図画工作・美術科における学力向上にかかわる実践 教科指導員 index 氏 渋川市立古巻中学校 名 長塩 桂子 <ポイントはここだ> ・自己の表現主題を実現する表現が追究できるよう、制作の途中に、自他の表現主題を確認し 作品から感じたイメージやアドバイス等を伝え合う相互鑑賞活動を設定 1 「学力向上のための視点」とのかかわり 本実践は 、「学力向上のための視点(学力向上対策委員会作成 )」のⅠ「思考力・判断力・表 現力の育成」にかかわるものである。 本校の生徒は、素直に学び、進度差も比較的少なく、基礎的な技法を生かして作品を仕上げる ことができる。しかし、より質の高い表現を目指して自ら工夫するという姿勢にやや欠け、完成 作品に物足りなさを感じることが少なくない。また、美術科の学習は個人制作が基本であり、作 品の完成度も個人差が大きい。表現に自信の持てない生徒は、作品の出来栄えによって表現意欲 を失ってしまいがちである。 そこで、自己の表現主題を実現する表現が追究できるよう、制作の途中に、自他の表現主題を 確認し作品から感じたイメージやアドバイス等を伝え合う相互鑑賞活動を設定した。この活動を 通して、生徒は個人で制作していたときには気づけなかった自己の成果や課題、表現方法を発見 し、表現主題を実現しようと粘り強く表現できるのではないかと考えた。 2 実践の概要 (1)古巻中学校2年 ①題材名 指導者 長塩桂子 「身近な人を見つめて(頭像 )」 ②指導計画( 12 時間) 1.観察とスケッチ(3時間)~頭部のつりあいを確認してスケッチを描き、構想を練る。 2.心棒づくり( 1 時間)~木材と麻ひもを利用して丈夫な心棒をつくる。 3.荒づけ( 1 時間)~頭部のつりあいを意識して大まかな形をつかむ。 4.顔面の肉付け( 2 時間) ~立体としての量感・塊、動き等に気づいて全体的な 5.耳と頭部、首の肉付け( 1 時間) 6.細部の表現( 1 時間) 7.質感表現の工夫( 1 時間) 形をとらえる。 ~目や唇等の基本的なつくり方と質感表現の技法を知り、 イメージにふさわしい表情を追求する。 8.相互鑑賞(1時間)~自分の表現主題と友だちの感想を比較し、課題を明らかにする。 9.作品の仕上げ( 1 時間)~相互鑑賞をもとに友だちの人柄を個性豊かに表現する。 ③展開例(上記の「8.相互鑑賞 」) 1.本時の学習内容を知り「表したい友だちの人柄や友だちへの思い」をワークシートにまと める 。(5分) 2.グループの人の作品を鑑賞し、作品から受けるイメージや雰囲気をカードに記入する。 (10分) -1- 3.グループ内で順番に「表したい友だちの人柄や友だちへの思い」を発表する。発表を聞い たら、第一印象と作者の表現意図を比較しながらアドバイスを記入する 。(15分) 3.グループ全員の発表が終わったらカードを交換し、作品から感じたイメージやアドバイス 等を伝え合う 。(5分) 4.友だちの感想や助言から自分の課題を明らかにし、課題の具体的な解決方法を考えてワー クシートにまとめる 。(15分) (2)子持中学校2年 ①題材名 指導者 伊藤弘美先生 「自分らしさを見つける~ドライポイントで表そう~」 ②指導計画(13時間) 1.鑑賞(2時間)~ピカソの「泣く女」等を鑑賞し、感情表現の工夫について考える。 2.構想(1時間)~自画像の表現主題を決定し、構想を練る。 3.下絵(3時間)~表情やタッチを工夫し主題に基づいた自画像を描く。 4.相互評価(1時間)~友だちの表現の工夫を読みとり、自己の課題と解決方法を考える。 5.下絵の修正(1時間)~相互評価をもとに下絵を修正する。 6.彫り(2時間)~塩化ビニール板にニードル等の用具を工夫して彫る。 7.刷り(2時間)~インクの詰め方、拭き取り方、プレス機の使い方を知り、刷る。 8.鑑賞(1時間)~友だちの作品を鑑賞する。 ③展開例(上記の「4.相互鑑賞 」) 1.自分の表現主題と表現の工夫を相互評価カードに記入する 。(5分) 2.相互鑑賞を行う 。(20分) ○グループの人の作品を鑑賞し、作品のタイトルを予想して付箋紙に記入後、交換する。 ○発表者の主題と工夫点を聞き、アドバイスを付箋紙に記入後、交換する。 ○発表者の工夫点をワークシートに記入する。 3.自己の課題と改善方法を考え、相互評価カードに記入し、下絵を手直しする 。(20分) 4.本時の学習を振り返り、学習カードに記入する 。(5分) まとめ <成果> ・昨年度までは、相互鑑賞活動の後に制作の時間を設けていたが、今年度からは相互鑑賞活動の みを行い、次時に作品の仕上げを行うよう改善した。題材の時数は増えてしまうが、鑑賞活動 に集中することができ、以前は不十分だったアドバイスを伝え合う活動がしっかりと行えた。 ・ほとんどの生徒が、相互鑑賞活動によって自己の課題と改善方法に気づくことができた。次時 の制作にも積極的に取り組み 、自己の表現主題を実現しようと粘り強く表現する姿が見られた 。 <課題> ・他の題材では、相互鑑賞活動が題材の最後に設定されており、自他の向上を実感しても制作に 生かすことができない。今回取り上げた題材でも、完成直前の相互鑑賞活動であるため、改善 方法が限られたものになりがちであった。計画訪問において参観した実践を参考に、制作の前 半で相互鑑賞活動を設定し、共有した学びが制作に十分生かせるよう工夫していきたい。 ・相互鑑賞活動はどうしても時間不足になりがちであり、ワークシート等に工夫が必要である。 -2-
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