村上龍「都市は生きている」 「都市は生 」⑭ 浮かび上がる希望 いつからか、常に最悪の事態を想定して仕事をするようになった。 旅で 学んだ のだと 思う 。19 8 0年代 後半か ら 、し ょ っち ゅ う 海外に出かけていて、ほとんど一人旅だった。別に一人旅が好き というわけではなく、何となく 、誰かと連れだって海外に行くの がいやになった。 一人旅は寂しいが、 ﹁さっきの食事はおいしかったな﹂ ﹁この夕日 はきれいだ﹂などと、誰かと日本語で会話することがないので、 風景や出会いは拡散せずに、記憶として強く刻まれる。だが、一人 だと、あまり治安がよくない国や地域では、荷物を持ったまま トイレに行くのもリスクがある。陸路で国境を越えるときはとくに やばい。また、わたし自身が危険人物だと勘違いされることもある。 ローマで、パスポートに中東や北アフリカの国の出入国記録が複数 あるというだけで、治安警察に取り調べを受けた。 ﹁わたしは日本 時 間の ビル 機 能を 維 持で き る 非 常 用 発 電 村上龍シリーズ広告は、 ホームページでもご覧いただけます。 品川シーズンテラス 品川シーズン ス 5月28日グランドオープン の有名な作家である﹂と主張して、日本大使館に身元を照会して もらうまで、約1時間、銃口を突きつけられていた。その警官が くしゃみとかしたら誤って撃たれるのではないかと恐かった。 そういった旅の記憶の蓄積が、そのあと自然に判断基準として 機能するようになったのだろう。小説のモチーフも、作品への アプローチも変わった。危機感が主題となることが増えたし、情報 への切実な飢えが生まれた。臆病になったわけではない。逆に、逡巡 は消えた。最悪の事態を考え、イメージすることで、結果的に、希望 という概念がより鮮明になり、作品に反映されるようになった。 NTT都市開発の﹁品川シーズンテラス﹂には、 ﹁都市のインフラ を守る﹂というNTTグループの共通理念が、積極的に、また緻密に、 具体化されている。3・ 以前に策定された開発計画には、最新の 上がったのである。 優先す ること で、結果的に、 ﹁ 希望と い う 概 念 ﹂が 鮮明に 浮か び ﹁最悪の事態﹂ を想定し、正確にイメージして、コストより信頼性を プラン︶のアイデアがほとんどすべて織り込まれている。まさに、 の備蓄倉庫、屋上の緊急離着陸場など、BCP ︵事業継続のための システム、帰宅困難となった来館者のためのスペース、食料・水など 免震構造、災害時に 11 72
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