微分方程式Ⅰ 参考資料 3 2015 年度前期 工学部・未来科学部 2 年 担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教) ■ 常微分方程式の解の存在と一意性定理 babababababababababababababababababab 定理 (コーシー、ピカール、リプシッツ、リンデレーエフ) y f (x, y) を 連続 関数とする。長方形領域 D = { (x, y) | |x − x0 | ≤ r, |y − y0 | ≤ s } y0 + s (x0 , y0 ) 上で定義された微分方程式 y0 − s dy = f (x, y) dx · · · · · · (∗) (x, y) ∈ D に対し リプシッツの条件 Lipschitz’s condition O x0 − r x0 + r x 任意の D の 2 点 (x, y1 ), (x, y2 ) に対して |f (x, y1 ) − f (x, y2 )| ≤ L|y1 − y2 | が成り 立つような正の実数 L が存在する ′ ′ が成り立つならば、初期条件 y(x0 ) = y0 を満たすような (∗) の解が x ∈ (x0 − r , x0 + r ) (但し r′ = min{ r, s max(x,y)∈D |f (x, y)| }) の区間で 唯一つ 存在する。 注意 (些かマニアック) y 1. この定理は長方形領域に対する「局所的な」解の存在および一意性 についての定理ではあるが、次々に長方形を「繋げてゆく」ことに よって (リプシッツの条件が満たされる限りは) 構成した解をどん どん「延ばしてゆく」ことが出来る。 x O 2. 初期値問題の解の存在 のみ (一意性は仮定しない) を考えるのであれば、リプシッツの条件 を課す必要はなく、f (x, y) が 連続関数 であるという仮定のみで十分である (コーシー-ペア ノの存在定理)。 3. 解の一意性について、リプシッツの条件は十分条件ではあるが 必要条件ではない; つまり、リ プシッツの条件を満たさないけれど初期値問題の解が一意に定まるような微分方程式は存在 する。 2., 3. については、例えば笠原晧司著『微分方程式の基礎』(朝倉書店) や 笠原晧司著『新微分方程 式対話』(日本評論社) の第 3 章、第 4 章等をご参照下さい。 ■ 微分方程式の積分方程式への書き換え 先ずは微分方程式 (∗) の両辺を x = x0 から x = x まで積分すると (y(x0 ) = y0 に注意して) ∫ x=x y(x) − y0 = · · · · · · (∗∗) f (x, y(x)) dx x=x0 という積分方程式が得られる。(∗∗) の両辺を微分すると (∗) になるのだから、初期条件 y(x0 ) = y0 を 満たす (∗) の解を求めることは結局 積分方程式 (∗∗) の解を求める ことに他ならないことに注意し よう。 以下では解 y(x) の形が見易い 積分方程式 (∗∗) を扱ってゆくことにします。 ■ 解の一意性について 初期条件 y(x0 ) = y0 を満たす (∗) の解が 2 つ存在するとして、それらを y1 , y2 としよう。このと き (D に於いて) y1 = y2 が成り立つことが証明出来れば、(∗) の解は (D に於いて) 一意に定まる ことが示せたことになる。したがって以下 y1 (x) = y2 (x) となることを示そう。 さて、y1 , y2 は共に初期条件 y(x0 ) = y0 を満たす (∗) の解だから、積分方程式 (∗∗) の解でもあ る; つまり ∫ ∫ x=x y1 (x) − y0 = f (x, y1 (x)) dx x=x · · · (∗ ∗ 1), y2 (x) − y0 = x=x0 f (x, y2 (x)) dx · · · (∗ ∗ 2) x=x0 が成り立つ。ここで (∗ ∗ 1) − (∗ ∗ 2) (の絶対値) を計算してみると ∫ |y1 (x) − y2 (x)| = x=x x=x0 ∫ {f (x, y1 (x)) − f (x, y2 (x))} dx ≤ x=x |f (x, y1 (x)) − f (x, y2 (x))| dx x=x0 が得られるが、紫色の部分に リプシッツの条件 |f (x, y1 ) − f (x, y2 )| ≤ L|y1 − y2 | を用いると ∫ ∫ x=x x=x L|y1 (x) − y2 (x)| dx = L |y1 (x) − y2 (x)| ≤ |y1 (x) − y2 (x)| dx x=x0 · · · (♠) x=x0 が成り立つことが分かる。ここで C = maxt∈[x0 ,x] |y1 (t) − y2 (t)| とおくと、 ∫ ∫ x=x |y1 (x) − y2 (x)| ≤ L x=x |y1 (x) − y2 (x)| dx ≤ L x=x0 C dx = LC|x − x0 | · · · (♣)1 x=x0 という不等式を得る。(♠) と (♣)1 を用いて (♠) ∫ x=x |y1 (x) − y2 (x)| dx |y1 (x) − y2 (x)| ≤ L x=x0 ∫ x=x (♣)1 ≤ L [ LC|x − x0 | dx = L2 C x=x0 (♠) と (♣)2 を用いて ∫ (♠) |y1 (x) − y2 (x)| ≤ L (♣)2 1 |x − x0 |2 2 ]x=x = x=x0 L2 C |x − x0 |2 2 · · · (♣)2 x=x |y1 (x) − y2 (x)| dx x=x0 ∫ x=x ≤ L x=x0 L3 C Ll2 C |x − x0 |2 dx = 2 2 [ 1 |x − x0 |3 3 ]x=x = x=x0 L3 C |x − x0 |3 · · · (♣)3 3! ...... 以下、同様にして帰納的に (♠) と (♣)n−1 を用いることで、全ての自然数 n に対して |y1 (x) − y2 (x)| ≤ Ln C |x − x0 |n n! · · · · · · (♣)n Kn = 0 が任意の正の実数 K に対して成り立つこ n→∞ n! とを用いると、(K = L|x − x0 | に対してこの極限公式を用いることで) n → ∞ の極限で (♣)n の右 が得られる (ここが少し技巧的)。ここで lim 辺が 0 に収束することが分かる。したがって |y1 (x) − y2 (x)| = lim |y1 (x) − y2 (x)| = 0, n→∞ すなわち y1 (x) = y2 (x) が示された。 ■ 解の存在 (構成) について (その 1): ピカールの逐次近似法 続いて積分方程式 (∗∗) の解を構成するために、関数漸化式 ∫ y0 (x) = y0 (定数関数), x=x yn+1 (x) = y0 + f (x, yn (x)) dx · · · (∗∗)n x=x0 を考えよう。もしこの関数列 {yn (x)}∞ n=1 が 収束する ならば、その極限を y(x) と書くことにする と、漸化式 (∗∗)n に於いて n → ∞ としたときに yn+1 (x), yn (x) は共に y(x) に収束する筈なので ∫ x=x y(x) = y0 + f (x, y(x)) dx x=x0 が得られるが、これはまさしく積分方程式 (∗∗) に他ならない*1 。したがって 関数列 {yn (x)}∞ n=1 が 収束する ことさえ示せば、その極限 y(x) として (∗∗) の解を構成することが出来る。このようにし て積分方程式 (∗∗) の解を構成することを ピカールの逐次近似法 Picard’s iteration scheme と呼ぶ。 ……とまぁ解の構成の方針はびっくりする位単純なわけですが、関数列 {yn (x)}∞ n=0 が収束するか どうか を調べるためにはそれなりに高度な数学の知識が必要になります。というわけで、以下の「証 明」では 1 年次配当科目 微分積分学 Ⅰ, Ⅱ の内容を超える箇所も登場します ので、ご自身の興味 に合わせてご覧ください (解の逐次近似列の構成は講義時にプロジェクターでお見せする予定です)。 ■ 解の存在 (構成) について (その 2): 関数列 {yn (x)}∞ n=0 の収束性 先ずは、逐次近似で構成した関数列 {yn (x)}∞ n=0 が定理で考えている長方形領域 D′ = { (x, y) | |x − x0 | < r′ , |y − y0 | < s} (但し r′ = min{r, s }) max(x,y)∈D |f (x, y)| で定義された関数であることを保障しておこう。 babababababababababababababababababab 補題 1 N = max(x,y)∈D |f (x, y)| とおく。|x − x0 | < r′ ≡ min{r, s } であるならば、任 N 意の 0 以上の整数 n に対して |yn (x) − y0 | < s が成り立つ。 *1 高校等でも、漸化式で定まる数列の極限値をこのようにして計算したことがある方もいらっしゃるのではないかと思い ます。ただし若干注意が必要 (後述の注意も参照して下さい)。 証明. 関数漸化式 (∗∗)n を用いると ∫ x=x ∫ x=x |f (x, yn (x))| dx |yn+1 (x) − y0 | = f (x, yn (x)) dx ≤ x=x0 x=x0 ∫ x=x ∫ x=x dx = M (x − x0 ) ≤ max |f (x, yn (x))| dx = N x=x0 (x,y)∈D x=x0 (♭) ≤ N |x − x0 | < N r′ ≤ N s =s N となるので |yn+1 (x) − y0 | < s が成立することが分かる*2 。 ′ したがって関数漸化式 (∗∗)n で定義される関数列 {yn (x)}∞ n=0 の各項が D 上で定義された関数で あることが確認出来たので、以下では関数列 {yn (x)}∞ n=0 が実際に収束することを証明しよう。ここ で先ず注意しなくてはならないのは 極限値 y(x) が現時点では分かっていない (!) という点である。 このように (どの様な値に収束するかどうかは分からないけれど) とにかく数列 {an }∞ n=1 が収束す るかどうか を調べるのは存外に難しく、初等的な微分積分学の範疇から逸脱してしまうのである (少 なくとも 実数の連続性 についてある程度きちんと理解している必要がある)。 そこで、ここでは以下に挙げる コーシーの収束性判定法 Cauchy’s criterion for convergence を 認めて用いることにする。詳細は田島一郎著『イプシロン・デルタ』(共立出版) の定理 7 (85 ペー ジ) などを参照して下さい。 定理 (コーシーの収束性判定条件) ∞ 数列 {an }∞ n=1 が limn,m→∞ |an+m − an | = 0 を満たすならば、{an }n=1 は収束する。 コーシーの収束性判定法を認めることにすると、関数列 {yn (x)}∞ n=0 が収束することを確認したけ れば、(各 x に対して) |yn+m (x) − yn (x)| が 0 に収束することを証明すれば良いことになる。 鍵となるのは次の不等式を証明することである: babababababababababababababababababab N = max(x,y)∈D |f (x, y)| と お く と き 、任 意 の 0 以 上 の 整 数 n に 対 し て 1 |yn+1 (x) − yn (x)| ≤ N Ln |x − x0 |n+1 が成り立つ。 n! 補題 2 補題 2 の不等式を用いると limm,n→∞ |yn+m (x) − yn (x)| = 0 が簡単に証明出来る。実際、 yn+m (x) − yn (x) = ∑m−1 k=0 |yn+m (x) − yn (x)| ≤ (yn+k+1 (x) − yn+k (x)) であることを用いると m−1 ∑ 補題 2 |yn+k+1 (x) − yn+k (x)| ≤ k=0 k=0 = N |x − x0 | n+m−1 ∑ ℓ=n *2 (♭) は r′ の定義式 r′ = min{r, m−1 ∑ 1 N Ln+k |x − x0 |n+k+1 (n + k)! ∞ ∑ Lℓ |x − x0 |ℓ L |x − x0 | ≤ N |x − x0 | ℓ! ℓ! ℓ s } から従う不等式。 N ℓ ℓ=n · · · (♡) と計算出来るが、一方で指数関数のマクローリン展開の公式より ∞ ∑ Lℓ |x − x0 |ℓ ℓ! ℓ=0 = eL|x−x0 | が成り 立つことから lim ( ∞ ∑ Lℓ |x − x0 |ℓ m,n→∞ ℓ=n = lim ℓ! m,n→0 eL|x−x0 | − ℓ=n−1 ∑ ℓ=0 = eL|x−x0 | − lim ℓ=n−1 ∑ m,n→∞ ℓ=0 Lℓ |x − x0 |ℓ ℓ! ) Lℓ |x − x0 |ℓ ℓ! = eL|x−x0 | − eL|x−x0 | = 0 となるので、挟み撃ちの原理によって limm,n→∞ |yn+m (x) − yn (x)| = 0 が示せるのである。した がってコーシーの収束性判定法により、{yn (x)}∞ n=0 の収束先 y(x) が存在することが分かり、積分 方程式 (∗∗) の解を構成することが出来るのである。 というわけで、残る課題は 補題 2 の証明のみであるが、これは関数漸化式 (∗∗)n を用いた数学的 帰納法の演習問題みたいなものである。 補題 2 の証明. n に関する数学的帰納法により証明する。n = 0 のときは ∫ x=x ∫ x=x |y1 (x) − y0 (x)| = |y1 (x) − y0 | = f (x, y0 ) dx ≤ |f (x, y0 )| dx x=x0 x=x0 ∫ x=x ∫ x=x 1 max |f (x, y0 )| dx = N dx = M L0 |x − x0 |0+1 ≤ 0! x=x0 x=x0 (x,y)∈D (∗∗)0 より成立する (0! = 1 に注意)。 1 N Ln |x − x0 |n+1 が成立することを仮定して、不等式 n! N Ln+1 |x − x0 |n+2 を示す。関数漸化式 (∗∗)n , (∗∗)n+1 より 次に、不等式 |yn+1 (x) − yn (x)| < |yn+2 (x) − yn+1 (x)| < 1 (n + 1)! yn+2 (x) − yn+1 (x) = (yn+2 (x) − y0 ) − (yn+1 (x) − y0 ) ∫ x=x = (f (x, yn+1 (x)) − f (x, yn (x))) dx ((∗∗)n , (∗∗)n+1 より) x=x0 が成り立つので、 ∫ |yn+2 (x) − yn+1 (x)| = ∫ x=x x=x0 (f (x, yn+1 (x)) − f (x, yn (x))) dx x=x リプシッツの条件 ∫ x=x ≤ L|yn+1 (x) − yn (x)| dx |f (x, yn+1 (x)) − f (x, yn (x))| dx x=x0 x=x0 ∫ x=x 帰納法の仮定 1 1 N Ln |x − x0 |n+1 dx = N Ln+1 |x − x0 |n+2 ≤ L n! (n + 1)! x=x0 ≤ より確かに成り立つ*3 。 ∫ *3 x − x0 の正負に拘らず x=x x=x0 |x − x0 |n+1 dx = 1 |x − x0 |n+1 が成り立つことに注意しよう。 n+1 注意 (極限と積分の順序交換について: 上級者向け) 関数漸化式 (∗∗)n の両辺を n → ∞ とした際の極限を考える際には実は注意が必要である。実際、 (∗∗)n の左辺は問題なく yn+1 (x) → y(x) に収束するが、右辺の極限計算は以下の様にして行う必要 がある; lim n→∞ ( ∫ y0 + ) ∫ x=x f (x, yn (x)) dx = y0 + lim f (x, yn (x)) dx n→∞ x=x x=x0 0 ∫ x=x ∫ x=x (♯)2 (♯)1 lim f (x, yn (x)) dx = y0 + f (x, lim yn (x)) dx = y0 + n→∞ x=x0 n→∞ x=x0 ∫ x=x = y0 + f (x, y(x)) dx. x=x x=x0 ここで (♯)2 の等号は f (x, y) の連続性から従うものである (関数の連続性の定義を確認してみよう) が、問題となるのは (♯)1 の等号 (極限と積分の順序交換) である。極限と積分の順序交換は無条件に は行うことは出来ず、関数列 {f (x, yn (x))}∞ n=0 が f (x, yn (x)) に 一様収束 uniformly convergent する ことを確認する必要がある。この「一様収束」という概念も初心者には理解しにくい概念であ り、高等的な微積分を学習する際の壁のひとつとなっているものである。 ∞ {f (x, yn (x))}∞ n=0 が f (x, y(x)) に一様収束することは {yn (x)}n=0 が y(x) に一様収束するこ とと f の連続性から容易に従うので、問題は {yn (x)}∞ n=0 の一様収束性 となるが、これは上記の 「{yn (x)}∞ n=0 が y(x) に (各点) 収束すること」の証明を少し書き換えれば証明出来る。先ずは、 補題 2 の不等式と |x − x0 | < r ′ から |yn+1 (x) − yn (x)| < 1 n+1 N Ln r′ n! (= Mn とおく) が |x − x0 | < r ′ を満たす全ての x に対して成り立つ。ところで右辺の Mn についての無限級数 ∑∞ n=0 Mn は収束する; 実際、補題 2 の証明と同様にして ∞ ∑ n=0 Mn = N r ′ ∞ ∑ ′ (Lr′ )n = N r′ eLr n! n=0 < +∞ となり、有限の値に収束することが分かる。したがって、所謂 ワイエルシュトラスの M 判定法 ∑∞ Weierstraß M -test*4 により無限級数 n=0 (yn+1 (x) − yn (x)) が一様収束することが従う。ところ ∑K が n=0 (yn+1 (x) − yn (x)) = yK+1 (x) − y0 であったので、無限級数 ∞ ∑ (yn+1 (x) − yn (x)) = lim n=0 K→∞ K ∑ (yn+1 (x) − yn (x)) n=0 ∞ が一様収束することは、関数列 {yK+1 (x) − y0 }∞ K=0 が一様収束すること、即ち {yn (x)}n=0 が一様 収束することに他ならない。 関数列の収束や無限級数の収束性判定法についての詳細は、例えば田島一郎『解析入門』(岩波書 店) の 第 6 章 などが分かり易いのではないかと思います。 *4 田島一郎『解析入門』(岩波書店) の 定理 55 などを参照して下さい。 ■ 連立微分方程式版 解の存在と一意性定理は、 連立微分方程式 に対しても全く同様に証明することが出来ます。ここ では連立微分方程式に対する解の存在と一意性定理の主張を紹介しましょう。 babababababababababababababababababab 定理 (連立微分方程式版の解の存在と一意性定理) f1 (x, y1 , y2 , . . . , yn ), f2 (x, , y2 , . . . , yn ), . . . . . . . . . , fn (x, y1 , y2 , . . . , yn ) を n + 1 個の変数 x, y1 , y2 , . . . , yn に関する 連続 関数とする。点 (x, y1◦ , . . . , yn◦ ) のまわりの超直方体領域 D = { (x, y1 , . . . , yn ) | |x − x◦ | ≤ r, |y1 − y1◦ | ≤ s, . . . , |yn − yn◦ | ≤ s } 上で定義された連立微分方程式 dy1 dx dy 2 dx dyn dx = f1 (x, y1 , y2 , . . . , yn ) = f2 (x, y1 , y2 , . . . , yn ) .. . · · · (∗) (x, y1 , y2 , . . . , yn ) ∈ D = fn (x, y1 , y2 , . . . , yn ) に対して以下の リプシッツの条件 Lipschitz’s condition が成り立つとする: 任意の整数 1 ≤ j ≤ n と D 内の 2 点 (x, Y1 , . . . , Yn ), (x, y1 , . . . , yn ) に対して |fj (x, Y1 , . . . , Yn ) − fj (x, y1 , . . . , yn )| ≤ L (|Y1 − y1 | + |Y2 − y2 | + . . . . . . + |Yn − yn |) が成り立つような正の実数 L が存在する このとき、初期条件 y1 (x◦ ) = y1◦ , y2 (x0 ) = y2◦ , . . . , yn (x0 ) = yn◦ を満たすような (∗) の解 が x ∈ (x◦ − r′ , x◦ + r′ ) の区間で 唯一つ 存在する。但し r′ = min{r, s } max1≤j≤n,(x,y1 ,...,yn ))∈D |fj (x, y1 , . . . , yn )| 証明は j = 1 の場合 (つまりこの参考資料で証明を紹介した場合) と本質的に同じです。未知関数 の数が増えている分途中に現れる式がかなり繁雑になりますが、この参考資料の証明と見比べながら 地道に計算してみると、存外あっけなく証明出来るのではないかと思います。興味のある方、チャレ ンジ精神旺盛な方は是非挑戦してみましょう。 連立微分方程式版の解の存在と一意性の定理は、次回 (斉次) 線形微分方程式の解の構造 を調べ る際に活躍します。
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