工場ルポ No.339 変圧器のロボット塗装北陸電機製造株式会社〒936-8558 富山県滑川市法花寺 233 １．会社の沿革今回の工場ルポは、富山県滑川市に本社･工場を構える北陸電機製造㈱を取材して紹介する。富山県滑川市は、昭和 28 年 11 月 1 日に 1 町 6 カ村が合併して翌年 3 月 1 日に市制を施行して昨年 60 周年を迎えた。富山湾に面した同市は冠雪した立山連峰を臨み、ホタルイカの群遊地として名高い富山市に隣接した富山県東部の街である。北陸電機製造㈱の創立は昭和 19 年 5 月。創業以来、半世紀以上にわたり、電力供給と需要の高度化･多様化に対応して柱上変圧器･変電所の配電用大型変圧器から各種保護制御装置,計器用変成器まで広範囲の電気機器の製造販売している重電機メーカーである。今号では、同社の代表製品である変圧器の製造･前処理･塗装工程を紹介する。変圧器は、一般民需向けから電力会社向けなど、その需要に合わせて、さまざまなタイプが製造･販売されている。変圧器のマーケットは北陸地方を中心に展開しており、民生から工業用まで幅広いフォローアップで地元住民･各企業から厚い信頼を獲得してきている。２．変圧器の製造工程と塗装 (1)製造工程単相油入変圧器一般型の主な製造工程は、材料→切板確認→側板プレス加工→胴曲げ加工→胴溶接→ ターミナル座プレス加工→頂部フランジ成型加工→底板プレス加工→底板,中身振止座取り付け→ 各部溶接→カバープレス加工→カバー吊(つ)り用穴あけ→ショットブラスト処理→漏れ検査→ スパッタ除去→完成検査以上の工程を経て塗装工程へと移行する。 (2)前処理および電着塗装工程製造工程から前処理に移行してきたワークは、以下の工程で進行する。湯洗→本脱脂(アルカリ脱脂)→第 1 水洗(シャワー処理)→第 2 水洗(シャワー処理)→表面調整 (250 秒の浸漬(しんせき)処理)→化成処理(リン酸亜鉛皮膜)→第 3 水洗→第 4 水洗→純水水洗→電着塗装(カチオン電着)→UF#1 水洗→UF#2 水洗→電着乾燥炉(160℃×20min)→脱荷電着塗料は、エポキシ樹脂塗料を採用。浸漬処理時間は、250 秒。膜厚は 35µ。ライン 1 工程は約 2 時間 30 分。ハンガー数 26 台/6min。全長:66m。 (3)上塗り工程前処理･電着塗装(下塗り)が施されてきたワークは、上塗り塗装ラインへと移載される。その工程は、以下の通りである。上塗り移載→上塗り塗装ブース(塗装ロボット連結 2 基(ガンはエアラップ･AGB エアガン 2 丁を搭載･旭サナック㈱))→セッティング(10min)→焼き付け乾燥炉(140℃×40min)→脱荷→検査コンベヤー全長:80m。同スピード:0.7m/min。塗料は、メラミン樹脂塗料,膜厚は 25µ。トータルは 60µ。塗色はグレー色。３．新規塗装機器･設備導入の経緯従来の塗装機器システムは、前処理･電着塗装後に上塗り塗装は、レシプロケーターによる自動静電塗装が行われていたが、導入後すでに 20 余年を経過。機器の老朽化と品質･稼動効率のアップを図るべく、昨年 9 月に塗装ロボット 2 基を併行･連結して導入を図り、10 月 7 日より本格稼動を開始した。４．機器･設備の特徴と導入のメリット (1)塗装機器システムの特徴前処理および電着工程を充実させているのは、変圧器が過酷な環境の屋外で使用されるため、防錆･防食機能と耐候性が要求されるからである。また、ロボット塗装による回り込み性や塗膜品質の均一性により安定した塗膜が得られている。 2 基の新規塗装ロボットシステムには、各ロボットにエアラップ自動ガン(AGA)･AGB エアガン (ミクロエース)を装着しており(旭サナック㈱)、エアラップが胴体をミクロエースがリブの内側を塗装している。このため、さまざまな導入メリットを生み出している。 (2)導入のメリット ① 塗料使用量の大幅な低減を実現した。ロボット塗装によるワークへの追従が良好で、エアラップガンとミクロエースのミックスにより効率的な塗装システムを確立できたのは、塗料使用量の削減に寄与している。 ② 新規塗装システムにより、塗装効率のアップを達成。さらに、作業環境の改善にも大きく貢献している。また、ライン構成で注目されるのは、上塗り塗装ブースのプッシュプル化である。ロボット塗装システムを導入したことで作業環境の改善を遂行したことによるゴミ･ブツの低減の達成で品質面を向上させているのは、大いに評価されるところだ。今回の取材に当たっては、同社静止機器部石倉博部長をはじめ、石倉弘課長,現場スタッフの方々に大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。 (野) 前処理･電着塗装/自動静電塗装ラインの概要 ▲電着塗装工程①(電着塗装前) ▲スプレー制御盤 ▲塗装ラインの全景(左奥:前処理･電着塗装ライン,右手前:上塗り溶剤塗装ライン) ▲塗料供給装置とパーフェクトヒータ