冷凍食品は、 冷却操作により食品から熱を取り除く ことにより食品内部の

第2章 冷凍保存の調査研究
2-1冷凍食品の物理
冷凍食品は、冷却操作により食品から熱を取り除くことにより食品内部の水が液体から
固体へと相変化し、氷結点に達する。氷結点が食品の中心部に達し平衡な温度になる。こ
れが凍結である。このような冷凍の冷却過程の温度変化の模式図を次に示す。
食品の冷凍過程を含んだ温度一時
間のグラフを冷凍曲線は、 (Ⅰ)の
予冷期間、 (Ⅱ)の氷結期間(食品
内の水が凍る期間) 、 (Ⅲ)の部分
を冷却期間よりなる。これらの各期
間に食品内部に起こる物理的,化学
的な変化は、解凍後の食品の品質を
左右する。
1匡
経過時間(hr)
純水は、大気圧下では0℃で凍結
を開始する。この温度は、水に塩や
図2 凍結曲線
!(%) 舟瀬考
図3 水の相図と氷点降下度
図4 氷結率と温度
糖分が溶けると0℃より下がる。これは氷点
降下現象と呼ばれ、その割合は一定重量
1kgの水に溶解する溶質のモル数に比例す
る。水の氷点降下の割合は1.855℃mole
/kgである。また、溶媒、溶質が同時に析
図5 食塩水溶液の相平衡図
出する点を共晶点と言い、食塩では-21℃、
-8-
糖では-14℃である。食品では水の存在状態が一様でないために確定した共晶点はないが、
約-60℃と考えられている。
表1魚介類及び畜肉類の熱物性値
食品名
YZィュノtノ│「
【魚介類】
マグロ
鮭
都
鯖
鉄r
エ「
凍結点以上
-2.2
-2.2
-2.2
紊2
緜R
牛肉(サーロイン)
都
豚肉(もも)
鉄b
竰
ネケ5
決屬
ネケ
iDメ
B
1.72
1.84
エ「
3R
cR
1.56
-2.2
牛レバー
カx
1.65
-2.2
塔2
【畜肉類】
凍結点 (℃) 儂IDメ
田B
都
鰭
海老
因I│「R
縱R
鉄b
1.89
-1.7
紊2
-i_7
1.55
1.72
1.55
s
モ
3R
モ
水を含む水溶液が氷結点に達し、あるいはそれ以下になっても氷が直ぐに生成してくる
訳ではない。多くの場合、温度は氷結点以下に下がった後一旦上昇(過冷却状態)し、氷
の核となる氷結晶核を生成し氷が成長していくことになる。氷結晶核は・溶液内の温度が
低い部分や、溶液内の気泡、微粒子、容器壁等である。食品中の氷結晶核生成は・温度の
ゆらぎによることよりも不均一な核生成が殆どである。
氷結晶の成長は,冷えた水分子が氷結晶核あるいは結晶表面で安定な固体である氷にな
っていく過程で、食品の場合も同様の過程である。
左図は、氷結晶核の生成速度、氷結
晶成長速度と過冷却度との関係を示し
たものである。結晶成長はほぼ過冷却
度0℃から始まるのに対し、核の成長
はある温度値を境に急速に行われる.
このような過冷却度の低い温度域では
A
過冷却皮一一一一
少数の結晶核を中心に氷が成長する現
図6 結晶核、結晶成長速度と過冷却度
象である。次貢の図は食品の凍結曲線を示したもので・結晶核を中心に氷が成長する温度
域が最大氷結晶生成帯に対応している。最大氷結晶生成帯は0--5℃で・細胞外の溶液浪
-9-
カr
度の薄い部分に氷結晶が生成し成長する。細胞内の水分は細胞外へ移動し氷結晶は大きく
成長し、やがて細胞膜、細胞組織等に損傷を与えることになる。冷却速度を大きくすると
結晶核の生成速度が極端に速くなり、単位体積当たりの氷結晶核の数が多くなり・食品内
部は細かい多数の氷結晶で埋め尽くされることになる。この過掛ま細胞内溶液の極端な濃
度遍在、氷結晶の巨大化による組織の破損等もほぼゼロである。
ZU 15 10 5 0
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時 間・.・.・.・一一
図7 氷結速度と氷結曲線
氷掛ま色々な要因によって影響を受ける。食品の形状、食品の熱物性・氷結点と雰囲気
温度等である。下写真はタラ肉片を凍結した場合の顕微鏡写真であるb
写真2 冷凍したタラ肉断面の鏡微鏡写真
-10-
2-4水産物の冷凍貯蔵
水産物の細胞内には様々な塩類や糖類を含んでいるので摂氏0℃より低い温度で凍り始
め、零下60℃付近になって凍り終わる。各種水産物の凍結点(水産物の水分が凍り始め
る時の温度)と共晶点(氷終わる時の温度)は以下の通りである。
表3 生鮮水産物の凍結点と共晶点
種類
ネケ5
*リ
淡水魚、カエル
鯨肉、介類
竰
蔦
共晶点(℃)
絣
-60
蔦
回遊性海産魚
椿偵R
(共通)
底棲性海産魚、海藻 蔦"
冷蔵及び冷凍の主な目的は、鮮度低下、変質を長期間に渡って防ぐことであるが・ -15
℃付近での冷凍貯蔵では微生物等の生育は阻止され腐敗は起こらないが、解凍段階では食
品としての品質が低下しているので一般に晶温は-18℃以下に保つようにしている。更に・
解凍して生食用にする魚介類では-30℃ないしそれ以下の温度設定にしている。
水産物の冷凍品には生鮮のままの物と加工してから冷凍したものの2種類があるoまた、
船内で行うものと陸上で行う場合がある。
冷凍水産物の品質変化には次の様なものがある。
・魚体表面の退色、変化、光沢の消失
カロチノイドの酸化、脂質の酸化、乾燥が主な要因である
・魚体内部の筋肉の変化
ミオグロビンの酸化、糖・アミノ酸反応が主な要因である
・香味(うま味)の減少、異臭の発生
ヌクレオチドやアミノ酸の分解、脂質の分解や酸化が主な要因である
・肉組織面の硬さや水ぽっさ
塩溶性タンパク質(ミオシン、アクトミオシン)の変性が原因
上記の冷凍水産物の品質劣化を極力少なくするための方法について、選定、前処理、凍
結、後処理の各処理工程より以下に示す。
1)選定
水産物の選定に当たってはやはり鮮度が重要であり、死後硬直完了までの新鮮なものを
選ぶ。魚介類の大きさ、形態等をそろえるとともに、変質箇所や担傷箇所の除去等を行う。
2)前処理
-181
冷凍前の処理のことで、魚体の切断、内蔵の除去、洗浄・血抜き等を行う。前処理には
普通前処理、特別前処理、保護処理の3つがあるo
普通前処理は、魚体の切断・内蔵の除去・洗浄、血抜き等のことである。
∼
特別前処理方法にはブライニング(塩水処理) ・ソルチング(加塩処理) 、シュガリング
(加糖処理)の3方法がある.ブライニング(塩水処理)は・ 0-2℃に冷やした10-15%
の食塩水中に約1分, 3-5%の食塩水の場合では1時間程浸漬してから凍結する方法で、解
凍時にドリップの流出を軽減することができるoヒラメ・カレイ、タラ等の魚類で使われ
る。
ソルチング(加塩処理)紘,コンプ・ワカメ等の海藻類を凍結する場合に行われる方法
で、海藻に直接塩を振り掛けたり、 0-2℃に冷却した飽和食塩水に半日(12時間)程浸
潰してから凍結する方法である。コンプ、ワカメ等の海藻類をそのまま凍結すると肉質が
軟化したり氷結晶が大きくなって細胞が崩壊したりするので・組織内の水分を脱水し、塩
分の浸透により凍結点の降下を考慮した方法である。
シュガlJング(加糖処理)は、冷凍すり身に代表される凍結貯蔵である。水洗いして落
とした身に糖類や蛋白変性防止剤を混和して凍結する方法で・スケトウダラ、ホッケ、タ
ラ、カラスカレイ等の北海の魚、さらにアジ・タチウオ等の底曳き魚等へも応用されてい
る。冷凍すり身には、糖猿とリン酸塩を加える無塩すり身と・糖類と食塩を加える加塩す
り身がある。食塩を用いない無塩法は、ゲルの状態にある魚肉すり身中の塩溶性タン^oク
質の凍結による変性を防ぐことを目的としており・糖が持つ0日基の強い親水性が組織中
の水と結合して運動を抑制するためにタンパク質の移動軽減化されて、タン/てク質相互の
擬集を阻害するためと考えられている。ソルピットは・砂糖と同等のタンパク質変性防止
効果があるが甘味が少なく、加熱にも褐変が起こらないので良く利用されている。ポリリ
ン酸塩は、単独では変性防止効果が見られないが砂糖との併用により効果が現れる。
一方、加塩法は塩溶性タンパク質が溶解してゾル状になっている。 5%づつの砂糖とソ
ルピットに2.5%の食塩を用いた添加物を使用する。食塩のみの場合・ゾル状のすり身を
凍結しそのまま加熱すると弾力の強い加工品(例:カマボコ)となる。この現象は、凍結
中にタンパク質同士が互いに絡み合って網状構造を形成してゼリ-状になるためと見られ
ているが、糖はこの網状構造の形成を抑制する働きがあり約10%濃度が必要である。
次の写真は冷凍すり身の蹟微鏡写真である。
-19-
無糖加塩すり身(参考品)
無糖無塩すり身(参考品)
lrnJT)
写真3 無塩,加塩冷凍すり身の顕微鏡写真
(-20℃の凍結状態、白い部分が氷)
無塩すり身の場合には細かい氷結晶ができる。これは加塩すり身よりも保水力が強いた
めに凍結時に氷結分離する力が弱い事を示している。また、糖を添加しない場合には氷結
晶が大きく成長することから、糖が水と結合して水の移動を抑制し、魚肉タンパク質相互
の凝集を防いでいることが分かる。
保護処理には酸化防止剤と糊料の2つがある。酸化防止剤は、水溶性と脂溶性があり、
それぞれ水溶性物質及び脂溶性物質の酸化に対し有効である。使用量を多く用いたり、逆
の使用の場合には、酸化が促進されることがあるので注意が必要であるo水溶性酸化防止
剤としては、アスコルビ酸、アスコルピン酸ソーダ、エリソルビン酸・エリソルピン酸ソ
ーダ等がある。脂溶性酸化防止剤は、 BHA (プチルヒドロキシアニゾ-ル) ・ Bfrr (ジ
ブチルヒドロキシトルエン) 、 TP (トロフェロール)が揚げられるが、食品衛生上の問
題等が指摘されている。
糊料は、凍結の後処理のアイス・グレーズとして亀裂防止のために下記のような糊料を
混ぜたりしている。
-20-
糖質系糊料-アルギン酸ソーダ、デンプンリン酸エステル・ソーダ、カルポキシメチル・
スターチ
繊維系糊料一繊維系グルコース酸ソーダ、メチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ
3)凍結
水産物を凍結する場合、乾燥.タンパク質変性、変色等の劣化を極力少なくするために
最大氷結晶生成帯を短時間で通過する急速凍結方法が開発された。
例としてタラの場合、緩慢冷凍処理を行った後解凍するとスポンジ化現象をおこし海綿
のようなふかふかした肉質となる。タラ類の他ヒラメ、タイ、カジキ、カニ等に顕著であ
る。スポンジ化の原因としては,細胞外凍結があげられるが、凍結速度,貯蔵温度の2項
目が主として影響しているD 肉中水分が80%以上、体液中に比較的多量の窒素ガスを含ん
でいる等が促進の要因となる。体液中に捧存している窒素ガスは、水分の凍結に伴い遊離
のガスとなり、その結果、未凍結の水分を細胞外へ押し出すために細胞の外に氷結晶を形
成することとなる。このように細胞外凍結が顕著になると、細胞内タンパク質は変性し保
水力を消失して解凍後も復元しないで細胞外に氷結晶の跡が残ることになる。このほか、
細胞外形成には魚の鮮度、生物学的要因も影響している。
4)後処理
凍結後の処理の事であるが、低温、清潔な環境下で迅速な処理を行う必要がある。長期
間の貯蔵中における凍結水産物の乾燥や酸化等による晶質低下を防ぐために行う。
5)凍蔵
凍蔵は貯蔵温度変動幅(±2℃)を保ちながらの凍結貯蔵のことで、一般的には-20℃
位が良い。現在では一般家庭用の冷凍冷蔵庫の冷凍庫は上記温度である。長期間に渡って
貯蔵したり、解凍後生食にするものはより低温の-27--28℃に設定する必要がある。
凍蔵で課題となるのは,表面の変質と内部の変質である。
凍蔵水産物の表面の変質は、氷の昇華による乾燥である。昇華が進行するにつれて水産
物の表面はしだいに乾燥し、さらに進行して多孔質の組戚となる。また同時に風味成分も
失われ、敢化も受けやすくなるので変色や脂質変化も生じてくる。この状態が過度になっ
たものが冷凍焼け(freezerbum)と呼ばれるものである。この状態の組織は、水分が
10-15%以下になり、風味成分が抜けて味がなく、色素は酸化されて変色が進み,脂質も
-21-
酸化されて黄褐変し、タンパク質は変性して肉質はばさばさして食品価値のないものとな
る。
脂質酸化が原因で水産物の表面が黄褐色となって刺激的な味となる油焼けは、魚は高度
の不飽和脂肪酸を多く含んでいるために空気と触れると酸化されやすく・過酸化物が生成
する。この過酸化物が他の脂質成分を連鎖的に酸化するようになる。ある種の酸やアルデ
ヒド,ケトン類を生じるために凍結水産物の味や風味が劣化する。更に、こうした酸化化
合物はアンモニア、アミン類、ヘム化合物、第2鉄塩等と反応して黄褐色の化合物を生成
する。この酸化物の中で.アンモニア等と反応して着色するのはカルポニル化合物である。
この化合物は、肉タンパク質やエキスとの間でメイラード反応をおこして褐変する。脂質
酸化の過程で生成する酸化物臥寺作用のあることが知られているので脂質の酸化を防ぐ
ことは重要である。
冷凍焼け、油焼けの防止方法としては、凍蔵庫内の空気温度をできるだけ低温にして温
度変動幅を少なくし、アイス・グレーズあるいは防湿性梱包材を用いて水産物(負)の表
面処理を怠らないことである。梱包材を用いる時は、魚の表面との間に隙間をつくらない
ように留意する必要がある。
赤色魚であるタイ、キンメダイ等の
魚類は、体表の色調が商品価値に影響
するが、凍意中に体表色調が褐変し赤
(06)簿#葡」y/Tt・J,qE
色が次第に退色する。この体表に存在
する色素はカロチノイドである。左図
はカナドの凍蔵温度の違いによるカロ
チノイドの残存を示したものである(参
考文献参照) 。 -18℃では75日後には
53%まで減少する。 -30℃でも減少し
貯蔵日数
図13 表皮中のカロチノイドの変化
(魚種:カナド)
ていることが確認される。 -3℃では、
35日後には約25%まで減少する。
カロチノイドは、日光でも影響を受け、海域における漁獲後は放置することなく速やか
に凍結することが望ましい。しかし、冷暗所に貯蔵しても退色は進行する。これは自己消
化の1つである表皮組親中に存在するリボキシダーゼ様辞素の作用によるものである。現
荏,退色を軽減化するために0.2-0.5%のアスコルビン酸ソーダ液に浸漬した後、凍結し
-22-
グレーズ処理を行い、 -30℃以下に貯蔵するのが望ましい方法とされている。
凍蔵における変質は、表面と組織内部でも発生し,凍蔵方法の課題である。水は凍結す
ると体積が8.6%膨朱する。緩慢に凍結すると氷結晶が細胞外にもでき、急速な凍掛ま細
胞外での氷結晶に至らず細胞内で徴氷績晶が生じる。凍結の状態が短ければ・緩慢凍結を
行って細胞外で生じた水分も殆ど細胞内へ復帰し細胞組織の損傷は少ない。これは水産物、
家畜の筋肉細胞のような柔軟性に富んだ筋形質膜で覆われた細胞にみられる現象である。
しかし、果物、野菜等のような柔軟性に乏しい硬い細胞壁をもった細胞では,凍結した時
点で細胞壁が破嶺を免れず、細胞外へ移動した水分は元の細胞へは戻らない。そのために
解凍した段階でドリップとして流出してしまう。
水が凍結して氷になる場合、溶解している物質を排除する性質があるが.緩慢凍掛まど
その傾向は大きい。凍結の時、塩類、穀類等時残存水分に移行するので濃緒が起り、タン
パク質の変性の一因はこうした濃蘇過程における塩害によるとの見方もある。
魚のタンパク質の16-22%は水または希塩類溶液で溶出されるが、 60-75%はイオン
強度0.5以上の塩類で溶出されるミオシン系タンパク質である。ミオシン系タンパク質と
してはアクトミオシン、ミオシン、トロボミオシンである。水溶性タンパク質は凍栽中で
の量的変化は殆どないが、凍蔵中に変性する(不溶化)のはミオシン系タンパク質である。
このミオシン系タンパク質の凍結変性は魚種により異なり、タラ、ヒラメは速く、マグロ、
カツオ、ブリ等は遅い。
凍蔵中のタンパク質変性のメカニズムは、このほかに肉組織の変化が考えられる。筋肉
タンパク質は親水性が強く水分子が結合している。タンパク質の表面にはアミノ穀の反応
基が出ており、乾燥や脱水等により水和が壊れるとアミノ酸の反応基同士が籍合し擬集す
る。すなわち,解凍時に水分子と結合する反応基が少なくなっているので吸水度が低く、
肉質が硬くなる。
以上のことから、凍結水産物の変質を軽減するためには急速凍結、凍蔵室の空気温度の
低温下及び少変動幅の管理が有効である。
マグロは-20度程の凍蔵では、特有の魚肉の赤色は失われ褐変し、生食用としての価値
を失う。マグロ肉の赤色色素はミオグロピンが主な成分である。ミオグロビン量は、ヘモ
グロビンとの総量の90-100%を占め、赤色の削ゝ肉ほどミオグロピン量が多い。ミオグ
ロビンの構造内には鉄原子を含んでおり、酸素と結合する重要な役目を担っているが.壁
気による酸化はオキシミオグロビン、さらに酸化が進行すると褐色のメトミオグロビンに
-23-
なる。この色素の酸化には、温度、酸素分圧、水素イオン濃度(pH)が影響するが、実
際に大きな影響を及ぼすのはその中で温度(貯蔵温度)である。
次に示す図はマグロ肉のメトミオグロビン生成に及ぼす貯蔵温度の影響を表したものであ
る。
糾 伽 仙
(%)/I.qEId太りエヽ
(%)/・Lu・].4大仰エ{
1 2
3 4 5 6
貯蔵細く月)
(i) -3l'C
rl
0 0
1
1 2 3 4 5
1L)
▲5・S
6
tHHu
貯裁期間(月)
h) -20℃
図14 マグロ肉のメトミオグロビン生成に及ぼす貯蔵温度の影響
カツオは、氷蔵が殆どであるが、赤道周辺での南方カツオは殆どの船内に冷凍設備(負
塩ブライン)を備え、最近では生食用にも多量に用いられている。一般にブライン凍結は、
カツオ漁の特徴から一時に多量の漁獲になるので魚椿は水温が上昇し凍結に時間を要する
結果になることがある。その場合緩慢凍結になり魚体内への食塩の浸透が問題となる。
カツオの皮下5mm位まで0.5-3.8%の食塩の浸透が見られ,塩分の上昇とともに肉色の
褐変や脂質の酸化が著しくなる。この解決策として魚糟のブライン温度を-17℃の低温に
保って急速凍結した場合には塩分の浸透が軽減された実験結果から.実際のカツオ漁船で
も一部この条件を採用するようになっている。
一方、生食用の原料カツオの生物学的条件や船内での取り扱い方の検討も行われている。
貯蔵は-20℃では褐変が速く.数カ月に及ぶ貯蔵ではより低温の-30℃、半年の貯蔵では一
40℃位が適当である。解凍肉の変色を防ぐには酸化防止を軽減する上から酸素透過性の
小さな包装材を用いて2℃付近で貯蔵するとかなり効果的である。また、保水性を高める
-24-
ためには魚肉の水素イオン濃度(pH)を高めに保つことが重要で・漁獲直後のカツオを
急速凍結して-30℃以下に貯歳し・解凍前に-7℃に約2日間貯蔵して解糖系の助辞素であ
るNADを分解消失させて、その後解凍すると魚肉の水素イオン浪度(pH)を高めに保て・
保水性の良い肉が得られる。
次に、魚卵の凍歳について示す。魚卵の代表格であるスケトウ卵(タラコ)臥未成熟
卵と成熟卵とでは後者の成熟卵が凍掛こより損傷を受けやすく・卵黄の流出や卵の変形が
寂著となる。そのために生卵を10%食塩水中に3-4時間浸漬した後水切りをし、包装して
-20℃で凍結すると解凍タラコの損傷は少ないと言われているD
ゥニ卵の場合は、凍括すると表層膜が壊れて内容物がかゆ状になり・貯蔵中にえぐ味を
生じて射ヒを招く。このえぐ味の成分はケト酸とアルデヒドであるが・アルデヒドが多い。
このえぐ味は、 120℃でも生成レ30℃では款ヵ月間は生成しない。 -40℃では生成しない。
ゥニ卵の崩壊は表層膜の浸透圧に関係しており・解凍時に生じた低塩分の水によって破壊
される。ウニの凍掛こは2種類の方法が行われている。 1つは、ウニ卵を5%食塩水に10-
20分間浸漬し脱水し、包装後-30℃に凍結する。解凍は5℃近くで行う方法である。第2の
方法は、 3%食塩水で洗浄後急速凍結し、清水グレーズをかけて-25℃以下で貯蔵する。解
凍前にグレーズを飛ばし、水分を蒸発(赤ウニは5-10%・自ウニは10-20%軽度)させ
て5-10℃の空気中で解凍する。
沖縄県海洋深層水開発協同組合では、平成9年秋より今日までマグロ漁船(第2稲荷九、
19トン)の協力を得て海洋深層水利用による魚介類の鮮度保持の実施試験を継続してき
た。上記のマグロ肉の褐変についても生化学的な解明はこれからであるが、現象面での確
実な継続的評価を受けてきたところである。カツオについても同様で、三枚におろした後
の冷蔵貯蔵でも極めて褐変が少ないことが漁業関係者等多方面より報告されている。
-25-