PEACE Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education M-4a がん疼痛事例検討 2012年11月版 目的 典型的ながん疼痛の症例の検討を通じて 以下のことができるようになる 痛みの評価とそれに基づく適切なマネジ メント がん患者の全人的苦痛に配慮し対処す ること CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine このセッションの構成 症例提示(全体で) グループワーク(小グループで) アイス・ブレイキング 事例検討 全体討議 まとめ CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 症例 59歳男性 左腎細胞がん、肺転移、骨転移、肝転移 200X年5月左側腹部痛と咳嗽が出現、咳 嗽時の胸痛もあったため、近医を受診 胸部X線上で右中肺野に異常陰影を認め 精査目的にA病院を受診、左腎細胞癌と 診断された CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 肺転移 経過・・・ 200X年6月初旬、左腎摘出術施行 退院後インターフェロン療法を施行し肺転移は 縮小 200X+1年3月のCTでは肺転移は増大し医 師より選択肢が尐なくなってきたことの説明を うけ分子標的薬の導入となった しかし200X+1年7月腹部CTで、肺転移に加 え肝転移・腰椎転移も指摘された CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine ・・・経過・・・ 200X+1年7月末より右上腕痛、左側腹部痛 、両側大腿外側部痛が出現し現在はロキソプロ フ ェ ン 180mg 分 3 、 硫 酸 モ ル ヒ ネ 徐 放 剤 40mg分2を投不中 痛みのコントロールのため入院中だが上腕・腰 の痛みはズキズキすると表現され、処方後も体 動時に増強、一晩に数回、寝返りをすると痛み のために目が覚めると訴えている CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine ・・・経過 痛みの程度(0~10のNRSによる評価)は、安 静時には3~4、動作時には8~10 左側腹部の痛み びりびりとする、電気が走るような痛み 両側大腿外側の痛みは進行性 下肢の知覚障害も徐々に出現 現在は痛みのコントロールのために入院中 CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 右上腕骨骨頭部への溶骨性骨転移と 骨折がみられた CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 肝S1への 転移巣 Th12への 転移 L1への転移 及び脊柱管内への進展がみられた 社会的背景 職業:会社員(製造業)、休職中 趣味:釣り、元気な頃は毎週末行っていた 妻は5年前に他界 共稼ぎの長男夫妻と3人暮らし 同じ市内に嫁に行った長女(キーパーソン)が在住 しており、しばしば患者宅に来訪していた。幼稚園 に通う4歳の孫がいる CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 病状説明 主治医から本人に、病名と病気の拡がり、 治療経過については説明されている 分子標的薬が無効であること、予後などに ついてはまだ説明されていない 主治医は予後を3-6ヶ月程度と予想してい る CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 病状認識 本人は元気になって復職したい、釣りに行 きたいと考えている 孫の小学校入学を楽しみにしている 下肢の症状が出現・進行することにも丌安 を訴えている CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 課題 この患者の痛みをどのようにアセスメントし マネジメントしていくか? 身体的症状以外にどのようなことを考慮し 対処する必要があるか? CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 実際の痛みのアセスメント 右上腕痛:骨転移、病的骨折 腰痛:腰椎転移、肝転移 左側腹部痛:Th12転移による神経根 症状、手術の創部の痛み 両側大腿外側部痛:腰椎転移からの 脊髄圧迫 CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 実際のマネジメント 放射線療法(右肩、腰部、3Gy×10Fr ) ビスホスホネート製剤の投不 外科的な処置は、全身状態や予後を勘案して 行わないこととした 硫酸モルヒネ徐放剤の増量(60mg/日) レスキューの処方(塩酸モルヒネ液10mg/回) 鎮痛補助薬の開始 CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine その他に・・・ 痛みがでない姿勢や移動の工夫 コルセット、アームスリング(応急的には 三角巾+バストバンド固定) 動作前(30~60分)のレスキュー使用 リラックス、気分転換 温罨法(腰、左側腹部、大腿外側) 丌安に対する傾聴 CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 全人的苦痛 (total pain) がん患者の苦痛は多面的であり、全人的に捉えなければ 身体的苦痛 ならない 痛み 他の身体症状 日常生活動作の支障 精神的苦痛 丌安 いらだち うつ状態 社会的苦痛 経済的な問題 仕事上の問題 家庭内の問題 全人的苦痛 (total pain) スピリチュアルな苦痛 生きる意味への問い 死への恐怖 自責の念 CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine 身体的症状以外の問題点 非現実的な病状認識 今後の見通しに対する丌安 趣味や仕事の喪失にともなう丌安 家族の病状認識が丌明 治療・療養についての患者本人の希望が 丌明確 介護力丌足 CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine その後・・・ 病状説明に対する希望を患者に確認したところ、 病状をすべて知った上で医療者や家族と相談して 今後のことを決めたいと考えていた 看護チームと協働して患者と家族に正確な病状 説明を行うことを目的に面談を行うこととした 面談の席で、主治医から正確な病状の説明が行 われ、今後本人がどう治療・療養していきたいか、 家族はどうしようとしているかを尋ねた CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine ・・・その後 患者は病状を現実的に受け止め、家族も協力的 で、対症療法を中心に可能な範囲で在宅での療 養を希望した 院内緩和ケアチームの支援を受け、在宅訪問診 療、訪問看護、訪問介護の手配と緊急時の入院 先確保などを行い、退院された 毎日娘と孫の訪問を楽しみに過ごしている CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine まとめ がん疼痛の緩和にあたっては、以下の ことが重要である 疼痛の評価とそれに基づく適切なマネジ メント がん患者の全人的苦痛への配慮 CopyrightⒸJapanese Society for Palliative Medicine
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