四季のたより(287)共存共栄の親心思う

四季のたより・春
3月11日
(287)/共存共栄の親心思う
けいちつ
啓蟄を過ぎ、暖かな日差しが注ぐ日が多くなってきた。ヤマアカガエルが産卵した卵塊
があちこちに見える。1卵塊の中に千個ほどの卵があり、まだ丸い黒い点のように見える
もの、卵が細長くのび始め卵割が進んでいるもの、それぞれ産卵日からの経過で形が違っ
ているがこの池の中だけでもものすごい数だ。
そっと見ていると、卵塊が大きく揺れ数匹のヤマアカガエルが卵塊の下から顔を出した。
春の光がまぶしいのか目を閉じたり開いたりしていた。これから産卵する親ガエルもいる
ことだろう。
こ
その時、ボートのオールを漕ぐようにゆっくりとマツモムシが現れた。このマツモムシ
は、体長 12㍉ほどカメムシの仲間で気泡を付着させ、それを利用し逆さになって潜水して
泳ぐことが出来る。
子どもの頃、同じカメムシの仲間のコミズムシ(別名フウセンムシ)をコップに入れ、
小さく切った色紙を沈めておくとこの虫が色紙につかまるたびに浮かぶという面白い遊び
をしたことや、マツモムシやコオイムシを手に持ち口針で刺されひどく痛かったことなど
を思い出す。
マツモムシは動物食で水面に落ちた虫やオタマジャクシなどを餌とする。ヤマアカガエ
ルは、環境の良いこの池で産卵するが生れたオタマジャクシには沢山の天敵がいることを
見越してたくさんの卵を産み、マツモムシは餌のたくさんあるこの池に住み着いたのだろ
う。共存共栄の為の親心に見えるが現実は厳しい社会だ。
ヤマアカガエルを見ながら泳ぐマツモムシ
(学芸員・吉田文雄) =毎週水曜日掲載