2015年4月23日

五 感で 感 じるシマ歩 き
鹿児島県奄美大島
大和村観光ガイドブック
無料
国直集落 フクギのトンネル
五感で感じるシマ歩き
目 次
イントロダクション
シマ歩き案内
大和村マップ
国 直
湯湾釜
津名久
思 勝
大和浜
大 棚
大金久
戸 円
名 音
志戸勘
今 里
集落紹介
1
3
15
夕日スポット案内
17
海と山に抱かれた
公民館は集落における
多目的ホール
5
コ ラ ム 祈りにより人々の絆を深める
ノロの世界観は奄美の誇り
礼讃の宝石
コ ラ ム 観光スポット
自然
お土産
移住者の声
各種情報
アクセス
果樹シーズン・行事・天候
商店・施設連絡先一覧
21
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23
25
27
28
30 29
シマ歩きを楽しむための
つの
心得
❶挨 拶はしっかり と
其の
集落民に出会ったら、驚かせないようゆっくりと
﹁ウガミンショウラン=こんにちは﹂と声をかけましょう。
田舎でもプライベートはあります。
写真を撮るときもしっかりと挨拶をしましょう。
❷ゴミはゴミ箱へ
其の
ゴミはきちんと持ち帰りましょう。
落ちてたゴミも持ち帰ってくれる、
あなたの気持ちが奄美群島を世界自然遺産登録へ一歩近づけます。
❸どこでも 安 全 運 転
其の
ゆっくり時間が流れる奄美大島では、
心に余裕をもちスピードを出さずゆっくり安全運転を心がけてください。
❹いつもニコニコ現 金 払い
其の
大和村の商店では、カード決済ができません。
お買い物をするときもガソリンを入れるときも現金払いでお願いします。
また、集落の行事などで急なお休みになることもあるので、
目的のお店・施設へ事前に確認しましょう。
ATMは名音郵便局と大和郵便局
︵思勝︶
に設置しています。
❺別れ際に﹁アリガッサマアリョウタ﹂
其の
﹁アリガッサマアリョウタ=ありがとうございます﹂
。
優しさに触れたとき、会話をしたとき、どんなときでも
﹁アリガッサマアリョウタ﹂でお別れしましょう。
海と山に抱かれた
礼 讃 の宝 石
海 に 浮 かぶ 青 緑の宝 石 、 奄 美 大 島 。
空 港 か ら 車 を 走 らせ 眼 に 映 る 、 開 け た 空 と 水 平 線 。
ふわんと 香 る 南 国の甘やか な 空 気 を 胸 に 名 瀬の街へ入 り 、
こず え
せいか ん
大 浜 海 浜 公 園の雄 大 な 眺 め の﹃ その先へ﹄、 大 和 村のはじ ま りで す 。
眩い光 に 煌 め く 山の濃 緑 、 梢 に 現 れる 精 悍 な 野 鳥 、
樹々から 垣 間 見 え る 、 山 と 海 に 抱 かれ た 静 か な 集 落 。
山 道のスロープ を 滑 らかに 下 り 、
め く るめ く 展 開 す る 東シナ 海の圧 倒 的 な 夕 焼 けの色 あいは 、 美 しい序 章で す 。
母 なる 海 に 感 動 し 、 振 り 返 る と 父 なる 山 が 背 後 から 見 守っている 。
ど ち ら も む せ か え る 程の命の気 配 。
いけい
ち
え
野 生 生 物の澄 んだ 瞳 にじっと 見つめられているよ う な 、
畏 敬の念 と 静 か な 感 謝のこころ 。 そ れは 人々の智 慧や 営 み 、
独 自の文 化 と な り 、 永 ら くこの土 地の血 液 と な り 巡っていま す 。
大 和 村 は 、 奄 美の宝 石 を ひ と し ず く 、
両 手で す くい上 げ た 様 な 厳 か な 感 動 を 携 えて 、 今 日 も 静 かに 輝いていま す 。
文 / 小田島 智美
奄美群島
奄美大島
大和村
喜界島
徳之島
沖永良部島
与論島
島ではなく シマ
奄美では集落のことをシマという。
シマの背後には神山と呼ばれる山があり、
シマの海のはるか彼方には、豊穣をもたらす神の住む国、ネリヤカナヤがあると信じられてきた。
山を越えれば方言が変わり、海を越えれば風景も変わる。
いつまでも変わることのないシマの人々の想いはシマ唄となり、文化となり後世へ伝えられてきた。
自然と寄り添い、敬い、恵みを頂く暮らし。小さなシマに息づく、大切な暮らし。
大事なものを積み重ねてきたシマがここにはあります。
大和村観光ガイドブック
3
く に な お
いつまでも、このまま
先は抜けるような青空、きらきら輝く青い海に
名瀬市街地を出発し、曲がりくねった山道を
すいすいと南へ向かって車を走らせる。 着いた
囲まれた大和村の入り口、国直集落だ。
」と出迎えてくれたのは、笑
「いらっしゃい。
顔が素敵な 国直育ちの中村 修さん。集落内を
案内してもらい、まず驚いたのは家々を取り囲
むように植えられ大きく育ったフクギの並木。
T
海からの強い風雨から家々を守り、火災時の延
【中村 修】
国直生まれ、国直育ち。
島の自然と文化を愛し、「暮らすよ
うに旅する観光」をコンセプトに
活 動 中。 N P O 法 人 A A S U
(タマス)を立ち上げ予定(2015
年2月現在申請中)。
国直集落はもちろん大和村全体の
の文化や行事に精通。
旅 行 中、 困 っ た と き に 訪 れ る と 何
でも応えてくれる。
M
焼を防ぐ為に数十年前に植えられたものが今で
も残っているのだという。集落内を歩き、出
会ったおばぁちゃんは 開口一番、
「ウニ食べら
んね?」
。思わずすぐに頷く私。着いた先は白い
砂浜が眩しい国直海岸。採りたてのウニをどう
ぞ、どうぞと勧められ、色々な話を聞く事がで
きた。国直海岸は奄美でも有名なウミガメの産
卵スポットで、5月〜7月の産卵時期になると、
集落全体でウミガメを見守ること。青年団の人
たちが農作業を手伝ってくれて、野菜を育てる
のが今では生き甲斐になっているということ。
日が暮れ始めると誰が合図したわけでもなく、
集落から人が海岸に集まりだし、沈む夕日を見
届けながら同じ時を過ごす。聞こえるのは、波
の音と、鳥の鳴き声と、人の笑う声だけ。奄美
の自然をゆっくりと感じる贅沢。大切にしたい
時間が国直集落には溢れていた。
4
人 口:119人
平均年齢:46.5歳
国 直
湯 湾 釜
ゆ わ ん が ま
人 口:10 3人
平均年齢:52.3歳
幸せの無人販売所
県道 号線をさらに南下すると、道沿いにポ
ツンと可愛らしい無人販売所がある。ここが湯
販売所に並べられていることだろう。
昔から水を大切にしてきた集落、湯湾釜。今
日もその大切な水から育った野菜たちが、無人
モレという名前になっていると言われている。
由来する「カシャ餅」が配られることからムチ
う言い伝えがあり、踊りの際には田んぼの泥に
水利が悪く田んぼの泥を投げて火を消したとい
ムチモレ踊りは集落が大火事に見舞われた当時、
実はこの集落、奄美でもここでしか見ること
ができない「ムチモレ踊り」という踊りがある。
としている湯湾釜集落。
往来があるものの、一歩集落に入るとひっそり
しそうに買って行く。無人販売所付近は、車の
だから、通りすがりの車が立ち寄っては皆、嬉
見ていて面白い。旬の野菜が百円で買えるもん
たり、作る人の人柄までなんだかわかるようで
り大きすぎたり、ちょっとたくさん詰め過ぎて
て湯湾釜産。いびつな形だったり、小さかった
たちの畑で作った野菜を棚に並べているから全
ぶことだってあるのだとか。集落の方達が自分
ル(にんにくの葉)やアオサ、時には果物が並
覗くと棚いっぱいの色とりどりの野菜たち。フ
湾釜集落の目印だ。車を停め、カーテンの中を
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【ムチモレ踊り】
ム チ モ レ = 餅 貰 い。 火 災 予 防 や 無
病息災を願って旧暦の 月 日に
行われる踊り。
トネヤを振り出しに全世帯を一軒
一軒周り、深夜まで踊り明かす。
踊 り 連 は、 男 女 問 わ ず、 浴 衣 姿 に
スカーフや風呂敷で顔を隠した子
供 や 青 年 の 踊 り 手 と、 三 味 線 を 弾
く 壮 年 の 歌 い 手、 太 鼓 を た た く 婦
人会の唄い手の3グループからな
り、 屋 敷 の 中 庭 や 玄 関 先 で 踊 る。
ス カ ー フ で 顔 を 隠 す の は、 火 事 で
顔にやけどをした事を表している。
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【カシャ餅】
上餅粉にヨモギを練り込み、かしゃ
の葉で包んだ奄美の特産品。
10
5
大和村観光ガイドブック
つ な ぐ
自然とこころ、つなぐ場所
トホ
沖合150m、大ダコのすみか「蛸ごもり」
、津
名久集落の入り口には一風変わった看板がある。
今よりずっと昔、沖合150mにある大きな穴に、
長さ mもある大ダコがいて道行く人をさらって
すこの場所にたくさんの人が訪れてきた理由がな
挨拶をくれる。自然を愛しみ、訪れる人の心を癒
く、人に出会えば「こんにちは」と優しい笑顔で
くるというのだ。海を見渡せばどこまでも広く青
にか覚え、今では満潮時に海の中から顔を出して
姿。釣りから帰ってくる船のエンジンをいつの間
に行くと観光客の手からエサを食べるウミガメの
てくれた。ちょっと不安になりながら、実際に港
近頃では、
「船のエンジン音を覚え、人に懐い
ているウミガメがいるんだよ」と集落の人が教え
には思わず笑みがこぼれるものばかり。
巣にひかかっていた」など、集落の人の話す内容
ある珍しいハブを捕まえた」
、
「大きな牛がクモの
こくて話が巧い。例えば、
「スコップの頭ほども
親しみを込めて「津名久ウーバ」と言われ、
人懐っ
はとてもユーモラスで面白い。他の集落の人から
たと言われている。そんな津名久集落に伝わる話
とから「津名久(つなぐ)
」と呼ばれるようになっ
かつて、ここは交易が盛んなシマで、遣唐使の
乗る船が奄美に来た際に船をつなぐ場所だったこ
いたという伝説が残っているのがこの場所だ。
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んとなくわかった気がした。
【蛸ごもりの看板】
【津名久ウーバ】
「 ウ ー バ 」 は、 大 和 村 の 方 言 で、「 話
を盛る」こと。
6
人 口:159人
平均年齢:51.5歳
津 名 久
思 勝
お ん が ち
人 口:138人
平均年齢:50.5歳
はじまりはここから
東シナ海に面する大和村の中で唯一、海に面
していない集落が思勝集落だ。ここに、奄美の
黒糖製造の始祖と言われる直川智(すなおかわ
ち)を祀った開饒神社(ひらとみじんじゃ)が
ある。今から約400年前琉球に渡航した直川
智は台風に遭い、中国の福建省に漂着。その地
でさとうきびの栽培と製糖技術を取得し、帰国
後、大和村の地に植え始めたのが奄美の糖業の
はじまりだと言われている。
甘いものが珍しかっ
た当時、黒糖の製法がこの島に持ち込まれたこ
とは大きな功績だったに違いない。今では製糖
に関わる多くの人が各地から訪れる場所になっ
ているという。
また、思勝集落には昔と変わらない製法でミ
キ作りを行う風習が残っている。ミキ(神酒)は
豊年祭などの神事には欠かせないお供え物で、サ
ツマイモや米、砂糖を混ぜて作る伝統的な飲み物
だ。長年受け継がれてきた手書きのレシピにはこ
う書いてあった。
「出来上がったミキは容器に入
れ、クワズイモの葉で蓋をし、左綱で翌朝まで置
く」
、
「豊年祭の当日の干支から数えてはねる(6
番目の)人が蓋をあける」
。豊年祭の早朝に行う
ミキの開封作業にもしきたりがあるのだ。
世代を越えて受け継がれるシマの誇り。その
思いこそが、この小さな集落をどこよりも美し
く輝かせているのではないだろうか。
【ミキ(神酒)】
奄 美 の ミ キ は、 昔 か ら 飲 ま れ て い
る 発 酵 飲 料。 以 前 は、 各 家 々 で 作
ら れ て い た。 ス ー パ ー や 集 落 内 の
商店で購入可能。
【はねる】
指折り数えた小指が6つ目にはね
か え る こ と か ら、 6 番 目 と い う 意
味。
【二又松】
開饒神社隣の高千穂神社境内に生
えている幹が大きく二つ分かれて
いる松。
この二つに割れている部分を跨ぐ
と、 恋 が 成 就 し 子 宝 に 恵 ま れ る と
いわれている。
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大和村観光ガイドブック
や ま と は ま
守り、守られて
木漏れ日が照らす山肌に、頂上から流れる水
がキラリと光る。ここは大和浜集落の人々が神
山として崇めている「滝川山(たきのこやま)
」だ。
滝川山には奄美でも珍しいオキナワウラジロ
ガシが群生している場所だ。板根と呼ばれる板
のような大きな根を張り、天に向かって高くそ
びえ、大きく手を広げたその姿に、思わず「集
落を守っているみたい」
と声を漏らした。聞くと、
古くから集落の人が斜面や山からの恵みの水を
守るため、大きな木を切らないように保全して
きたという。そのおかげで今では国指定の天然
記念物のオキナワウラジロガシの群生林となり
地を固め、土砂崩れなどの災害などから集落を
守っているといわれている。
この集落には高倉が集まった「群倉(ボ
また、
レグラ)
」と呼ばれる場所が残されている。高倉
は主に穀物を貯蔵するための倉庫で、風通しが
よく貯蔵物の保管に適し、ねずみの害を防ぐ為
に足掛かりをなくすなど趣向をこらした建物だ。
火事の災害を避ける為に、民家から離れて建て
られ川の近くや田畑の近くでかつてはたくさん
見られたようだ。
山を守り、水を守り、自然と共存して初めて
自分たちの生活が守られる。ここには大事なも
【郡倉 ボレグラ】
高倉の集まりのこと。
奄美の方言で「群れる」ことを「ボ
レル」と言う。
奄 美 の 高 倉 は、 釘 を 一 本 も 使 用 し
ていない。その柔軟な作りのため、
台風などの強風でも倒壊しにくい。
ま た、 火 災 時 は 貫 木 を 外 す と す ぐ
に分解できる仕組みになっている。
大和村の高倉の多くは屋根部分に
宮古崎の笹が使用されている。
右写真は昭和 年頃の群倉。
8
のを積み重ねながら、美しいシマを守り続ける
人々の想いが溢れている。
30
人 口:274人
平均年齢:47.9歳
大 和 浜
大 棚
お お だ な
人 口:265人
平均年齢:55.5歳
結ばれる絆
昔ながらの細く曲がりくねった道が多く、ま
るで迷路のような大棚集落。
ここに文房具、金物、食品に、釣り具など生
活に必要なものが全て揃う創立百周年を迎えた
空気感が漂い、和気あいあいとはしゃぐ元気な
「株式会社 大棚商店」がある。店内はレトロな
おばぁちゃんたち。
まって賑やかなんです。
」と話すのは大棚商店の
「いつも集落のおじいちゃん、おばぁちゃんが集
川下さん。
実は、数年前に閉店の危機があったものの、
今では「結の会」という支えあいの活動を通して、
集落の人がお互いにコニュニケーションをとれ
る場所として活用しているという。毎週木曜日
【曲がりくねった道】
奄 美 で は「 魔 物 は 真 っ 直 ぐ に し か
進む事ができない」と言われてい
る。 そ の 魔 物 か ら 暮 ら し を 守 る た
め、あえて曲がりくねった道を作っ
ていた。
大 棚 集 落 は そ の 面 影 が、 現 在 も 色
濃く残っている。
【豊年祭】
旧 暦 8 月 日 も し く は、 旧 暦 9 月
日に各集落で行われる五穀豊穣
を願う祭り。
豊年相撲や八月踊りが見物。
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には、豊富な種類の総菜が全て百円で購入でき
たり、お店に来られない集落の方へは配達をし
たり、依頼があれば庭の草木の手入れも行って
いるという。
お年寄りを大切にするように、ここ大棚集落
では先輩方が大切に受け継いできた文化や伝統
を途絶えさせないようにしている。それが八月
踊り保存会だ。今では豊年祭の踊りの際には百
名を超える老若男女が集まり祭りを盛り上げる
ほどになっている。地域の人に支えられ、地域
を支えていく仕組み。ここに、お店に来ていた
おばぁちゃんの長生きの秘訣を見た気がした。
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9
大和村観光ガイドブック
お お が ね く
アイノコ発祥の地
「アイノコ舟」は奄美ではなじみの深い舟だ。
夏の舟漕ぎ競争にも使われていると舟と聞けば
わかるかもしれない。実はこのアイノコ舟、大
金久集落が発祥の地なのだ。
安定性が高い反面、速
かつて、奄美大島でいは
たつ
度がなかなか出ない板付け舟が主流だった。一
方、沖縄では速度が出る反面、安定性が悪い「サ
バニ」という舟が主流だった。その当時、大金
久に住んでいた船大工がこの両者の良いところ
だけを取り入れて生み出した舟が「アイノコ」
として世に誕生したのだ。
そんな大金久集落では、最近「あいのこ会」
という新たな取り組みが始まっている。今まで
は、公民館が集落の人達の集う場所だったが、
もっと交流が生まれる場所を作りたいと婦人部
の方々が中心となって誰でも立ち寄れるような
場を作った。それが「寄らわん場」だ。夕暮れ
が近づくと人が集まり出し、宴がはじまり、ナ
ンコ遊びが始まる。
今では集落の外から人がやっ
てくるほど大盛況で、毎週日曜日のこの時間を
楽しみにしている人も多いという。今後は集落
でとれた野菜を販売したり、もっと工夫を凝ら
して観光客が気軽に立ち寄れる場を目指してい
る。先人たちが伝統的な舟を作ったこの場所で、
【アイノコ舟の舟漕ぎ大会】
【ナンコ】
昔から伝わる酒席の遊び。
2名がお互いに3本のナンコ珠(約
㎝ の 木 の 棒 ) を 後 ろ 手 に 隠 し、
片 手 に 何 本 か 持 っ て 出 し 合 い、 2
人が持っているナンコ珠の合計を
当て合う遊び。
10
今また、新たなコミュニティが生まれようとし
ている。
10
人 口:99人
平均年齢:55.1歳
大 金 久
戸 円
と え ん
人 口:133人
平均年齢:72.4歳
風のシマ
なびいたまま時が止まっ
こんもりとした山々、
てしまったかのような木々。家の塀は屋根にま
で届きそうなくらい高く、集落の人の話すボ
リュームは少し大きめ。そんな戸円集落は四季
折々の風を感じられる場所。
春の暖かい風は山の木々を新緑に染め、まば
ゆい夏の風は広く青い空を描く。秋風が吹きだ
すと作物の収穫時期を知らせ、冷たく強い冬の
風は白波のしぶきを集落まで運んでくる。目に
見えない風は、物のカタチを変え、人の暮らし
を変え、鮮やかな色となって集落を彩っていく。
また、秋の戸円集落は夕日のスポットとして
も有名だ。 月中旬頃になると海岸から鋭く突
きない景色を運んできてくれるのだ。
風のシマ、戸円集落。そこに吹く幸せの風は
集落を覆う雲をもぬぐい、他では見ることので
天の川が視界に収まりきれないくらいに広がる。
に、太陽が沈んだ後には満点の星が空に輝き、
ることのない勇気をもらえる気さえする。さら
るのだ。その神秘的な光は、どんな力にも負け
ともったような幻想的な景色を見ることができ
き出した岩に太陽がかかり、ローソクの灯りが
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【ローソク岩の夕陽】
【サーフィンスポット】
風 の 強 い 戸 円 集 落 は、 絶 好 の サ ー
フ ィ ン ス ポ ッ ト。 干 潮 時 に で き る
ポイント。
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大和村観光ガイドブック
な お ん
人との出会いの場
出来る人が、出来る時に、出来ることをする。
そんな看板を掲げて活動するのは、名音集落の
毎週土曜日、お昼 時にオープンするこの場所
「てぃだの会」だ。
も繰り返し、人との出会いを大切にする名音集
が行われる。昔から伝わる大切な行事を何十年
の収穫を祝い、集落の無病息災に感謝する相撲
その後は公民館前の土俵で、今年一年の農作物
声で集落に叫んだら祭りの始まりの合図となる。
豊年祭もこの場所から始まり青年団の代表が
集落に向って「スモー・スモー・スモー」と大
直し・願立て)
」が行われる神聖な場所だ。
しがよく、
ノロの祭祀「ガンノーシ・ガンダテ(願
てみよう。ここは、集落を一望できるほど見渡
心もお腹も満たされ、楽しいひと時を過ごし
たら高台にある「テラ」と呼ばれる場所に登っ
転車で通う人もいるほどだ。
季節によっては近くの福元盆地でとれたおい
しいお芋や果物などが楽しめ、隣のシマから自
めることもあって、沢山の人が集まってくる。
ワンコインで楽しい会話と美味しいお茶が楽し
んからコーヒーショップと呼ばれて親しまれ、
は集落の方々の憩いの場所。近所のおばあちゃ
2
落。この集落にはたくさんの
「大切」
が折り重なっ
ている。
【ガンノーシ・ガンダテ】
集落の無事と豊作を願って前年に
立てた願を感謝の気持ちを込めて
解 き、 さ ら に 一 年 の 安 全 と 豊 穣 を
願って願を立てる儀式のことで毎
年旧暦9月9日に行われる。
12
人 口:209人
平均年齢:50.8歳
名 音
志 戸 勘
し ど か ん
人 口:010人
平均年齢:72.4歳
大切な暮らし
大和村 集落の中で、一番小さな志戸勘集落。
そこには言葉でうまく伝えきれないものが本当
ここには、私たちが忘れかけている大切な暮
らし方がある。
手を取り合い、助け合いながら生きる暮らし。
当たり前のようで、なかなか出来ないこと。
潮が引けば漁に出て、果実が実れば収穫する。
自然に寄り添い、恵みをいただく暮らし。
野に咲く草花も、道ばたに転がる石さえも特
別な存在に思えてしまうから不思議だ。
りかけてくる気さえする。
ここでは、目に見えるものも、目に見えない
ものも、すべての力がむきだしで心の奥底に語
を伸ばしてしまった。
と張りつめた空気はどこか神秘的で思わず背筋
澄んだ空気に、やさしく照らす陽の光。ピーン
小さな土俵に、大切に守られてきたトネヤ、
それらを覆い被さるように育つガジュマルの樹。
にたくさんある。
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【トネヤ】
ノロの住居。ノロ(祝女)は女司祭。
ノロ行事にも使用される。
【志戸勘海岸】
冬 場 の 大 潮 の 干 潮 時 に は、 沖 合 の
リ ー フ で「 イ ザ リ 」 と い う 伝 統 的
な潮干狩りできる海岸。
貝やタコなど、普段は海底にいて、
なかなか捕まえることのできない
獲 物 を、 拾 う よ う に し て 捕 ま え る
ことができる。
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大和村観光ガイドブック
い ま ざ と
シマを見守り続ける島
たちがみ
今里集落は大和村の最西端、急峻な山々に囲
まれ、沖合には集落のシンボル的存在の今里
立神が佇んでいる。
立神はネリヤカナヤから来た神様が最初に立
ち寄る場所として、奄美では古くから信仰の対
象とされてきた島だ。集落もこころなしか立神
に向かって弧を描くように形成され、ほとんど
の通りから立神が見渡せるようになっているの
も興味深い。奄美でも一際大きな立神があるこ
の地には、
「オムケ・オホーリ」というノロの祭
祀がある。この祭祀は海の彼方にあるとされる
神の国「ネリヤ」から神様をお迎えし、集落に
神様を招き入れることにより人々の健康と集落
の平和を祈願する神事で今でも大切に受け継が
れている。
今里集落は大和村で初めて鰹漁業を行っ
また、
たという歴史があり、明治から昭和へと漁業の
町として栄えていた場所でもある。時代の流れ
により今では鰹漁業は行っていないが、かつて
は多くの帆船が大海原へ船を進め、命がけの漁
をこなしていた。
彼らにとって故郷の立神を見たときはどれだ
け、ホッとしたことだろうか。
【立神】
大 和 村 に 限 ら ず、 奄 美 各 地 に 点 在
する信仰の対象となる小島。
年頃の鰹漁漁師】
【ノロ】
琉 球 王 国 時 代 に、 王 府 か ら 任 命 を
受 け た 女 司 祭。 世 襲 制 で 集 落 の 祭
祀をとりしきっている。
【昭和
14
昔も今も、これからもずっと。今里集落の沖
合に佇む立神は変わることなく人々を見守り続
け、故郷のシンボルとして輝き続けるだろう。
30
人 口:126人
平均年齢:47.8歳
今 里
分
奄美市
名瀬から
約30分
宮古崎遊歩道
国直サンセットパーク
や まと は ま
くに な お
国直
5分
大和浜
奄美野生生物
保護センター
大和まほろば館
群倉
おおだな
大棚
4分
おんがち
思勝
ゆわんがま
1分
湯湾釜
つ
な
ぐ
3分
津名久
13分
マテリヤの滝
リス
へ
0分
国直集落からの車での移動時間
ガソリン
トイレ
シャワー
病院
嶺山公園
お お が ねく
大金久
戸円ふれあいパーク
15分
徳浜の断崖
名音漁港
なおん
名音
いまざと
37分
戸円
24分
今里漁港
今里
とえ ん
しど か ん
志戸勘
29分
34分
奄美フォレストポリ
湯湾岳
宇検村へ
夕陽スポット
宇検村へ
# 巡るぐるぐる大和村 # 国直
# 巡るぐるぐる大
和村 # 津名久
釜
# 巡るぐるぐる大和村 # 湯湾
# 思勝
# 巡るぐるぐる大和村 !!
集落ごとに違う雰囲気が楽しめる大和村。
一歩集落に入ると面白い発見がたくさん
!!
あなたの発見を︵#︶ハッシュタグをつけて
インスタグラム︵SNS︶などに投稿しよう
村 # 大和浜
# 巡るぐるぐる大和
何を投稿するかはあなたの自由。
浜
ハッシュタグは﹃#巡るぐるぐる大和村﹄
釜
# 巡るぐるぐる大和村 # 大和
みんなで素敵な大和村を共有しよう♪
# 巡るぐるぐる大和村 # 湯湾
大和村観光ガイドブック
17
# 巡るぐるぐる大和村 # 戸円
# 巡るぐるぐる大和村 # 大棚
勘
# 巡るぐるぐる大和村 # 志戸
# 巡るぐるぐる大和村 # 名音
# 巡るぐるぐる大和村 # 大金久
# 巡るぐるぐる大和村 # 今里
# 巡るぐるぐる大和村 # 名音
18
# 巡るぐるぐる大和村 # 今里
# 巡るぐるぐる大和村 # 戸円
# 巡るぐるぐる大和村 # 戸円
大和村ガイドブック
19
月
月
月
見頃時期
5 月∼
5 月∼
9月∼
5 月∼ 7 月
月∼ 月
7月∼ 9月
7月∼ 8月
スポット
国直
サンセットパーク
国直海岸
嶺山公園
戸円
ふれあいパーク
名音海岸
今里漁港
国直サンセットパーク
淡 朱 色に輝 き 変 化 す る 夕 空 を 、
海 に 入 り な がら 見ていた 。
視 界 は 刻一刻 と 変 化 す る 色 彩で 満 た さ れ 、
身 体 は 温 か な 海 水 に 浮 かんでいた 。
も し か して 、 胎 内 にいた 時 に 見ていた 、
母のお 腹の内 側 から 感 じていた 世 界のいろを
思 わせるから なのか な 、 と 思 う 。
心 地 よい羊 水のよ う な 母 な る 海 に 身 体 を 委 ねて 、
優 しい気 持 ち が 広 がっていく 。
金 色の太 陽の沈 みゆ く 輝 き は 、
人も鳥も虫も草花も、
ま た 、 仲 間 と 楽 し く 笑っていて も 、
一人 淋 し く 泣いていて も 、
全て を 等 し く 照 ら して 、
今 日 という 日 を 明 日に 送 り 届 けて く れる 。
夕 陽 の 側 か ら 見 てみ た ら 、
子 ども も 大 人 も 、 村 人 も 旅 人 も 、
こち ら を 向 く 全ての顔 に
去 り 際の煌 め き と 励 ま し を 与 えている 。
大いなる 母 に 感 謝の気 持 ち を 届 け るよ う に 、
今 日の一日 よ 、 ど う も あ り が と う 。
振 り 返 る と 月 が 出ていた 。
写真提供 / 里村 強志
文 / 小田島 智美
20
10
10
10
11
嶺山公園
戸円ローソク岩(10月中旬)
戸円ふれあいパーク
10
ふと 、 夕 陽 が 人々のこころを 掴 んで 離 さ ないのは 、
子どもも大人も、
村人も旅人も。
同じ夕陽を見る。
大切な集落行事の会場、
子どもの遊び場、大人の憩いの場
公民館は集落における
多目的ホール
大和村観光ガイドブック
21
式だという。昼は男たちによる相撲が奉納され、夜は土
リダシ﹂と呼ばれる行列は、神様を公民館に案内する儀
観察会、体験観光ツアー、ミュージックフェス、テレビ取材
も国直公民館の特徴だろう。ウォーキング大会やウミガメ
また、イベントの開催による村外からの利用者が多いの
公 民 館の思い出
俵を囲んで男女歌掛けによる八月踊りを踊る。子どもか
等々。2014年には景観の美しさからスイス映画﹁ビッ
*3
グアンドリトル﹂のロケも敢行されエキストラや見物人な
*2
﹁はなまる﹂、﹁ジンパッペ﹂、﹁天国地獄﹂。僕たちが子ど
的にも経済的にも集落を運営するための一大イベントだ。
らお年 寄りまで集 落 民 全 員が参 加 する豊 年 祭は、精 神
*1
屋 上に秘 密 基 地を作り、土俵に穴を掘り 大 人に叱られ
ど多くの人々が国直に訪れた。
もの頃の遊び場 といえば公 民 館 前 広 場だった。公 民 館の
たのも今となっては懐かしい思い出。面倒見のいい兄貴分
から公民館や土俵ならではのいろんな遊びを教わった。僕
たちにとって公民館は最高のプレイグランド︵遊び場︶だっ
海 風が人々を公 民 館へと招 き 入れる。夏になると、ウッ
海 岸 沿いに建つ国 直 公 民 館は、アダンの木 陰を抜ける
趣が異なる。
夕日だが﹁今日の夕日は格別
民館前に陣取る僕らを赤く染める。毎日見ているはずの
ちがビール片手に集まってくる。東シナ海に沈む夕日は公
通 う。夕 方になると示し合わせたようにかつての悪 童た
歳を重ね、中年となった僕らは今も足しげく公民館に
た。
奄美大島の集落は三方を山に囲まれ、背後の山︵カミ
ドデッキでまどろむ老人や、即興の卓球台でピンポンに興
せる。あたりが暗くなるころにはビールは焼酎へと変わり
公 民 館 に 集 う 人々
古 く から 集 落 運 営の中 核 を な して き た 公 民 館 だが、 大 人 た ちの
国直集落︵村上恵子区長︶における公民館の利用は少々 プレイ グラウンド
ヤマ︶から泉 ↓ 神 道 ↓ 広 場 ↓ 浜 ↓ 海へと神 聖な空
じる若者、夏休みには自習室さながらに宿題に勤しむ子
シマウタが始まる。
現代における公民館の最大の役割といえば秋に行われ
は集落の国会議事堂だった。
重要事項はすべてジョーカイで決められた。いわば公民館
ジョーカイ︵集落常会︶は最高意思決定機関で、集落の
した緩やかな自治組織をなしていた。公民館で行われる
公民館が集会所と呼ばれていた頃、集落は区長を中心と
中に私たちが必要とする情報があるんでんですよ。日常
公民館に勢ぞろいする。﹁ご飯を食べながら交わす会話の
ンランチが好 評で、昼 食 時には子どもからお年 寄りまで
室や特産品づくりのほか、100円という破格のワンコイ
会 長︶による支 えあい活 動 も 活 発だ。定 期 的な健 康 教
また、最近は、地域おこし団体﹁莢の会﹂︵晨原政代
民館の明かりは国直集落の夏の風物詩だ。
に集 まり 深 夜 までミーティングが続 く。煌々とともる公
公民館はあのころと変わらぬ僕らのプレイグランドだ。
聖 なる空 間
間が連なる。神が降り、海へと向かう聖なる道の中心が
伝統の舟漕ぎ競争の練習が始まると毎晩のように公民館
どもたちが集う。中でも一番の利用者は青壮年団だろう。
る豊年祭の祭場だ。﹁十五夜豊年祭﹂︵旧暦八月十五日︶
﹂と夕日談議に花を咲か
…
公民館だ。
ミャー︵広場︶やトネヤ︵祭祀を行う家︶であり現在の
や﹁クガツクンチ﹂︵旧 暦 九月 九日︶は、一年 間の集 落の
のたわいもない会話こそ地域支え合いです。﹂と晨原会長
文・写真 / 中村 修
1
※∼ 3
※ 全て奄美大島に伝わる児童遊戯
無 病 息 災を神に祈り 捧 げる祭り。祭りの当日、力 士た
は笑顔で語ってくれた。至極納得だ。
あさはら まさよ
ちがトネヤや泉から道を清めながら勢いよく練り歩く﹁フ
22
受け継がれる心
祈りにより人々の絆を深める
ノロの世界観は奄美の誇り
大和村観光ガイドブック
23
ロの神祭りだ。
る﹁オムケ・オホーリ︵御迎祭・御送祭︶﹂と呼ばれるノ
ナヤから神様をお迎えし、旧暦四月最初の壬にお送りす
旧暦二月最初の癸に、海の彼方にある楽土、ネリヤカ
えるノロの姿は衝撃的で、
あまりの神々しさにブンノケ︵霊
しかし、たった一人 神 棚に向かい、静かにカミグチを唱
浜での神事も健康上の理由から途絶えていた。
トネヤでの神事は以前のように盛大に行うこともなく、
みずのと
奄 美 大 島の年 中 行 事は稲 作を中 心 とした農 耕 文 化に
みずのえ
起 源 を発し、独 自の発 展 を遂 げてきた。年 中 行 事の中
神々は、オムケ風 と呼ばれる北 西 風に乗って島に訪れ、
年 中 行 事 とノロ神
心 的 役 割を果たしてきたのはノロと呼ばれる女 性たちだ。
オホーリ風と呼ばれる南風に乗って帰っていくという。人々
バマモテ タボレ︵集 落をお守り 下さい︶﹂のカミグチのと
ノロの祈りは個人や家族のために行うのではない。﹁シマ
いのり
感︶を感じながらシャッターを押した。
ノロは琉球王国から任命を受けた祭司集団。為政者の
和と安泰がもたらされると信じてきた。
は、神様を集落の中に招き入れることにより、集落の平
いせいしゃ
支配下で政治経済的な勢力を保ち、宗教的、精神的な
ト ネ ヤでの神 事
象徴であることからその権威はむしろ役人以上であったと
思われる。
奄美には姉妹の霊が兄弟を守る
﹁オナリ神信仰﹂
があり、
ノロたちが祭祀を執り行う祭場をトネヤという。トネ
祖、自然に感謝を込め、無心に祈る彼女らの姿に心を打
中心的な行動になりがちな現代社会において、地域や先
崇めてきた。
ヤは、グジヌシと呼ばれる男 性 世 話 役の住 居であること
たれた。そして、
ノロによって守られている今里集落にはきっ
おり 集 落の平 和 を願 う 無 償の行 為だ。ともすれば自 己
ノロ祭祀は生活様式の変化や継承の困難さから奄美全
が多いが、継承上の理由から集落が専用の館を建てるこ
祈りにより 人々の絆を深めるノロの世 界 観は奄 美の誇
とネリヤカナヤから神が訪れるに違いないと感じた。
人々は集落の平和を祈り続ける彼女らを生き神様として
域で消 滅に向かいつつあるが、大 和 村 今 里 集 落では風 前
ともある。今里にある二つのトネヤは、いずれも三坪ほど
りだろう。伝承に苦心するオムケ・オホーリだが、ノロた
で神棚があるだけの簡素な建物だ。
オムケ当日、トネヤを訪ねるとカミギン︵木綿の白衣︶
ちの祈りがいつまでも続くことを願って止まない。
らナンバーワンの存在感だろう。
を唱え、一心不乱に祈るノロの姿はナハヌユ︵琉球統治期︶
静かに祈る。カミオーギ︵神扇︶をかざし、
カミグチ︵祝詞︶
文・写真 / 中村 修
を身にまとい、白鉢巻きを締めたノロが神棚に向かっていた。
の灯とはいえ現在もなお受け継がれている。
オムケ ・ オ ホーリ
﹁トートガナシ キュウヤ ニガツィヌ オムケビ ダリョン・・・
掌を合わせ、かすかな声でカミグチを唱 える。どうやら、
今 里 集 落は大 和 村の西端に位 置 する小さな集 落。以
口減少に悩む過疎の集落だ。
前の一年間を安全に過ごすことができた礼を述べ、昨年の
︵トートガナシ 今日は二月のオムケの日です・・・︶﹂ノロは
沖合に鎮座する立神岩は集落の守り神として信仰の対
伝え聞いたように激しく銅鑼を打ち鳴らすことはなく
オホーリに立てた願をほどいているようだ。
前はカツオ漁で活況を呈したと聞くが、現在は急激な人
象 とされる。贔 屓 目 もあるが、奄 美 大 島に数 多 く ある
そんな今 里 立 神 を依 り 代に神々を招 き 入れる神 事が
から変わることのない現代の﹁オナリ神﹂だった。
ひい き め
立神伝説の中でも今里立神は、スケールや風貌、由来か
ある。
24
観光スポット
マテリヤの滝
毎週月曜日※月曜日が祝祭日の場合は火曜日が定休 / 年末年始
住
所
〒894-3212 鹿児島県大島郡大和村大字名音 1476
電
話
0997-58-3166
奄 美 大 島の最 高 峰・湯 湾 岳
の麓に広がり、山林と森から
公園フォレストポリス。
なる 大 自 然に囲 まれた 森 林
沿いの道が整備されていなかっ
そこには、現在のように海岸
中 で 足 を 休 め、疲 れを 癒 さ
たこ ろ、旅 人 が 山 越 え の 途
してきたマテリヤの滝があり
滝の上には空が広がり、滝壺
ます。
は太陽の光で美しく照り輝い
ていてなんとも神秘的です。
フォレストポリスには、バンガ
設もあり、季節を問わずバー
ローやキャンプ場 など宿 泊 施
奄 美 の 大 自 然 を 肌 で 感 じる
日
館
休
9:00 ∼ 18:00
(宿泊は 15 時 ∼ 翌日 10 時)
開 館 時 間
ベキューを楽しめます。
ことができる公園です。
奄美フォレストポリス
公園内は「ふれあいゾーン」、
「水辺のゾーン」、
「渓流ゾーン」の3つのゾーンからなり、
森の中の自然体験学習やスポーツ合宿など自然とのふれあいが楽しめるキャンプ場も整
備されています。お昼は食堂でお食事もできます。
25
大和村観光ガイドブック
みやこざき
宮古崎
無
国直集落に入る手前
駐車場から岬までは徒歩
有
20
分
み ね や まこ う え ん
嶺山公園
岬から東シナ海を一望できる。岬全体に生い茂るリュウキュウササ
の風になびく音がとても神秘的。日本でここでしか見ることができな
い風景を体感できる。
有
大和浜集落の裏山にある砂防ダム横の階段から徒歩約10分
有
無
展望台からの眺めは圧巻。晴れた日には小宝島を見ることができる。
壇之浦の戦いで敗れた平家の落人が奄美に逃避し、源氏の追討
から逃れるため、嶺山の山頂に見張番所を設けたと言われている。
と く は ま だ ん がい
徳浜断崖
大和浜集落の神木として、集落民に大切に守られて大樹。奄美大島が北限
域であるオキナワウラジロガシの自然林として学術的価値も高い。
無
名音トンネル入口付近
無
高さ約 172m の断崖。800年程前の大地震でできたと言われる。
海との組み合わせは迫力満点。
ぼれぐら
郡 倉
無
26
大和浜集落から大棚集落に
向かう県道右手に隣接
無
先人たちの生活の知恵から生まれた高倉(収穫した穀物等を貯蔵す
る倉)の集合体。使用されていた当時のままの姿で保存されている。
ゆわんだけ
湯湾岳
フォレストポリスから車で約20 分 駐車場から頂上まで徒歩 10 分
有
無
標高 694.4m 奄美最高峰の湯湾岳。
奄美の森の深さと大自然を体感することができる。
大金久集落を過ぎ県道右手
有
国指定天然記念物
オキナワウラジロガシ
自 然
古い時代に接合、隔離を繰り返し孤島化して、一度も海没しなかった奄美大島。
そのため動植物たちは独自に進化を遂げ、極めて貴重な固有種が多く生息しています。
『東洋のガラパゴス』
とも表現される奄美大島では、いたるところで『ここだけの出会い・体験』が待っています。
国指定天然記念物
昼行性
国指定天然記念物・鹿児島県 県鳥
昼行性
オーストンオオアカゲラ
体の上面はほぼ全体が黒色で、オスのみ頭の上側が赤くなっている。キツツキ
の仲間で、繁殖期にはくちばしで連続的に樹の幹をつついて音を出すドラミン
グという行動がよく見られる。体長約30cm。
ルリカケス
瑠璃色と茶色の美しい配色の羽根。
鳴き声は見た目とは裏腹にギャーギャーと騒がしい。
体長約38cm。
生息地 山地のよく茂った森林内 奄美大島《固有種》
生息地 山地のよく茂った森林内やその周辺の農地
奄美大島、加計呂麻島、請島《固有種》
ハブ
夜行性
奄美で昔から恐れられている毒ヘビ。
奄美では森の守り神として言い伝えら
れている。暖かくなると活動が活発に
なるので山地に入る際には十分な注
意が必要。体長最大約240cm。
生息地 森林・草原・水辺・農地
奄美群島
沖縄本島周辺《固有種》
国内希少野生動植物種
夜行性
アマミヤマシギ
主に夜間に活動、昼間は林内の枝上で
休息し、日没から活発に動き回る。
人を見てもあまり恐れず、近づいても飛
ぶことなく走って藪内に隠れることが多
い。体長約36cm。
国指定天然記念物・国内希少野生動植物種
昼行性
アカヒゲ
体は小さいが、とても大きく美しい声で鳴く。
体長約14cm。
生息地 山地の薄暗い林
奄美群島及び沖縄諸島《固有種》
生息地 渓谷や渓流の周辺
奄美群島《固有種》
県指定天然記念物
夜行性
アマミイシカワガエル
国指定特別天然記念物・国内希少野生動植物種
背中の緑色の地に金色の斑点模様は、
『日本一美しい』と言われている大型のカエル。
体長約8.8 ∼ 11.7cm。
夜行性
アマミノクロウサギ
ずんぐりむっくりした体つき、短い耳、短い足、そして長く伸びた足のツメなど
原始的な姿を残していることから「生きた化石」と呼ばれている。島民もなか
なか出会うことがない。体長約42 ∼51cm。
生息地 山地を流れる渓流の周辺
奄美大島《固有種》
生息地 山地や海岸の斜面 奄美大島・徳之島《固有種》
イラスト © 島ノコタチ アートワークス
環境省
奄美野生生物保護センター
入館料
無料
奄美群島の生物や自然を保護するために設立された環境省の施設。希少な野生生物に関
する調査・研究。さらに「奄美・琉球」の世界自然遺産登録に向けた取り組みなどを総
合的に行う。奄美群島固有の動物の標本や映像で奄美大島の自然を感じることができる。
開 館 時 間
休
写真提供:環境省奄美自然保護官事務所
館
9:30 ∼ 16:30
日
毎週月曜日 ※祝日を除く / 年末年始(12 月 29 日∼1 月 3 日)
住
所
〒894-3104 鹿児島県大島郡大和村思勝字腰ノ畑551番
電
話
0997-55-8620
大和村観光ガイドブック
27
お土産
大和村の特産品「すもも」
「たんかん」を原材料とした加工品を中心に販売。
その商品を企画・生産・販売しているのは、大和村の元気なおばさま達。
地元農家が直接持ち込む季節野菜も販売しており安価で購入することができます。
気軽に地元の方々とのコミュニケーションがとれ、
『果樹の村 大和村』の食を満喫できる施設です。
いもりんしょれー!
すもも
って、
私たちが作
す!
販売してま
たんかん
収穫時期
5月 ∼ 6月
別名『奄美プラム』
。ガラリ種生産量日本一の大和
村のすももは、皇室献上の栄誉を賜った名産品。
本州産のものと比べるとやや小粒だが、熟すと果皮
もしなやかになり、独特な甘い渋みがなんとも美味。
果樹の村
収穫時期
2月 ∼ 3月
「ポンカン」と『オレンジ」の自然交配で出来たとい
われている柑橘果物。普通のミカンに比べると、見
た目も大きく、糖度が高く甘くて濃厚な味わいが特
徴的。大和村福元盆地産のたんかんは、島内でも
なかなか流通しない貴重なたんかん。
大和まほろば館
加工食品、地場産野菜の他にも地元支え合いグル−プ手作りによる縫合品・地元原産の
クマタケランを使用した自然派コスメなども購入することができる。夏場は「すもも
ジュース」「たんかんジュース」をシロップ代わりに使用したかき氷がおすすめ。
会 館 時 間
休
28
館
8:30 ∼ 17:00(夏期 7月 ∼ 8月 8:30 ∼ 18:00)
日
年末年始
住
所
〒894-3106 鹿児島県大島群大和村大棚 49 番地
電
話
0997-57-2980
移住者の声 「大和村に住んでみたい」「大和村で仕事をしてみたい」という考えが、ふと頭にうかんだあなた。
そんなあなたへ先輩移住者からのアドバイス。
白石 聡
在村歴4年 戸円集落在住
1976年生まれ 大阪府出身
マングースバスターズとして勤務しながら、
集落の壮年団長としても活躍中。
移住のキッカケは?
子どもを育てるのに良い環境だから。
嫁が家族で住む場所を探して
日本中を旅した中で決めました。
お仕事はどうやって決めましたか?
先ず住む事を決めて、それから縁あって、
今の仕事をはじめました。
集落の生活はどうですか?
都会とは真逆ですね。
都会では子どもがはしゃいでると煩わしがられてたけど、
ここでは元気が出るって喜んでもらえます︵笑︶
実際に住んでみて困った事は?
集落の色んな仕事を引き受け過ぎて、
楽しいけどちょっと大変な時もあります。
お休みの日は何をしていますか?
今は畑を見に行ったり、鶏や犬の世話をしたり、
海に潜って魚を獲ったりしてます。
大和村の好きなトコロは?
戸円集落入り口の坂道。
帰って来たって思えてホッとします。
︻移住を希望する方へのアドバイス︼
住むのであれば、面倒くさがらずに、
集落の人の中に飛び込むと面白いですよ。
色んな事が繋がっていきます。
29
大和村観光ガイドブック
勝間田 さとみ
在村歴7年 思勝集落在住
1984年生まれ 千葉県市出身
奄美野生生物保護センターを経て、現在は大和村役場勤務。
大和村連合青年団にも所属し活躍中。
移住のキッカケは?
野生生物保護センターへの就職が決まって
最初は名瀬から通ってたんですけど、
集落行事に参加するうちに、ここに住もうと思いました。
就職が決まるまで奄美に来た事は?
学生時代にアマミノクロウサギに会いに。
人が住んでる場所のすぐ側で希少な動植物に
会える事が凄いなと思いました。
集落の生活はどうですか?
隣近所の人と気軽に話が出来るので安心感があります。
﹃みんな知ってる﹄そこが嫌な人は嫌なのかもしれないですけど。
実際に住んでみて困った事は?
ホントに、あんまり無いんですよね︵笑 。)
買い物も、野菜の無人販売所とかあるし、
事足りるなーと思いました。車があれば街にも行けるし。
お休みの日は何をしていますか?
ランニング。
空気も良いし、思い切り走れる環境です。
大和村の好きなトコロは?
湯湾岳。奄美で一番高い山だからか、
登ると気持ちがスッとします。
よく登って植物を見たり、写真を撮ったりしてます。
︻移住を希望する方へのアドバイス︼
私は集落の運動会に誘われた事が縁で、
それから住む家などがトントン拍子に決まりました。
集落の方々とコミュニケーションをとる事が、
大事なんじゃないかなと思います。
0997-57-2111
午前8時30分 ∼ 午後 5時15分
〒894-3192 鹿児島県大島郡大和村大和浜100
電 話
受付時間
住 所
大和村役場 総務企画課
移住担当窓口
Q.
Q.
Q.
Q.
Q.
Q.
Q.
Q.
Q.
Q.
Q.
Q.
アクセス
飛行機
フェリ ー
バ ニラエア
成田空港(約165分)
琉 球エクスプレス(マルエーフェリー)
日本 航 空
クイーンコーラル8(マリックスライン)
日本 航 空
大 阪 から(約32時間)
羽田空港(約150分)
伊丹空港(約110分)
クイーンコーラル(マリックスライン)
日本 エアコミューター
フェリー波 之 上(マルエーフェリー)
福岡空港(約85分)
フェリーあけぼの(マルエーフェリー)
鹿 児島 から(約11時間)
日本 エアコミューター
鹿児島空港(約50分)
フェリーきかい(奄 美 海 運)
フェリーあまみ(奄 美 海 運)
琉 球 エアーコミューター
鹿 児島 から(約13時間40分)
(約65分)
沖縄那覇空港
奄美空港
名瀬新港●
バス
●奄美空港
レンタカー
タクシー
約50 分
奄美市名瀬
バス
レンタカー
タクシー
約35 分
大和村
2分
国 直
1分
湯湾釜
1分
津名久
8分
思 勝
2分
大和浜
9分
大 棚
5分
大金久
5分
戸 円
30
名 音
志戸勘
今 里
3分
1分
イベント情報
1月
ス
モ
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月 11 月 12 月
モ
マ ン ゴ ー
タ ン カ ン
●村民体育大会
10月中
大和村イベント
●まほろば大和ウォーキング大会
1月最終日曜日
集落行事
●正月祝い
●セックノヨエ・フナヨエ
●ナンカンゼック
●サンガツセック
ひらとみ朝市●
ひらとみ祭り●
8月最終土曜日 ●宮古崎つつじウォーク
3月第2日曜日
●ゴガツセック
●七夕(旧暦)
●お盆(旧暦)
●ガンノーシ・ガンタテ
●ドゥンガ
ムチモレ踊り●
●山の神祭り
十五夜豊年祭●
アラセツ●
シバサシ●
キトバレ踊り●
クガツクンチ●
平均気温・平均水温
平均気温
平均水温
27℃
24℃
21℃
20℃
21℃
22℃
20℃
15℃
15℃
23℃
26℃
29℃
29℃
28℃
28℃
29℃
28℃
27℃
24℃
24℃
23℃
20℃
16℃
17℃
※大和村イベント・集落行事の詳しい日程は、大和村役場ホームページ内〔イベント情報〕でご確認ください。 https://www.vill.yamato.lg.jp/
大和村観光ガイドブック
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施設情報
名 称
電 話
営業時間
定休日
商 店
浜井商店(国直)
元田商店(湯湾釜)
林商店 (津名久)
和泉商店(思勝)
畑島商店(大和浜)
浜崎商店(大和浜)
大棚商店(大棚)
0997- 57-2553
0997- 57-2505
0997- 57-2250
0997- 57-2125
0997- 57-2430
0997- 57-2007
0997- 57-2002
8:30∼21:00
7:00∼21:00
7:00∼21:00
7:00∼19:00
7:00∼19:00
7:00∼21:00
7:30∼12:30 15:00∼19:00
不定休
不定休
不定休
不定休
不定休
不定休
1月1日∼3日
窪山商店(大棚)
篠原商店(戸円)
戸内商店(戸円)
和田商店(名音)
園田商店(名音)
0997- 57-2845
0997- 58 - 3067
0997- 58 - 3068
0997- 58 - 3018
0997- 58 - 3006
7:00∼19:00
6:30∼19:00
7:00∼19:00
7:00∼21:00
7:00∼19:00
不定休
無休
不定休
1月1日∼3日
不定休
お食事処
喫茶工房てるぼーず(国直)
八方園(大和浜)
ウェスターナーズカフェ(戸円)
0997- 55 - 8070
0997- 57-2201
0997- 56 - 6260
9:00∼19:00
11:00∼19:00
9:30∼18:00
無休
無休
無休
マテリャー茶屋 (フォレストポリス)
ドライブインママ(思勝)
0997- 58 - 3166
0997- 57-2431
11:30∼14:30
11:00∼13:00
月曜日
不定休
宿泊施設
民宿中村荘(国直)
民宿さんごビーチ (国直)
大和荘(大和浜)
奄美フォレストポリスキャンプ場
0997- 57-2433
0997- 57-2580
0997- 57-2023
0997- 58 - 3166
※5月∼8月末 20:00まで
給油所
玉井石油(思勝)
畑島石油店(大和浜)
大棚商店(大棚)
0997- 57-2352
0997- 57-2436
0997- 57-2002
郵便局(ATM営業時間)
名音郵便局(名音)
0997- 58 - 3042
[平日]8:45∼18:00 [土]9:00∼12:30
日曜日
大和郵便局(思勝)
0997- 57-2542
[平日]8:45∼18:00 [土]9:00∼17:00
[日祝祭日]9:00∼15:00
日曜日
病 院
国民健康保険大和診療所(大棚)
大和村今里へき地出張診療所 (今里)
0997- 57-2053
0997- 58 - 3004
8:30∼17:15
13:30∼14:30
土・日曜日
月・金以外
役 場
大和村役場(大和浜)
0997- 57-2111
8:30∼17:15
土・日曜日
32
7:00∼19:00
7:00∼19:00
7:30∼12:30 15:00∼20:00
発行 / 大和村 企画・制作 / 一般社団法人 Shall we Design
大和村観光ガイドブック 33