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巻頭言
北海道大学大学院医学研究科 がん予防内科
浅香 正博
Helicobacter 誌の 2014 年度の impact score は 4.106 であり、前年より大幅に増加し、ついに 4 点台
となった。消化器系の英文誌としては 18 番目にランクされた。一つの細菌のみを研究している雑誌
が堂々と世界の一流誌と肩を並べる時代になってきたのである。編集責任者の Graham 教授も大変喜
んでおられた。Helicobacter 誌が初めて発行されたのは 1996 年 3 月である。この 2 年前の 1994 年は
Helicobacter 研究者にとっては忘れられない特別な年である。まず米国衛生研究所(NIH)のコンセン
サスステートメントが発表され、胃・十二指腸潰瘍の治療に H. pylori の除菌治療が推奨された。これ
は世界中に強烈なインパクトを与え、 ニューヨークタイムスの学術欄のトップには“The sea has
changed”の見出しが躍った。それ以来、胃・十二指腸潰瘍の標準治療として H. pylori の除菌療法が
世界中で行われるようになり、各地域のガイドラインにも表記された。もう一つは WHO のがん研究
機関(IARC)が H. pylori を明らかな発がん物質に認定したことである。IARC は発がん物質の認定
における最も権威のある施設であり、ここが H. pylori を発がん物質に認定したことは全世界に衝撃
を与えた。通常 IARC が発がん物質に認定するためには疫学的データに加え動物実験のデータが必須
であったが、H. pylori に関しては疫学的データしかなかったためわが国では素直に受け入れられず批
判的な論調が目立ったことを思い出す。このような時期に Helicobacter 誌は発刊された。創刊号で
編集主幹の Graham 教授が“Helicobacter:A new scientific journal”と題して Editorial を執筆した。
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巻頭言
創刊号にわれわれのグループも“Atrophic changes of gastric mucosa caused by Helicobacter pylori
infection rather than aging”という論文を発表している。わが国の萎縮性胃炎が加齢ではなく
H. pylori によって引き起こされているという、今では常識であるが、 当時としては初めての論文であっ
た。現在までに 89 回引用されている。
この雑誌の編集会議は欧州ヘリコバクターワークショップが開催される都市で毎年開かれている。私
は創刊以来、Board member として参加しているが、単一の細菌に関する英文誌がこのような隆盛を
見るとは当初考えていなかった。本誌の発刊後、H. pylori の発がん性はわが国からの動物実験で証明
され、分子生物学的もわが国の研究者によって明らかにされた。本誌はH. pylori 研究が発展していく
絶好の時期に発刊され、多くの貴重な論文を世に送り、本年で 20 周年を迎えたことは感慨深いこと
である。
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