10道徳 - 小県上田教育会

 道徳学習指導研究委員会
一 テーマ
「子ども達が楽しさや喜びを実感しながら、道徳的な価値を深める指導はどうあったらよいか。」
二
テーマ設定の理由
児童生徒のよりよく生きたいという願いをもとに、豊かな道徳性を育て、道徳的価値の自覚を
深めることにより、自己肯定的に夢や希望をもって明日を拓いていけるような、より高まった道
徳的実践力を培うことを目的として、本テーマを設定した。
三
研究の経過
本研究会では、ここ数年の研究をさらに深めるため、これまでの研究テーマを継続し、道徳的
な価値を深める指導のあり方について研究を重ねた。
だが、道徳の学習をとりまく状況がめまぐるしく変化してきていることは我々教師の共通の問
題である。そしてさらに、それらの問題が、道徳の教科化という形で解決されようとしているこ
とにも目を向ける必要がある。道徳の学習を取り巻く諸問題を、以下のようにまとめてみた。
ア)道徳の時間が、学活や総合的な学習の時間として流用されてしまうこと。
イ)道徳の授業実践の経験が豊富な教師が少ないこと。
ウ)道徳の学習の目的や内容項目が十分に周知されておらず、学習の視点が定められないこと。
エ)児童生徒の実態の多様化により、道徳の授業における、児童生徒どうしの価値観の交流が
できにくくなってきていること。(話し合いが成立しにくくなってきていること)
オ)道徳の時間が教科化されること。
カ)道徳の教科化にあたり、教科書やカリキュラム編成がどうなるのかが見えにくいこと。
キ)文部科学省発行の『私たちの道徳』の、実践事例が不足していること。
ク)今後『私たちが道徳』の扱いが、どのように変化してくるのかが見えにくいこと。
ケ)評価のあり方が見えないこと。
これらの諸問題は個々に存在するのでなく、それぞれが互いに関連しており、個別に解決でき
るものでない。また、道徳の教科化がどのような形で施行されてくるのか、評価のあり方の指針
はどうなるのかといった、教科化の目指す具体的な姿が見えてこないと、道徳を取り巻く諸問題
の解決に向けた動きを起こすことが難しい実情もある。
そこで本年度は、道徳の教科化の動きを見据えながら、主に、上記問題の、イとウとエについ
て、委員自身が実践を重ね、互いに問題点を指摘しあう他、教育課程研究協議会において、参加
していただいた先生方とともに研修を深める場を持つことにした。
教育課程研究協議会では、会場校に協力をいただいて、授業研究会の小グループの司会を担当
させていただいたほか、午後の部においては、委員の他、参加した先生方にも研修を深めていた
だくことを目標に、文部科学省のホームページに掲載されている資料『お客様』について、小グ
ループに分かれて、内容項目や考えさせたい場面などの授業を構想する研修を行った。教育課程
午後の部の企画については、昨年度の委員長中村哲先生が立ち上げた研修であり、本年度はそれ
をさらに定着させたいという願いもある。
四 研究の内容
1 研究の視点および関連実践
研究の視点
ア)児童生徒の心を揺さぶるような資料の選定・資料提示の工夫
イ)児童生徒が問題意識をもって、主体的に追究していけるような授業展開の工夫
ウ)児童生徒の考えを深めるための発問や板書の工夫
エ)児童生徒の道徳的実践力を高めるための指導の工夫
研究の方法
ア)小中学校でそれぞれ1つずつ、授業実践を行い、検証する。
イ)委員一人一人がテーマに沿った授業を一つずつ行い、レポートを持ち寄る。
ウ)教育課程研究協議会の授業研究会において、グループ協議の一部を、委員が司会を務める。
エ)教育課程研究協議会午後の部において、授業作りの勉強会を行う。
オ)持ち寄ったレポートを、研究の成果として、「学習指導研究綴り」に掲載する。
- 道 1-
関連実践
1)本年度の委員会の推進を、以下のように計画した。
第1回 5月15日(木) 総委員会・・・推進計画と役割分担(会館)
第2回 6月下旬~7月上旬ころ? 神林夏実先生・・・授業を参観(中塩田小)
第3回 7月10日(木) 小澤紘子先生・・・教育課程の事前を参観(神科小小)
第4回 7月29日(火) 教育課程に向けての事前打ち合わせ(会館)
第5回 9月 3日(水) 小澤紘子先生・・・教育課程研究協議会(神科小)
第6回 11 月10日(月) 中村哲先生・・・県道徳学会での授業を参観(豊殿小)
第7回 11 月下旬~12 月上旬? 塩田直人・・・授業を参観して頂く(二中)
第8回 11 月25日(火) 総委員会・・・発表とあゆみ作成に向けての準備(会館)
第9回 1月27日(火) 研究発表会
2)本年度の委員の実践は、以下の通りである。
・上原美紀委員(滋野小学校・小2)
『まっ白な きゅうしょくだい』 「わたしたちのみち2」より
1-(2)自分がやらなければならない勉強や仕事はしっかりと行う。
・小澤紘子委員(神科小学校・小4)
『いけないよね』 「小学校道徳読み物資料文部科学省」より
4-(1)約束や社会のきまりを守り、公徳心をもつ。
・青島勉委員(塩田中学校・中1)
『心の仮面』「種をまこう「人権って何だろう」いっしょに読んで考えよう」より
2-(2)温かい人間愛の精神を深め,他の人々に対し思いやりの心をもつ。
・五十嵐和夫委員(塩川小学校・小1)
『きゅうしょくとうばん』 「わたしたちのみち1」より
2-(3)友だちと仲よくし、助け合う。
・中村哲委員(豊殿小学校・小6)
『手品師』 「わたしたちの道6」より
1-(4)誠実に明るい心で楽しく生活する。
・小宮山健一委員(川西小学校・小4)
『雨のバスていりゅう所で』(東京書籍)
4-(1)約束や社会のきまりを守り、公徳心をもつ。〉
・内藤佳史委員(菅平中学校・中1)
『自らの可能性を捨てない』 「わたしの築く道しるべ1」より
1-(4)真理を愛し、真実を求め、理想の実現を目指して自己の人生を切り拓い
ていく。
・塩田直人委員(第二中学校・中3)
『足袋の季節』 「わたしの築くみちしるべ3」より
3-(3)人間には弱さや醜さを克服する強さや気高さがあることを信じて、人間
として生きる喜びを見いだすように努める。
・神林夏実委員(中塩田小学校・小3)
『げきのはっぴょう』 「わたしたちのみち3」より
2-(3)友達と互いに理解し、信頼し、助け合う。
・佐藤義経委員(第一中学校・中1)
『イエローハットに学ぶ~掃除道~』 「私が一番受けたいココロの授業」より
4-(1)法やきまりの意義を理解し,遵守するとともに,自他の権利を重んじ義
務を確実に果たして,社会の秩序と規律を高めるように努める。
- 道 2-
(1)児童生徒の心を揺さぶるような資料の選定・資料提示の工夫
①実践例 滋野小(2年)
Ⅰ 題材名 まっ白な きゅうしょくだい
資料「わたしたちのみち」より
指 導 内 容 1 -( 2 )自 分 が や ら な け れ ば な ら な い 勉 強 や 仕 事 は し っ か り と 行 う 。
Ⅱ 本時の主眼 自分の係や当番の仕事を最後までやろうとする姿がある一方で、
遊びたいという気持ちに負けて友だちに任せてしまったり、きちんと取り組むこ
とができなかったりする子どもたちが、給食台をふく洋一くんの気持ちを考える
ことを通して、いやだと思ったことも避けずに、自分の仕事をやり遂げることの
大切さや気持ちよさを感じることができる。
Ⅲ 展開
学習活動
自
分
の
心
を
見
つ
め
る
予想される児童の発言と心の動き
○指導
1提示された前日の給食の写真や当番活動をしている写真を見て昨日の給食の様 2
子を思い出す。
○みんなのために働いている友だちの様子に気付く。
・昨日の給食は○○がおいしかったなあ。
・給食当番は、重い牛乳を運んでくれているな。
・スープの食缶は、中身がゆらゆら揺れて持ちにくいな。
・給食台を用意したり、台をふいたり、下駄箱掃除もしてく
7
れているな。
2資料を読み、話の大筋をつかむ。
挿絵 フラッシュカード
○座席を話の内容や流れが整理しやすくなるように挿絵やフラッシュカードで
提示する。
・ぼくたちと同じ教室でのできごとなんだな。
8
・自分も同じ気持ちになったことがあるよ。
3洋一くんの揺れ動く気持ちに共感し、自分の考えをもつ。
挿絵 フラッシュカード
○話し合いの形にして、自分の考えを発表する。
○「ちゃんとやろう」という考えが多かった場合には、挿絵の洋一くんを提示
して揺れ動く気持ちに気づくことができるようにする。
、
外で楽しそうにドッジボールをしている友だちを見て、洋一くんはどんな
気持ちだったのだろう。
・給食当番だから、給食台をふこう。
・ぼくも行きたいけど、ちゃんとふいてから行こう。
・すみ子さんがふいているから、ぼくもやらなくちゃなあ。
↑↓「どうしよう」
・ドッジボールをしたいな。
・給食台をふくのは面倒くさい。
・適当にやって早く行っちゃおう。 ・給食係になんかならなくちゃよかった。
道
的
価
値
の
交
流
4給食台の汚れを落としきってにっこりわらった洋一くんの気持ちを考える。
挿絵 フラッシュカード 学習カード
○発表する時には、実際の給食台で動作化しながら行う。
洋 一 く ん は 、ま っ 白 に な っ た 給 食 台 を ど ん な 気 持 ち で な で た の で し ょ う 。
(中心発問)
・やっぱり、給食台をきれいにしてよかったなあ。だって、こんなにピカピカ
になったのがから。
・あの時、ドッジボールをしたかったけど、がまんできてよかったなあ。自分
-道3-
18
のことはちゃんとやってよかったな。
・きれいな給食台を見ると、うれしい気持ちになるなあ。のぞくと、顔がうつ
って見えるよ。
○自分の考えをまとめる時間は、十分に取るようにする。
心 5今日の学習で自分が感じたり思ったりしたことを書く。学習カード 写真
10
へ
○今日の学習で感じたことを書き発表させる。
の
・ 洋 一 く ん み た い に 「 や り た く な い な 。」 と 思 う こ と も あ る け ど 、 自 分 が や ら
問
なくちゃいけないことは、ちゃんとやりたいなと思います。
い
・ そ う じ の 時 に 、給 食 台 を よ く こ す っ て み る と き れ い に 汚 れ が 落 ち た ん だ よ な 、
か
今度からもう少し力を入れて台ふきをしてみよう。
け
○本学級の児童が活動している写真を提示する。仲間の中にもしっかりと任さ
を
れた仕事をしている姿を写真で紹介し、自分たちの中にも最後までやり遂げ
深
る姿があることに気付かせる。
め
評価:自分がやらなければならない勉強や仕事をしっかりと行うことのよさに
る
気 付 く こ と が で き た か 。( 学 習 カ ー ド )
Ⅳ考察
①想像をもう一歩切り込んで考え体感する資料(場面)提示のあり方
本時の中心発問に関わる場面の把握では、子
どもたちに「机(自分の机)をなでてみて」と
助言した。主人公の気持ちにもっと寄り添うこ
とができるようにするには、実際の給食台を活
かして、場面の把握をさせることもできたと考
え る 。 汚 れ て い る 給 食 台 を 提 示 し て 、「 こ れ な
でてみたいですか?」と問いかければ、子ども
た ち は 「 い や だ 」「 な で ら れ な い 」 と 答 え る だ
ろう。また、 反対にきれいな給食台を提示し
た ら 「 な で て み た く な る 」「 ぴ か ぴ か 輝 い て 見
える」と答えるだろう。低学年の児童には、資
料だけではなく実物を見せ場面をより具体的に把握させることが主人公の気持ちを想
像する一助になる。
②子どもたちの実生活に結びつくような生活場面の提示のあり方
導入や終末で、道徳的な価値に結びつくような場面を日々記録しておき、道徳等
で活用できるようにしたい。
本時は、給食の献立や当番活動の様子を記録(写真)しておき、導入と終末で子ど
もたちに提示した。写真を提示すると、子どもたちは注目して見入っている様子だっ
た。また、終末の道徳的な価値を高める場面(※ふり返りを参照)では、実践に向か
おうとするような姿が見られ、大変有効だった。
【自分と重ねてよさを感じるふり返りより】
ぼくが、だいふきだったら※○○ちゃんみたいにふいてみたい。うちのつくえも台
ふきできれいにふきたい。
ぼくもカレーの時、つくえ係だったら、力を入れてふく。あきらめないでふく。もし、
ぼくがつくえ係でやさいが落ちていたら、ごみ箱にすててからふく。間を空けずにふく。
洋一くんは最後までやったかいがあったね。わたしも台をふく係だから、今日、わ
たしも洋一くんみたいにがんばってやりたいです。洋一くんが台を見ていい気持ちに
なれてよかったです。
- 道4 -
実践例 神科小学校(4年)
②
学習指導案
1 主題名 「きまりは何のため」
4―(1)約束や社会のきまりを守り、公徳心をもつ。
2 資料名 「いけないよね」(小学校道徳読み物資料 文部科学省)から
3 主題設定の理由
(1) ねらいとする道徳的価値
4年生の段階では、約束や社会のきまりを守り、社会生活の中で守るべき公徳心を大切にする態
度を育てることが求められる。きまりを守ることは相手の気持ちを考えて行動することにつながる
ことを考えさせたい。
(2)児童の実態と教師の願い
本学級では、クラス目標として『男女仲良く 時間を守って 低学年にやさしく』を掲げている。
特に年度当初は、委員会活動が始まったこともあり、低学年のお手本になろうと意識する児童が
多く、その中できまりを学級目標に組み入れようとする意見も多く出てきた。
学級会や道徳の授業等での子どもたちの意見は正義感に満ちており、「いけないことはいけない」
とする発言を唱える児童は少なくない。そういった目指すべき姿になろう、近づこうとする子ども
たちの純粋な面もうかがうことができる。
そんな中でも、4年生の生活に慣れてきたころから、楽しさが優先になり全体でのきまりとは別
に、相手の気持ちを考えずに思いつきできまりを決めてしまい、自分本位に活動し、トラブルやけ
んかに発展することも出てきた。きまりを守ることは大切だと理解しているが、実際に守ることは
なかなか難しいようだった。
自分たちの普段の行為が果たして相手にとって気持ちのいいものであるのか、きまりを守ること
はどんないいことにつながっていくのか、相手を意識することを通して、自分の生活や行動を振り
返る機会としていきたい。
(3)資料について
本資料は、日常的にどこにでもありがちなきまりを守らない行為に子どもたちが出合い、それに
対し「いけないよね」と批判的な目を向けることで話が進んでいく。本学級の子ども達の日常生活
の中でも共感できる題材であるといえる。話が進む中で、公的なきまりから学校生活でもあり得る
きまりである順番まもりで、自分が他者に対して向けていた「いけないよね」の批判の意識が、自
分たちに対して向けられる。
主人公が友だちから「いけないよね」と言われた後の行動を考えることで、相手の気持ちに気づき、
お互いに気持ちよく生活するためにはきまりを守ることが大切だということを考えるのに適した教
材と言える。
4 本時案
(1)主眼
きまりを守ることは大切だと理解しているが、自分の思いを優先してしまいがちな子どもたちが、
資料をもとに主人公の行動を考えることを通して、相手の気持ちを考えて約束やきまりを守ること
の大切さに気づき、自分のこととして考えることができる。
(2)指導上の留意点
・指示が通りにくい児童も在籍しているので、授業の流れや話し合いの手順等いつでも確認出来る
ように掲示しておく。
挿絵の掲示のみ。児童に分掌の配布なし。話は教師側で確認しながら行う
-道 5-
(3)展開
学習活動・予想される児童の発言と実態
段
○…教師の動き
…話し合い形態
…教師の発問
階
間
導 1 資料「いけないよね」を途中まで聞く。
入 <予想される児童の反応>
・あ!あるある!落書き見たことあるよ!○○
にもあるよ!
・ポイ捨ても見たことあるよ!
・ ゴミを分別しないで捨てる人もいるって言っ
てたよね!
・資料
10
○ 写真・絵を掲示する。
○ 内容を確認しながら読み進める。
○ きまりを守っていないことに対
する批判であることを確認する。
<児童の実態>
・他者に対して自分本位に批判するこ
とがある子ども達。※重ね合わせ
・社会見学で、大人のきまりを守らな
い行動について学んだ子ども達。
展 2 自分も体験を思い出させる。
(途中まで見せた後)
開
時
・ワークシート
みなさんにもこんな体験ありますか。
<予想される児童の反応>
・給食で並んでいるときに、友だちに入れてもらったことある。
25
全
体
で
話
し
合
い
・教室で先生から物をもらうときに、待ってたのに横入りされた。
・並んでるって気づかなくて入って後ろから「横入りしないで」って言われた。
3
主人公に向けられた「いけないよね」を見て考える。
(「いけないよね」と言われている場面)
中心発問
自分なら、どうすると思いますか。
○主人公のその後の行動と気持ちを考えさせる。
○理由も添えて発表できるようにワークシートに記入させる。
○ペープサートを用いて場面を理解させる。
4 発表する。
○たずね歩きで意見交換の後、全体で発表する。
<予想される児童の反応>
・なんでいけないか聞くかもしれない。
・謝ると思う。横入りはいけないから。
・友だちに断って入ったのだから聞い
・後ろに並ぶと思う。相手に嫌な思いをさせたか
てなかった後ろの人が悪い。
・入れた友だちもいけないから友だち
ら。
・自分がされたら嫌だから謝ると思う。
も一緒に後ろに並び直す。
<児童の実態>
・1 ヶ月前に、1 年生とブランコをどっちが先に乗るかでトラブルを起
こした。
・自分が言われた強い口調の言葉に反応してケンカになることもある。
○友だちの意見で疑問に思ったり不思議に思う点は質問したり意見を詳しく伝えたりできる
-道 6-
ようにする。
○相手の気持ちや行動について触れた言葉を強調する。きまりと相手の気持ちを関係づける。
○その行動をとったときの相手の表情を考えることで、相手の気持ちがどうなるか考えさせ
たい。
4 これから自分にできることについて考える。
終
10
自分も相手も笑顔で生活していくためには、どんなことを考えていけばいいだろう。
末
ワークシート
○ワークシートに記入させる。
<予想される児童の反応>
・相手のことを考えてきまりをまもりたい。
・自分がしていることもちゃんときまりを守れているのか考えたい。
・「いけないよね」って思われることはしないようにしたい。
5 発表する。
○相手の気持ちを考えた考えを記入している子を中心に数人発表させる。
全
体
【評価】
相手の気持ちを考えて約束やきまりを守ることの大切
さに気づき、自分のこととして考えることが出来たか。
(発言・ワークシート)
4
成果と課題
○
授業前半
いけないことの中身の確認:子どもたちの持っている道徳的な価値観や判断力で、それぞれの事象に
見られる問題点を資料挿絵と照らし合わせながら洗い出すようにする。(導入時に有効)
○授業後半
1 見とどけの場面:「道徳的判断力」の獲得に近づけていくために
道徳的判断力
人間として生きるために道徳的価値が大切なことを理解し、様々な状況下において
人間としてどのように対処することが望まれるかを判断する力
・本音を語れる児童だからこそ判断力を養っていかなければならない。→ソーシャルスキル(学活)
の必要性(相互補完的)
・自己本位、決まりを守ることは分かっていても守れていない実態→だからこそ主人公が選択した行
為行動に寄り添わせ考えさせる。
・主人公の具体的な行為や行動に寄り添わせて考えさせるとは?
問題点を受け入れてどのような行為をとったか。そのときの思いに触れる。
-道 7-
① 女の子は、注意されたとき、どんなことを考えたかな?(主人公の思いや表情に寄せる)
② 周りの子どもも女の子もニコニコしているね。何故だろう?
(周りの友だちの反応について考える)
→自分の気持ちも相手の気持ちも考えることになる。
③ 順番を抜かししちゃったみたい。後ろに並ぼう→一緒に並んでいる人のことを考えたんだ
ね。
④ ニコニコとしている友だち→僕たちの言ったことを受け入れてくれてうれしいなあ。よか
ったな。→どちらも笑顔になったのは、相手のことを考えてルールを守って行動したから
だね。
2 学習のまとめ方(学習して身についたことの記述→学習カードの工夫)
本時のねらいと主眼の達成に向けて
・何を学んだか具体的な表現で書かせる。「○○した方がい
いと思った。」
・「○○するには、・・・・・・すればいいと思った。」→「こう
するにはこう考えればいい。」そのような考えを持つに 至
った理由や根拠をかけるようにしたい。机間指導も必要。
・並立的な記述はさける。どれも大切なのかもしれないが、
「こうすれば、こうなる」「こうするためにはこれが必要な
のではないか」のような関連性を意識させた記述にしたい。
資料が児童達にとって身近に感じられる題材であったため、自分のこととして考えられる子が多くなっ
た。
-道 8-
③実践例
Ⅰ
塩田中学校(1年)
主題名
「心の仮面」(種をまこう「人権って何だろう」いっしょに読んで考えよう
<内容項目
Ⅱ
より)
2-(2)>
本時の主眼
知的障害をもつ少年と知り合ったものの,友人からの「お前あの人と知り合いなの?」とい
う言葉に動揺し知らないふりをしたことに悩み,少年とは無関係であると言い聞かせて会わな
くなった僕が,久しぶりに小学生の女の子とふれあう少年を見て,女の子の笑顔に感化され,
少年に声を掛けていくという資料の僕の心の動きを考えることを通して,”みんなと同じ”気
持ちではなく”自分らしく”感じた気持ちを尊重することの大切さがわかる。
Ⅲ
本時の展開(概略)
活動内容
導
1
入
生徒の反応
授業者の支援【評価】
資 料 「 心 の仮 ○あんまり見かけないからよく分か ○知的障害の障害の内容と障害をも
面 」 の 前 半 の内
容を理解する。
らないな。
っておられる人の活躍(パラリン
○不自由なところがあるが,優れて
いるところもあるんだ。
展
2
開
ピック)について説明する。
○資料前半を範読する。
「 お 前 あ の人 ○障害者と知り合いというと,友人 ○「友人からの言葉で動揺して,僕
と知り合いな
から変に思われたり,馬鹿にされ
はどんな思いから『知らない人』
の?」と言われ,
たり,からかわれたりすると思っ
と返したのだろう。」
知 ら な い ふ りを
て隠そうとしたのではないか。
○発言を簡潔に板書する。
し た と き の 僕の ○本当のことを言って友人がどう思
心境を考える。
うか不安だったから。
○友人から嫌われたくなかったから。
3
自 分 に 仮 面を ○本当は良い少年だから大事にした ○「情けない自分に仮面を被せると
被 せ る と は どう
いが,知り合いであることを友人
い う こ と を 指す
に伝えられない自分にどうしよう
のか考える。
もなくなって,自分の本当の気持
はどういうことなのだろう。」
ちを隠した。
○友人の前で言っている言葉にとて
も後悔しているが,知り合いであ
ることを伝えて友人から変に思わ
れる方が不安で,知り合いではな
いように行動することにした。
4
資 料 後 半 の内 ○女の子の笑顔を見て,勇気を振り ○「僕のすばらしいところはどのよ
容 を 理 解 し ,僕
絞って声をかけたところ。
うなところだろう。」
の 気 持 ち や 行動 ○心の仮面を外して”自分らしく” ○学習カードに記述させる。
終
末
の 素 晴 ら し いと
という気持ちの大切さに気付いた
ころを考える。
ところ。
5 『大切なこと』 ○大切なことは,自分を誰かと比較 ○「『大切なこと』という言葉を使
と い う 言 葉 を使
せず,自分という良さが一番生き
いながら,この話の感想をまとめ
って感想を書く。
る生き方をすることだ。
てみよう。」
-
道9
-
《生徒の反応》
活動4:僕の気持ちや行動ですばらしいところを挙げる。
○小学生の女の子を見ていなかったら,僕の心の仮面はそのままだったと思う。でも、その子の
笑顔を見たことで勇気がわき,声をかけられたことはすばらしい。
○心の仮面を外して,自分らしくという気持ちの大切さに気づけたところがいい。
○勇気を振り絞って,少年にあいさつをしたところがいい。
○僕は最後に自分らしくという大切なことに気づくことができて,自分からあいさつをできたのが
すごいと思う。
○外面にこだわらず自分であいさつができたことがすばらしい。
○少年のことをちがう人間だと差別せず,僕と同じ人間だと決意できたところがすばらしい。
○人とちがって,障害をもった人とも仲良くできるということがすばらしい。
活動5:『大切なこと』という言葉を用いながら感想をまとめる。
○僕は最初,大切なものを失ったが,最後に,自分らしさという大切なものに気づけてよかった。
○みんなと同じということが大切なのではなく,自分らしくということが大切なのがよく分かった。
○大切なことは人生でたくさんあると思うが,人と人をつなぐのは言葉,あいさつだと思った。
○障害があっても普通の人と話せるので,友達であることを隠すことなく,しっかり人に見せるこ
とが大切だと思った。
○大切なことは,自分を誰かと比較せず自分という良さが一番生きる生き方をすることだと思った。
○何気ない言葉が人を傷つけていると思う。言葉は大切だと思った。勇気も大切。人を見た目で判
断してはいけない。自分らしい心を大切にしたい。
○どんなに自分とはちがう人でも「ちがう人間」と思わないことが大切なことだと思う。
○みんなと同じ意見にするのではなく,自分らしい意見を尊重することが大切だと思った。
○大切なことは,人とすべてを合わせるんじゃなくて自分なりに生きていくことだと思った。
《考察・感想》
1
人権教育旬間で,障害をもつ人への偏見を扱う中において実践した事例で,資料は第27回全
国中学生人権作文コンテストの法務大臣賞を受賞した作品の抜粋である。誰しもが僕のような気
持ちや僕の友人のような気持ちをもちやすいと思われたので扱った。
中心人物の僕には,切符の買い方で戸惑っていた少年を手助けする優しさがあり,少年や小学
生の女の子の笑顔の素敵さや誰にでも分け隔てなく明るく挨拶できる姿を素直に認められる姿が
ある。そのような僕だからこそ,動揺しても,仮面を被せても,心の片隅に少年への罪悪感や自
分の弱さ,情けなさを感じる心がある。少年とふれあう小学生の女の子の輝かしい笑顔に喚起さ
れ,勇気づけられて行動できる力強さにも魅力が感じられた。
2
友人の一言で障害をもつ少年と僕との距離が離れる資料前半の内容を考える中で,僕の動揺す
る気持ちに自分を重ねて反応した生徒が多く見られた。
情けない自分に仮面を被せる僕の気持ちを考えさせる場面では,想起できてもなかなか言葉に
言い表すことができない生徒の姿が見られた。この資料を考える上で中心的な場面であるので,
支援のあり方を工夫して仮面を被せるに至った僕の心境を生徒一人ひとりの言葉で語らせたい。
3
みんなと同じということよりも”自分らしく”という気持ちを尊重することに気付けた僕が,
その後,僕の友人と障害をもった少年についてどのような会話ができたのかを想像し,表現し合
う活動を終末の段階に入れてもよいかと考えられる。
-
道10
-
(2)児童生徒が問題意識をもって、主体的に追求していけるような授業展開の工夫
①
実践事例
Ⅰ
主題名
上田市立塩川小学校(1年)
「たすけあおう」
(資料名
Ⅱ
<内容項目
2-(3)「友だちと仲よくし、助け合う。」>
「きゅうしょくとうばん」
信濃教育出版部「わたしたちのみち1」)
主眼
困っている友だちに声をかけたり、助けたりする姿が見られるようになってきた子どもたちが、
「ぼく」の失敗したり助けてもらったりしたときの気持ちを考えてペープサートで演じたり、友
だちの考えを聞き合うことを通して、友だちと助け合うことのよさを感じることができる。
Ⅲ
指導上の留意点
・登場人物の気持ちにより添えるように、ペープサートで演じることで、自分の考えを言えるよう
にする。
Ⅳ
展開
学習活動・予想される児童の発言と心の動き
段階
1
導
入
2
指導・助言
◆評価
時間
学校生活で困ってしまった体験を発表する。
・児童から出てこないようで 4
・忘れ物をしちゃった。 ・けがをしちゃった。
あれば、担任の失敗を紹介
・給食で、おかずや牛乳をこぼしちゃった。
する。
備考
本時のねらいとする道徳的価値について確認する。 ・失敗したとき、助けてもらっ
・「たすけあおう」について考え合うんだな。
たという子どもの声を受けて、
「たすけあおう」
「きゅうしょ
くとうばん」と板書する。
3
資料「きゅうしょくとうばん」を聞く。
・視覚からも理解できるよう
3
挿絵
・「ぼく」と同じような体験を 11
「ぼ
したことを発表させ、
「ぼく」
く」
の気持ちに共感できるよう
のペ
にする。
ープ
に、挿絵を掲示しながら読む。
4
「ぼく」やまわりの友だちの気持ちを考え発表
し合う。
おかずを
ぜんぶ
おとしてしまったときの
ぼくは、どんなきもち
・どうしよう
だったでしょう。
・困ったなあ
・怒られるかなあ
・先生に言わなくちゃ
・ぼくも、おかずを落としたときに困った。
サー
ト
展
まわりにいた
ともだちは、どんなきもち
・まわりの友だちが、優しい 5
だったでしょう。
・だいじょうぶ?
気持ちで「ぼく」を、助け
・かわいそうだな。
てくれたことにふれる。
・片付けを手伝おう。・おかずを分けてあげよう。
・おかずを落としてしまった
たすけてくれた
なことを
ともだちに「ぼく」は、どん
いったのでしょう。
・ごめんね。
・迷惑をかけちゃった。
・次は気をつけるね。
ときの「ぼく」の気持ちに 13
ちの
について振り返らせる。
ペー
・「ぼく」の気持ちにより添え
プサ
るように、「ぼく」や「友だ
ート
ち」のペープサートを使い、
-
道11
-
友だ
・手伝ってくれてありがとう。
動作化しながら発表させる。
・優しい声をかけてくれてありがとう。
5
助けられた体験を発表し合う。
・自分のまわりにも助けてく
・忘れ物をしたとき、友だちが貸してくれてうれ
開
しかった。
れる友だちがいることに気
づかせる。
5
・牛乳をこぼしたとき、ふくのを手伝ってくれて ・助けたり助けられたりした
うれしかった。
ときの気持ちを出し合い、
互いにいい気持ちになるこ
とを確認する。
終
末
Ⅴ
6
学習した感想を発表し合う。
◆友だちと助け合うことのよ 4
・友だちが困っていたら助けたい。
さを感じることができたか。
・助けてもらうとうれしい。
(発言
表情)
考察
<ペープサートを使い、「ぼく」が助けてくれた友だちに言ったことを考え合う場面>
困っているときに、優しく声をかけてもらうと「安
心する」とか「うれしい」という子どもの意識にそっ
て中心発問を設定した。担任が、
「『ぼく』と『友だち』
の二人を連れてきました。」と話し、「ぼく」と「友だ
ち」のペープサートを提示した。子どもたちの視線が、
ペープサートに集まった。子どもたちは、ペープサー
トを使っての学習に興味をもち、多数の子どもたちが
ペープサートでロールプレイをしようと意欲的に挙手
し、「ぼく」の言ったことを語ろうとする姿につなが
った。
はじめは、「ぼく」役を子どもがやり、「ともだち」の役は担任が行った。ペープサートでロール
プレイを数回行い、どのように「ともだち」の声のかけ方をするのか分かるようになると、子ども
同士で行っうようにした。
「ぼく」が言った言葉として『ありがとう』という意見が多く出された。その中で、
A 児:
どうも
B 児:
ありがとう
ごめんね
ありがとう
と発表した。
子どもたちは、「ぼく」の姿を借りて、自分の思いを発表した。1年生の子どもにとって、ペープ
サートを用いてロールプレイを行うことで、助けられたうれしさを語りたくなった子どもたちの姿
が、ねらいとする道徳的価値、「助けたり、助けられたりすることの気持ちよさ」を感じていくこに
つながると考えた。
課題として、「ありがとう」の言葉の前に、A 児は「どうも」、B 児は「ごめんね」をつけた理由
を担任が、問い返すことによって、A 児や B 児が、無意識にそのように表現した意図を意識化でき、
その言葉に込められた思いを全体に広げることで、子どもたちの考えを深めることができたのでは
ないかと思われる。子どもたちの考えを深めたり広めたりするための、教師のかかわり方(問い返
しなど)を工夫する必要を感じた。また、挙手した子どもたちが、ペープサートでロールプレイを
したが、席の隣の子同士やグループなどで、全員の子どもたちがロールプレイを行うことが、助け
られるうれしさを体験するために効果的であったと思われる。
-
道12
-
②
Ⅰ
実践例
豊殿小学校
題材名
「手品師」
Ⅱ
6年
「わたしたちの道6」より
1-(4)誠実に明るい心で楽しく生活する。
主眼
自分の役割を最後まで果たそうとする姿がある一方で,自分の損得で行動を判断したり,正
しいと思うことをなかなか素直に行動に移すことができなかったりする子どもたちが、自分の
夢を実現できるチャンスがありながらも,少年との約束を選んだ手品師の気持ちを考えること
を通して,誠実に生きることのよさに気付くことができる。
Ⅲ
指導上の留意点
・ 子 ど もた ち の中 か ら共 通 する よ うな 項 目 や,道 徳的 な価 値に迫 るよ うな 発言が あっ た場 合はそ れ
を取り上げ切り返し,みんなで考えていく。
Ⅳ
展開
学習活動
1
自
・予想される児童の発言と心の動き
○指導
手品を見る
2
・何をするのかな?
・どんな仕掛けがあるのかな。
・すごいな。
・やってみたいな
分
○短時間、簡単な手品を見せて、手品師という仕事はどんな仕事で何を生きがいにやっているか考
の
えさせる。
心
・見ている人を楽しくさせる
を
・喜んでいる顔を見たい
・お金のため
・たくさんの人を笑顔に 5
したい
見
2
資料(前半)を読み話の内容を理解する。
つ
○話の内容や流れが整理しやすいよう、登場人物の置かれている状況をフラッシュカードにして貼っ
め
ていく。
る
挿絵
フラッシュカード
手品師
あまり売れていない
男の子
パンを買うのもやっと
しょんぼりしゃがみこんでいる
劇場のステージに立つことが夢
お父さんは死んでしまった
うでをみがいている
3
お母さんは働きに行ったまま帰ってこない
大舞台のステージか少年との約束か迷う手品師の心情を考える。
フラッシュカード
手品師は何を迷い、なぜその迷いがうまれたのでしょう。
大劇場
男の子
・前々から、自分が持っていた夢を実現できる
チャンスだから、自分の夢を大事にしたい。
・これまで一生懸命練習してきたんだから、そ
の成果を思い切り発揮したい。
・大勢の人の前で、自分の手品を披露したい
- 道 13 -
・男の子と約束したから、行かなく
8
○一つに行動を決めることの難しさをおさえたうえで,大劇場に行くか,男の子との約束を守るのか,
どちらの行動をとったか考えさせる。
○大劇場の迷いの部分を多く子どもたちから引き出したい。男の子の方については後半で扱うので端
的に語らせたい。
道
4
徳
的
価
値
の
交
流
15
資料後半を読み子どもとの約束を選んだ手品師の気持ちを考える。
フラッシュカード
イラスト
学習カード
手品師は大劇場に立てるチャンスがあったのに,なぜ男の子との約束を選んだのでしょう(中心発問)
・最初に約束をしたのは, ・このまま、大劇場のステージに立って
・楽しみにしていたあの子のことを
男の子のほうだったから, も、きっと男の子のことが気になって満
考 え る と そ の ま ま に し て お け な い。
やっぱり約束は守らない
足できる手品が出来なかったと思うし,
自分の子の手品で男の子の笑顔が見
といけないと思ったから。 待っている男の子のことを考えると切な
た い 。 も っ と 元 気 に し て あ げ た い。
くなるから。
○学習カードに自分の考えを書かせる。
○話し合いの隊形にして,自分の考えを発表する。
道
○「約束」という考えが多かった場合、はじめどんな気持ちで約束したのかをおさえる。
徳
「どうせひまな体だ。明日も行ってやろう」から最後「大切な約束」に変化した手品師
的
の心情を考えさせ、手品師の相手を思う気持ちや信念について掘り下げていきたい。
価
手品師はどんな気持ちで子どもの前で手品を演じたでしょう。
値
の
交
流
5
・こんなに自分の手品を喜んでく
・大劇場のステージには立てな
・この子を裏切らなくて本当に
れるなんてうれしいな。やっぱり、
かったけれど,男の子がこんな
良かった。こんなに喜んでくれ
自分は目の前にいる人を笑顔にし
に笑顔で見てくれて,本当によ
るなんて。しょんぼりしていた
たい。
かった。
男の子笑顔にすることできて自
分も本当にうれしい。
○少し時間をとり、自分たちの考えを発表させる。
心
6
今日の学習で自分が感じたり思ったりしたことを書く。
学習カード
BGM
イラスト
へ
自分の夢か約束か判断するのはす
自分が大切にしている生き方をやり
手品師が男の子を裏切らなく
の
ごく難しかったと思う。でも、自
通すのはとても大事なことだと思っ
て本当に良かった。誰かのた
問
分のことではなく子どものことを
た。きっと,それをやり通した手品
めにがんばれるってとてもい
い
考えて行動を判断した手品師はす
師は後悔しなかったと思うし気持ち
いなと思ったし,一人の男の
か
ごいなと思った。自分も見習って, よかったと思う。自分も手品師のよ
子のために手品を演じる手品
け
もっともっと下級生のために頑張
うに自分自身の素直な気持ちを大事
師はかっこいいなと思った。
を
りたい。
にしたい。
深
○キッズ活動で,下級生の事を考えながら班をまとめている姿に触れ,自分たちの中にも誠実な姿が
め
あることに気付かせたい。
る
○今日の授業で感じたことを書かせる。
評価:誰かのために誠実に行動することのよさに気づくことが出来たか(学習カード・発言)
- 道 14 -
10
Ⅴ
授業の記録と考察
<中心発問を受けての補助発問によって、さらに自分事として考える子どもたち>
T:どうして手品師は男の子との約束を選んだのか考えてみたいと思います。(中心発問)
C1:自分の夢のために約束は破れない。チャンスはまたくるかも。
C2:最初に約束したから、破るわけにはいかない。
C3:約束をした、たった一人のお客さん。夢は頑張ればかなう。
T : 最初 に 約束 した 時「ど うせ ひま な体だ 。き てや ろう。」 大事 な約束 って 感じ がする ?ど ちら
かというと軽い約束だったのに最終的になんで大切な約束になったの?
C4:男の子がひとりぼっちでかわいそうだったから
C5:あんなかわいそうな子をほっておけない。
C6:元気づけたい。あの子の笑顔が見たい。
C7:裏切って大劇場に言ったってすっきりしない。笑顔にできるのは自分だけだ。
<考察>
約束の意味合いの変化を補助発問から子どもたちに投げかけたことによって、登場人物の心情に寄
り添いながら「誠実」の中身について考えることができた。約束を守ることだけが誠実ではない、
手品師としての生きがいやプライド、相手のために思いを寄せ行動することのよさに気付くことが
できた。
<主人公の姿と自分たちの姿を重ねていった子どもたち>
T:(キッズ活動で下級生の面倒を見ながら活動する写真を掲示しながら)
みなさんも手品師と同じようなことをしているね。今日の学習から感じたことや思ったこと
を書いてみましょう。
C8:自分の為じゃなく人のためにやると言うことは僕たちの中にもある。これからも、自分たち
より下の子のためにがんばりたい。
C9:自分さえ良ければいいで、楽しんでいたりするけれどそれは本当の楽しいとは違うと思いま
す。自分の思いも大事だけれど、相手を思うことも大切だと思いました。
C 10: ぼ くは 今 まで 自 分の 夢 を選 ん でい た と思 うけ ど、 この お話 を読ん で自 分の ことも 大切 だけ
ど、本当に今大事なのはどっちかということをしっかり分かるようになりたいと思った。
C 11: 手 品師 は お金 や 人気 は 手に 入 らな か った と思 うけ ど、 男の 子の所 に行 って それ以 上の 物が
手に入ったと思います。男の子の前で手品をする手品師の気持ちは、私が小さい子の面倒を
みている時と同じような気持ちなのかなと思いました。
T:それ以上のものってどんなものなんだろう?
C:笑顔、男の子が元気になったこと、楽しさ、思いやり・・・・
<考察>
実際 の 子ど も たち の 姿を 提 示し 、 資料 と 子ど もたち を結 びつ けたこ とで 、本 時にね らっ てい た価
値を、より自分たちに引き寄せて考えることができた。誠実に行動すると言うことはとても難しい
ことではあるのだが、実際の自分たちがやっている姿を見ることによって、今までの頑張りやその
行為の良さに気づけたり、「もっとこうしたい」という意欲が持てたりできたように思う。
- 道 15 -
(3)児童生徒の考えを深めるための発問や板書の工夫
① 実践例 川西小学校(4年)
Ⅰ 主題名 「雨のバスていりゅう所で」(出典 東京書籍)
〈内容項目 4-(1)約束や社会のきまりを守り、公徳心をもつ。〉
Ⅱ 本時の主眼
社会のきまりはどうしてあるか考える場面で、順番を守らずにバスに乗ろうとした時のよし子の
気持ちや注意したお母さんの気持ちを考えることを通して、人と気持ちよくくらすためにきまりが
あることに気づかせる。
Ⅲ 指導上の留意点
・資料を前半と後半に分けて読み聞かせることで、資料の終末を考えながら授業を展開していけるよ
うにする。
・児童の様々な意見は随時整理しながら板書していき、考えを深められるようにしていく。
・「順番はきちんと守りましょう」というきまりを守ることを押しつけるのでなく、資料を通してき
まりを守ることの大切さに気づいていけるような展開にする。
Ⅳ 展開の概要
段階
学 習 活 動
指導・助言 ◆評価
時間
導 1 エレベーターに乗ろうとし ・「降りる人が先」という注意を受けたことがある
入
た時、「降りる人が先」とい
児童の経験から、同じような経験をしたことのあ
5
うきまりがどうしてあるか考
る児童がいないか発表させる。
える。
・きまりには何か理由があるのかも知れないという
2 本時はきまりは何のために
意見を大事にとらえる。
あるか考えることを確認す
・ねらい「きまりはなんのためにあるんだろう」
る。
展 3 資料「雨のていりゅう所で」 ・フラッシュカードや道徳教
開
の前半部分を読み、内容を確
材パネルを用いながら、情
認する。
景を思い浮かべやすくする。
4 前半のよし子やお母さんの ・雨が降っている状況から、
気持ちを考え、話し合う。
軒 下 で 6番 目 に 並 ん で い た
○バスが来たとき、なぜ、よ
よし子が真っ先に停留所に
し子は真っ先に停留所に並ん
並んでしまったときの気持
だのでしょう。
ちを考えさせたい。
前
・よし子が先頭に並んでしまった気持ちを「雨だか
15
段
ら・・・早く乗りたい」、「よし子自身の満足の
ため」、「よし子の母を思う気持ち」など多様な
考えを認めていく。
○お母さんがていりゅう所に先頭でならんだよし子のかたを後に引き戻したのは、
どうしてでしょう。
○学習カードに自分の考えを書 ・考えが持てない児童には挿絵の様子から母がよし
き、発表し合う。
子のかたを引き戻した理由について考えさせて
・年寄り優先でしょ。
みる。
・お母さんは恥ずかしかったん ・様々な意見を整理しなが
じゃないかな。
ら 板 書 し て い く 。( 年 寄
・先に並んでいる人がいたか
優先、周囲の人の視線、
らいけないんじゃないかな。
きまり等・・)
・ずるをしてバスの座席に座れ ◆よし子の行動に対する母
- 道16 -
後
段
終
末
てもうれしくない。
の気持ちについて考えることができたか。
○バスに乗った時、座れないよし子は、どんな気持ちだったでしょう。
・お母さんのせいだ。
・後半部分の資料を配っていないため、母のせいで座
・がっかり。
れないよし子の気持ちなどを自由に語らせる。
・残念。
5 資料「雨のていりゅう所で」 ・道徳教材パネルを用いながら、母がバスの中で黙っ
の後半部分を読み、内容を確
ている姿をイメージしやすくする。
認する。
6 後半のよし子やお母さんの ・お母さんがなぜ怒らなかったのか、また、よし子の
気持ちを考え、話し合う。
気持ちの変化があった場面をとり上げながら資料を
読むようにさせる。
○黙ってバスの外を見つめている母を見て、よし子はどんな気持ちになっていっ
たでしょう。
○学習カードに自分の考えを書 ・ 母 が な ぜ バ ス の 中 で 怒 ら
母
き、発表し合う。
なかったのか、パネルの
の
・私だって座りたかった
絵を見ながら考えさせる。
気
わよ。
・よし子の心の変容が見ら
持
・本当は座らせてあげた
れる部分に着目して、母
ち
かったわよ。
のために席を取ろうとし
↓ ・よし子の行動は恥ずか
た自分の行動が、恥ずか
私
しい。
しいことであり、「ずるを
の
・お母さんごめんね。
して座れても母は喜ばな
変
・ずるしてごめんね。
い」ことに気づかせてい
化
・横入りしてごめんね。
きたい。
7
学習した感想を書き、発表
し合う。
◆きまりを守ることの大切さを知り、人と気持ちよ
くくらすためにきまりがあることに気づくことが
できたか。
20
5
Ⅴ 授業の実際と考察
(1)分割した資料提示と発問について
資料を前半と後半の二つに分割して子ども達に提示することで、各発問に対する多様な考えが生ま
れ、子ども達の思考の深まりが見られたと思われる。資料の大切な終末場面を一気に読み進めてしま
うと、どうしても「きまりは守らなければいけない」ということの教え込みになりかねない。場合に
よっては発問毎に資料を分けて読み進めていくことも考えに入れていきたい。
(2)学習パネルの効果と板書の工夫
今回は日本文教出版の道徳教材パネルを使用した。バスの中での
母の表情やよし子の思いを深めている様子などは資料を読むだけで
は伝わらない。子ども達の考えを深める手段としてもパネルのよう
な挿絵は効果的である。また、児童の意見をまとめ整理しながら板
書していくことは、子どもの思考の流れを無理のないものにしてい
くためには必要不可欠である。本時では板書のスペースがなくなっ
てしまったことが反省としてあげられる。あらためて板書計画の重
要性についても気づかされた。
-
道
17
-
②実践例
Ⅰ
菅平中学校(1年)
主題名
「自らの可能性を捨てない」
<内容項目
出典:「わたしの築く道しるべ1」信濃教育出版社
1-(4)>
真理を愛し、真実を求め、理想の実現を目指して自己の人生を切り拓いていく。
Ⅱ
本時の主眼
くやしさやイライラを口や態度に出さずに、冷静にプレーを続けた松井選手を支えていたのは
何だったのかを考え始めた生徒たちが、松井選手の生きてきた過程や中高生時代の経験につい
て考え、話し合うことを通して、松井選手の心の奥にある「応援してくれる人のためにも自ら
の可能性を捨てない」という強い思いに気づき、理想の実現を目指して自己の人生を切り拓い
ていく意志について自分なりに考えることができる。
Ⅲ
段階
展開
学習活動 ・予想される生徒の発言と心の動き
指導・助言
◆評価
時間
1.写真や動画を見て、松井選手について知る。 ・松井選手の写真を提示する。
・松井選手の略歴 VTR を視聴する。
10
(動画投稿サイトより)
2.「自らの可能性を捨てない」を読み、思っ ・話し合いを方向付けるために、「松井選手
たり考えたりしたことを話し合う。
について」思ったり考えたりしたことを書
o 松井選手のすごさは、くやしさやイライラをおもて
に出さずにプレーしたことなのかなぁ。
くように指示する。
・「松井選手はすごいと思った。」のように漠
導
然とした発表しかできない生徒には、「ど
・四球ぜめを受けても、気持ちを切らさずにプレーし
うしてそう思ったの」等と切り返し、自分
た松井選手はすごいと思う。
の経験とも照らし合わせる場面を設ける。
・私はちょっとしたことで腹を立て、物に当たってし ・生徒の発言からは、大きく分けて次の3点
まうことがある。我慢することは大切だと思う。
が出てくるだろう。
・山下監督からの教えや尊敬する王選手の存在が、松 ①イライラすることがあっても、それを口や
井選手を支えていたのではないか。
態度に出さず、冷静にチャンスを狙う松井
・中高生の時に、監督やコーチから指導されたことが
入
プロになってからも生きているように思う。
選手はすごいと思う。
②自分を導いてくれた監督やコーチのために
・監督やコーチだけでなく、応援してくれる人すべて
も、最後まであきらめなかったのだろう。
のために、自分の可能性を捨てないという強い意志 ③支えてくれるファンや家族に報いたかった
を持っているのではないか。
からこそ強い意志を持てたのだと思う。
・自分にも目指しているものがあるが、その実現に向 ※②の意見が出てきた時点で、①との違いを
けてここまで強い気持ちを持てていない。甘えを捨
子どもに問い返しながら位置づけ、学習課
て、松井選手のようになりたい。
題につなげていきたい。
ボールぜめをされたり、チャンスで打てなかったりしたくやしさのなか、松井選手
を支えたのは本当は何だったのだろうか。
-道 18 -
20
3.学習課題について考え、話し合う。
・はじめに個人で考える時間を設ける。
o 松井選手の強い意志を支えていたのは、野球と関わ ・次にグループで話し合う場を設ける。
ってきたなかで生まれた「応援してくれる人のため ・グループ活動の場面では、「自分も同じだ
展
にがんばりたい」という強い思いなんだなぁ。
な」と思う意見に対して続けて述べていく
ように助言する。
・やっぱり、気持ちを切らしてしまえば心が乱れ、次 ・各班を巡視し、自分と重ねて考えてみるよ
につながらなくなってしまうという思いだろう。
うに助言したり、自分と重ねて話し合って
・僕もサッカーの試合のときにいじけてしまい、可能
性を潰してしまった経験がある。
開
15
いる班の様子を取り上げたりする。
・M 生は、スキーの大会での経験から「応援
・でも、松井選手は高校生のときに監督から言われた
してくれる人のために」と考えることで、
ことをプロになってからも大切にしているんだよ。
練習にもより熱が入るという趣旨の意見を
「監督のためにも」という思いがあったからじゃな
述べるだろう。広い視点から考えられてい
かな。
ることを認め、全体に位置づけたい。
・監督だけじゃなく、応援してくれる人たちのために ・グループでの話し合いのあと、全体で追究
もがんばりたいという思いが、松井選手の意志を強
する場を設ける。
くしていたんだと思う。
・そうだと思う。僕もスキーをしているけど、「支え
◆「松井選手を支えたもの」について、自
てくれる人のために」と考えることで、練習にも気
分の認識と関わらせながら気づくことが
合いが入るから。
できたか。
4.授業を振り返り、今の自分と松井選手を重 ・今日の授業を振り返り、思っていることを
ねて感想を書く。
終
学習カードに記入するよう指示をする。
5
・僕はすぐに「面倒くさい」、「もうだめだ」などと口
に出してしまうが、松井選手のように、常に可能性
を捨てない強い心を持ちたい。また、支えてくれる
家族にも感謝して生きていきたい。
末
◆松井選手と今の自分を重ねながら、理想
・応援し、指導をしてくれるコーチや先生のためにも
の実現を目指して自己の人生を切り拓い
練習に打ち込み、よい成績を残したい。うまくいか
ていく意志について自分なりに考えるこ
ないときでも、支えてくれる人のことを思い出して、
とができたか。
自らの可能性をつなげたい。
Ⅳ
授業を振り返って
場面発問ではなく、生徒が思ったり考えたりしたこ
とから学習課題を設定した。(テーマ発問)
テーマ発問により、生徒たちが最も心を揺さぶられ
た部分を学習課題として据えられたのではないかと考
えられる。導入の段階で、思ったり考えたりしたこと
を充分に書けない生徒もいたが、学習課題が据わり、
話し合うなかで、自分の経験と重ねながら考えを深め
ていく様子が見られた。
-道 19 -
③ 実 践 例 第 二 中 学 校 ( 3年
)
I 主題名
「足袋の季節J 信州教育出版社 『わたしの築くみちしるべ』 より
I
I 指導内容 3-(3)
3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること
(3)人間には弱さや醜さを克服する強さや気高さがあることを信じて、人間として生き
る喜びを見いだすように努める 。
I
I
I 本時の主眼
おばあさんから四十銭を受け取ってしまった 「
わたし」に寄り添いながら、おばあさんの死を知り
後悔の念を深くする 「
わたしJの気持ちを考えることを通して、自分の弱い心と向き合い、自分に
恥じない生き方をしていこうとする意欲を高める。
I
V 指導上の留意点
−資料を読む時は、疑問に思ったことや感動したことなど、心が動いたところに線を引きながら読
むよう、声がけする。
−「
わたしJの行動から、気持ちを想像するよう問し、かける。
−「
わたし Jがした行動を、悪いことだと簡単に決めつけてしまうことのないよう 、「わたし Jの心の
迷いを強調し、「わたしJの気持ちにより添えるよう 、声がけする。
v
準備品
・小樽市の地図・小樽の冬の風景・小樽市の冬の気温・足袋の写真
V
I 展開
予想される生徒の反応
学習活動
導 I1足袋の題材であ
入 |ることを告げる。
!I
指導・支援
0みんな足袋知ってますか?
⑦和服のときのだ。
③大工さんがはいている。
⑫自分もはし、 たことがある n
l
さ …−
ぶ I
2資料を読み、物 |
る | 語の状況を把握 |② 「
雪の中を素足でぴょんぴょん跳ね
する。
| るように Jなんて、考えられない。
②地面がすごく冷たそう。
②マイナス 6℃とかだったら、長野
より寒し 1かも知れない。
②裸足で下駄はあり得なし、かも。
②足袋があれば暖かそうだな。
⑦②⑫のような反応には、
「
今巴の足袋は、防寒用の
| 足袋のことです。 Jと説明
| 。尚子=~::~:;:る I
1
0最初に生徒に黙読させる。
|@小樽の冬の写真を掲示し、
| 「
わたし Jの足の冷たさを想
| 像できるようにする。
|[
小樽市の位置】
|[
小樽市の冬の風景]
|②小樽の冬の最低気温を掲示
| する。
O教師が朗読する。
「今日は足袋がどうしてちほしかった「わたしJ
の気持ちをみんなで
考えてみようと思います。 Jと告げ、発問 1に入る。
自|
|
附
1]おばあさんが「ふんばりなさいよ J
とお金を握らせてくれた時の「わたしJ
の気持
ちを考えよう。
価
値
観
の
交
流
と
追
究
I3おばあさんが四
|
|
|
|
|
十銭を握らせて
くれたときの主
人公の戸惑いの
気持ちを整理
し、寄り添う 。
③これで足袋が買えるぞ。
③書いてあるように 「
ふんばりなさい
よJは、「これで足袋を買ってがん
ばりなさしリの意味だったのではな
し
\
カh
⑤本当はもらってはいけないお金だ
と思う。
②返そうかな。もらっていいのかな。
おばあさんが間違えた四十銭で、
足袋を買った「わたしJ
②早くおばあさんに会いたい。
②これでやっと、お金が返せる。
.
道 2
0-
2
③⑤②のような生徒の反応を
「
③お金を受け取る」「⑤返
す J「
②迷う」三つの視点に
整理する。
O発言が滞った時は「自分な
らJの立場に立たせて、ど
うして③⑤②のように思っ
たのかを発言させる。
⑦最初のお給料をちらった
「わたしJはどうしたの?
1
0
り手 ︼
乗をい
びごた
飛かい
にの会
車物く
汽果早
主
国
板
た
よ
ハN
EEl]
,。
4
ふ
おる
、
れ
にさ
ん消
さ解
あが
まい
お迷
②⑦
おばあさんに会いに行く様子を読み取り 「
「わたしJ
は、どんな思い
でおばあさんに会いに行ったのでしょう。と投げかけ、発問 2に
つなげる 。
0おばあさんには、会えなか
I8
ったんだよね。
板書 【
亡くなっていた]
【
発問 2]持っていた果物のかごを川に落とした「わたしJ
の気持ちを考えよう。
4おばあさんが死
んでいたことを ③「泣けて泣けて」とあるから、悲し
かったのだと思う。
知り、どうしよ
うもなく後悔し
ている「わたし J ⑦恩返しをしようと思っていたの
に、もうできない。
の気持ちを想像
し、意見を出し ⑦もっと早くお金を返しに行けば良
かった。
合う 。
⑦あの時のおばあさんの気持ちを、
聞いてみたかった。
②自分がなんとやり通せたのは、お
ばあさんのおかげなのに。
0学習カードを配布する 。
③のように文章から読み取ろ
うとしている生徒に対して
は「わたしの気持ち Jの中身
を想像し、具体的に記述す
るよう声がけする。
⑦に関連する意見をあげさせ
「
後悔Jという言葉を使いな
がら 「
わたし」の気持ちを確
認する。
②について読み取っている生
徒は⑦の後で指名し、後悔
しながらも前を向いている
「
わたしJを確認する。
③「わたしがいつも思い出し
③「ふんばりなさいよ J
ていた言葉は?」
「わたしJは、おばあさんの「ふんばりなさいよ Jに支えられてきた
んだねJと、生徒の発言を共感的に受け止め、発問 3へつなげる。
雲|
|
1
5
附 3 ] 「あ、ぱ、あさん力'~<れた/~\
どういうことだ、ろう。
心
へ I 5「
わたし Jが後悔
の | から得たものは
問 | なにかを考え、
い | 発表する。
か
け
を
深
め
る
J
②どこに書いてあるのかな。
②上手く文章にできない。
②間違いを黙っていた「わたし Jに対
して、何も言わずにいてくれたお
ばあさんの優しさ。
②「ふんばりなさいよ Jと言ってくれ
たあの言葉を、だれかに伝えてい
く。
②自分のような後悔を、もう誰にも
してほしくないという心を伝えて
いきたい。
②おばあさんのことを、忘れないで
過ごしていくこと 。
⑦おばあさんが何も言わずに「わた
しJを助けてくれたように、わたし
も、困っている人を助けたい。
⑦二中も、先輩方から受け継ぎ、後
輩たちに引き継いでいくのと似て
し
\
る
。
V
I
I 反省
.
道 2
1-
板書
[
おばあさんがくれた心】
[
今度はわたしが]
0指名計画を立てながら、@
②のような生徒に個別支援
をしていく 。
②のように文から読み取ろう
としている生徒には、お話
を受けて、自分の/~\で自由
に考えて、書いてみて下さ
い。と声がけする。
②のように表現するのがが手
な生徒には「おばあさんが
くれた/~\ J は伺かを最初に
考えて、書いてみよう。と
投げかける 。
②共感的に受け止める。
⑦自分とのかかわりについて
書いている生徒がし 1たら、
指名して発言させる。
0よく考え、発言したことを
評価し、授業を終える 。
1
5
発問 の工夫
①
気持ちを追う 人物を、一人にしぼる。
『生徒たちの道徳的価値観が高まる ためには、 その人の気持ちの迷いや変化を読む ことが必要』 とい
う仮説を立て
、 発問 に対す る問いを「
わた し
」 一人に絞った
。 本時にお ける発聞は
、
[
発問 1]おばあさんが「ふんばりなさいよJ
とお金を握らせてくれた時の「わたしJ
の気持ちを考えよう。
【
発問 2]持っていた果物のかごを川 に落とした「わたしJの気持ちを考えよう。
【 発問 3 ] 「おばあさんがくれた/~\ を、 今度はわたしがだれかに差 し上 げなければJ とは、ど う いう こ と
だろう。
であ る。大ざっ ぱにとら えた
「わた しJの気持ちの変化は
、 [
発問 1]においてはは 『迷しJ、【
発問
2]は 『後悔』、【
発問 3]は 『決意』であ る。主人公のそれらの気持ちの変化を とら えやす くす るため
に、どう してそう考えたのかを発言 させ、整理していった
。
②
次の発問に移る タイミングと、声がけ。(次の発問への、 つなが り)
あらか じめ教 師の中で用意しておいた発聞を、授業の中でどの よ うに位置づけてい くか
。 発問 に連続
性がなければ、次の発問 に移っ た瞬間生徒の意識が途切れて しま い
、 主人公の気持ちの迷いや変化を追
うことができな くな って しま う
。 そこ で
、 指導案に
、 整理 (
評価)の言葉を書いてお くことに した
。
−
「今日は足袋がどうしてちほしかった「わたしJ
の気持ちをみんなで考えてみようと思います。 jと告
げ
、 発問 1に入る。
−おばあ さんが間違えた四十銭で
、 足袋を買っ た
「わた し
」
−おばあ さんに会いに行く様子を読み取 り
「 「わたしJ
は、どんな思いでおばあさんに会いに行ったの
でしょ う。と 投げかけ、 発問 2につなげる。
.r
わたしJ
は、おばあさんの「ふんばりなさいよ J
に支えられてきたんだねJと
、
生徒の発言を共感的
に受 け止 め
、 発問 3へつなげる。
としておいた。
③
気持ちを問う時は、その人物の行動か ら。(文の中に気持ちがある記述では、問わな い)
資料の読み取りに終始しない
。 気持ちを文章から読み取ろ うと しない。「悲しんでい る00の気持
ちJ「
おびえて泣いている 00の気持ち Jなど、 主人公の気持ちが書かれてい るところでは、 気持ちを問
わない。 その人物の行動から、「どう して0 0したので しょ う」「
∼∼した0 0の気持ちを考えよう Jな ど
、
、 自由 な雰囲気で 自分の考えが言い合える ことが大
行動の裏 に隠れ る0 0の気持ちを、 自由 に推し量 り
切であ る。
−読み取りにならず、 その人物の気持ちを察しよう とす るこ とができる。
−叙述がないので、 正解はない。 が、 自由 な発想、
で考え られる利点があ る0
・発問 によっ ては、 相反す る意見が出て
、 活発な話し合いも 可能にな る。
.
道 2
2-
(4)児童生徒の道徳的実践力を高めるための指導の工夫
①実践例 中塩田小学校( 3年
)
I 主題名
「
げきのはっぴょう J
2- (3)友達と互いに理解し、信頼し、助け合う。
(信教出版部 「
わたしたちのみち 3J より出典)
I
I 本時の主眼
仲間はずしをされて、寂しい思いをしていたけんちゃんの気持ちゃ、周りにいた友達の発言を考え、
実際にロ ールプレイする事を通して、それぞれが得意なことや不得意な ことがある ことを知り、学
級のだれとでも仲よくしてい こう とする気持ちをもつ ことができる。
I
I
I 指導上の留意点
導入の所で得意なことを児童一人一人に言ってもらったり、苦手なことを数人に発表してもらった
りする ことで、皆得意な ことや苦手なこ とがあるという ことがわかるようにする。 ただし、す
ぐに思いつかなかったり分からなかったりする時は 「
分かりません j 等でも良いこととする。
相手の気持ちになって考えることが難しい児童には、 「もし、 0 0さんがけんちゃんだったらどうか
な? J等、具体的に考えられるように声掛けをしてし 1く
。
I
V 展開
段階
学習活動
口予想される児童 の発言 と心の動き
O指導
[
評価】
|
自分の得意なことと苦手なことは何かな?
自 l|
分 II
の
合I1、児童一人一人に自分の得意なことを言ってもらう 。
員
O すぐに思いつかない児童 には、 「
わかりませんj でも良い旨を最初に伝え、児童 に安
つ l
心してもらう 。
ゐl 口 サ ッ カ ーです
v
日 本 を 読 む ことです
口 絵 を 描 く ことです
口分かりません
l
・
2、自分の苦手なことを数名発表してもらう 。
0 まずは教師の苦手なこ とを伝え、誰にでも苦手な ことがあると知ってもらう 。
口 先生 にも苦手な ことあるんだ。私と 一緒だ。
口 僕 も 先生 と一緒でよく忘れ物をしちゃいます。
口 恥 ず か しく て、みんなの前で話すのが苦手です。
口 体 を 動 か す の が 苦手なので、体育が苦手です。
道
Is 資料を読む。ワークシート記入後、発表を行う 。
語||
価
値
観
の
交
流
く中心発問> けんちゃんは、どんな気持ちだったので しょう 。
0 各自ワ ークシート の吹き出しにけんちゃんの気持ちを書くよ うに促す。
口 強 く 言われて嫌な気持ちだったと思う。
口 苦手なのに、何でそんな こと言 うんだよって気持ちだと思います。
口 頑 張っているのに分かつてもらえなくて、泣きたくなるほど悲しかったと思います。
口 け ん ち ゃ ん は一生懸命やってるのに、分かつてもらえなくてちょっと怒っている気
持ちだと患う
口友達とは、絶対にもう話したくないと思っている
0 書 くことが難しい児童 には 「もし、 0 0さんがけんちゃんだったらどんな気持ちか
な? J等、問し 1かけ、会話の中から児童の気持ちを引き出す口
−道 23・
周りで見ていたみえちゃんは何て言っているのかな。
0 各自ワ ークシート の吹き出しにけんちゃんの気持ちを書くよ うに促す。
口
口
口
「
そうよ、そうよ j とか、正くん達と 一緒に悪口を言っていたと思う 。
「
がんばれ、けんちゃんj 「ドンマイ j って励ましてたんじゃなし 1かな。
「
正くん達ちょっと言い方強し 1よJr
けんちゃんだって頑張ってるよ j って注意して
ると思ょうよ。
O 予想、が一通り出たところで、本当はみえちゃんやあいちゃんは、けんちゃんをかば
っているという事を伝える。
もし、自分がみえちゃんや正君だったら何て言 うかな。
0 各自ワ ー クシート の吹き出しに、みえちゃんと正君の言葉を書くよ うに促す。
O 書き 終わったら、ペアでロ ーノレプレイをするように伝える。
0 考える ことが難しい児童は、教科書の文で練習してもいいように伝える。
くみえちゃんのセ リフ>
口正君、けんちゃんだって頑張ってるんだし、怒っちゃだめだよ。
口もうちょっと優しく 言お うよ。けんちゃんもさっきより良くなってるし。
く正君のセリフ>
口ごめんね。強く 言 い過ぎちゃった。今度は強く 言わないよ。
口けんちゃん、ごめんね。さっきより良くなってるから頑張ろう。
口 この言い方良いね。 「
頑張ろう j って気になる。
口 こ うゅう 言 い方してもらったら嬉しいね。
口僕も見習いたい
0 机間巡視を行い、どう言ったら良し 1か迷っている児童には、話の流れをもう 一度挿絵
を見ながら伝え、教師も一緒に考える
0 べア活動が滞っている様子であれば、 一緒に活動を行う
0 全体で、どんな声掛けがあったかロ ーノレプレイで発表してもらう
心 I6 本時の振り返りを行う
.
r
、
0 ワークシートに本時の振り返りを書き、発表する
の
~:か 11
け
を
ィ
架
め
る
今日、学習した感想を発表しましょう
口 私 も つ い 強 く 言っちゃう ことがあるけど、今度はもう少し優しく 言お うと思った。
けんちゃんがんばれj って励ましてあげていて、良いなって思いました。
口 0 0さんが 「
口みえちゃんみたいに、僕もいけない ことは九、けないよ j って注意できるようにした
~t罰iffi1··········································· ・・・・・・・:
5
:
それぞれが得意なことや不得意なことがあることを知り、学級のだれとで、も仲
くしていこうとする気持ちをもつことができたか。
(
発言、学習カ ード)
:
i
v
授業者の反省
・時間が足りず、終末の部分で子ども達とじっくり考える時間をとることができなかった。
・中心発聞は 「
けんちゃんの気持ち j の部分ではなく、みえちゃんや正君の気持ちを考え、ロ ーノレプ
レイをする部分で、はなかっただろうか。
−書く活動が多く、もう少し減らすべきだった。
−授業の導入で各自 「
得意なこと Jを言ってもらったのは良かった。今回の授業の動機付けができた
とともに、児童達の緊張も解け、人には皆得意なことや不得意な ことがあると感じる ことができた
ように思う 。
−道 24・
・ローノレプレイを行うことで、 自分でどの様な言葉掛けが良いのか考えるこ とや実際にやってみる
(
言っ てみる) ことでより、 「これでいいんだJ という 実感を持つこ との出来る活動ができた。
0児童の様子
【ロールプレイを通して登場人物の気持ちに寄り添い、 自分ならばどうするか考えるこ とができた A
児
]
:吹き出しの中に自分だったらどんな言葉をかけるか、書いてみましょう 。書き 終わったらべアで
合いっこしてみよう 。
A児:分からないよ。分からない。 (
書かない)
C :私は、こうやって書いたよ。 ちょっと一緒にやってみよう 。
A君は、先に正君の役お願い。
(ぺアの児童 の記入したもので一緒にロ ールプレイをする。その後、 自分のワ ークシート の吹き出しj
も考えて書く )
A児:書いたよ。俺のも一緒にやって。
C:
し W、
よ
。
$
吋ん
sav
普段から気持ちを考えたりすることが苦手な A児だが、ロー
ノレプレイの時間にべアの児童 と一緒に実際に言っ てみる ことを
正くんj の気持ちに寄
通して、登場人物の 「
みえちゃんj や 「
り添い、 書 くことが出来た。自分で言 うことで 「この言い方い
いな。 自分だったら嬉しいな j という思いになったのだと思う。 正くん
:何言っているかわから
ないよ
みえちゃん:そんなにせめないで
正くん
:おれもちょっと言いす
ぎちゃったな
みえちゃん:けんちゃんにあやまりな
円
F
,
.h
いよ
[けんちゃんの気持ちを考え ることで、
]
今度は自分はこうしたいという思いが生まれた B児
振り返りの場面で、 「(けんちゃんの)よくきもちがわかっ
うれしい。わたしは、いつも小さい声だけど、大きな声をだし
、 普段から 考えや思い
て心をすっき りしたし リ と
、 書いた B児は
があっても緊張から大きな声で発表ができないという様子が見
られる児童である。
本教材の中の登場人物 「
けんちゃんJに自
分と似ている部分を重ね合わせることで、 「
私もけんちゃんのよ
うに頑張っ てみたい。そのために、今度からは大きな声で発表を
して心をすっきりさせたし リ という思いにな ったのだと 思 う
。
正くん
:何言っているかわからないよ
みえちゃん:だって一生懸命言ったらそれでいいじゃん
正くん
:ごめん。けんちゃん本当は大きな声出せるもん
みえちゃん:そうだよ。今度から強く言わないでね
V
I 研究会から示唆されたこと
O授業展開について
−今回の授業は 「
場面発問 j で行われていく授業内容で、あった
。
しかし、もっと鋭角的な授業にする
ためにテーマ発問(正君の言い方は本当に良かったのだろうか等・
・
・ )で考え る方が良かったのではな
いか。その方が児童 達も、も っと考える内容が明確になったのではないか。
0教師の授業中の参加の住方について
−授業の導入に入る前に、ク ラス の児童全員に 「
得意なこと j を聞いた。全員にその場で発言させるこ
とによ って子 ども達の緊張もほぐれ、良かった。また、 「
苦手なことj はあえて全員に問わなかったこ
とで発言しにくい児童 にと っては良かったのではないか。
−道 25・
(4) 生徒の道徳的実践力を高めるための指導の工夫
②実践例 第一中学校(1年)
Ⅰ 主題名 「イエローハットに学ぶ~掃除道~」(内容項目4-(1))
(資料「私が一番受けたいココロの授業」より出展)
Ⅱ 本時の主眼
普段、学校の清掃になかなか熱心に取り組めない子どもたちが、資料「掃除道」を読み、イエロ
ーハット創始者の鍵山秀三郎さんが清掃を通して社員や顧客と信頼関係を築いていく姿から、清掃
をする価値を考えることを通して、清掃によって自分の心を磨けたり人から信用される人間になれ
たりすることに気づき、自分も清掃をがんばろうとする意欲がもてる。
Ⅲ 本時案
段階 学習活動
予想される生徒の反応
◇教師の指導・援助 評価
時間
備考
1 自分自
5 ワーク
【発問1】 普段の自分の清掃について振り返ろう。
行
身の行動
分 シート
を 振 り 返 ア 縦割り清掃になってから、清 ◇生徒会が行っている「縦割り
為
る。
掃に緊張感が出て、集中して取
清掃」と関連づけ、自身の
り組めている気がする。
清掃への取り組みを想起さ
の
イ 縦割り清掃に比べると、普段
せ、ワークシートに。記入
はなかなか集中して清掃に取
するように促す。
想
り組めていなかった。
◇考えたことを自由に発表す
ウ 清掃は面倒くさいという気
るように促す。
起
持ちが少なからずある。
/ 2 資 料 を エ 写真1の人は誰だろう?写 ◇写真を示し、鍵山秀三郎さん 10 写 真 1
読み、鍵山
真2の店は知っている。車用品
とイエローハットについて 分 「 鍵 山
秀三郎」
秀三郎さ
を売っているイエローハット
簡単な説明をする。
写真2
んの行動
だ。写真1は社長なのかな。
「イエ
や 発 言 か 【発問2】 なぜ、イエローハットは年商 800 億円以上の大企業
ローハ
ら清掃の
に成長したのだろう?
ット」
価値を考
える。
オ 安く商品を仕入れて販売す ◇発問2について自由に予想
ることができたからかな。
させ、発表するように促す。
カ 品揃えがよくてサービスが ◇発表を受け、発問2の背景に
充実しているからかな。
は実は「清掃」があることを
キ 「清掃」で企業が成長するも
明かす。
のだろうか。いったいどういう ◇キのようなつぶやきを受け
価
ことだろう。
て発問3を提示する。
20 資料「掃
【発問3】 なぜ、イエローハットは「清掃」によって成長した
分 除道」
値
といえるのだろう?
の
把
握
ク 車内をきれいに清掃するサ
ービスのよさということだろ
うか。
ケ 社長が自ら社内の清掃をす
るなんて、変わっているなと思
うけどすごいことだとも思う。
コ 「社員の心を穏やかにして、
よい会社にしたいから清掃を
する」「社員に感謝の気持ちを
伝えたい」という気持ちはすて
きだと思うし、それを何十年も
続けられることはさらにすば
らしいことだと思う。
サ 最初、鍵山秀三郎さんが清掃
しているところを素通りして
いった社員はひどいのではな
いか。
シ 一生懸命清掃しているのに、
◇発問2について自由に予想
させ、発表するように促す。
◇資料を配付し、読み、思った
ことを自由にワークシート
に記入するように促す。
◇記入が進まない生徒につい
ては、机間指導にて、資料の
段落を指定しながら、「自分
だったらどう思う?」など、
自分に置き換えて口頭で訪
ねるなどの支援をする。
◇ワークシートに記入したこ
とを発表するように促し、発
問4に関連づけができそう
な言葉にはアンダーライン
を引く。
-道 26-
価
値
の
把
握
/ 3 心にあ
ることを
まとめ、こ
れからの
実
自分の生
践
活に生か
へ
す。
の
動
機
づ
け
理解されなかった鍵山さんは、
清掃によって自分の心を磨
つらかったと思うけど、何十年
けたり人から信用される人
も続けていく中で、少しずつ理
間になれたりすることに気
解されるようになっていって
づき、自分も清掃をがんば
安心した。
ろうとする意欲がもてた。
ス 何十年も清掃をしていくこ
(発言・ワークシート)
とで社員の心も変わってきた
し、お客さんもイエローハット ◇スのような発言を取り上げ
という企業を信用していった
て、発問3に立ち返り、イエ
のだ。「清掃」によって成長し
ローハットの成長と清掃の
たという意味がわかった気が
関連づけをする。
する。
【発問4】 清掃にはどのような価値があるのだろう?
セ 鍵山秀三郎さんのように、清 ◇清掃の価値について考え、ワ
掃を通して、周りの人への感謝
ークシートに記入するよう
の気持ちを表すことができる。
に促す。
ソ 清掃を通して、周りの人に信 ◇記入が進まない生徒には板
頼される人間になることがで
書でアンダーラインを引い
きる。
た部分を確認しながら、一緒
タ 清掃によって、自分自身の心
に考え記入を促す。
を磨くことができる。
◇記入したことを発表するよ
うに促す。
チ これまで清掃は面倒くさい ◇鍵山秀三郎さんの残した言
と思いながらやってきたけれ
葉を紹介する。
ど、考えが変わった気がする。 ◇本時の学習を振り返り、これ
これからは自分を磨くつもり
からの自分の生活に生かし
で清掃に取り組みたい。
ていきたいことをワークシ
ツ 「心はとりだして磨けないけ
ートに記入するように促
れど、目の前のものを磨くこと
す。
で心を磨くことができる」とわ ◇ワークシートに記入したこ
かった。周りの人から評価され
とを発表するように促す。
るようになるまで時間はかか
るようだけれども、自分のため
と思ってがんばってみようと
思う。
10
分
5
分
Ⅳ 考察
○題材にしたイエローハット創始者の鍵山秀三郎さんの「掃除道」は、子どもたちの視点からすると、
「知っている企業がどのように成長し、今に至るのか」と興味をもちやすい題材であった。また、
「清掃」による企業の成長という意外性からも興味が持ちやすかったようだ。さらに、清掃という
子どもたちが日々行っている活動との関連が深い題材であったことから、子どもたちの実践への動
機付けがしやすい題材だった。
○「掃除道」を題材にして、鍵山秀三郎さんが清掃を通して社員や顧客と信頼関係を築いていく姿か
ら清掃をする価値を考えたことは、これまで「清掃イコール嫌なこと、面倒くさいこと」と考えて
いた子どもの価値観を揺さぶり、
「清掃を通して何かを得ることができる」という価値観の形成につ
ながった。また、まとめの文章には、これからの清掃に対する意欲的な記述が多く見られ、授業を
行った日の清掃では、実際に床を隅々まで雑巾で拭く子どもたちの姿があった。この姿が継続して
いけば、子どもの道徳的実践力が高まった姿と言うことができると考える。
●一方で、
「掃除道」における鍵山秀三郎さんの清掃の取り組みが、何十年にもわたって続けられるこ
とでようやく実を結んだことに感動を覚えたものの、それだけに留まり、自分の生活に生かそうと
する記述がない生徒や、記述はあるものの実際の清掃の取り組みにはまだまだ課題がある生徒もい
て、全員の実践力が高まったとは言えない。継続して指導していく必要がある。
-道 27-
3
教育課程研究協議会
午後の部での実践
午後の部の研究協議では、はじめに、県教育委員会から、道徳教育について、北信教育事務所指
導主事の甘利尚之先生にご指導をいただきました。そのあと、道徳の資料分析を行う演習に取り組
み
ました。最後に、甘利尚之先生から演習や「学習指導要領に基づく実践上の諸問題・指導上の悩
み」
などについてご指導をいただきました。
今回は、その演習についてまとめました。
演習では、参加者が7グループに分かれ、文科省の小学校道徳読み物資料「お客様」の資料分析
から、授業のねらいや中心発問などを考える演習に取り組みました。(文科省の小学校道徳読み物
資
料「お客様」は、「文科省ホームページ」 → 「道徳教育」 → 「小学校道徳読み物資料集」でご覧
になれます。)
グループ編成は、先生方が担任されている学年を考慮し、小学校低学年と中学年の2グループ、
高学年の1グループ、中学校の2グループにしました。養護学校の先生方には、小学校と中学校の
グ
ループに入っていただきました。
各グループでは、はじめに「長野県
小学校教育課程学習指導書手引き
道
徳編」を参考にして、一人一人で資料
「お客様」を読み、配られたプリント
に、「対象学年」「内容項目」「ねらい」
「中心場面」「中心発問」を考えて記入
しました。そのあと、個で考えたこと
を
発表し合い、グループとしての案を
ま
とめました。最後に、各グループで
話
し合った内容を発全体で表しました。
それぞれのグループでは、先生方が
熱心に自分の考えを発表したり、グループの先生方の考えを
聞いたりしながら、グループとして
の
「対象学年」では、先生方は、自分の学校をイメージして考えられたようで、小学校の先生のグ
ル
ープでは、5・6年という案が出ましたし、中学校の先生方のグループでは、中2という案が出
さ
案をまとめていました。
各グループの発表をまとめました。
れました。
「内容項目」では、4-(1)「公徳心をもって法やきまりを守り、自他の権利を大切にし進ん
で
義務を果たす。」という意見が多く出されました。また、2-(1)「時と場をわきまえて、礼
儀
正しく真心をもって接する。」や、2-(4)「謙虚な心をもち、広い心で自分と異なる意見や
立
場を大切にする。」などの少数意見もありました。少数意見に対して、「なるほど、視点を変え
る
と、そういうとらえ方もできる。」と、頷かれる先生方もいらっしゃいました。
「ねらい」では、「私の心の変容を話し合うことを通して、自他の権利を尊重しながら、きまり
を
守ることの大切さに気づき、進んできまりを守ろうとする心情や態度を養う。」という考えが多
く
- 道 28 -
出されました。
「中心場面」では、どのグループでも、係員とお客とのやりとりを聞いていた私が、「何か、変
だ。」と思った場面を挙げていました。また、「私が気持ちが晴れないまま、その会場を後にした。」
の場面も考えられるというグループが複数ありました。いずれも、「わたし」の心の変容がよくわ
か
る場面です。
「中心発問」では、取り上げた「中心場面」に合わせて、「何か、変だ。」と感じた理由や、「私
が気持ちが晴れないまま、その会場を後にした。」理由を考えさせる発問が多く出されました。
演習を終えて、先生方から、「資料『お客様』は、多様な考え方ができる難しい資料である。」
という感想が多く出されました。例えば、「内容項目」で挙げたように、視点を変えると異なった
内
容項目も考えられるからです。先生方は、それぞれのグループ内での話し合いや全体発表の場で、 自
分の考えと同じ意見に頷いたり、違う考えにハッとさせられたりなどして、よい演習になったの
で
はないかと思われます。
最後に、甘利尚之先生より
・道徳の資料は、子どもたちの興味や関心、発達の段階に応じて、同じ資料でもねらいや扱い方、
資料の提示の仕方も考えていく必要がある。
・道徳の資料は、多様な価値観が引き出され、深く考えることができる内容であること。
・子どもの多様な考えを大切にし取り上げていくことは必要だが、常にねらいを明確にしながら
考えさせ、授業を展開していく必要がある。
等のご指導をしていただきました。
五
研究のまとめと課題
まとめ
・本年度も引き続き、一人1実践を持ち寄る形式で、研究を深めることができた。
・教育課程午後の部の実践については、先生方に演習をしていただく方向で行う2年目の活動であっ
たが、初めての委員の先生方も協力して下さり、活発に議論を展開させることができた。
・教育課程の道徳に参加された先生の中には、あまり道徳の授業に慣れていない方も見られたが、内
容項目の決め出しや中心発問の取り出し方など、道徳の授業づくりの手順を学ぶよい機会になった
のではないか。
・授業提供を、中塩田小学校の神林夏実先生にしていただきました(中学校は第二中学校の塩田直人)。
若い先生が率先して授業を提供して下さるのは、大変ありがたいことです。次年度も授業を学び合
う形式の委員会運営ができるとさらに良いと考えます。気軽に授業を見合う雰囲気ができてきまし
た。
課題
・来年度以降は、『わたしたちの道徳』の実践例を積み重ねてみてはどうか。
・「私たちの道」(信教)も改訂となる。こちらの実践も重要になってくるだろう。
・道徳の教科化の動きがあるが、具体的な教科書や副教材などが出てくれば、それらを利用して、新
しい位置づけでの実践ができるようになってくる。こういった動きも起こせるのではないか。
- 道 29 -