(24) 式を整理すると、 2 は次式で表せる。 2 (1 − τ 2 ) + = { } 2 2 2 + ( 1 − ) + 0.5 (τ 2 + 1) − 1 2 (2 5) 式において 2 は未知数であるが、既知である 1 を基に(26 ) 式 (27) 0.5 [kN] Dis./ 真の 1/ 0.25 本章では、時刻歴応答解析の ma x を真の値と考え、応答スペクト ル法、提案法による ma x と比較する。 応答スペクトル法では、等価剛性 、等価減衰定数 、減衰補正 1 o 係数 に次式を用いる 5 ) 。 = (19) 式 による 1 / 0.750 0 0.5 time/ 1 2000 40 0.75 a 0 40 Dis.[cm] 図 と履歴面積の関係 の場合 2000 6000 c 0 2000 40 1 ① b o Model(0.03, 3.0) 2 ② a 0 40 Dis.[cm] 2 3 1 3 2 1 4 Model(0.03, 3.0) Model(0.03, 4.0) Model(0.05, 3.0) Model(0.05, 4.0) 線形時 1 1 0 0 2 1 2 / 3 4 0 0 ② ① 1 )⋅( 1−α ) 1 + α ( − 1) (32) 1.5 = 1 + 10 (33) 応答スペクトル法は、 max = 2 となる範囲で時刻歴応答解析と概ね b 合っている一方で、 ma x = 1 となる範囲で小さめの評価となってい 2 time[s] /=1.5 / =1.5 /=0.65 / =0.65 ( つまり、 を小さく) 評価していることが、大きな要因であると考 自由振動中 time/ 1 る。これは、図 15 に示すように、 max = 1 となる範囲で を大きく えられる。 2 / 0.5 (1 − を示す。提案法による ma x は、時刻歴応答解析に比べやや小さめと (a ) (22 ),(2 3) 式と履歴面積 ( b ) エネルギー時刻歴 図 と履歴面積の関係 の場合 4 2 π なる範囲もあるが、良い対応を示している。 1 0 0 = 0.8 × (31) 14 に時刻歴応答解析、応答スペクトル法、提案法による max の比較 c 2 a max max ここで、最大層せん弾力を 、塑性率を ( = max / ) とする。図 履歴消費エネルギー 入力エネルギー [kN・cm] [kN] 図 式に起因する 式による の評価誤差 Model(0.03, 3.0) (30) 時刻歴応答解析、応答スペクトル法、提案法の比較 Model(0.03, 3.0) 1 (29) 定式化している点に特徴があり簡易に m a x を評価可能である。 ( / , ) を評価するため、各モデルの 2 / 1 と線形時の 2 / 1 (以 0.25 − 1( Lin ) まる。本論の評価法( 以降、提案法と呼ぶ) は、応答を表 2 のように (26) (18) 式 による 1 / ω 2 (1 − 2 ) 2 3.2 節で 1 を、3.3 節で 2 を評価したことで、 (4) 式から max が求 から( 2 7 ) 式を用いる。 2000 2 2 (1 − cos ω ) (28) の簡易評価法 表す。また、 は非線形時の見かけの周期として、 1 と原点の割線 0 2ω 2 (1 − 2 ) 2 以上より、 2 は(21),(26),(30) 式から、 2 は(25) 式から評価出来る。 で評価する。 (26) 式から分かるように ( / , ) は、 2 と 1 の比を 1 = 2π 1 + 2 ( 1 − ) 2 (sin ω 1( Lin ) − sin ω 1( Lin ) ) 2 2 2 (1 − cos ω ) >1 − 1 ( / , ) = (sin ω 1( Lin ) − sin ω 1( Lin ) ) 2 ≦1 3 (25) = 2 1 × ( / , ) = 1.5 図 モデルによる の比較 図 で基準化したエネルギー 時刻歴 表 提案法で使用する式 1 | 1 (1ω ≠ω の時) | 1 (1ω = ω の時) 1 2 | 2 | max 式番号 (8) (18) (19) (20) (21) (21) ,(26), (30) (25) (4) 519 パルス性地震動を用いた検討 まとめ 本章では、パルス性地震動に対する提案法の適用可能性を検討す 本論では、内陸地殻内地震の震源近傍で発生するパルス性地震動 るため、パルス性地震動を入力波とした場合の時刻歴応答解析と提 に対する、免震建物の最大応答変位の簡易評価法(以下、提案法と 案法による max の比較を行う。 呼ぶ)を提案している。まず、提案法構築において、パルス性地震 パルス性地震動の一例として、台湾集集地震 TCU10 2 (E W) と兵庫 動を正弦波 1 波からなる正弦波パルスで近似することで、バイリニ 県南部地震葺合の観測波を用いる。減衰定数 =0 .0 5 の擬似速度応答 ア型の復元力特性を有する非減衰 1 自由度系でモデル化された免震 スペクトルの最大値を与える周期を 、速度波形の最大振幅を と 建物の最大応答変位予測式を、理論的に導出している点に独創性を 定義すると、TCU102 は =113cm/s, =2.5s、葺合は =129cm/s, =1.2s 有する。また、正弦波パルス入力の場合には、変位応答波形の 1 つ である。観測波の変位応答スペクトルを o (/ ) 、正弦波パルスの変 めの極値で最大値が生じる場合に、時刻歴応答解析に比べて応答ス 位応答スペクトルを s ( / ) と定義すると、図 1 6 ( a ) に示すように ペクトル法では小さめの評価となるが、提案法では大幅に精度が向 TCU102 の場合、s (/ ) は o (/ ) と概ね一致する領域もあるが、 上している。さらに、観測波や予測地震動などのパルス性地震動に 葺合の場合、s (/ ) は全体的に o (/ ) より小さい。 適用する場合には、免震周期(2 次剛性に基づく周期)における変位 図 17 に示すように、提案法による max を時刻歴応答解析の max と 応答スペクトルを、パルス性地震動と正弦波パルスとで一致させる 比較すると、TCU102 の場合は概ね良い対応を示すが、葺合の場合は ことで、実用的な精度で応答予測が行えることを示した。 小さめの評価となっている。これは、2 / 付近における s ( / ) と o 参考文献 1) 鈴木恭平,川辺秀憲,山田真澄,林康裕: 断層近傍のパルス地震動特性を考 慮した設計用応答スペクトル, 日本建築学会構造系論文集, No.647, pp.4956, 2010.1. 2) 安井雅明, 西影武知, 見上知広, 亀井功, 鈴木恭平, 林 康裕:パルス地震動に対 する1 自由度系最大応答理論解と応答特性, 日本建築学会構造系論文集, No.650, pp.731740, 2010.4 3) 臼井謙太郎ほか : 免震建物の最大応答予測に関する研究模擬地震波と観測地 震波を使った解析 , 日本建築学会九州支部研究報告, 第47号, pp297300, 2008 4) 臼井謙太郎ほか : 免震建物の最大応答予測に関する研究その2 応答予測の精 度向上に関する検討 日本建築学会九州支部研究報告, 第48号, pp257260, 2009 5) 免震構造設計指針 , 日本建築学会 , 2001 (/ ) の関係、つまり TCU102 では s ( 2 / ) と o ( 2 / ) が概ね一 致するが葺合では s ( 2 / ) の方が小さいことが影響を与えたと考え られる。 そこで、s ( 2 / ) と o ( 2 / ) が等しくなるように正弦波パルスを 作成し( 以下、補正法と呼ぶ) 、補正後の正弦波パルスを用いること で提案法の精度向上を図る。 ( 以下、提案法 + 補正法と表記する) 。ま た、補正法で求めた正弦波パルスの変位振幅を と定義する。葺合 の場合を例として、図 18 に o (/ ) と補正前後の s (/ ) の比較を、 表 3 に , , を示す。ただし、 と の 関係は、 (3) 式に従うも 表 補正前後の正弦波パルスのパラメータ 葺合用 のとする。 提案法 + 補正法による max は、図 19 に示すように時刻歴応答解析 Model( ,2 ) Model(0.03,3.0) Model(0.03,4.0) Model(0.05,3.0) Model(0.05,4.0) による ma x と良い対応を示しており、評価精度は応答スペクトル法 と同程度であることを確認できる。 以上の検討から分かるように、提案法でパルス性地震動に対する 時刻歴応答解析(観測波) 応答を予測する際、o ( 2 / ) と s ( 2 / ) の関係が重要となる。両者 0.3 max= 2 80 80 max= 1 Model(0.03, 3.0) 1 00 [cm] ) s(/ ) 2 = 3 2.5 2 = 300 4 2.5 2 1 ) s(/ ) 2 / 3 (a) TCU102 4 0 0 1 2 / (b) 葺合 図 変位応答スペクトル Model(0.03, 3.0) 3 4 100 時刻歴応答解析(観測波) 応答スペクトル法(観測波) 提案法+補正法 80 100 100 1 (b) 葺合 葺合 正弦波パルス 正弦波パルス(補正後) 150 3 2 4 2 = = 1.2 1.2 (0.03, 3.0) (0.03, 4.0) (0.05, 3.0) (0.05, 4.0) Model 図 時刻歴応答解析、応答スペクトル法、 提案法による の比較 Model(0.03, 3.0) 3 4 o(/ 200 100 0 0 1 , s(/) , s(/) o(/) 200 400 o(/ 40 (a) TCU102 図 と の関係 o(/) [cm] 図 各手法による の比較 60 0 (0.03, 3.0) (0.03, 4.0) (0.05, 3.0) (0.05, 4.0) Model [cm] 0 0 提案法 20 0.1 時刻歴応答解析 提案法 応答スペクトル法 2 3 4 1 , s(/) 0.2 o(/) 0.4 0 max/ 0.2 0.6 300 40 20 0.8 400 60 max [cm] 1 max= 1 応答スペクトル法(観測波) 100 max [cm] の振幅を再評価する必要がある。 100 max [cm] に差がある場合では、o ( 2 / )=s ( 2 / ) となるように正弦波パルス max= 2 補正前: [cm/s] 補正後: [cm] 共通: [s] 109.2 110.6 129 1.2 109.2 110.6 50 0 0 2 1 2 / 3 図 葺合の と 補正前後の 60 40 20 4 0 (0.03, 3.0) (0.03, 4.0) (0.05, 3.0) (0.05, 4.0) Model 図 各手法と提案法 補正法 による [2014 年 6 月 18 日原稿受理 2014 年 10 月 30 日採用決定] 520
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