CA19-9非産生例について

FAQ(免疫)
CA19-9非産生例について
Q CA19-9を産生しない人がいますが、その理由は何でしょうか。
A
CA19-9(carbohydrate antigen 19-9)は、膵、胆嚢、胆管癌において他のマーカーに比べて相対的
に高い陽性率を示すことから、これらの癌の腫瘍マーカーとして、また治療効果判定、経過観察の指標
としても広く利用されています。
CA19-9はモノクローナル抗体NS19-9が認識する糖鎖抗原であり、抗NS19-9が認識するエピトープ
はLewis血液型の内、LewisA糖鎖にシアル酸が付加したシアリルLewisA(sLea)で、その代表格が
CA19-9です。sLeaはCA19-9前駆体(sLec)にフコースが付いたものですが、この反応にはフコース転
移酵素であるα1-4fucosyl transferaseが必須です。日本人に約10%存在すると言われるLewis(a-b-)
例は、この酵素が欠損しているためsLea(とLea,Leb)を産生しません。
従ってLewis(a-b-)患者が癌を発生、進行してもCA19-9値は極く低値(限りなく0濃度に近い)であ
り、腫瘍マーカーとして使用できません。その場合は代用候補としてDUPAN-2やSLXがあります。し
かし、実際の臨床の場で、CA19-9測定のためにLewis血液型をタイピングすることは現実的ではなく、
臨床側への実際の対応方法としては、臨床症状と合わないCA19-9極く低値が得られた時は、Lewis(ab-)の可能性のコメントを付記し別の腫瘍マーカー代用を推奨することが適切ではないでしょうか。